6a8ff9ef.JPG 私が学生生活を終えて実社会に出てから感じた奇妙な違和感のうちの一つが、「〜願います。」という言葉遣いである。私自身はこれまでに一度も使ったことはない。社内の回覧文書、稟議書、メールのやりとり、パンフレットの記載や各種案内文などあちこちでこれが散見された。

 私はこの言葉遣いが非常に嫌いである。嫌いという形容では足りない。全く許せないというくらいどうにも不愉快。この表現は非常に偉そうに聞こえはしないか?慇懃無礼といっても良いかもしれない。まるで官僚が相手を見下して使っているように感じられる。なぜ、「お願い申し上げます。」、「お願いいたします。」とごく普通に書けないのだろうか。もしくは「〜下さい。」と一般的な表現に切り替えても全く問題はない。
 
 ご了承願います  → 了承できないといったらどうするのですか?
 回送願います   → 自分でやれ!
 ご理解願います  → 理解できないから問題になっているのでしょう?
 
 ふざけてもらっては困る。自分を何様だと思っているのだろうか。よく大企業や官僚の答弁などで「ご理解いただきまして」という表現もあるが、これも冗談ではない。到底、主権者たる国民の良識からすれば理解できない出鱈目をやっている自分たちを棚に上げて良くそういう開き直りができるものだと私はいつも呆れている。
 
 私は将来、多くの従業員を抱えて仕事を進めていくことが出来るようになれればと思っているところだが、
 
 1. ハラスメント(セクシャル、アルコール、パワーなど全部) 
 
 2. 怠惰によるコミュニケーション不全
   
 3. あらゆる無礼や官僚的な対応

 は許さないと心に決めている。この言葉遣いは3に該当すると思う。口頭表現でのアサーションと同じく、書き言葉でのアサーティブとは何かを日本人はよくよく肝に銘じておく必要がある。
 
 私はどうにもこうにもこの言葉が使われて飛んでくるメールは読むだけで頭に瞬間的に血が上るのである。

 偉そうな物言いということに関して見ると、元首相、橋本龍太郎はその筆頭格ではなかろうか。彼は弁が立った。私が橋本の国会答弁を注意を持って聞いたのは彼が蔵相を務めていた頃くらいからである。私が中学生の頃であろうか。決して早口ではなく、理路整然と堂々たる受け答えをする男だという印象を当時は持ったものである。
 
 弁が立つ。それは悪いことではないが、あの物言いの偉そうなこと、それはそれはただごとではなかった。彼が首相在任中にまだ健在だった竹下登が彼を評してこういった。
 
 「いやあ、龍ちゃんも「三る」がなければいい男なんだけどなあ。」
 
 と。「三る」というのは有名になったところの
 
 「威張る」 「怒る」 「拗ねる」

 である。とにかく番記者からは煮ても焼いても食えない奴ということでどうしようもなく不評だった。今の小泉純一郎が番記者からは非常に人気なのは、インタビューがしやすいからである。史上最も取材しやすい首相といわれる。そういえば彼はいつも官邸で背後に花瓶の生け花を写しての記者会見を必ず立ったまま番記者たちとわずかに1,2mほどしか離れずに行う。彼が国民に与えている親しみやすさというものはこういったところに如実に表れている。市井の空気まで降りてきた総理大臣という印象を崩さないわけである。このことは極めて重要なポイントであるといわなければならない。当たり前のことのように思えるが、他のだれもやらなかったのだから。前官房長官だった福田、現在の細田、今の幹事長の安部らにはこうした小泉流のコミュニケーション作法は全く備わっていない。

 橋本の話に戻ると、彼は自分には実力があり、霞ヶ関官僚を使いこなせるという根拠が乏しい自信に満ちあふれていた男であった。橋本とは激しく火花を散らしたライバル、小沢一郎が橋本をかつてこう評した。

 「床の間を背にしないと機嫌が悪い男」

 面白い言い方である。私は小沢は頭のできが悪い人間であるとは思わない。政争を戦い抜く戦略家としては侮れない。権力闘争能力はすさまじいと思う。誤解のないように強調しておきたいのだが、私は彼を人間としても政治家としても男としても全く尊敬していないし信頼もしていない。
 
 背後に床の間が必要な橋本龍太郎。かつて国会答弁で頻繁に、

 「その点、ご理解願います。」
 「以上、ご了承いただきたく。」

 といった言い回しをしているのを随分聞いた。
 
 「何を偉そうに言ってんだ、こいつは。」

 と感じたものである。こうして周囲に威張り散らす尊大な態度が影響して、結局、彼は今回の日本歯科医師会からの1億円ヤミ献金受け取り疑惑の責任をとって完全に失脚しそうである。比例区からの出馬を望んでいるようだが、それもかなり危うい。1億の小切手を青木や野中立ち会いの元受け取っておいてその受け取った相手の名前や顔を忘れたなどということがありえようか?だったら、痴呆症の診察を受けなさい。

 橋本は言葉遣いだけでなく、その発音にも相当の癖があった。良く通る声で聞いている分には特段わかりにくいということはなかった。竹下、小渕、森ら聞いているだけで惨めな気持ちになっていくタイプとは異なる。しかし、強烈な自尊心の高さが良く伝わってくる声の使い方であった。私は彼の発音それ自体にもあまり好印象を持っていない。

 結局、橋本は気質、言葉遣い、態度、発音、女癖、金扱いなどあらゆる面で周囲から嫌われた。会社の上司、経営者、政治家など多くの立場にある人にとって、あのようになってはいけないモデルとして田中真紀子と並びしばしば引き合いに出されるのは実に情けない限りだ。
 
 * イラストの似顔絵は画屋さんからお借りしました。人の顔の特徴を活かすのが上手い方です。