b88b4bc3.JPG 前原誠司。ここ吉祥寺がある武蔵野市や三鷹市、府中市を含む小選挙区の代表として当選したばかりの菅直人を2票差で崩して民主党の新代表に決定した。私にとっては意外であった。事前には菅直人を支持する人間が多いと予想されていたからである。
 
 なぜ、彼が選出されたか。それは代表選での演説にあったらしい。私は聴いていないが、鳩山由起夫をして

 「前原さんの演説は素晴らしかったですよ。あれで(票を投じる候補について)変わった人が相当いるんじゃないかな。」

 といわしめる堂々たるものだったといわれる。労組に引っ張られて郵政民営化反対の判断をしてしまったことを決定的な失敗だったと断じ、民主党を闘う集団に変えることを強く訴えた。今の民主党の崖っぷちを考えれば、知名度、若さなどで大きく頼りない面がある彼であるが、それでもなおその清新な可能性に賭けようと判断した人間が多かったのだろう。菅直人はややしゃがれてもいる声の質が悪く、この十年ほどはもたもたと話す印象が目に付く。女性問題での傷もある。お世辞にも人の心を揺らすような演説の巧者とは言えない。薬害エイズでの奮闘は確かに素晴らしかったが、今、多くの国民はあの事件の事自体が記憶からかすれてしまっている。

 そこで若手の前原。若手リーダー格の1人だったらしいが、端正な顔立ちでも人気があるという。私は全く人の顔のことをどうこういえた立場ではないが、しおしおと良く眺めると、目の輝き、口元の引き締まり具合などから見てとれる彼の人格が読みとれ、それほどハンサムだとは思えないのだが・・・。

 しかもこれは民主党にとって大きな地雷原にもなりうる。彼は、外交・安全保障政策通だとされ、「影の内閣」での防衛庁長官。自衛隊制服組や自民党国防族とも繋がりが深い。憲法9条改正による軍隊の保有を強く訴える政策観を持つ。京都大時代は、あの高坂正尭ゼミ出身。彼を尊敬しているというあたりからもその影響も強いようだ。ちなみに私は高坂など全く優れた研究者だと思わない。
 
 日本が軍隊を持ち、兵士を抱える国となり、陸軍大将や海軍中将がイラク戦争などの最前線へ出向きうる体制を持ち、首相や防衛大臣がそれを切り盛りするという国に大きく変貌することは、その様に望む人間もかなり多く存在するものの、依然、日本国民の総意とは到底いえない。前原の理念型では、「自民党の亜流」どころか、石破茂ら国防族とほとんど見分けがつかない状態となり、逆に強い反感やアレルギーを生み出す原因になりかねない可能性がある。
 
 さらに、彼は小沢一郎らと仲が悪い。日本新党の衆院議員だった1994年、当時の細川護煕が小沢と連携を強めた時に、立党の原点と違うと争って離党した経緯がある。小沢と仲が悪いということは、自民党員時代から小沢と行動を共にして自民党から割って出た時代から一緒だった岡田克也ともそりが悪いということ。当然、菅直人とも近い距離にはいない。政策としては西村真悟などと親和性がある。しかし、西村のように攻撃的で品のない男と近いことは何のプラス要素にもならない。
 
 前原は細川とともに日本新党から政界へ。元々、細川護煕が作った日本新党から政界に打って出た人間は、状況に応じて離合集散を重ねる傾向が強い。当時は細川とともに一緒だった小池百合子らもそうであるが、結局最後は自民党に入るというケースもある。もっとも高市早苗のように選挙前から当選後、自民党に鞍替えすることを決めていながら選挙時には一切言わず、当選後にぬけぬけと移籍するほどは厚顔ではないと思うが。

 前原は、京セラを創業した稲盛和夫らが後援者である。また、あの松下政経塾(8期生)出身。ちなみに私は松下政経塾出身の政治家で尊敬、信頼、評価に値する人物は、現段階ではこれまでに一人も存在していないと思う。私が素晴らしいと思う政治家は、長野県栄村村長、高橋彦芳。あるいは太田市長の清水聖義。前三重県知事の北川正恭なども悪くない。

 さて、これで民主党は本当の「戦う政策集団」になれるか。前原がそうした指導性を発揮できるか。私は逆効果だと思う。このままではかなりの確率で民主党は変貌した自民党に取り込まれ、押し切られ、凋落していくしかないだろう、と思う。