私は以前、一時親しく情報交換したり、勉強したりしていた市民運動のがんばり屋さんの女性からいきなり電話がかかってきたことがある。当時、私はその人のことを子どもを育てながらしんどい活動を粘り強くやっている見上げた面がある人だと思っていた。
  
「とても良いビジネスの話があるのよ。紹介したい人がいるから。」 

 そういわれたのがちょうど私が独立して会社を始めた直後。何かお客さんでも紹介してくれるのかと思ってわざわざ出向いたのだった。

 ところが、単なる何のことはない連鎖取引、マルチ商法の案内だった。その時はわからなかったことであるが、その後、彼女から何度も勧誘の電話やメールがかかってくるようになってわかったことは、その人はもうそれに完全にはまってしまっていて頭の中がその事で完全に占拠されている状態。まずこちらを向いて話をする時の目も表情もおかしい。あきれてすぐに彼女を無視するようになった。以来、絶交状態である。
 
 これほど不毛な人生の使い方に狂奔してしまう魔力。

 「これは一種の宗教だな・・・。」
 
 と思わされたことがある。
 
 私の同期生には幸いにしていなかったが、このしつこい勧誘に悩む人は多い。大学院時代、同じ修士課程の女子学生から、知り合いからのマルチ商法勧誘がひどいのでどうすればいいかと相談を受けたことがあったが、彼女も相当に困っておられた。

 私がかつて所属していた高校時代の部活仲間の先輩と後輩にそういうのがいて、それ以降、同窓会にも、OB会にも、ちょっとした飲み会にも全て声がかからなくなり、友人関係を完全に壊してしまったのが3,4人いる。それらについてはいずれもアムウェイ(Amway)を含むマルチ商法だった。

 このアムウェイ。すでに世界有数の超巨大企業に成長。アメリカはミシガン州エイダで設立された企業で、合法マルチ商法で劇的に成長してきたビジネスである。タッパーウェアなどと同じくカタログによる無店舗販売を行ってきた企業である。
 
 アムウェイも初めは、収益性の高い美容、ボディケア、化粧品を中心にしており、特に洗剤だったが、その他、日用品や健康食品を扱っていた。今は何でも売っていると言ったら言いすぎだが、手広くやっている。一時、東芝の洗濯機も売っていたが、東芝の不信を買い途中で中止に。浄水器から保険(AIU保険)、クレジットカード、チケット販売(演劇、コンサート)や、DELLのパソコン、プロバイダー(NTT系列のドリームネット)などの商品も扱っている。
 
 アムウェイはアメリカ源流の外資系。多額の政治献金を行うなど超保守的な共和党政権やブッシュ親子との繋がりも強いJay Van AndelRichard DeVosが共同創設者。1959年にスタートしている。彼らは今も経営陣に留まっている。両者とも資産が2億ドルを超える超大富豪。日本で資産総額で彼らと肩を並べるのはかのイトーヨーカ堂の伊藤雅俊、森ビルの森などであるという。
 
 現在、アムウェイは、アルティコア(Alticor Inc.) という企業グループの中に傘下として入る形式をとった。アルティコアは、ITビジネスにも手を広げたコングロマリットである。アムウェイの売上げは年間50億ドル長野オリンピックではゴールドスポンサーのうちの一社だった。かつてはNASDAQに上場していたが、非上場の会社と合併したことで、2000年を契機に上場を辞めている。それゆえ、企業の内部情報が情報開示の対象にならずあまり外に伝わってこない。

 アムウェイの主軸商品は家庭用洗剤にすぎなかった。商品名は L.O.Cというらしい。これをただおとなしく売っているだけならばさほどの問題にならなかっただろうが、問題なのはその販売手法。マルチ商法、ネットワークビジネス、MLM(Multi Level Marketing)の方法をとる。要するに、子→孫→ひ孫と無限に続いていくネズミ講的な仕組みの連鎖販売である。
 
 気をつけていただきたいのがこうしたマルチまがい商法をやっている人間が、自らのビジネスを自分で「マルチ商法」、「ネズミ講的な仕組み」とは滅多にいわないこと。「ネットワークビジネス」あるいは「MLM」と言うことが多い。今から数年前、一番最初に「ネットワークビジネス」と聞かされた時には、Linuxなど新サーバーOSなどを使ったコンピュータ関連の仕事のことかと本気で一瞬勘違いしたくらいである。

 アムウェイの商品はアムウェイの会員にならないと買うことが出来ない。このアムウェイ会員になることは、つまり、アムウェイ商品の「販売員」になることを含む。正確な人数はわからないが、全米で50万人、日本で100万人以上もの「販売員」が存在しているらしく、こうした販売員は他の新しい販売員を勧誘してその販売員がさらにその下にさらに新しい販売員を勧誘するという階層構造をとる。具体的な業務命令などの上下関係ではないが、売上げからコミッションとして個々の販売員が受け取る「あがり」の金が上に上にと吸い上げられるピラミッド構造の上下関係になっている。だから、アムウェイ販売員の収入というものは、自分自身の売り上げだけではなく、自分より下の「子ども販売員」、「孫販売員」、「曾孫販売員」の仕入れ額からも収入が入ってくることになる。

 こういう仕組みを巧妙に作ったのがアムウェイ。そして、これに大々的に引っかかっている日本人が100万人もいるというのだから驚いてしまう。「販売員」というとあまりに語感が悪いので、「ディストリビューター」と呼んでいる。(略してDT、DBともいう。)DTを通じてカタログが流通し、商品が購入されていく。
 
 これらに地位があるらしく、それに応じたネーミングも行われている。トップ階級の販売員は「クラウン・アンバサダー」というらしい。中島薫氏などが有名。サンマーク出版などから著作を多数出している。少し読むだけでその内容についてはいわずもがなである。他にも「ダイレクト・ディストリビューター」など多用な言い方があるようだ。
  
 こうした連鎖取引の販売方法を採用している企業はアムウェイだけではなく、ナチュラリー・プラスニュースキンハーバライフグリオファーマネックス、ニューウェイズなど他にもいくらもある。法律的には連鎖販売取引に当たるのでその法規制の対象となっている。

 こうしたビジネスの最大の問題は商品そのものの品質や価値よりも、そこからコミッションとして上がってくる「収益の金」に最も関心がある人たちがやっていることなので、その販売と勧誘活動が時に常軌を逸したものになることである。どの商法も多かれ少なかれ強烈に批判される。日本でも90年代からトラブルが多発。訴訟になったりした案件も数多い。アメリカでも幾つも提起された。

 特に、若い世代や時間がある主婦などの被害が大きい。入会金を払うことに加えて、20歳以上であれば学生でなければだれでも簡単に入会可能。極めて複雑な販売、宣伝、報酬の金額やその支払い時期など諸事項について理解、認識、学習をするための機会が存在しないので、圧倒的に多くが口コミによって始めてしまう。こうして先に始めた人(アップラインという)から聞かされた一方的にバラ色のシナリオを描かれる情報を元にして始めるので後になってから
 
 「そんなつもりじゃなかった。」
 
 「そんなこと全然知らなかった。」


 と非常にやっかいなことに。トラブル続発。はまったら最後、アリ地獄状態である。こうした販売員のうち、高額収入を得ている成功者は極めて少数。アムウェイによる収入だけで生きている人は販売員全体の0.1%にもなっていない。

 消費者センター、国民生活センターなどにも苦情が殺到。一時は国会でも取り上げられたが、アムウェイから政治献金を受け取っている議員も多く大して深く掘り下げられなかった。抱えた在庫に圧迫され、それらのアムウェイ商品を買い取る業者まで出てきた。確実に人生の破綻を歩き始める。

 金の力にものをいわせてインターネットでのサーチエンジン対策も万全。ためしにYahoo!で調べただけで実に15ものサイトがカテゴリー登録されている。Yahoo!に高額のビジネス審査料を払って掲載してもらったのだろう。
 
 美容、ボディケア > 小売 > 日本アムウェイ の下に、

 日本アムウェイホームページ、アムウェイ・ネーチャーセンター、Amwaylive、アムウェイ・クィーン・クックウェア、アムウェイの今と昔、アムウェイの会社紹介、アムウェイの社会貢献、L.O.C.、SA8、環境への取り組み、空気清浄機、サテニークアドバンスト、世界の社会貢献活動、One by Oneこども基金、レシピデータベース

 とある。

 率直に申し上げて、こうしたマルチ商法にはまっている人間の精神は末期的に荒んだ状態の反映である。かなり厳しく申し上げれば、私の認識では悪質なリフォーム会社や歌舞伎町のホスト男らと同列に近い扱いである。
 
 わかりやすくするために、例えば、この様に考えてみる。自分にとって本当に人生に何人いるかいないかというかけがえのない人を思い浮かべる。ものすごく尊敬している恩師とか、気が狂いそうに好きになった初恋の人とかそういった人。そういう人をアムウェイやナチュラリープラスに誘うだろうか?マルチ商法を紹介するということは、図書券や当たった宝くじを差し上げるという話ではない。金銭的危険性、責任があるということをわずかでも知っているならば、そういう人たちを誘うはずがない。こういう無限連鎖取引のマルチに誘われたということは、つまり、
 
 「相手に見くびられた」

 ということ。カモに出来そうな、食い物になりそうな獲物として、ひっかけて引きずり込んでしまっても良いと判断されているということ。軽く見られているわけである。見方によっては侮辱されていると言っても良い。
  
 「・・・さんに出来るだけ良いポジションに入っていただきたいと思って・・・。」
 
 ばかを言っているでない。親戚でも、子どもでも、親兄弟でもだれでも他を誘え。

 マルチ商法を人に誘いかけるということはそういうこと。この様な正常な思考を根こそぎ停止させられた状態で、客観的に見れば完璧に卑劣でやっかいな愚行にはまっている方々は、この点、よくよく肝に銘じて覚えておかなければならない。そういう風に、その様な人間として他人からは受け取られることになる。目を覚ましてもらいたいと思う。

 参考文献:
 
 山岡俊介 『アムウェイ商法を告発する』 (あっぷる出版社)ISBN 4871771318

 *アムウェイはこの本について出版差し止めの裁判を提訴。だが、アムウェイの敗訴確定。

 最高裁判決全文  http://hanbai.com/lib/am_suit/
 以下は、ピースチョイス連絡会  http://www.3chan.net/~peacechoice/ による。

 政治献金を一般公開しているサイト「オープン・シークレッツ opensecrets.org)によると、アムウェイの政治献金総額( 個人、PAC、ソフトマ ネーの計)は、2000年/132万ドル、2002年/12万ドル、2004 年/17万ドルとなって おり、このほぼ100%が共和党への献金です。〔注: 2003年か らソフトマネーの献金 が禁止されており、2002年と2004年のアムウェイの政治献金総 額にはソフトマネーが 含まれていません。〕 しかもこの献金総額のうち、ヴァンアンデル、ディボス家から の個人献金が多くを占 めています(表A参照)。いわゆる共和党人脈ですね。ちなみ に10万ドルを集める と選挙後相当の見返りが期待できるレベルと言われます。「集 める」のではなく、 「自分だけで寄付する」というのはそれを上回る貢献です。
    〔表A〕       
          ヴァンアンデル      ディボス
    2000年    11万ドル         77万ドル
    2002年    5千ドル          9万ドル
    2004年    2千ドル          2万ドル
(注: 2004年度はブッシュ陣営への寄付金のみを表示)

 参考サイト: アムウェイ社の政治献金(オープン・シークレ ッツ) http://www.opensecrets.org/orgs/affiliates.asp?ID=D000000111&Cycle=A&Type=P

 ★アムウェイ/ブッシュ コネクション?★
 検索エンジンに「amway」と「bush」を入力して出てきた情報 を選んで以下に紹介し ます。結果として、アムウェイは組織としても経営者個人とし ても共和党寄りで、 ブッシュ家とは父の時代から深いつながりがあり、選挙時の協 力も強いということが わかりました。
・ディボスは州レベルの共和党の重鎮、ブッシュのアドバイザ ーであるキリスト教の 論客ダグ・ウィードもアムウェイの成功者 http://www.mlmsurvivor.com/ambush.htm
・2003年日本アムウェイの総会にブッシュ父、ダイアナ・ロス が出席 http://www.lewrockwell.com/orig4/rogers2.html
・ブッシュとイエーガー協会/ブッシュが選挙時にアムウェイ のボイスメールを活用 http://www.mlmsurvivor.com/bushyag.htm
・アムウェイは共和党寄り http://en.wikipedia.org/wiki/Amway

 ★社会貢献★
 アムウェイは、国連環境計画の環境賞を受賞したり、ホームペ ージでも世界各地での 社会貢献活動をアピールしており、日本では「こども基金」を 設立しています。しか し、製品の環境配慮や世界の子供の教育支援をする前に、子供 たちや地球環境を犠牲 にする戦争政策を推進するブッシュに政治献金をしない方が社 会貢献としては手っ取 り早いといえます。是非教えてあげましょう。
日本アムウェイ こども基金: http://www.1by1.jp/
日本アムウェイ 相談窓口(ホームぺージからメール送信可能 ) http://www.amway.co.jp/index_fla.html