2015年01月29日

 昨日の朝日新聞の医療サイト「apital」の記事である。兵庫県の尼崎市で開業されている長尾クリニック長尾和宏院長が在宅医療について書かれた記事なのでご紹介する。
在宅医療の現場で日々、悪戦苦闘されている現役の医師の先生が書かれた貴重な記事である。内容は下記の通りである。


『在宅医療という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。
しかし在宅医療を知っている人は、ほとんどいません。
自分自身や家族がそれを受ける状況になるまで、関心は薄い。
私は、外来診療の合間に在宅医療もやる町医者です。
町医者とは、元来、そのような職種です。
通院している人が通えなくなれば、自然に在宅医療になる。
それ以外に病院から紹介されて在宅医療が始まる人もいます。
在宅医療は、信頼関係が最も重要なのですが、病院から紹介
されてくる人や家族と信頼関係を築くには、1ケ月くらいかかります。
在宅医療は、最初はあまり信頼されません。
病院医療は、誰でもたいてい知っています。
しかし在宅医療はあまり知らないので、信頼されないのです。
新規の在宅患者さんを訪問すると、在宅医療のイロハから
説明しなければいけないので、1〜2時間かかります。
帰宅すると日付が変わっていることもあります。
何百回も同じことを説明しますが、結構な労力です。
それで在宅医療の本をたくさん書いたのですが、本を読んでから
在宅医療を依頼される方は、非常にまれです。
在宅医療や在宅ホスピスや在宅緩和ケアや看取りの説明を
丁寧にしていくと1日に何時間あっても足りなくなります。
説明だけで、エネルギーが切れそうになることもあります。
仕組みの説明だけでそうですから、看取りの説明となると
これまた家族ごとに、1時間ずつかかることもあります。
時間をかけて理解して頂ければいいが理解されないことも。
かなうならば、小学生から在宅医療やがんや認知症に
ついての基礎知識を教えるべきではないでしょうか。
その時になってからでは遅い、といつも思います。』



 超高齢化を迎えつつある我が国で、厚生労働省の推進により、近年、在宅医療も全国的に普及してきた。しかし、記事にもあるように、在宅医療を理解している方はまだ少数である。私は在宅医療を中心とする医療法人で3年間本部長として、現場で医師や看護師の方と仕事をさせて頂いた。それまでは、コンサルタントとして、外から見て理解していたが、実際に在宅医療の現場に同行したり、様々な打ち合わせや事務手続き、患者様のご家族への説明等、貴重な経験をさせて頂いて、初めて在宅医療とはどういうものかを理解したような気がする。

 24時間対応や看取り、ホスピス等、過酷な現場でどうオペレーションを組んで継続させていくか、患者様やご家族が満足して、安心して任せて頂けるにはどうすればよいか、日々暗中模索していたことを思い出す。

 今後、超高齢化を迎える我が国では、在宅医療は欠かせないサービスである。今後もサービスを受ける方は増え続けるであろうから、政策の推進に連動して、これからサービスを受けられる方を中心に啓蒙活動も重要になってくるのではないかと思う。





(12:23)

2015年01月15日

 一昨日のNHKニュースの記事である。政府が社会保障制度改革推進本部を開いて、医療保険制度改革の骨子を決定したという内容の記事なので、ご紹介する。内容は下記の通りである。


『政府は社会保障制度改革推進本部を開いて、平成30年度から国民健康保険の運営主体を市町村から都道府県に移すことを柱とした医療保険制度改革の骨子を決定し、安倍総理大臣は、今月召集される通常国会に必要な法案を提出し、成立を図る考えを示しました。
総理大臣官邸で開かれた社会保障制度改革推進本部には、安倍総理大臣や塩崎厚生労働大臣ら関係閣僚、与党の政策責任者らが出席し、政府が医療保険制度の安定化に向けて、今後取り組むべき改革の骨子を決定しました。
そして、安倍総理大臣は「社会保障は国民が安心して暮らすためのセーフティーネットであり、経済社会の礎だ。持続可能な制度の確立に向け、改革を着実に進めていく」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は「骨子に基づいて、与党とも十分調整し、法案を提出したい」と述べ、今月召集される通常国会に必要な法案を提出し、成立を図る考えを示しました。
決定された改革の骨子には、▽高齢者の比率が高く、赤字が続く国民健康保険に年間3400億円の財政支援を行ったうえで、平成30年度から運営主体を市町村から都道府県に移すことや、▽後期高齢者医療制度で低所得者の保険料が最大で9割軽減されている特例措置を、平成29年度から段階的に縮小することなどが盛り込まれています。
厚生労働省は、改革の詳細を詰めたうえで、来月中に法案をまとめたいとしています。』



 平成24年度(2012年)の国民医療費は、39兆2、000億円となった。40兆円の大台も目前である。厚生労働省の試算でも、今後高齢化が進展し、50兆円を超えるのもそれほど遠くないと思われる。
 このような状況で、今後、国民が安心して暮らすことができるセーフティネットをどのように運営し、継続していくかについて、社会保障制度改革推進本部を設置して議論がすすんでいる。
 この議論の中で、赤字が続く国民健康保険の運営主体を平成30年度から市町村より都道府県に移して、財政支援をすることになった。
 また、後期高齢者医療制度で低所得者の保険料が最大で9割軽減されている特例措置を、平成29年度から段階的に縮小することなどが盛り込まれている。
 この改革を推進することにより、医療の質やサービスが向上して、進展する高齢化で高齢者の割合が増える中、国民が安心して暮らせるようになるのか、医療現場を踏まえながら、大いに議論してビジョンを描いてほしいものだが、社会保障費が年々増える中で増える負担をどうしていくかも、経済政策と並行して考えていかなければならない。
 医療の質やサービスを向上させながら、負担を抑えるという相矛盾した取り組みを実現させていくためには、現在の無駄の削減や規制緩和も重要な政策になっていくと思われるので、同時に議論してもらいたいものである。


(11:01)

2014年12月25日

 本日の東洋経済ONLINEの記事である。再生医療における医師・臨床培養士の認定制度が開始されたという内容の記事なのでご紹介する。日本は再生医療の分野で最先端を走っているので、アベノミクスと連動し、体制作りを急ピッチで進めている。内容は下記の通りである。

『日本再生医療学会が、再生医療に関する医師と培養士の認定制度をスタートした。第1回の選考はすでに終了しており、認定医379名と、臨床培養士69名の認定が2015年1月1日付で発効する。
制度は再生医療を行う上でのクオリティコントロールが主眼。認定試験を実施することによって、細胞・組織の理解と正しい扱い、法・規制の理解、倫理・安全性の認識などの共通認識の徹底を図る。
当面は法の適用はなく、学会独自の認定資格という位置づけになるが、「まずは学会主導でクオリティコントロールを図ることが重要。ここで作り上げたしくみが発展していけばいい」と澤芳樹・再生医療学会副理事(大阪大学医学系研究院教授)はいう。

「再生医療法」施行で研究から治療へ
再生医療はこれまでは研究レベルであり、研究機関、事業者ごとに異なる基準を持って運営されていた。ところが、14年11月25日に施行された「再生医療法」によって、新たな医療分野として、一般的な薬物治療や外科治療、放射線治療などと同等の治療法として認められた。認定制度はこれに合わせてスタートさせた。
この認定制度導入による直接のメリットは、取得者自身にはそれほどないかもしれない。これまでは規制も基準もなかったために誰がやってもよく、熟練した培養士といっても我流であるケースが多かったという。認定試験の普及によって共通基準ができ、誰がやっても一定の水準が保てるという信用につながる。
直接患者と接触する病院ばかりでなく、再生医療の試験や製品の製造を受託する企業にとっても信用の向上というメリットがある。今後は厚生労働省や関連する企業を巻き込んで、培養技術者のキャリアデザインにつなげていく方針だ。
認定資格を取るには、医師、培養士とも、学会に2年以上所属し、所定の臨床経験、学会発表や論文、実践経験などのバックグラウンドのほか、学会認定のセミナーへの参加と書類審査、筆記試験、手技の動画審査(培養士)に合格することが必要となる(15年度までは移行措置で、認定医は書類選考のみ)。
日進月歩の再生医療に共通基盤つくる
学会費2年分2万円(学生1万円)のほか、セミナー参加費、受検料、認定料などで医師が3万円、培養士は2万5000円の費用が必要で、有効期間は3年と条件は厳しいが、日進月歩の再生医療に関する共通基盤を持っていることが証明される。
培養士については、今後、手作業ばかりでなく指導者、施設管理者を含め、中級・上級レベルを設定し、長期的なトレーニングと育成のプログラムを作っていく。認定医・培養士は、年明けにも学会HPに氏名が公表される。
再生医療学会は、14年11月には、再生医療の臨床研究での健康被害に関する補償ガイドラインを定め、再生医療研究の中で患者に健康被害が生じた場合の補償制度を創設した。三井住友海上火災保険が核となり、死亡保障、後遺障害の補償などが提供される仕組みができた。
再生医療学会が、こうしたインフラ整備にも力を注いでいるのは、再生医療の研究・治療法においては、日本が最先進国であり、海外に範がないからだ。「いろいろ考えてよりよい方法を探していく」という澤教授自身も心臓外科医として最先端の再生医療に取り組む。日本の再生医療の牽引役として学会の果たす役割は大きくなっている。』



 再生医療の分野では、日本が最先端を走っている。アベノミクスとも連動し、ますは学会を中心に体制作りが急ピッチで進められている。先月には、「再生医療法」が施行され、臨床研究での健康被害についても補償ガイドラインが定められた。

 こうした動きを受け、学会主導で認定制度がスタートした。これにより、クオリティコントロールが実施され、細胞・組織の理解と正しい扱い、法・規制の理解、倫理・安全性の認識などの共通認識の徹底を図られる。

 当面は法の適用はなく、学会独自の認定資格という位置づけになるが、これまでは規制も基準もなかったが、認定試験の普及によって共通基準ができ、誰がやっても一定の水準が保てるという信用につながる。

今後は厚生労働省や関連する企業を巻き込んで、培養技術者のキャリアデザインにつなげていく方針であり、最先端を走る中、研究から治療への体制作りを急いでいる。
今後も治療法においても、最先端を走り続けることを期待してやまない。

(09:59)

2014年12月04日

 昨日のBLOGOSの記事である。12月14日に投票を迎える衆議院選挙での各党の医療に関する公約についての記事なのでご紹介する。今回の選挙は、消費税増税、原発、集団的自衛権等、課題が山積みの中、医療・介護は二の次のような様相である。内容は下記の通りである。


『さあ衆議院選挙です。各党の公約を確認しました。残念ですが医療問題はあまり今回の選挙の焦点ではないようです。どちらかというと、利益優先?
各党の公約の引用です。少子化、保険と絡めている所が多いでしょうか。

自民党

・「自助」「自立」を第一に、「共助」と「公助」を組み合わせる
・医薬品・医療機器の審査体制の充実・強化などで薬事承認を迅速化。
・子どもの医療費無料化を検討。
・高額療養費の限度額を引き下げ、社会保障番号の導入に合わせて医療と介護の総合合算制度を創設。
・ 高齢者医療制度は現行制度を基本とする。高齢者医療制度への支援の増大に伴う国民健康保険、協会けんぽ、組合健保などの保険料率の上昇の抑制などにより、国民皆保険制度を守る。
・介護保険料の上昇を抑制。介護サービスの効率化、重点化を図るとともに、公費負担の増加などを行う。
・国民健康保険の運営単位を市町村から都道府県単位に広域化。共済健康保険と協会けんぽの統合を進める。被用者保険の料率の平準化を図る。

医療に対する具体的改善策は出ていません。

民主党

・国民健康保険料の5割軽減、2割軽減の対象者を拡大(対象者=約400万人)
・低所得の高齢者の介護保険料を約3割軽減(65歳以上の高齢者の約3割が対象)
・救急・産科・小児科・外科など地域の医師不足などを改善
・新年金制度と高齢者医療制度については、3党合意に沿って、社会保障制度改革国民会議での議論を通じて民主党改革案の実現をめざす
・持続可能な介護保険制度を確立し、報酬改定などにより、介護労働者の賃金をさらに引き上げ、介護労働者の確保に努める

いいことは言っていますが、あいも変わらず財源根拠なし、具体策がみえない。だからもうだまされない。

維新の党

・医療・福祉の成長産業化
 〈1〉診療報酬点数の決定を市場に委ねる制度に変更
 〈2〉混合診療の解禁

ビジネスのみ

公明党

・新たに創設される国立研究開発法人日本医療研究開発 機構を司令塔として、革新的な医療技術の研究開発・ 実用化を加速。
・健康関連データの活用による生活習慣病の改善など、健康・医療分野におけるICT の活用や予防サービスの充実を進めるとともに、介護や自立支援のニーズに応えるため、ロボット介護機器 の開発・普及を促進。

実現性は不明なものばかり

次世代の党

・患者の選択肢を広げるための混合診療の解禁、医療費自己負担割合の一律

ここもビジネス。でも一律化はいいかな

共産党、社民党はいいことばかり書いて財源がはっきりしませんのであげません。
今回政権交代選挙ではないため自民党に期待していたのですが。
医療問題は選挙に関係ないと思っているんでしょうね。
各テレビ局の首脳討論も、野党が弱すぎる。TBSなんて安倍さんをテレビ局が責めまくったのに。野党が弱すぎるのも問題ですね。』



 いよいよ12月14日に投票を迎える衆議院選挙であるが、今回は医療・介護については、あまり重点が置かれていないようである。もちろん、消費税の増税分を社会補償費に充てるという意味では、選挙の焦点の一つである消費税増税が大きく関連してくることは確かである。

 各党の公約を見ると、記事にもあるように、民主党などは、掲げた公約を実現するために、どこから財源を持ってくるのだろうかと大きな疑問がある。前民主党政権では、それらの問題で国民の信頼を大きく裏切ったではないか。あいも変わらず財源なしの公約は、いい加減に慎むべきである。各党公約から判断できるのは、やはり政権運営能力は自民党しかないように思える。反面、今後も大きな改革はなく、このまま負担増の政策になっていくような気がする。

 自民党以外で政権を担う気があるのであれば、もっと国民を驚かせるような今までにないビジョンを掲げ、しっかりとした財源確保の説明をして国民の真意を問うべきではないだろうか。

(10:19)

2014年11月20日

 本日のWEDGE Infinity の記事である。亀田メディカルセンター理事長の亀田 隆明氏が日本の医療の将来ビジョンについて語られた内容の記事なのでご紹介する。
今後、世界に類を見ない超少子高齢化社会を迎える日本の医療がどうあるべきか。内容は下記の通りである。


『昨年、日本の生産年齢人口(15〜64歳)が初めて8000万人を割り込んだ。約25年後の2040年には6000万人以下になると予想されている。今、40歳前後の団塊ジュニアの世代が65歳以上の高齢人口にシフトし始める頃だ。
今後も高齢者の医療費を公費、つまり税金や保険料で賄うことができるのか。私はある程度、自由診療の幅を拡大し個人の意思を尊重するべきだと考えている。
 例えば、末期ガンに効果があり、投薬すると1カ月間だけ延命できる新薬が開発されたとする。ただし、その費用は1000万円だ。これを社会保険診療で賄うのは是か非か。若い頃から必死にお金を稼ぎ、病気になったら大金を払ってでも世界最高の医療を受けたいと考える人が、自ら1000万円を払ってはいけないのか。世界に類を見ない超少子高齢化と人口減少の社会を迎える中で、今の制度を維持し続けることが正しい判断と言えるのか疑問だ。
 現状維持は、同時に消費税や保険料の上昇を容認することになる。それを踏まえると、保険診療の消費税非課税は問題のある政策だ。非課税といっても医療機関が購入する薬剤や診療機器、設備などにはすべて消費税が乗せられている。保険診療は公定価格となっており、医療機関には価格裁量権はない。現在、この消費税のほとんどは医療機関が診療報酬の中から納めている。
 25年後は、おそらく消費税率が20%を超えている。診療報酬は政策誘導の面が強く、誰にでも公平公正で透明度の高いものでなければならない税とは、性格上相容れない。早急な抜本的改革が必要だ。
 一方、医療を産業という視点で展望すると、高齢人口の割合が大きくなる25年後の日本では、医療・介護福祉は雇用面で国内最大の産業になっているだろう。生産年齢人口6000万人のうち、1000万人規模が医療・介護福祉で占められているはずだ。
高齢者が増え、雇用のシフトが起きる中、大規模な公共事業で景気回復を狙う政策に意味はない。今から手を打つべきは、世界的な医療産業の育成だろう。日本で使われている医薬品や医療機器の多くは、欧米やイスラエルの製品だ。輸入超過額は年間3兆円規模に上る。
 しかし、日本の医療はiPS細胞をはじめ基礎研究では世界をリードしている。このノウハウを活かし、産学官が一体となって医薬品や医療機器の国内生産を拡大し、世界に輸出できる環境を整えるべきだ。
 開発した医薬品や医療機器は、単純に売るだけでは使われない。海外に日本の製品を集めた病院を建設し、使い方などの技術指導を行うことも重要だ。こうした事業はODA(政府開発援助)で日本の税金を使っても意味はなく、お金を持っている国をターゲットにすべきである。中国と産油国だ。
 個人的な目標では、電子カルテをクラウド化し、全国の医療機関で診療データを共有できるネットワークを構築したい。こうした環境整備は欧米諸国が先進的だが、日本には優れた国民皆保険制度がある。詳細な診療データが蓄積されており、これをビッグデータ化して分析すればさらなる医療の発展につなげられる。
 健康長寿という人類の夢を叶えた日本は今後、人類が未経験の世界に突入する。目指すべきは、人類初の新しい社会システムを構築すること。日本に必要なのは「再生」ではなく「新生」だ。確かに、変わるリスクは小さくない。しかし、変わらないままでいるリスクはその比ではない。生き残るために変わることが必要だと考えている。』



 記事にもあるように、昨年、日本の生産年齢人口が8、000万人を割り込んだ。25年後の2040年には、6、000万人を割り込むと予想されている。このような世界に類を見ない少子高齢化社会を迎えて、日本の医療がどうあるべきか。現在の国民皆保険制度が維持されていくためにも、自由診療の枠を広げていくべきと考える。
 人口予測から見ても、今後、この国民皆保険を維持していくためには、社会保険料、消費税を上げていかなければならない。おそらく消費税だけでも最低20%は必要だ。このような負担を次世代に課すべきか。それを負担できるまで、経済が回復しているのか、これらすべてに対して大きく疑問が生じる。現状の延長線上で改革を繰り返しても根本的に解決できるとは思えない。行政も小出しにせず、20年〜30年後を見据えてビジョンを描き直すべき時に来ている。
 日本は、医療の分野でも基礎研究は世界の最先端を行っている。これらも産業の発展に応用すべきだ。医療制度だけでなく、経済の面でも岐路に立たされている。今回の提言に耳を傾け、真摯に議論を深めてほしい。

(14:24)

2014年11月10日

 本日の日本経済新聞の記事である。昨今、話題になっている混合診療解禁に関して、早くも規制強化の動きがある。今回は、これについての記事なのでご紹介する。混合診療は、今年6月に出された改革案で、「身近な医療機関で受診可能」となっていたが、ここに来て大きく後退する可能性が出てきた。内容は、下記のとおりである。


『厚生労働省が5日示した混合診療の改革案は中小病院や診療所について、患者からの相談に応じ、大病院への申し出を支援する役割を新たに位置づけた。患者に身近な診療所などは混合診療の受診ではなく、相談する場所にとどめられ、「身近な医療機関で受診できるようにする」とした6月時点の改革案が後退する懸念が出てきた。
 厚労省が患者の希望に応じて混合診療を受診できるとした約100病院は、同省が認めた大学病院など地域で高度医療を担う病院に限られる。厚労相と行政改革担当相が6月に合意した「身近な医療機関」からは遠い。
 他の医療機関に受診先を広げる道もあるが、全国15カ所の「臨床研究中核病院」が認めた機関に限られ、それが厚労省の専門家会議で承認されなければならない。
 厚労省が慎重姿勢なのは「実施病院をむやみに増やして事故が起こると困る」(幹部)との判断に加え、主に診療所を担う開業医に混合診療への反対論が根強いからだ。先端的な治療の実施が広く認められると、医療機関によって対応できるところとできないところが出てくる。患者からは今よりも病院や診療所の優劣が見えやすくなり、競争が激しくなることを警戒する声もある。
 100病院で実施する混合診療のハードルも低くはない。患者の希望があっても国に直接申請できるのは15の臨床研究中核病院だけ。さらに医師らによる専門家会議の承認を得る手続きが必要だ。大臣合意では原則6週間で承認する方針を掲げたが、日本医師会など医療関係者からは「あくまで原則。患者の安全が優先で遅れても構わない」との意見が強い。』


 混合診療は、まだ保険適用のなされていない先進的な治療や薬剤などを従来の保険適用の治療と組み合わせて、患者の選択・同意のもと、難病等の治療を進めていくことである。全国15箇所の「臨床研究中核病院」が中心で、厚労省の専門家会議で承認されなければならない。
 確かに、安全性の確保等、規制も必要になると思うが、医療機関の機能だけで枠組みを決めるというのはいかがなものか。どんな大病院、専門病院でも治療に当たる医師の経験や技量が重要ではないか。どの病院でも、そこに所属する医師の経験や技量が一律に等しくあるわけではない。また、開業医の医師でも、それまで大病院や専門病院で豊富な経験と技量を蓄積した医師も多数存在する。そのような医師の評価が曖昧な中で、医療機関の機能だけで規制をかけるのは危険極まりないように思う。
 こういった安易な枠組みではなく、患者の立場になって真剣に考えて規制の枠組みを考えていかないと、後で大きな問題が出るように思うし、そもそもこの制度が運用されていかないように思う。




(12:07)

2014年10月23日

 本日のnippon.comの記事である。医療ビッグデータの活用に関する記事なのでご紹介する。医療ビッグデータの中で大きな役割を担うDPC制度は、2014年度で導入、もしくは導入準備の病院が1860件に達すると言われ、データの蓄積が進みつつある。今後、超高齢化社会のターニングポイントとされる2025年に向けて活用の速度を上げる必要がある。内容は下記の通りである。


『超高齢社会への対処に活用待ったなし
夜更けのコンビニエンスストア。レジの店員がお客をちらっと見て、「30〜49歳・男性」と書かれたボタンを押した後、ピッピッと「角煮まん、ウーロン茶ペットボトル500mL」と商品のバーコードを読み取る。そのデータは、POS(販売時点情報管理)システムを介して即座に本部のホストコンピューターに入り、日々蓄積されて、各店舗の仕入れや新商品の開発に活かされる。このようなビッグデータを活かしたマーケティングへの活用や経営管理は、世界に先駆け、1980年代に日本のコンビニに導入された。
「コンビニエンスな」学生生活を過ごした私は、日々行われる医療行為についてもデータ収集と分析が進めば、コスト・アクセス・質を同時に達成するという医療界の最大の難題についても最適解が導かれ、憂いのない老後を送れるのではないかと漠然と思っていた。しかし、こと人の生死にかかわる究極の個人データである医療情報においては、道はそう平たんではなかった。しかし、団塊の世代が後期高齢者入りして日本の社会保障が最大の試練を迎える2025年に向け、ビッグデータ活用は待ったなしだ。

医療現場はビッグデータの宝庫
医療現場こそは、Volume(量)、Velocity(速度)、Variety(種類)で特徴付けられるビッグデータの宝庫だ。患者調査(2011年度、厚生労働省)によれば、日本全体の1日あたりの患者数は入院が約134万人、外来が約726万人。それぞれが手術、薬、処置など、個々の疾病に応じて多種多様なサービスを受ける“多品種少量生産”が当たり前の世界だ。
その診療情報の内訳は、医療機関(病院、診療所、薬局)が、医療費の公的保険負担分の支払いを審査支払機関に求める際のレセプト(診療報酬明細書)に明記されるが、これを電子化するだけでも大騒ぎだった。2006年ごろまでには、医療機関の大半はコンピューターでレセプトのデータを管理していたが、それを紙に出力して送付するため、1カ月で14億枚、富士山の倍の高さにも積み重なった。受け取った基金の側は、それをOCRで読み取って電子化した。それが同年の厚生労働省令で、ようやく2011年からレセプトの電子化・オンライン請求が、原則義務化されることになった。
2009年以降、電子化されたレセプト情報は、「ナショナル・データベース」(NDB)として、国がすべて保存しており、解析次第で、ビッグデータの4つ目のVである Value(価値)を生み出すことができるが、その取り組みはまだ緒に就いたばかりだ。

DPC(診断群包括分類)データの蓄積、質向上・効率化に寄与
一方、一歩先んじて、医療の質や効率化に寄与しているビッグデータが、DPC(診断群包括分類)に基づく診療情報のデータで、今ではNDBにも含められている。DPCとは、「Diagnosis Procedure Combination」の略で、Diagnosis(診断)とProcedure(治療・処置)のCombination(組み合わせ)。入院したことのある人であれば、既にこの方式で支払いをしている可能性が高い。
日本の医療は、投入した医療資源をすべて請求する「出来高払い」が基本で、過剰診療を招くとの批判も大きかった。このため「包括払い」が模索され、1日当たりの値付けがなされたが、この単価のための分類がDPCである。2003年に82の特定機能病院(大学病院の本院など)にDPCによる1日当たり定額の支払い方式が導入されて後、手挙げ方式で徐々に導入病院が拡大し、2014年度には、主として急性期医療を中心とする約 1860の病院が参加もしくは準備中で、全国90万床余りの一般病床(主として急性期の患者を対象)の約59%に当たる53万床をカバーしており、年間800万件を超えるデータが蓄積されている。
そもそも包括払いは、青天井の医療費にキャップをはめようという意図があり、DPCによる包括払い(1日当たり単価は入院日数に応じて段階的に減額)が、医療費削減に資することは納得できる。実際に、OECD諸国の中でも突出して長かった日本の在院日数の短縮などにも寄与している。
しかも、DPCは構造化されたデータであるため、さらなるValueが生み出される。

診療実績など病院間の比較が可能に
DPCコードは14桁からなり、入院期間中に医療資源を最も投入した傷病名(約2500分類)に加え、年齢・体重・意識障害レベル、手術や処置の種類、使用薬剤、医療資源の投入量に影響を与えるような合併症や重症度が、すべて数値化されて盛り込まれている。これに在院日数、費用などの情報も加えたデータセットによれば、医療情報を透明化できるようになる
実は、診断群で先行していた米国には、1970年代初頭にイェール大学で開発されたDRG(Diagnosis Related Groups)という診断分類があり、3M(スリーエム)が商品として販売していた。それを“直輸入”して米の配下に入ることなく、より精緻化した日本独自のDPCを開発し、50万床レベルで収集しているのは、世界的にも誇れることである。
各病院から提出されたDPCデータは厚労省で集計され、年1回、「DPC導入の影響評価に関する調査」として、病院名入りで公開されている。
診療情報を積み上げただけのレセプト・データでは、診療行為ごとの回数や処方薬剤の量などの質的な分析であれば容易にできるが、一手間かけたDPCデータによって、医療の全体像を把握できるだけでなく、同じ病名であっても医療機関によって診療内容にバラツキがあることが一目瞭然に分かってくる。
患者・住民は、自分がかかっている疾患について、どういう病院がどのような診療を行っているかが、入院期間や医療費も含めて知ることもできる。DPCごとの月平均退院患者数、医療圏シェア、平均在院日数などの診療実績の比較もできる。厚労省が提供しているのは、Excelで集計した生データなので、非常に見づらいが、一覧性を高め、検索機能などを付加した民間のDPCデータに基づく病院比較サイトもある。

質に踏み込んだ分析で、医療機関の淘汰も?
医療分野のデータサイエンティストがこれを分析すると、さらに医療の質にまで踏み込んだ分析ができる。例えば、ガイドラインにのっとった治療を行っているか、入院中に合併症が発生していないかなども分かる。がん治療などは新薬の開発も盛んな領域であるが、旧態依然とした治療を行っている病院も明らかになり、日本の治療の標準化を促すこともできる。
DPCデータは、マクロでは、適切な診療報酬体系や地域医療計画などの構築の拠り所とできるものであり、ミクロでは、各病院がこのデータをベンチマークにして自院の質向上やマーケティングに活かすことができる。
将来は、医療の質に基づく支払い(Pay for performance: P4P)とDPCとを連動させることも検討されているが、これはかなり議論を呼びそうだ。ただし、DPCによる医療実績の公開が進めば、医療の質を維持できない病院は撤退を迫られることにもなりかねない。

転院ではデータ途切れ、患者の追跡できず
さて、日本の医療が抱える最大の課題である効率化という点を考えた場合、DPCが対象とする入院医療だけでなく外来医療もあり、主として開業医らが担っている部分にもメスを入れないと、トータルで医療費の効率化につながらない。しかし、入院外の医療は生死に直結するものは少なく、慢性期医療という位置付けである。
「医療費抑制のメーンターゲットは入院医療。外来の医療費は診療単価だけでコントロールできる」と語るのは、東京医科歯科大学医歯学総合研究科医療政策情報学分野教授の伏見清秀氏。医療費の一定額を保険対象から除外し、患者負担とする保険免責制を入れるという方法もあるという。

伏見氏は、日本におけるDPC制度の導入から現在に至るまで、その制度運営を学術的にサポートしてきた立場から、DPCデータを本格的に活用するには、まだ環境の不備があると指摘する。その最大の課題が、患者の追跡ができない不自由さだ。
DPCデータは病院単位で提出するデータなので、ある病院に入院中の患者は把握できる。しかし、例えば、ある治療の効果は、受けた患者を追跡し1カ月後に治っていたのか、あるいは死亡したのか、転院していたのかなどを把握しなくては検証しきれない。個人レベルの情報でありながら、個人情報を含まない複数のデータを個人単位でひも付けできることが重要なのだ。
ちなみに、コンビニは、レジでプロフィールを登録してもらい、ポイントカードを発行して自チェーン内では、購買データのひも付けを進めている。もちろん、医学研究における重要性は、その比ではなく、伏見氏は「日本の診療情報データが他のデータとつながらないのは歴史的汚点で、国益を損ねている」とまで言い切る。

マイナンバー、本人同意で医療に応用も検討か
研究においてビッグデータを解析する目的は定量的、定性的に仮説を検証するためで、年齢や性別は必要でも、個人を特定する必要はない。適切な個人識別番号によって、データが関連付けられれば良いが、そのハードルが高い。
社会保障・税番号(マイナンバー)により、年金などの社会保障と納税1つの個人番号で管理する制度が2016年にもスタートする。いわゆる国民総背番号制がようやく実現するが、これだけでもセキュリティー、プライバシー保護の2点について不安を呈する声が上がっているのに、さらにマイナンパーを病歴とつなげることには慎重論が恨強い。厚労省や日本医師会では別途、医療や介護のための医療IDの検討を進めていた。
政府は、マイナンバーを医療にも応用する方向で、本人が同意すれば医療機関や介護施設が個人の医療情報を共有できるようにする方針を固めているとされる。また、個人を特定できないデータは、本人の同意がなくても第三者に提供できるようにする個人情報保護法の改正案が、2015年度の通常国会にも提出されるという。
マイナンバーであれ医療IDであれ、これが健康保険と連動されれば、健康診断やカルテの情報など、自分の健康データが生涯を通じて管理でき、重複する検査や投薬なども減らせる。レセプトや DPCなどの NDBを用いた研究できるようになれば、その施策への応用も前進する。さらに、本稿では詳述しなかったが、医療には遺伝子情報というビッグデータもあり、これを活用できるようになれば、ゲノム創薬や個別化医療にも役立てる ことができる。どれもこれも逼迫(ひっぱく)する医療財政にとってプラスになるだろう。

施策の評価・検証にこそデータ活用を
最後は、コンビニの話に戻ろう。当然ながら、POS導入は米国で先行して普及していた。しかし、その目的はレジの打ち間違いや不正防止だったのに対し、POSデータをマーケティングに活用しようとしたのが、元々は米国で発祥した会社の子会社だった日本のセブンイレブン・ジャパンだ。
同社のPOSデータの使い方は、徹底した「仮説—検証型」であることでも知られる。つまり、単に売れているからそれを発注するといったレベルではなく、天候や立地など様々な条件から、自ら仮説を立てて発注し、売り方にも工夫を凝らした商品が、本当に売れたかどうかを確認するためにPOSデータを使うのである。医療においても、単に量的規制や健康保険の対象から外すといった目的だけに診療情報のビッグデータを使うのでなく、その後の施策の検証までをきっちり行うよう望みたい。』



 先にも書いたが、DPC(診断群包括分類)制度を導入、もしくは導入準備の病院は、2014年度で1860件になっている。全国90万床余りの一般病床のうちの53万床をカバーしている。今後も導入する病院は増えていくであろう。
 この日々蓄積される膨大で貴重な入院データを解析すれば、課題である医療の質の評価にも大いに威力を発揮する。疾病ごとの病院比較等、レベルの低い病院は淘汰されるような仕組みになっていくであろう。
 医療界では、長らく医療の質の評価についてはタブー(ブラックボックス)になっていた。しかし、DPCデータの蓄積・解析により、質の視える化が進むことになる。質の評価が充実してくると、更なる質の向上に向けて、様々な施策が打てるようになる。
 他の業界と違って、質の評価が遅れていた医療界が2025年に向けて、いよいよ質の評価に本格的に進みだしたということであろう。今後の進み具合と医療界の改革に注目していきたい。

(14:19)

2014年10月02日

 本日のダイヤモンドオンラインの記事である。人口高齢化に伴う医療費の将来推計に関する記事なのでご紹介する。我が国の65歳以上人口は2025年には人口全体の30%に達すると予測されている。この比率が医療費の伸び率と相関すると言われている。内容は下記の通りである。


『医療費について当面政治上の問題となっているのは、後期高齢者医療問題(特例で1割となっている70〜74歳の医療費自己負担を、2割に戻す問題)だ。これは、確かに重要な問題だ。しかし、言うまでもなく、これは医療費の問題の一部にすぎない。医療費の問題は、もっと広範だ。すでに巨額であるし、人口高齢化に伴って今後も増えることが予想される。

経済全体の問題として捉える必要
 社会保障に関する議論の多くは、社会保障という枠内に限定された議論だ。しかし、介護についての議論でも強調したように、社会保障の問題は、経済全体の問題とのかかわりで捉える必要がある。
 費用負担問題が財政全体の問題にかかわっていることは言うまでもない。医療や介護に必要な労働力を確保できるか否かは、労働市場全体を見ないと判断できない。
 介護の場合にも、在宅介護と女性の労働参加、相続税制との関係、金融制度との関係(リバースモーゲッジ)、移民政策との関連などがあった。医療は介護より規模が大きいので、経済全体とのかかわりは、より重要だ。
 介護と同じく医療も、産業としては特殊な性質を持っている。生活の低下を阻止するのに必要である。医療の場合には、適切な処置をしなければ生命にかかわる。しかし、これに多額の出費をしたところで、生活を積極的に快適にしたり、将来の生産性向上に直接に寄与するわけではない。したがって、その規模の拡大が望ましいか否かの判断は難しい。
 必要なサービスを手厚く行なうという意味では重要だ。事実、医療も介護もGDP増大に寄与する。しかし、費用負担が増大するという意味では、費用を抑制することが必要だ。経済全体の観点から見ても、供給面の制約が強くなってくると、抑制が必要。労働力制約の点もそうだ。
 また、医療も介護も、公的な関与の度合いが高い。費用のうちかなりの部分が公費で負担されている。したがって、医療や介護を純粋に民間の活動にゆだねるのはほぼ不可能だ。
 すでにその規模がGDPの1割を超えるものとなっており、今後も人口高齢化によって規模が拡大することを考えると、日本において「小さな政府」という選択はもはやありえないものになっていると考えるべきだろう。

国民医療費の対GDP比率は上昇
 厚生労働省は2013年11月14日、「平成23年度 国民医療費の概況」を発表した。それによると、11年度の国民医療費は38兆5850億円。GDPに対する比率は8.15%だ。
 国民医療費の推移をやや長期的に見ると、1988年度には18兆7554億円だったので、現在の総額は約2倍になっている。
 年間伸び率を見ると、2007年以降の増加率は2〜3%程度だ。1960年代から70年代にかけては年間増加率が20%を超えていたときも多かったので、それに比べれば増加率は低下したといえる。
 医療の伸びが鈍化したのは、経済成長率や物価上昇率が鈍化したことの影響もある。
 70年代後半から80年代前半比率がほぼ一定になったことを除けば、長期的に見て上昇傾向にある。とくに90年代以降の上昇が顕著である。
 この結果、50年代後半から70年代前半にかけてほぼ3%程度であったものが、80年代になって5%程度となった。そして、2011年度に8%を超えたのである。
なお、社会保障給付における医療費も、国立社会保障・人口問題研究所によって推計されている。この額は、国民医療費より若干少ない。

医療費の増加は人口高齢化による
 このような比率上昇をもたらした要因としてはいくつかのものが考えられるが、最大のものは、高齢者人口の増加だ。
 実際、医療費の対GDP比率と人口の年齢構成の関係を見ると、両者の間に高い相関が見られる。
 65歳以上人口が総人口に占める比率は、1955には5.3%だったが、85年に10.3%となり、2011には23.3となった。65歳以上人口比率に対する医療費の対GDP比率の割合は、1985年頃まではほぼ0.5前後の値になる。
 ただし、その後、この比率は低下した(11年では0.35)。こうなった要因としては、医療費抑制もあるだろうが、最大の要因は、2000年4月から介護保険制度が開始されたことに伴い、それまで国民医療費の対象となっていた費用の一部が介護保険の費用に移行したことの影響ではないかと考えられる。
 医療・介護を合わせた費用の対GDP比は、以下にも述べるように、11年度で9.8%程度である。この数字を用いると、上記の比率は0.42となり、1985年度に比べてさほど低下していない。
 以上を勘案すると、医療費の対GDP比率の推移は、65歳以上人口比率の推移でほとんど説明できると考えてよいだろう。
 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(平成24年1月推計)出生中位(死亡中位)推計によると、65歳以上人口の比率は11年に23.3%だが、25年に30.3%と、11年の1.3倍となり、さらに40年には、36.1%と、1.5倍になる。
 医療費の対GDP比率がこれに比例して上昇するとすれば、11年に8.15%である比率は、25年には10.6%となり、40年には12.6%となるだろう。

医療・介護比の対GDP比率は2025年で13%近くになる
 医療費等に関する公的機関による将来推計としては、厚生労働省による「医療・介護に係る長期推計」(2011年6月)がある(同資料36ページ)。
 それによると、2025年における医療・介護費の対GDP比率は、つぎのようになる。
(1)現状投影シナリオ 12.8〜12.9%
(2)改革シナリオ 13.5〜13.6%
 改革シナリオのほうが比率が高くなるのは、医療・介護の提供体制の機能強化を進めることで、在宅ケアなどの介護サービスを中心に費用が大きくなるためである。
 ところで、医療・介護比の対GDP比率が65歳以上人口の比率に比例して上昇するとすれば、11年に9.8%である比率は、25年には12.7%となり、40年には15.2%になるはずだ。25年の数字は、厚生労働省推計とほとんど同じである。このことから見ても、「医療・介護費の対GDP比は65歳以上人口比に比例する」と考えてもよいことが分かる。』



 日本の65歳以上人口は、2011年で23.3%に達し、2025年には、30.3%、2040年には、36.1%に達すると予測されている。これに伴い、2011年の医療費(38兆5850億円)が対GDP比率8.15%が、2025年には、10.6%になり、2040年には、12.6%になると予測されている。

 以前に、予測の中で人口予測ほど正確なものはない、と聞いたことがある。確かにその通りで、時系列で分析しても多方予測通りである。従って、このままいけば、上記のような数字になるということである。

 では、それに対してどのような手を打っていくかであるが、これについては厚生労働省でも様々な議論がなされている。詳細には触れないが、医療費の問題は、経済全体の問題にも関わる。アベノミクスにより、三本の柱の一つにもなっている。医療は行政との関わりも深いので、日本国内での視野になっているが、グローバルな視点でのビジョン構築も考えていかなければならない時期に来ているのではないかと思う。

(15:37)

2014年09月18日

 本日の日本経済新聞の記事である。iPS細胞を応用した初の臨床事例についての記事なのでご紹介する。内容は下記の通りである。


『iPS細胞を患者に移植する世界初の手術が神戸市にある先端医療センター病院で実施された。
 「加齢黄斑変性」という目の病気を患った女性に12日に行われ、術後の経過は良好だという。生きた細胞などを用いて難病やけがを治す再生医療の実用化と普及に向け一歩踏み出した。
 理化学研究所の研究チームが患者の皮膚細胞からiPS細胞をつくり網膜の細胞に育てた。これを先端医療センター病院の医師らが患者の右目に移植した。
 移植後の安全性を確認するのが主目的で、移植した細胞ががん細胞などに変化しないか経過をみていく。1年ほどでがん化の兆候がなければ成功とみなせると執刀医は話す。
 iPS細胞は京都大学の山中伸弥教授が世界に先駆けて作製した。どんな臓器の細胞にも育つ万能性を備えるうえ、患者自身の細胞からつくるため移植しても拒絶反応が起きないなど利点がある。
 しかし作製時に遺伝子を外から導入することから、がん化の危険を完全にぬぐいきれない。網膜に続き、パーキンソン病や脊髄損傷を対象にした臨床研究が順次計画されているが、安全性を慎重に見極めつつ進める必要がある。
 再生医療は外科手術や投薬などでは治る見込みのない難病の治療を可能にする。臨床応用へ患者の期待は大きい。
 政府は薬事法を改正して再生医療に使う細胞などを早期承認する制度を導入し普及を後押しする。再生医療に代表される先端的な医療を経済成長の柱にする。
 そのためには安全性に加えコストの削減が大きな課題だ。網膜の手術には数千万円かかっているそうだ。患者の負担を減らし国民医療費の増大を避けるには細胞培養の効率化などの工夫が不可欠だ。
 日本が世界をリードするには関連技術を世界標準とする必要がある。欧米は胚性幹細胞(ES細胞)など他の細胞を使う再生医療で先行する。iPS細胞の成果だけで安閑としてはいられない。』


 記事にもあるように、先日、神戸の先端医療センター病院で、iPS細胞を用いた加齢黄斑変性の再生手術が行われた。世界に先駆けた先端医療で経過も良好らしい。
 新しい医療技術には、副作用等リスクも伴うが、今後課題をクリアしながら、世界に普及させて欲しいと強く願う。政府もアベノミクスにより、薬事法の改正等、後押しの体制も整ってきた。

 今後の課題は、副作用等のリスクだけでなく、コストがある。今回の手術にも数千万円かかっている、と記事にもあるが、国民医療費の増大という重要課題と先端医療の開発促進という矛盾した課題に向き合っていかなければならない。それには、医療費の予算配分を根本的に改革していく必要があるし、効率性も格段に高めていかなければならない。

 まだまだ課題は多いし、第一歩を踏み出したような状況ではあるが、官民あげての先端医療の開発・普及を是非とも推進していってもらいたいと切に願う。

(14:00)

2014年09月04日


 昨日のm3の記事である。長崎県保険医協会が強化型在宅療養支援診療所・病院に対して行った強化型の施設基準についてのアンケート結果に関する基準なのでご紹介する。内容は下記の通りである。


『2014年度診療報酬改定で、強化型在宅療養支援診療所・病院(以下:強化型支援診等)の施設基準において、緊急往診および看取りの実績要件の引き上げが行われた。
 連携型では、これまでは連携体制ごとにクリアしていればよかった実績が個々の医療機関にも求められ、過去1年間に緊急往診4件、看取り2件が実績要件となった。ただし、9月末までの経過措置が設けられ、9月30日までの6カ月間に緊急往診2件、看取り1件の実績があれば、2015年3月31日まで基準を満たしているものとして取り扱われる。
 しかし、経過措置期限の9月末までに緊急往診及び看取りの件数を満たせなければ強化型の施設基準を取り下げなければならない。
 長崎県保険医協会では強化型支援診等の現状を把握する緊急アンケートを実施した。その中で多くの強化型支援診等が基準を満たせず、強化型から撤退を余儀なくされる実態が明らかになった。
調査は8月26日から29日までの期間で、長崎県内で強化型支援診等の届出を行っている93医療機関に対して行った。FAXで調査票を送付し、47医療機関(病院5、有床診療所15、無床診療所27)から回答が寄せられた(回答率:51%)。単独型は2医療機関で、45医療機関が連携型の強化型支援診等の届出だった。
 9月末までに緊急往診および看取りの実績を満たせない医療機関は、回答の40%に当たる19医療機関に及んだ。満たせない基準の内訳は、緊急往診の件数が1医療機関、看取りの件数が11医療機関、緊急往診と看取りの両方が7医療機関で、看取り要件を満たせないことが施設基準をクリアできない主因となっていることが明らかとなった。強化型支援診等の役割はターミナルの患者に限定されているわけではなく、在宅死は一定の頻度で発生するものではない。
9月末の経過措置をクリアしても、2015年3月末までに次のハードルが待っている。10月以降は過去1年間に緊急往診4件、看取り2件の実績が要件となる。9月末に施設基準を「すでに満たしている」「満たせる見込み」と回答した28医療機関のうち、17医療機関が継続して施設基準を満たすのは「かなり難しい」「少し難しい」と回答している。9月末までに施設基準を満たせない(見込みも含む)11医療機関と合わせると38医療機関となり、回答の81%に達する。
 この傾向は病院・有床診の強化型支援診等ではさらに顕著となる。当初は在宅死を望んでいても、患者の死期が近付くと家族が入院を希望するケースは多い。長年在宅医療を行っている有床診療所の院長はアンケートの自由意見の中で、「有床診の場合、終末期は入院させることを希望され、年間看取りは10件以上あっても入院での看取りになり、在宅で看取ったのは30年間に5件以内である」と述べている。ターミナルケアを行っていても、最後は入院させて看取れば、強化型支援診等の施設基準としての看取りとしてはカウントされない。
9月末までに緊急往診及び看取りの実績を満たせない病院・有床診は、回答の55%に当たる11医療機関だった。残りの9医療機関のうち、施設基準を継続して満たすことは「難しくない」と回答したのは僅か2医療機関のみだった。
連携型の強化型支援診等では、連携医療機関の中の1医療機関でも施設基準をクリアできなければ、全体が施設基準を満たさなくなる。連携型45医療機関のうち、連携先医療機関が施設基準を「すべて満たしている」は10医療機関で、「一部満たしていない」が32医療機関であった。強化型を維持するためには、施設基準を満たさない医療機関を切り離さないとならない。連携の要となる病院・有床診が施設基準を満たさず、連携グループから離脱すれば、今後の運営に大きな支障が生じる。
 施設基準を満たさなくなった場合の対応としては、「強化型以外の支援診の届出をだす」「強化型をクリアした時点で再届出をする」が多かったが、「往診・訪問診療で対応する」も4医療機関あった。
 施設基準を満たさず強化型を取り下げた医療機関が連携のグループから離脱するか、あるいは強化型以外の支援診として低い点数でグループに残るかは個々の医療機関で判断の分かれる所であろう。しかし、いずれの選択をしたとしても不合理であることに変わりはない。
 アンケートの自由意見では、看取りの件数を施設基準の実績要件とすることに対する異論、反対の声が多く寄せられた。「人を死なせないといけなくして、誘引を設定しているものに従うのは自分の倫理観にあいません」は多くの在宅医の実感であろう。20年近く在宅医療に関ってきた看護師の、「亡くなる方を、家族を支えていきたいのに看取りのカウントを意識しながらでは、「早く死んでくれ」と願っているようで悲しいです」は切実な現場の声である。
 今回の緊急アンケートは9月末に4割の医療機関が強化型から撤退し、10月以降を含めると8割の医療機関が強化型から撤退する可能性を示している。厳しすぎる実績要件の引き上げと言えよう。』



 本年4月の診療報酬改正で在宅医療について、大幅な減額措置がなされた。診療報酬だけでなく、強化型の施設基準についても要件が引き上げられ、過去1年間で緊急往診4件、看取り2件に引き上げられた。また、連携型も従来は連携グループで要件を満たしておればよかったが、1医療機関ごとの要件クリアが義務づけられた。

 一番の問題は、記事にもあるように、病院や有床診療所がターミナルケアを実施している場合、最期は家族が入院を望むケースが多々あることだ。病院、有床診療所だけでなく、私が過去に現場でお手伝いさせて頂いた在宅専門の診療所グループでも施設で看取りした患者の家族からクレームが来たことも多々あった。「どうして入院させなかったのか?」というクレームである。この記事を読んでその記憶が蘇った。

 厚生労働省は、一体何をしたいのか、どこを目指しているのか。現場の状況をよく観察しているのか、大いに疑問に思う。在宅医療の現場、特にターミナルケアの現場では、看取りについて、記事のような内容の事例が多数ある。それを踏まえての要件とは到底思えない。もっと医療の現場をみるべきだ。

(15:32)