2012年02月09日
今週のNHKニュースの記事である。千葉県の若手医師確保の取り組みについての記事なのでご紹介する。現在、各自治体で医師確保について独自の取り組みが行われているが、顕著な成功例は見当たらない。それだけ医師の確保が難しい時代である。今回の取り組みが成果を生むことを期待する、内容は下記の通りである。
『人口当たりの医師の数が全国で3番目に少ない千葉県で、若手の医師を呼び込むために、診断や治療の研修や就職支援を行う施設が大学の附属病院に設けられました。
この「千葉県医師キャリアアップ・就職支援センター」は、千葉県が千葉大学医学部附属病院と協力して病院内に開設しました。5日は記念式典が開かれ、千葉大学の齋藤康学長が「最先端のシミュレーション機器を使った研修や、県内の医療機関への就職支援を通じて、千葉県民がこれまで以上に安心・安全な医療を受けられるようにしたい」と説明しました。センターには、内視鏡による検査や心臓の血管に管を入れるカテーテル治療、それに心臓のマッサージなどを体験できる装置があり、若手の医師が診断や治療の研修を受けることができます。また、就職先を紹介したり病院の見学をあっせんしたりする就職支援も行うことにしています。厚生労働省によりますと、千葉県は人口当たりの医師の数が全国で3番目に少ないということです。センター長を務める千葉大学の田邊政裕医師は「シミュレーションによる訓練で医師の技能を高め、同時に県内での医師の確保につなげていきたい」と話しています。』
大学の医学部附属病院とタイアップは非常に評価に値する企画だと思う。以前は大学の医局からの派遣で確保されていたことを考えると、その延長線上が想像できる。
しかし、医局と違って強制力はないようなので、果たして顕著な成果を得ることができるかは今後の取り組み次第である。最先端のシミュレーションを使った研修等は現在の若手医師のニーズに合致していると思うので、この制度を志向する医師も少なくないのではと個人的には思う。
最終的には、正のスパイラルが働いて現在の若手医師の働く環境が改善に向かえば、相乗効果でこの制度を志向する医師も増えていくのではないかと思うので、軌道に載せるまでの努力が重要になってくると考える。
『人口当たりの医師の数が全国で3番目に少ない千葉県で、若手の医師を呼び込むために、診断や治療の研修や就職支援を行う施設が大学の附属病院に設けられました。
この「千葉県医師キャリアアップ・就職支援センター」は、千葉県が千葉大学医学部附属病院と協力して病院内に開設しました。5日は記念式典が開かれ、千葉大学の齋藤康学長が「最先端のシミュレーション機器を使った研修や、県内の医療機関への就職支援を通じて、千葉県民がこれまで以上に安心・安全な医療を受けられるようにしたい」と説明しました。センターには、内視鏡による検査や心臓の血管に管を入れるカテーテル治療、それに心臓のマッサージなどを体験できる装置があり、若手の医師が診断や治療の研修を受けることができます。また、就職先を紹介したり病院の見学をあっせんしたりする就職支援も行うことにしています。厚生労働省によりますと、千葉県は人口当たりの医師の数が全国で3番目に少ないということです。センター長を務める千葉大学の田邊政裕医師は「シミュレーションによる訓練で医師の技能を高め、同時に県内での医師の確保につなげていきたい」と話しています。』
大学の医学部附属病院とタイアップは非常に評価に値する企画だと思う。以前は大学の医局からの派遣で確保されていたことを考えると、その延長線上が想像できる。
しかし、医局と違って強制力はないようなので、果たして顕著な成果を得ることができるかは今後の取り組み次第である。最先端のシミュレーションを使った研修等は現在の若手医師のニーズに合致していると思うので、この制度を志向する医師も少なくないのではと個人的には思う。
最終的には、正のスパイラルが働いて現在の若手医師の働く環境が改善に向かえば、相乗効果でこの制度を志向する医師も増えていくのではないかと思うので、軌道に載せるまでの努力が重要になってくると考える。
(11:57)
2012年01月26日
本日の読売新聞栃木版の記事である。最近、全国的に問題となっている生活保護受給者の増加についての記事なのでご紹介する。内容は下記の通りである。
『2010年度の本県の生活保護費が、前年度比約35億円増の約299億8700万円で過去最高だったことが県への取材で分かった。不況や高齢化の進展で高止まりが続くなか、行政側は後発医薬品(ジェネリック医薬品)や電子レセプト(診療報酬明細書)を活用し、全国で約120億円を圧縮する新手の節約作戦に乗り出した。
県医事厚生課によると、県内の生活保護費は1990年代に上昇し続け、2004年度に200億円を突破、08年度からは毎年度過去最高を記録、300億円の大台も目前となっている。
同課の担当者は「受給者は病気で仕事ができなかったり高齢で通院する人が多かったりし、生活保護費の多くは医療費として支出されている」と指摘。10年度は約299億円のうち、約145億円と48・6%が医療費や薬代など医療扶助費だった。こうした状況を改善しようと、政府は新年度予算案に「生活保護医療の適正化」を盛り込んだ。
厚生労働省や財務省によると、生活保護受給者に理解を求めた上で、品質は同じで価格が安い後発医薬品を一端服用することを基本として薬代を圧縮。また、電子レセプトを活用することで生活保護受給者に関する請求が不自然に多い医療機関などを洗い出して、不正請求を防ぐことで、保護費を圧縮したい考えだ。
これまで後発医薬品を使っていなかった受給者が一端服用し、そのうち62%の受給者が継続したと仮定して約106億円を、電子レセプトの点検で約20億円を圧縮できる公算という。
県は、「これまでは紙でつき合わせていた作業が、電子レセプトを使うことで短縮できる」と歓迎。例えば、月に15日以上の受診を3か月繰り返すなど頻回受診者や、向精神薬の重複受給のケースが抽出しやすくなるという。「医療機関や受給者の理解を得ながら節約につなげられれば」と期待を寄せている。』(2012年1月26日 読売新聞)
不況が深刻になる中、生活保護受給者の増加が問題となっている。生活保護受給の中で、上記にもあるように医療費の扶助額が大きな割合を占めている。患者の一部負担がないのだから、医療機関も過剰医療になりやすい。大阪では「貧困ビジネス」などと揶揄されて大きく報道された。
国民の最低限の生活を保障するのは国の義務であるが、それに便乗してのビジネスは論外である。医療費の扶助で言えば、医療を提供する側、受診する側、相互に節度が必要である。上記の記事は医療費扶助の増大に対しての自治体の取り組みが記載されているが、そもそも最初からしっかり管理体制を構築し、お互いに節度を持っての受診行動があれば、無駄な社会保障費を支出せずに済んだはずだ。もう少し人間の感情を分析した先見的な制度が構築できないものかと疑問に思う。
(17:32)
2012年01月12日
本日のNHKニュースの記事である。高齢者医療の法案調整に関する記事なのでご紹介する。内容は下記の通りである。
『厚生労働省は、後期高齢者医療制度を廃止し、新たな制度を導入する法案を通常国会に提出する方針ですが、新たな制度の在り方を巡って、全国知事会が反対するなど課題も多く、法案の提出に向けた調整は難航することが予想されます。
75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度は、増え続ける高齢者の医療費を抑制するため、4年前の自公政権時代にスタートしましたが、75歳以上で区切って保険制度を作ったことや、扶養されている人も保険料を支払うことなどに批判が相次ぎ、民主党は、政権公約に沿って、今の制度を廃止する方針を示しています。これについて、厚生労働省は、11日に開かれた民主党の厚生労働部門会議で、今月召集される通常国会に後期高齢者医療制度を廃止し、新たな制度を導入する法案を提出する考えを示しました。新たな制度は、現役世代と同じように国民健康保険などに加入する形で、法案が成立したあと自治体のシステムの改修や、制度を周知する期間を経て導入することにしています。しかし、新たな制度の在り方を巡って、厚生労働省が国民健康保険の運営主体を市町村から都道府県に移すことにしているのに対し、全国知事会は「財政支援が不十分だ」などとして反対しています。また、制度の変更に伴うシステムの改修に、数千億円規模の費用がかかるなど課題も多く、法案提出に向けた調整は難航することが予想されます。』
後期高齢者医療制度が発足した時も感じたことだが、現在加速する超高齢化に向けて医療の高騰化が年々大きくなるのは誰も予想できることであるにも関わらず、ツケをどこに回すか、みたいな議論になっている。以前にも述べたが医療・介護の今後のあるべき姿(ビジョン)を明確にしていないから、こういう議論になると思う。
国民全体の負担増は避けられない事実である。そのような状況で納得の割合が高い制度にするしかないと思う。
制度を作る人たちがもっと医療の現場をよく見て、何処に予算を配分して、何処の予算を削っていくべきか、を予防も含めて熟考すべきだ。そもそも医療とは、国民の健康と命を守ることにある。
その命題に沿ってビジョンを明確にすれば制度の構築で調整が難航する時間はかなり省けるように思う。
『厚生労働省は、後期高齢者医療制度を廃止し、新たな制度を導入する法案を通常国会に提出する方針ですが、新たな制度の在り方を巡って、全国知事会が反対するなど課題も多く、法案の提出に向けた調整は難航することが予想されます。
75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度は、増え続ける高齢者の医療費を抑制するため、4年前の自公政権時代にスタートしましたが、75歳以上で区切って保険制度を作ったことや、扶養されている人も保険料を支払うことなどに批判が相次ぎ、民主党は、政権公約に沿って、今の制度を廃止する方針を示しています。これについて、厚生労働省は、11日に開かれた民主党の厚生労働部門会議で、今月召集される通常国会に後期高齢者医療制度を廃止し、新たな制度を導入する法案を提出する考えを示しました。新たな制度は、現役世代と同じように国民健康保険などに加入する形で、法案が成立したあと自治体のシステムの改修や、制度を周知する期間を経て導入することにしています。しかし、新たな制度の在り方を巡って、厚生労働省が国民健康保険の運営主体を市町村から都道府県に移すことにしているのに対し、全国知事会は「財政支援が不十分だ」などとして反対しています。また、制度の変更に伴うシステムの改修に、数千億円規模の費用がかかるなど課題も多く、法案提出に向けた調整は難航することが予想されます。』
後期高齢者医療制度が発足した時も感じたことだが、現在加速する超高齢化に向けて医療の高騰化が年々大きくなるのは誰も予想できることであるにも関わらず、ツケをどこに回すか、みたいな議論になっている。以前にも述べたが医療・介護の今後のあるべき姿(ビジョン)を明確にしていないから、こういう議論になると思う。
国民全体の負担増は避けられない事実である。そのような状況で納得の割合が高い制度にするしかないと思う。
制度を作る人たちがもっと医療の現場をよく見て、何処に予算を配分して、何処の予算を削っていくべきか、を予防も含めて熟考すべきだ。そもそも医療とは、国民の健康と命を守ることにある。
その命題に沿ってビジョンを明確にすれば制度の構築で調整が難航する時間はかなり省けるように思う。
(10:33)
2011年12月21日
本日のNHKニュースの記事である。最近、美容医療も活況を呈しているが、その一方で問題の発生も絶えない。特に女性がきれいになっていくのは望ましい事ではあるが、こういった一部の問題で美容医療全体が悪く報道されるのは本当に残念である。内容は下記の通りである。
『美容を目的とした医療などについて、国の消費者委員会はインターネットでの宣伝などがほとんど規制されていないためトラブルが相次いでいるとして、厚生労働大臣に対して規制を強めるよう求める方針です。
美容目的の医療やエステサービスなどを巡っては、全国の消費生活センターに「期待していた結果と違う」「高額の費用を請求された」などの相談が相次ぎ、昨年度はおよそ9400件に上りました。このうち、医療に関する相談のほとんどは保険が適用されない「自由診療」についてで、インターネットのホームページなどが医療法の広告規制の対象になっていないことや事前の説明が十分でないことがトラブルの原因になっていると指摘されています。都内に住む女性は、美容クリニックのホームページを見て、ことし2月、目の下の「くま」を消すためにヒアルロン酸を注入する美容整形を受けました。しかし、その後、かゆみと痛みが出て「しわ」や「しみ」が残ったということです。クリニックからはこうした点について、書面での事前説明はなかったということです。女性は「ホームページに出ていた整形の前後の比較写真を見て受けた。副作用などの可能性を示してほしかった」と話しています。消費者委員会は、こうしたトラブルを防ぐ必要があるとして、厚生労働大臣に対して、インターネットについても広告規制の対象にしてルールを設けることや、方法や費用を明示した契約書を交わすなど事前説明を徹底することなどを求める方針です。また、消費者担当大臣に対しては、美容医療などのトラブルについて消費者に適切に注意喚起するよう求めることにしています。』
最近、美容整形や形成外科のDRの転職支援や美容クリニックの経営相談を受けたりすることが多くなった。現在も案件を抱えているので興味深い記事である。どのDRもみなさん真摯に症例や研修を積まれ、どの美容クリニックも経営的にしっかりした方針で運営されているというのが印象的な反面、上記のような問題も後を絶たない。
どこが問題かというと、美容医療の現場では、インフォームドコンセントを事務方がすることが多い。また、受診される方の体質等も様々である。もちろん、ミスも問題であるが、同じ処置をしてもそれぞれ効果が違うというのもある。施術した処置に対して想定される結果も症例が多くなるにつれてDB化できるであろうから、まず最悪のケースもしっかり説明しておくべきなのではないかと思う。その説明をすると施術に踏み切らない受診者もおられると思うが、問題の大部分は回避されるように思う。
美容の世界も競争が激しく売上至上主義になっているが、一つ問題が起きると甚大な被害を被る。インフォームドコンセントも医師が中心となってするべきである。渉外が苦手なDRも多いが、症例や研修と同じくらい美容クリニックの経営においては必要なスキルに思う。現在、問題が発生していなくても、他院の事例をDB化して想定されるリスクは対処しておくべきである、と常日頃から考えて取り組むべきだと思う。
『美容を目的とした医療などについて、国の消費者委員会はインターネットでの宣伝などがほとんど規制されていないためトラブルが相次いでいるとして、厚生労働大臣に対して規制を強めるよう求める方針です。
美容目的の医療やエステサービスなどを巡っては、全国の消費生活センターに「期待していた結果と違う」「高額の費用を請求された」などの相談が相次ぎ、昨年度はおよそ9400件に上りました。このうち、医療に関する相談のほとんどは保険が適用されない「自由診療」についてで、インターネットのホームページなどが医療法の広告規制の対象になっていないことや事前の説明が十分でないことがトラブルの原因になっていると指摘されています。都内に住む女性は、美容クリニックのホームページを見て、ことし2月、目の下の「くま」を消すためにヒアルロン酸を注入する美容整形を受けました。しかし、その後、かゆみと痛みが出て「しわ」や「しみ」が残ったということです。クリニックからはこうした点について、書面での事前説明はなかったということです。女性は「ホームページに出ていた整形の前後の比較写真を見て受けた。副作用などの可能性を示してほしかった」と話しています。消費者委員会は、こうしたトラブルを防ぐ必要があるとして、厚生労働大臣に対して、インターネットについても広告規制の対象にしてルールを設けることや、方法や費用を明示した契約書を交わすなど事前説明を徹底することなどを求める方針です。また、消費者担当大臣に対しては、美容医療などのトラブルについて消費者に適切に注意喚起するよう求めることにしています。』
最近、美容整形や形成外科のDRの転職支援や美容クリニックの経営相談を受けたりすることが多くなった。現在も案件を抱えているので興味深い記事である。どのDRもみなさん真摯に症例や研修を積まれ、どの美容クリニックも経営的にしっかりした方針で運営されているというのが印象的な反面、上記のような問題も後を絶たない。
どこが問題かというと、美容医療の現場では、インフォームドコンセントを事務方がすることが多い。また、受診される方の体質等も様々である。もちろん、ミスも問題であるが、同じ処置をしてもそれぞれ効果が違うというのもある。施術した処置に対して想定される結果も症例が多くなるにつれてDB化できるであろうから、まず最悪のケースもしっかり説明しておくべきなのではないかと思う。その説明をすると施術に踏み切らない受診者もおられると思うが、問題の大部分は回避されるように思う。
美容の世界も競争が激しく売上至上主義になっているが、一つ問題が起きると甚大な被害を被る。インフォームドコンセントも医師が中心となってするべきである。渉外が苦手なDRも多いが、症例や研修と同じくらい美容クリニックの経営においては必要なスキルに思う。現在、問題が発生していなくても、他院の事例をDB化して想定されるリスクは対処しておくべきである、と常日頃から考えて取り組むべきだと思う。
(13:43)
2011年12月08日
本日の日本経済新聞の記事である。社会保障と税の一体改革について意見を述べた興味深い記事なのでご紹介する。内容は下記の通りである。
『野田政権の重要課題の一つ社会保障・税の一体改革へ向け、厚生労働省が医療、年金などの制度案をまとめた。民主党も調査会が考え方を集約した。政府・与党間の調整をふまえ年末に消費税増税の行程を示した「素案」をつくり、首相は野党に協議を呼びかける。
厚労省もそうだが、民主党は特に給付の手厚さを前面に出した。それなしに納税者は増税を受け入れないと思っているのだろう。
だが公的な社会保障給付費、なかでも医療給付費は高齢化と技術革新で経済成長をはるかに上回る勢いで伸びる。制度の持続性を確かにするには、仕組みを不断に効率化し、高齢者にも相応の「痛み」を求める改革が欠かせない。
健康保険制度は、ある程度の患者負担の引き上げが必要だ。
70代前半の人が病院・診療所にかかったときの窓口負担は、速やかに本則の20%にすべきである。これは自公政権のときから、赤字国債を発行して毎年度2千億円を捻出し、10%に据えおいてきた。
だが子供の世代の税負担で高齢患者を優遇するのは道理が通らない。それを当事者にわかりやすく説明し、得心してもらうのが民主党議員の仕事ではないのか。
受診のたびに患者に定額を求める仕組みは、所得が低い人に配慮しつつ導入を急ぐべきだ。高額医療費の本人負担の上限を軽くする財源対策としてだけではない。患者が必要以上に病院や診療所へ行くのを抑えることにもつながる。
2012年度の国の予算編成の焦点に、診療報酬の改定がある。中央社会保険医療協議会は7日、総枠を減額改定しないよう示唆する意見書を厚労相に出した。薬価を下げ、その分を医師などの人件費や技術料(本体)の引き上げに回す考え方だ。一方、民主党には総枠そのものの増額要求が強い。
国民医療費の半分近く、約17兆円は医師などの人件費。民間や公務員の賃金と消費者物価は低下基調だ。診療報酬の総枠を増額改定する経済環境とはいえまい。
予算を増やさなくとも、配分を大胆に見直して病院の救急医療や小児科、外科などの勤務医に報いる体系を工夫すればよい。
年金についてもクギを刺しておきたい。これまでの物価下落時に年金額を連動して下げなかった特例で、受給者に累計7兆円程度の意図せざる「もらいすぎ」が生じた。特例は12年度にきっぱり是正するのが筋である。』(日本経済新聞)
社会保障と税の一体改革については、マスコミでも連日議論が報道されているが、総じて思うことは、長期的ビジョンに沿って政策を立案していないということである。
人口動態や医療・年金など社会保障の将来予測は膨大なデータを蓄積しており、それほど予測が狂わないので、長期的に正確なシミュレーションが可能なはずだ。
しかし、現実の政策は短期的なその場しのぎの政策としか思えない内容が多い。選挙とも絡むのであろうが、このままでは制度自体が破綻する。上記の記事にもあるように、予算は限られているのだから、配分を大胆に変えて、無駄な予算は省き、国民の命を守るという観点から、救急や小児など重点配分が必要な分野へ予算をまわし、予算が配分できなくても重大な影響を及ぼさない分野は大胆に削るなどの決定が必要だ。
このまま現在の議論を続けていたら、確実に将来にツケを残す結果となるに違いない。
(11:23)
2011年11月24日
昨日の日本経済新聞の記事である。「提言型政策仕分け」の中で、医療・介護など社会保障費の問題について議論された。内容は下記の通りである。
『政府の行政刷新会議(議長・野田佳彦首相)は22日の「提言型政策仕分け」で、高齢化で給付が膨らむ医療・介護の制度のあり方を取り上げた。医療の公定価格である診療報酬については医師の人件費など本体部分の引き上げに反対し、開業医と勤務医の報酬配分を大胆に見直すことで医師不足問題などに対応するよう要求。
薬剤費や介護の効率化も強く促した。給付拡充に傾斜した社会保障と税の一体改革論議に一石を投じた形だ
診療報酬は2年に1度改定しており、2010年の前回改定で10年ぶりの増額に踏み切った。同日の仕分けで厚生労働省は「医師不足に対応するため、勤務医の待遇を引き続き改善する必要がある」と発言。来年4月の次期改定でも増額を目指す考えを示した。
これに対し財務省は報酬を1%上げると、医療費が約3600億円増え、税で約1350億円、保険料で約1750億円の負担増になることを説明。「デフレや民間の賃金が減っており、引き上げは国民の理解を得られない」と主張した。
仕分け人からは「開業医の人件費を削れるのではないか」「開業の自由があるので大都会やもうかる診療科に医師が集中する。報酬を上げても効果があるのか疑問」といった指摘が相次いだ。仕分け人の結論は本体部分の報酬の「据え置き」が6人、「抑制」が3人となり、この意見を重く受け止めて対応するよう厚労省などに要求した。
また医師不足改善のため、開業医と勤務医の収入格差や、地域別・診療科目別の医師数の状況を踏まえて、メリハリを利かせた改定を求めた。
薬の公定価格である薬価のルールを見直して、薬剤費を効率化することも提言。後発品のある先発薬の薬価を大幅に引き下げ、先発品と後発品の価格差の一部を患者負担とする検討を求めた。ビタミン剤など市販薬に類似品がある薬については患者負担を試行的に引き上げ、一部を保険対象外とするよう促した。
政府が6月に決めた一体改革案は給付拡充策が効率化策を上回り、107兆円を超えた社会保障給付を一段と膨張させる内容。しかも医療費の定額追加負担など限られた効率化策にも民主党議員の反対が強く、実現が不透明になりつつある。診療報酬の増額改定を求める声も民主党内に多い。
今回の仕分けが医療・介護の一段の効率化を強く求めたことで、今後の一体改革や報酬改定の論議に影響を与える可能性もありそうだ。
仕分けでは介護でも、現役並み所得がある高齢者の利用料(現在は1割)を引き上げたり、軽度者の生活支援のための給付を見直したりすることを求めた。』
議論の内容については様々な意見があると思う。要は、公平な負担、効率的な医療・介護の提供を全体としてどう描くかだ。様々なシミュレーション結果も参考に全体のビジョンを国民に分かりやすく示す必要がある。「提言型政策仕分け」の中での議論は頷ける部分も大いにある。
いろいろな意見が出る中で、全体最適な制度を構築していかなければならない。政策とシミュレーションをいく通りか示し、それが将来どのようになっていくかを分かりやすく説明し、選択するのも案である。個人的には命に関わるようなものと比較的軽度な病気等を分類し、保険給付の配分を変えていくことが重要に思う。財源は限られているので、それをどのように効率的に配分するかを、「国民の生命を守る」という医療・介護の大前提を踏まえて議論する必要がある。
(10:20)
2011年11月10日
本日の毎日新聞東京朝刊の記事である。「受診時定額負担」に関する新たな情報なのでご紹介する。内容は下記の通りである。
『厚生労働省は9日の社会保障審議会医療保険部会で、提案済みの外来患者の医療費窓口負担(原則3割)に別途100円を上乗せして徴収する「受診時定額負担」について、市町村民税非課税世帯の負担額は半額の50円とする軽減策を示した。民主党から「低所得者に配慮すべきだ」と指摘されていることを踏まえた。
軽減対象は全体の約15%、約1700万人(09年度)で、市町村の国民健康保険(約1170万人)と75歳以上の後期高齢者医療制度(約500万人)加入者が大半。一律100円を徴収した場合に得られる財源は4100億円だが、軽減措置を導入すると3700億円に減少する。
受診時定額負担は、月の医療費が一定額を超えた場合に払い戻しを受けられる「高額療養費制度」の拡充に必要な財源(15年度3600億円)を確保することを狙い、厚労省が検討している。非課税世帯の上乗せ額を50円としても、拡充財源は賄える計算だ。
厚労省によると、現在75歳以上の人は年に平均34・2日通院している(医科)。それが定額負担を導入すると負担増を嫌って0・3日分受診を控え、33・9日になるという。全世代でみると、医科・歯科で計約20億6000万日受診が減り、2060億円の医療費節減が可能としている。
だが、日本医師会は「受診抑制が重病発見を遅らせる」とし、定額負担に強く反対している。また、02年度の健康保険法改正で健康保険組合などの加入者本人の窓口負担を2割から3割に引き上げた際、法の付則に「将来にわたって7割給付(自己負担3割)を維持する」と記した経緯があり、3割負担以外の別途徴収はこの付則に反するとの指摘もある。
一方、同省は高額療養費を拡充した場合、制度利用者が今の年間670万人から740万人に増えるとの推計も示した。』
年々高騰する医療費について政府や厚生労働省の迷走が続いている。急速に進展する高齢化の中でどのような負担割合を講じていくべきか、について明確な答えが存在するわけではない。現在の制度から様々な変更を加えていくと恩恵を受ける人、受けない人などが存在して、全体で納得できるような制度改革は難しい。しかし、高齢化は待ってくれない。あまりに患者に負担を強いると強い受診抑制が生じる。そのような中でも今後、制度改革を断行していかなければならない。負担ばかりを議論する前に、景気対策や雇用対策等の入りの部分の政策も同時並行で進めるべきだ。人間は負担の事ばかり聞かされると消極的になるものだ。入りの部分の政策も見えるようになれば多少の負担増も目をつぶるということになるのではないか。最近は税金や社会保険料等、負担増のことばかりでいい加減辟易している。その税金や社会保険料の元となる所得を増やしていかなければ働くモチベーションも維持できない。これからの日本をどのような国にしていくのか、明確なビジョンを描いてから、各政策に移るべきではないのか。そういうビジョンを描いていく政治家がいないと
『厚生労働省は9日の社会保障審議会医療保険部会で、提案済みの外来患者の医療費窓口負担(原則3割)に別途100円を上乗せして徴収する「受診時定額負担」について、市町村民税非課税世帯の負担額は半額の50円とする軽減策を示した。民主党から「低所得者に配慮すべきだ」と指摘されていることを踏まえた。
軽減対象は全体の約15%、約1700万人(09年度)で、市町村の国民健康保険(約1170万人)と75歳以上の後期高齢者医療制度(約500万人)加入者が大半。一律100円を徴収した場合に得られる財源は4100億円だが、軽減措置を導入すると3700億円に減少する。
受診時定額負担は、月の医療費が一定額を超えた場合に払い戻しを受けられる「高額療養費制度」の拡充に必要な財源(15年度3600億円)を確保することを狙い、厚労省が検討している。非課税世帯の上乗せ額を50円としても、拡充財源は賄える計算だ。
厚労省によると、現在75歳以上の人は年に平均34・2日通院している(医科)。それが定額負担を導入すると負担増を嫌って0・3日分受診を控え、33・9日になるという。全世代でみると、医科・歯科で計約20億6000万日受診が減り、2060億円の医療費節減が可能としている。
だが、日本医師会は「受診抑制が重病発見を遅らせる」とし、定額負担に強く反対している。また、02年度の健康保険法改正で健康保険組合などの加入者本人の窓口負担を2割から3割に引き上げた際、法の付則に「将来にわたって7割給付(自己負担3割)を維持する」と記した経緯があり、3割負担以外の別途徴収はこの付則に反するとの指摘もある。
一方、同省は高額療養費を拡充した場合、制度利用者が今の年間670万人から740万人に増えるとの推計も示した。』
年々高騰する医療費について政府や厚生労働省の迷走が続いている。急速に進展する高齢化の中でどのような負担割合を講じていくべきか、について明確な答えが存在するわけではない。現在の制度から様々な変更を加えていくと恩恵を受ける人、受けない人などが存在して、全体で納得できるような制度改革は難しい。しかし、高齢化は待ってくれない。あまりに患者に負担を強いると強い受診抑制が生じる。そのような中でも今後、制度改革を断行していかなければならない。負担ばかりを議論する前に、景気対策や雇用対策等の入りの部分の政策も同時並行で進めるべきだ。人間は負担の事ばかり聞かされると消極的になるものだ。入りの部分の政策も見えるようになれば多少の負担増も目をつぶるということになるのではないか。最近は税金や社会保険料等、負担増のことばかりでいい加減辟易している。その税金や社会保険料の元となる所得を増やしていかなければ働くモチベーションも維持できない。これからの日本をどのような国にしていくのか、明確なビジョンを描いてから、各政策に移るべきではないのか。そういうビジョンを描いていく政治家がいないと
(13:31)
2011年10月27日
本日のNHKニュースの記事である。医療機関を受診する際の高齢者の窓口一部負担がいよいよ2割に引き上げられることになる、という大変重大な記事なのでご紹介する。内容は下記の通りである。
『厚生労働省は、暫定的に原則1割となっている、70歳から74歳の医療費の窓口負担について、法律で決められている本来の2割負担に引き上げるよう検討する案を、26日に開かれた社会保障審議会の部会に示しました。
70歳から74歳までの医療費の窓口負担は、法律では2割にすることになっていますが、高齢者の負担軽減を図るため、暫定的に1割に据え置かれています。しかし、毎年およそ2000億円の国費負担が生じていることから、厚生労働省は、高齢者の医療費が増加している中で、応分の負担を求める必要があるとしています。これを受けて、厚生労働省は、後期高齢者医療制度を廃止したあと、70歳になった人から順次、本来の2割に引き上げる案を有識者会議でまとめ、26日に開かれた社会保障審議会の部会で示しました。これに対して、委員からは「法律にのっとって運用すべきだ」とか、「高齢者医療を支える現役世代に負担を求めているなかで、1割負担のままでは限界がある」などとして、窓口負担の引き上げに賛成する意見が出されました。その一方で、「日本の医療費の自己負担率は、ほかの先進国と比べて高い」とか、「十分な医療を受けられるようにする必要がある」などとして、1割負担の継続を求める意見も出されました。審議会では、年内をめどに結論をまとめる方針です。』
後期高齢者の2割負担は従来から法律で決まっていた。但し、患者側から見れば100%の値上げになり、これにより医療機関への受診抑制が更に大きくなる。老人医療が無料の時代からすると、恐ろしい値上げになってしまう。私が思うに、医療費の問題は高齢化の進展と伴に精緻なシミュレーションが可能だったはずだ。まず、無料ということ自体があり得ないことだ。保険診療は患者が医療機関を受診した際に、各負担割合に応じて窓口で支払い、残りを社保や国保に請求する仕組みになっている。当然、窓口の負担割合が少なく受診しやすくなれば、請求する診療報酬も多くなり結果として医療費は高騰していくことになる。国民が平等に必要な医療を受けられるということは非常に重要な政策であるが、一方で過剰医療も発生し、無駄な医療費も増えていくことになる。
今後重要な事は、精緻なシミュレーションを前提として、負担割合を踏まえ場がら、“平等で必要な医療とはどの範囲か”を明確にし、保険対象をもう一度見直すべきだ。命に関わる病気に十分な治療を受けられないのは大問題であるが、無駄な延命治療も医療費の高騰という課題からは大問題である。これは一例であるが、こういった議論を一つ一つ議論し、保険医療制度の仕組みをもう一度見直していく時期に来ているのではないか思う。
『厚生労働省は、暫定的に原則1割となっている、70歳から74歳の医療費の窓口負担について、法律で決められている本来の2割負担に引き上げるよう検討する案を、26日に開かれた社会保障審議会の部会に示しました。
70歳から74歳までの医療費の窓口負担は、法律では2割にすることになっていますが、高齢者の負担軽減を図るため、暫定的に1割に据え置かれています。しかし、毎年およそ2000億円の国費負担が生じていることから、厚生労働省は、高齢者の医療費が増加している中で、応分の負担を求める必要があるとしています。これを受けて、厚生労働省は、後期高齢者医療制度を廃止したあと、70歳になった人から順次、本来の2割に引き上げる案を有識者会議でまとめ、26日に開かれた社会保障審議会の部会で示しました。これに対して、委員からは「法律にのっとって運用すべきだ」とか、「高齢者医療を支える現役世代に負担を求めているなかで、1割負担のままでは限界がある」などとして、窓口負担の引き上げに賛成する意見が出されました。その一方で、「日本の医療費の自己負担率は、ほかの先進国と比べて高い」とか、「十分な医療を受けられるようにする必要がある」などとして、1割負担の継続を求める意見も出されました。審議会では、年内をめどに結論をまとめる方針です。』
後期高齢者の2割負担は従来から法律で決まっていた。但し、患者側から見れば100%の値上げになり、これにより医療機関への受診抑制が更に大きくなる。老人医療が無料の時代からすると、恐ろしい値上げになってしまう。私が思うに、医療費の問題は高齢化の進展と伴に精緻なシミュレーションが可能だったはずだ。まず、無料ということ自体があり得ないことだ。保険診療は患者が医療機関を受診した際に、各負担割合に応じて窓口で支払い、残りを社保や国保に請求する仕組みになっている。当然、窓口の負担割合が少なく受診しやすくなれば、請求する診療報酬も多くなり結果として医療費は高騰していくことになる。国民が平等に必要な医療を受けられるということは非常に重要な政策であるが、一方で過剰医療も発生し、無駄な医療費も増えていくことになる。
今後重要な事は、精緻なシミュレーションを前提として、負担割合を踏まえ場がら、“平等で必要な医療とはどの範囲か”を明確にし、保険対象をもう一度見直すべきだ。命に関わる病気に十分な治療を受けられないのは大問題であるが、無駄な延命治療も医療費の高騰という課題からは大問題である。これは一例であるが、こういった議論を一つ一つ議論し、保険医療制度の仕組みをもう一度見直していく時期に来ているのではないか思う。
(09:13)
2011年10月13日
昨日の毎日新聞の記事である。厚生労働省による「高額療養費制度」の自己負担軽減策に関する記事なのでご紹介する。内容は下記の通りである。
『厚生労働省は12日の社会保障審議会医療保険部会で、医療費の自己負担が高額になる患者の負担軽減策として、世帯年収に応じて月々の負担に上限を定めている「高額療養費制度」を見直す考えを示した。現在3段階の70歳未満の収入区分を5段階に細分化し、中間所得層の負担を軽くする。年収200万円程度〜300万円の世帯は今の8万100円+αが4万4000円に下がる。月額に加え、年収に応じた年間の負担上限額(25万9000〜99万6000円)も新たに設ける。
所要財源は約3600億円。厚労省は外来患者の窓口負担に100円を上乗せ徴収する「受診時定額負担」で約4100億円を捻出して賄う意向だが、100円の定額負担で得た財源のみで運用するのはいずれ困難となる。同省の西辻浩保険課長はその場合の定額負担の値上げを否定し、不足分は保険料アップと税負担で賄う考えを明らかにした。
現在の負担の月額上限は、低所得者(住民税非課税世帯)3万5400円▽中間所得者(年収200万円程度〜約790万円の世帯)8万100円+α▽上位所得者(同約790万円以上の世帯)15万円+α−−と3段階に分かれている。だが、中間所得者の幅が広すぎ、この中で比較的所得の低い人の負担が重いとの指摘がある。
このため中間所得者を年収200万円程度〜300万円▽300万〜600万円▽600万〜約790万円−−の世帯に分けることにした。上限をそれぞれ4万4000円、6万2000円、8万円に軽減する。低、上位所得者の上限も若干下げる。
1カ月では上限に達しなくとも、長期療養で医療費がかさむ人に配慮し、年間にも上限額を設ける。低所得者25万9000円▽年収200万円程度〜300万円世帯37万8000円▽年収300万〜約790万円世帯50万1000円▽上位所得者99万6000円−−とし、70歳以上にも年間上限額を設定する。
厚労省は財源に想定する受診時定額負担とセットで来年の通常国会に関連法案を提出する意向だ。ただ、定額負担には与野党内に強い反対論があり、導入できなければ高額療養費制度の見直しも宙に浮く。』
近年、医療技術も格段に進歩し、医療機器も高度化している。それと連動するように高額医療により医療費も高騰を続けている。医療保険制度では、国民皆保険をもとに公平な負担を原則としている。少子高齢化の進展により、今後各年齢層でどういった負担が公平なのか、大いに議論する必要がある。
命に関わる疾病の治療には、更に医療技術お進歩が望まれるとともに、一方では医療費全体を抑制していかなければならない。厚生労働省は年金問題もそうだが、医療保険制度についても膨大なデータを有し、将来の医療費についても緻密なシミュレーションが可能である。この医療保険の議論を見てもデータを小出しにしているように思えてならない。
緻密な将来のシミュレーションをもとにどういう負担が良いのか、社会保障全体のビジョンを描きながら詰めていく必要がある。このままでは社会保険制度自体が崩壊するのではないかと懸念する。
(09:47)
2011年09月29日
本日の西日本新聞朝刊の記事である。佐賀県の救急医療のIT化についての興味深い記事なのでご紹介する。内容は下記の通りである。
『県が全国で初めて県内の消防本部すべての救急車55台に配備した多機能端末「iPad」が、救急患者の搬送に効果を上げている。受け入れ可能な病院が瞬時に分かるため、搬送時間が平均で約30秒短縮された上、規模の大きな病院に偏りがちだった患者の分散化にも貢献している。
通報を受けて、現場に駆けつけた一台の救急車。隊員はiPadで患者の症状を入力すると、治療可能病院が表示され、「積極受入」「受入可」「受入不可」の3段階で状況が表示された。隊員は最寄りの病院に電話し、すんなりと搬送先の病院が見つかった。佐賀広域消防局の江頭春彦救急隊長(53)は「これまで病院一軒一軒電話で問い合わせていたが、iPadのおかげで病院がすぐに見つかるようになった」と語る。
県が春に導入したシステムはインターネットを活用する。医療機関側は朝、夕の2回、パソコンを使って当直態勢を入力。救急隊はiPadに患者の症状を入力すると、受け入れ可能な病院がリストアップされる。救急隊は、どのような患者を、どこの病院に運んだのかデータで入力するため、別の救急隊は、受け入れ可能な病院の最新情報を画面で確認することができる。
県医務課によると、救急車の搬送件数は近年右肩上がりで上昇。県内では2000年の2万2千人から10年には3万人に増加。119番を受けてから病院搬送までの時間も、09年は1999年に比べ5・9分伸びて平均33・7分だったが、システムを導入した4月以降、約30秒間短くなった。
重篤患者の搬送を受け入れる「3次医療機関」への偏りの解消にもつながっている。3次医療機関への搬送割合は、10年は32・7%だったものの、7月時点で28・9%に低下し、分散する傾向も出ているという。3次医療機関に指定されている県立病院好生館の藤田尚宏救命救急センター長(53)は「限られたマンパワーを最大限に生かすシステム。搬送時間の短縮は治療の面でも大きい」と評価する。』
(2011/09/29付 西日本新聞朝刊)
救急患者の受け入れについては、近年全国的に問題となっている。病院側の受け入れ拒否や患者のたらい回しによる治療の遅れ等、課題が山積みである。救急患者の受け入れは搬送時間の長短により患者の救命にも重大な影響を及ぼす。限りなく短縮することが望ましい。そのためには、受け入れ病院側とのリアルタイムな情報共有がひつようになってくる。近年、スマートフォンやタブレット型の端末が急速に普及し、IT環境は格段に向上し、情報共有の方法も格段に進歩した。今回の佐賀県の取り組みが全国的に広まり、救急患者の搬送時間が短縮していくことを期待する。
(10:17)