2009年10月

2009年10月28日

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 今週26日、長妻厚労相から、診療報酬の点数等を決定する上で絶大な影響力を持つ中央社会保険医療協議会(中医協)から日本医師会(日医)の推薦委員が排除されるとういう驚きの発表があったのでご紹介する。内容は下記の通りである。

『診療報酬の点数を決める厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)から、日本医師会(日医)の推薦委員が排除される。
 長妻昭厚労相は、任期切れとなった3人全員を外し、地方医師会の代表2人と大学病院代表1人とに差し替える人事を発表した。
 中医協委員30人のうち、医師など診療側委員は7人で構成される。このうち3人は日医の副会長や常任理事といった役員の「指定席」だった。医療の専門知識を必要とする中医協では、日医の委員が議論をリードしてきた。
 鳩山政権は来年の診療報酬改定で、勤務医の待遇改善を図る方針を示している。開業医の発言力が強い日医の影響力を薄め、政府の方針に理解のある委員を増やそうとの判断は、改革の意思を示すものといえなくもない。
 だが、日医の全員を一度に外すやり方は、あまりに図式的で粗雑な印象を免れない。患者はまず近所の診療所で診てもらい、高度な医療が必要と診断されたら早期に病院に紹介される。そうした「病診連携」が地域医療の基本だ。実際の医療政策もそれを目指す大きな方向性を示すものでなければならない。
 産科や小児科、救急医療をはじめ過酷な労働条件に耐えかねて辞める勤務医は後を絶たない。地域の中核病院さえ閉鎖される診療科がある。国民が安心して治療を受けられる医療体制の再建は待ったなしだ。
 日医は自民党と深いつながりを持ち、旧政権では医療政策に影響力を行使してきた。前回の診療報酬改定では勤務医不足対策の財源を確保するため、勤務医よりも優遇された開業医の再診料引き下げが提案されたが、日医の反発で実現しなかった。開業医優先とされる姿勢に根本的な問題がある。
 だからといって、有無を言わせぬ人事で開業医と勤務医の離反を招くような「荒療治」を正当化できるのか。勤務医と開業医の対立をあおるような事態となれば、迷惑を被るのは患者であることを忘れてはならない。新委員に先の衆院選で民主党候補を応援した茨城県医師会理事らを選んだことで、総選挙の「論功行賞」との声が聞かれるようではなおさらだ。
 委員の顔ぶれをどう変えようと、患者である国民を向いた議論がなければ何も変わらないことを長妻氏は肝に銘ずべきだ。』


 確かに今回の人事は、有無を言わせぬ「荒療治」のような気がする。日本医師会は、自民党政権下では医療政策について強い発言力を行使してきた。というのも、開業医の発言力の強い日本医師会では、選挙対策の上でも重要な組織票であった(10万超の開業医)。対して、病院は一万足らずで、一医療機関一票説の考え方をすると当然、政策を立案するにあたっては開業医の発言力が増す。これも問題である。

 我々コンサルタントは、日常医療機関の現場でお手伝いしている中で、診療報酬の点数についても深く関わっている。この複雑怪奇な診療報酬点数をいろいろ精査して見ていると数多く問題があるように思う。例えば、時間がかかる診療行為や技術の難易度、病院と診療所の評価のバランス等、挙げたらきりがない程あるように思う。

 今後の中医協の運営の中で、選挙対策云々は別にして、こうした診療報酬の評価を査定する上では、現場の状況、医業経営の観点、医療技術・サービス等について熟知したメンバーで、患者の目線に沿った診療報酬改定をしてもらいたいと強く思う。


(10:02)

2009年10月14日


 先週の新聞記事である。医療現場の崩壊が進んでいることを象徴する興味深い内容なので、ご紹介する。内容は下記の通りである。

『産科や小児科の医師不足が叫ばれて久しいが、ここ数年、“花形”ともいえる外科医の減少が目立っている。長時間に及ぶ手術や当直など勤務状況が過酷であるにもかかわらず、報酬はそれに見合わないことなどを嫌い、若い医師の外科離れが進んでいるという。こうした状況を懸念した医療関係者は、NPO法人「日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会」を発足させた。外科医を増やすための情報発信や待遇の改善を国に訴えていくという。
 厚生労働省の調査によると、2006年までの10年で医師総数は約15%増え26万3540人。一方、外科系(外科、心血管外科、呼吸器外科、小児外科)は約8%減の2万6075人。医師不足が指摘されてきた産婦人科(産科、婦人科を含む)の約6%減よりも減少幅が大きい。一方、小児科は約10%増と微増している。産科と小児科の「医療崩壊」の影で外科医の減少がじわじわと進行していたのだ。
 外科医の中でも29歳以下の若手医師数をみると、04年の医師数は2184人で、1996年の調査に比べて1000人以上も減少している。若手の「外科離れ」が目立っている。
 日本外科学会が外科医1276人を対象に実施した2006年の調査(複数回答)によると、外科医が考える志望者の減少理由として、「労働時間が長い」(71.9%)がトップ。これに「時間外勤務が多い」(71.8%)、「医療事故のリスクが高い」(68.2%)が続く。
 調査を行った大阪大学の門田守人(もんでん・もりと)副学長は「医学の進歩により手術が高度化し、医師一人にかかる負担は重くなっている」と指摘する。
 日本外科学会が06年に実施した調査(1355人回答)の結果は、過酷な勤務実態をあぶり出した。「当直勤務明けに手術に参加しているか」との問いには、31%が「いつもある」と回答。「しばしばある」も28%にのぼり、約6割が当直明けに手術をこなしているのが現状だ。
 7月10日に開かれた「行動する会」の発足式では、この会の監事で東北大病院の里見進院長が「今は40代の医師が支えているが、外科医療は崩壊前夜だ」と現状を説明した。国は09年度から医学部の定員数を増やしている。しかし、門田副学長は「外科医が一人前になるには10年以上かかる。その間、外科医不足を解消するためにするべきことは多い」と指摘する。
 門田副学長は解決策として、(1)勤務環境の整備(2)労働内容にみあった報酬の実現(3)医療事故が起きた場合、原因を究明する医療版事故調査委員会の早期設置−などを挙げている。』


 医師の中でも花形の外科医が減少しているという事実には正直驚いた。私はブラックジャック世代であり、一時期は医師という職業に憧れた時もあった。その時、頭に描いたのは、ブラックジャックのような天才外科医である。私の親友は、志を貫き、第一線の外科医として活躍している。また、知り合いの医師の中でも外科医が一番多い。だが、仕事はどの医師も過酷そうである。私は外科医は、開業してもマルチに活躍できると思っている。在宅医療をする上でも、転倒、骨折等はよくあることでそういう時に外科医が主治医であれば、すぐに処置できる。また反面、命にかかわる手術等、医療事故のリスクも非常に高く、ストレスの大きい職種である。しかし、医療の現場で外科医が不足すれば深刻な事態になる。従って、現状何故そうなっているかを細かく分析して早急に対応していかなければならない。上記にもあるように、外科医を養成するには最低10年は必要である。また、多大な予算も要する。
 私は、現状の体制では現場の改善には限界ではないかと思っている。官学に民も入れての徹底した議論と計画が必要ではないかと思う。


(09:51)