steven Olivier Messiaen という作曲家がいる。メシアンのファンだという音楽通、音楽家が身の回りにもいて、個人的にはどうにもわからなかったが、実際に聴きもしないで食わず嫌いはいけなかろうと、今月、Steven Osborne のピアノ・リサイタルを聴く。チケット完売。当日、来られなくなった空席もあったが、600人は詰めかけていた。

2019年10月31日(Thu) 19:00
武蔵野市民文化会館 小ホール
Piano: Steven Osbourne (スティーヴン・オズボーン、スコットランド人)

プログラムは、メシアンの

幼子イエスに注ぐ20のまなざし Vingt regards sur l'enfant Jesus

 20曲あり最後までぶっ通しで演奏する。途中休憩はありませんとプログラムに書いてあったが、終わったのは21:15。軽く2時間超の演奏であった。

 ところが、予想通り全く音楽の解釈がわからない。曲目がついているが、全くその曲目にふさわしい旋律ではない。むしろ逆で、苦悩、絶望、恐怖、悪夢、焦燥、暗闇、不信といった言葉が似合う、不協和音ばかり。聴いていても感動がない。休みなく緊張を強いられてずっと聴いている時間が、時に苦行のように感じたコンサートは他にない。

 「20世紀ピアノ音楽の金字塔」、「アシュケナージ、マッケラス等の巨匠の指揮で、ベルリン・フィル、ベルリン・ドイツ響等と共演!!世界最高のホールに出演するトップ・ピアニスト」、「この大曲を録音したアルバムで、グラモフォン賞等、権威ある賞にノミネート」、「この公演が終わったとき、あなたは椅子から立ち上がれなくなる。霊的な無二の深い感動をあなたに」という武蔵野文化事業団の謳い文句でチケットを買った人も多かったろうと思うが、ほとんどの人にとっては何が何だか意味不明の演奏だったのではないかと思う。

 スタンディングオベーションで「Bravo!」と叫んでいる人もおり、分かる人には分かる芸術なのだろう。しかし、一般受けしない音楽であることは疑いなく、アンコールはなし。演奏が終わるや、カーテンコールの拍手をせず、すぐに席を立って帰りだしたお客が多かった。ホールから出た後、周りの観客たちも

 「さっぱりわからん。」
 「良く最後まで我慢したね。」
 「ああ、疲れた。」

 といった声でひそひそ。私も今までのコンサートで一番、聴き終わってぐったり疲れ切ってしまった。スティーブン・オズボーンもどこかしら、人間として斜に構えた変わり者のようにも思えた。

 気骨あり、尊敬している女性中世音楽研究家はメシアンが大好き。なるほど、メシアン音楽は、聴き手のレベルを選ぶ作曲家だと改めて痛感。ただ、私はメシアン自身も、メシアン演奏者も、そのファンも、かなりの奇人、変人の域に入っているような気がする。

 
  1 父なる神のまなざし
  2.星のまなざし
  3.交換(神と人との成り代わり)
  4.聖母のまなざし
  5.御子の御子を見るまなざし
  6.神により、すべてはなされた
  7.十字架のまなざし
  8.高き御空のまなざし
  9.時のまなざし
 10.喜びの精霊のまなざし
 11.聖母の最初の聖体拝領
 12.全能の御言葉
 13.ノエル
 14.天使たちのまなざし
 15.幼子イエスの口づけ
 16.預言者と羊飼と東方の三博士のまなざし
 17.沈黙のまなざし
 18.恐ろしい終油の秘蹟のまなざし
 19.われは眠る、されど心は目覚め
 20.愛の教会のまなざし

Regard du Pere ("Contemplation of the Father")
Regard de l'etoile ("Contemplation of the star")
L'echange ("The exchange")
Regard de la Vierge ("Contemplation of the Virgin")
Regard du Fils sur le Fils ("Contemplation of the Son upon the Son")
Par Lui tout a ete fait ("Through Him everything was made")
Regard de la Croix ("Contemplation of the Cross")
Regard des hauteurs ("Contemplation of the heights")
Regard du temps ("Contemplation of time")
Regard de l'Esprit de joie ("Contemplation of the joyful Spirit")
Premiere communion de la Vierge ("The Virgin's first communion")
La parole toute puissante ("The all-powerful word")
Noel ("Christmas")
Regard des Anges ("Contemplation of the Angels")
Le baiser de l'Enfant-Jesus ("The kiss of the Infant Jesus")
Regard des prophetes, des bergers et des Mages ("Contemplation of the prophets, the shepherds and the Magi")
Regard du silence ("Contemplation of silence")
Regard de l'Onction terrible ("Contemplation of the awesome Anointing")
Je dors, mais mon cœur veille ("I sleep, but my heart keeps watch")
Regard de l'Eglise d'amour ("Contemplation of the Church of love")