4671e972.jpg 今夜、NHKのETVで放映されていた「日本人は何を考えてきたのか」で、日本の歴史上、非常に大きな節目になる思想弾圧事件である「大逆事件」について、幸徳秋水と堺利彦らを中心にまとめられていた。



 http://www.nhk.or.jp/nihonjin


 非常に良く取材され丁寧に構成された秀逸な番組でたいへん勉強になったが、特に驚いたのがこの事件を研究してきたボルドー第三大学のクリスティーヌ・レヴィの知識や語学力と、事件当時、世界各国で日本大使館宛に猛烈な事件を死刑にまとめたことへの反対署名・抗議が届いていたことであった。特に英国や米国の日本大使館にはもろもろの政治組織だけでなく、キリスト教の組織からの抗議書簡が殺到。社会主義運動への大弾圧だった大逆事件に対してこうした抗議がされていたことは意外であり、興味深かった。


 日本では学校教育で大逆事件の詳細について教えられることはほとんどない。あの事件はお上に刃向かうとどれほど恐ろしい目にあうかを見せつけた事件として、その後の日本の言論を急激に冷え込ませた契機になった事件であり、事件を直接指揮した平沼騏一郎、小山松吉らが日本の刑事司法に今日の冤罪司法にまでつながる汚点を残した事件でもあった。


 国や民族、体制や党派の立場に関係なく、普遍的な理念によって是非を決して態度を示すという価値観が日本には非常に乏しい。近くはイラク戦争の時が記憶に新しい出来事であったが、政治組織や宗教組織の真価は戦時や大事件の時に問われる。今月、日経新聞に「私の履歴書」として連載されているトニー・ブレア(元英国首相)の回顧録を読んでいると、嘘つきの不誠実な人格は首相職を退任しようと、国教会からカトリックに変わろうと改まることはなく悪化していくだけだとわかる。


 NHKオンデマンドでも視聴できるので見逃した方はご覧いただければと思う。



 
日露戦争にあたって非戦を唱えた幸徳秋水、堺利彦。二人は日本の社会主義思想の始まりをリードしたが、1910年の大逆事件で幸徳秋水は処刑される。


 近年、大逆事件で処刑された人々の復権が熊野、岡山など日本各地で進むなか、非戦と平等を唱えた幸徳と堺の再評価の動きがひろがっている。フランス・ボルドー第三大学教授のクリスチーヌ・レヴィさんもその一人だ。ユダヤ人の伯父を第2次世界大戦で失ったレヴィさんは、帝国主義の時代が始まろうとする時、「非戦」を唱えた幸徳と堺の存在は世界的に評価されると考える。レヴィさんは幸徳の主著「廿世之怪物帝国主義」をフランス語に翻訳。二人が非戦と平等の思想を生み出した背景を探っている。


 大逆事件は当時、アメリカやフランスでも注目され抗議が行われたが、幸徳ら12人が処刑される。残された堺は遺族を訪ね歩き、「社会主義・冬の時代」を生き抜いていく。文筆でなお「非戦」を唱え続けた堺にも新たな光が当てられようとしている。
番組ではフランス人レヴィさんの目で、非戦を唱えた幸徳と堺の思想を世界史の中で見つめていく。

【出演】
 クリスチーヌ・レヴィ(フランス・ボルドー第三大学教授)
 山泉進(明治大学教授・副学長)、
 三宅民夫 アナウンサー

 
 日本人は何を考えてきたのか 第4回「非戦と平等を求めて〜幸徳秋水と堺利彦〜」

 2012年1月29日(日) 22時00分〜23時30分

 日露戦争で非戦論を唱えた幸徳秋水と堺利彦。幸徳は大逆事件で死刑となるが、堺は社会主義冬の時代を生き抜いていく。二人をフランス人学者レヴィさんの視点で見つめる。


 日露戦争で非戦論を唱えた幸徳秋水と堺利彦。1910年の大逆事件で幸徳は死刑となるが、その後の「社会主義冬の時代」を、堺は文筆で生き抜いていく。直接行動を主張した幸徳に対し、堺はあくまで議会制民主主義の中で変革を考えていた。しかし2人は堅い絆で結ばれ、戦争反対では一致していた。フランスボルドー第三大学のクリスチーヌ・レヴィさんが、2人のゆかりの地を訪ね、世界史の中で非戦論の意義を考えていく。




欧州統合とシティズンシップ教育 (明石ライブラリー)欧州統合とシティズンシップ教育 (明石ライブラリー)
著者:クリスティーヌ ロラン‐レヴィ
明石書店(2006-03-20)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

大逆事件――死と生の群像大逆事件――死と生の群像
著者:田中 伸尚
岩波書店(2010-05-29)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

残夢−大逆事件を生き抜いた坂本清馬の生涯残夢−大逆事件を生き抜いた坂本清馬の生涯
著者:鎌田 慧
金曜日(2011-12-20)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

大逆事件と大石誠之助―熊野100年の目覚め大逆事件と大石誠之助―熊野100年の目覚め
現代書館(2011-01)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る