2023年04月02日
Le Petit Prince
今回は、空に憧れて飛行士となり、最後は地中海のコルシカ島から飛び立って地中海に去っていった、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリのことを書こうと思う。
皆さまご存じの通り、世界屈指の名作「星の王子さま」の作者である。
3月末に「星の王子さまミュージアム」が閉館すると聞いて驚き、急いで訪れたのだ。
エントランスでは王子様が迎えてくれる。
広大な敷地内には作者の生家をイメージしたファサードがある展示室、教会、カフェなどがある。
フランス風の可愛い店が並ぶお洒落な通りをそぞろ歩いたり、美しい庭園を眺めながらのティータイムも楽しい。
しかし、このミュージアムの真骨頂はやはり内部の展示だ。
サン=テグジュペリの幼少期からの貴重な写真や資料が、丁寧な日本語解説付きでぎっしりと展示されている。家族や友人に宛てた手紙や手書きの作品のコピー、かつて住んでいた部屋の再現、LIFEカメラマンによる味わい深い数々の写真、映像展示なども見応え抜群だ。
私も、サン=テグジュペリがかくも波瀾万丈の人生を経てきたことはここに来るまで知る機会もなかった。
「星の王子さま」は世界屈指の名作だが、「夜間飛行」、「人間の大地」など他の作品も、人間にとって普遍的なテーマを考えさせられる深いものであり、それらが生まれた背景がしっかりわかるようになっているのだ。
非常に手の込んだ作りで、子供と大人両方が、いや、むしろ大人が楽しめる場所だ。このような場所は現在、フランスにもなく、まさに世界で唯一無二の場所であろう。
このように貴重かつ希少な文化施設を、老朽化等を理由に閉館するとはあまりにも勿体無い。そうであるとしても、老朽化部分を強化し、存続させることを第一に考えるべきではなかったのか?
私の心に怒りに近い疑問が広がる。
私の様に、閉館のニュースを聞き、初めて来て、その素晴らしさを知った人は少なくないはずだ。コロナ禍による来場者数減少もあるというが、すでにコロナは下火であり、箱根も観光シーズンだ。もっと経営や宣伝に工夫をすれば来場者は増えただろうし、リピーターも生まれただろう。
今年、フランスでは星の王子さま誕生80周年を記念し、様々なイベントも催されているというのに…。
どうにかして回避する方法はないのかとの思いも虚しく、3月末をもって閉館してしまった。しかしミュージアムの3Dデータが残っている。展示もしっかり見られるようになっているので、来られなかった方にもぜひ見ていただきたい。
【3D 展示ホール】(タップし、回転させながら進むことができます。左のほうの、エレベーターのある細く短い廊下を進み、階段を上りきると展示が始まります。)https://apac01.safelinks.protection.outlook.com/?url=https%3A%2F%2Fl-prince.4dkankan.jp%2Fsmg%2F%3Fm%3DKJ-eur-IHHn93a23e&data=05%7C01%7C%7C214e881263954a472dba08db32b138e3%7C84df9e7fe9f640afb435aaaaaaaaaaaa%7C1%7C0%7C638159508973498697%7CUnknown%7CTWFpbGZsb3d8eyJWIjoiMC4wLjAwMDAiLCJQIjoiV2luMzIiLCJBTiI6Ik1haWwiLCJXVCI6Mn0%3D%7C3000%7C%7C%7C&sdata=r5liSq2fnjCdRRGBRWZ3KH6jY0PLxn6wuCFiVLUAbME%3D&reserved=0
【3D 園内】
https://apac01.safelinks.protection.outlook.com/?url=https%3A%2F%2Fl-prince.4dkankan.jp%2Fsmg%2F%3Fm%3DSS-tIQYvzaLf8&data=05%7C01%7C%7C07e4c804986441b1d45408db32b17252%7C84df9e7fe9f640afb435aaaaaaaaaaaa%7C1%7C0%7C638159509942086204%7CUnknown%7CTWFpbGZsb3d8eyJWIjoiMC4wLjAwMDAiLCJQIjoiV2luMzIiLCJBTiI6Ik1haWwiLCJXVCI6Mn0%3D%7C3000%7C%7C%7C&sdata=jTroUOKhvZDcWiiF1wTT%2B%2BzqE%2FZKw%2BneIslVHc9YjIE%3D&reserved=0
【3D エントランス】
https://l-prince.4dkankan.jp/spg/?m=SS-7Ue3p6Ywd5
いつかまたフランスに行く時には、サン=テグジュペリの生家があるリヨン近郊のサン・モーリス=ド=レマンスを訪れてみたい。オーベルニュ-アルプ-ローヌ地域圏が2019年にこの館を購入したという。サン=テグジュペリにちなんだ文化施設にする計画があるようだ。もし実現すれば、星の王子さまと同じように、彼も生まれた場所に戻ることになる。
「大切なものは目に見えない」
だが、目に見える形で彼の足跡と成し遂げたことを残すことも大切にしてほしいと思う。
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2023年01月04日
Buon Anno Nuovo!
新しい年が明けましたね。
私は好きな音楽を聴いたり、ピアノを弾いたりしながら、家でのんびりと過ごしていました。
今日は、ちょっと外に出てみました。
日差しがさんさんと降り注ぐカフェテラスに座っていると、
ふと、アナカプリの大好きなホテルのテラスカフェを思い出しました。
目を閉じて、目の前に広がる美しいティレニア海をイメージしながら。
今年はどういう年になるでしょうか。
周りの状況を見ると、いまだにコロナは収束せず、
ウクライナ戦争は終わらず、国内も戦前を彷彿とさせるような動きがあります。
不穏な空気に流されず、平和に一歩でも近づけることを願って。
ブログも、もう少し頻度を上げて更新したいなと思っています。
イタリアの友達にも、そろそろ会いに行けたらいいな。
Speriamo che quest' anno sia un anno migliore!
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2022年10月30日
サントリーニ島 イアの街へ
サントリー二島のフィラについて書いてから、もう8か月余りが経ってしまいました。
その間、新型コロナも戦争も終わることなく現在に至っています。
どうにも気が重く、また今年の夏は猛暑でかなりバテていたこともあり、
なかなかブログを書く気持ちになれずにいました。
世界では徐々に新型コロナによる渡航制限も緩んできているようですが、戦争による重圧感もあり、飛行機は燃料サーチャージも相当な負担になっていて、まだ今は新たに旅行に出かけるのも躊躇してしまいます。
しかし、いつまでもそんなことを理由にしていたらブログを続けられなくなってしまいます。
そこで、今日は前回のサントリーニ島の続きを少し書き足してみようと思います。
フィラに次いで大きな街が、フィラからバスで20分ほど北にあるイアという街です。
小さな町ですが、美しい夕日が見られることで人気の街です。
フィラと同様に断崖に沿って白い町並みが広がっています。
絵葉書などで見るままのブルーのダブルドーム。
空の青、海の青、ドームの青と、青の三重奏を奏でています。
こちらはイアの街の中心となる広場に立つ教会です。
6つの鐘が付いた鐘楼と青いドームが美しい。
まるで童話の中に出てくるような風景です。
教会前の広場のモザイクには可愛いイルカが描かれていました。
2007とありますから、何かの記念なのでしょうか。
ギリシャ語が読めないのが残念です。
イアの街はフィラほどの賑わいはありませんが、高級リゾートホテルがたくさんあり、フィラよりも観光地化しているように思えました。
メインストリートには観光客のための宝石店やお土産屋さんが軒を連ねていますが、
少し外れると、真っ白な建物の間を縫うように細い道が続いています。
こちらは小学校のようです。門扉が可愛い。
海を見渡すカフェで一休み。
そして夕方になると、どこからともなく人が集まってきて、夕日が海に沈む時を待ちます。
イアの夕暮れ時は、世界有数の美しさとして有名なのです。
フィラに向かってカーブする海岸線に夕日が沈んでいく様子は幻想的です。
こんなイメージです。
夕日が沈んだ後の夜景もまた綺麗です。
サントリーニの後はミコノス島やロードス島のことも書きたかったのですが、
しばらくギリシャ旅行のことが続いたので、次回からはまた一旦イタリアに戻ろうと思っています。
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2022年02月28日
Bandiera della pace 平和の旗を掲げて
予定ではサントリーニの続きを書こうと思っていましたが、ロシアによるウクライナ侵攻が危機的状況になっているため、今回は急遽内容を変えて書くことにしました。
ウクライナとロシアに限らず、ある国に対して、圧倒的軍事力を持つ国が一方的に侵攻や破壊を行う。このような暴挙が許されてよいはずがありません。
東京・渋谷でもありましたが、世界各国で反戦デモが行われており、イタリアでも同様に戦争反対の声が沢山上がっています。
ミラノでは、Paceの旗を長くつなげたデモがあり、まるで平和を祈る波のようでした。
また、歌手のジャンニ・モランディも、2/25(金)のボローニャでの反戦集会で、平和を願い、市民とともに歌っていました。
”C'era un ragazzo” これは彼がかつてベトナム戦争の時、反戦歌として歌っていたものです。
”Un Mondo D’Amore”というアルバムに入っています。
集会の様子はこちらから↓
一方、ロシアのサンクトぺテルスブルグでも逮捕される危険を顧みず、市民による反戦デモが行われています。
今日にもウクライナとロシアの間で交渉が行われるということですが、厳しい交渉になることが予測されており、予断を許さない状況のようです。
現在、トルコ、スイス等近隣諸国も交渉役を名乗り出ているようです。
中でもトルコは、黒海入り口のボスポラス海峡を持っているという、ロシアにとって地政学上重要な位置にあるので影響力は大きいかもしれません。平和的解決に向け、日本も含め、各国が最大限できることをするべき時です。
下記のサイトではイタリア語で、Raiの24時間リアルタイムニュースを聞くことができます。ウクライナ情勢、それに対するイタリアの姿勢、世論、EUの動向についての報道を聞けます。
一刻も早い平和的解決を願っています。
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2022年01月06日
サントリー二ブルー
Buon Anno Nuovo!
新年おめでとうございます。
今年が皆様にとって良い一年でありますように。
昨年は仕事が多忙のため、ブログを書くことが全くできませんでした。
今年は時間を確保し、素敵な地中海の国や島についてもっとお伝えしたいと思っています。
さて、前回の続きになりますが、クレタ島から大型フェリーに乗り、サントリーニ島に向かいました。
サファイア色のエーゲ海・・・
いよいよサントリーニに到着です。
三日月のような形をしていますが、これは紀元前1628年ごろに起きたミノア噴火によって陸地が陥没し、現在の姿になったといわれています。
このことからサントリーニ島は、プラトンがその著作の中に書いた、沈んでしまった幻の大陸アトランティスではないかと考える説が生まれました。
三日月形の島の壁面は削り取られたような茶色の地層が露出し、その上に重なる白い街と紺碧の海との美しいコントラストが見られます。
ドラマチックで幻想的な光景に一目で魅了されてしまいました。確かに、沈没してしまった幻の島にふさわしい場所のように思われます。
フェリーから降りると、団体の観光客には送迎バスが出迎えにきています。でも私達は個人旅行だったので、ぽつんとその場にとり残されてしまいました。
港の周辺にはタクシーの姿もなく、どうしようかと途方にくれましたが、運転手らしき男性から声を掛けられフィラまで50ユーロで乗せていってくれるということでした。
これを逃すと10キロ近い道のりをスーツケースと共に歩くことになってしまうため、やむなく乗ってホテルに向かいました。
今回滞在したのは、島の中心にあるフィラの町の中のリゾートタイプのホテル、アリア・スイーツです。
お部屋の窓や壁は、淡いブルーで統一されています。
後で地元のペンキ屋さんの店先で教えていただき知ったのですが、この色はサントリーニ・ブルーというそうです。島ごとに異なる名前のブルーの色があり、少しずつ違うようなのです。ギリシャには好きな島がたくさんあるので興味深いです。
広々としたお部屋は真っ白な壁にブルーのプリントのソファーが置かれ、装飾が施されています。
テーブルには赤いバラの花束と共に、ウェルカムワインとフルーツがセットされ、私たちを迎えてくれました。
ホテルの中庭にはプライベートプールがあり、バカンス気分が盛り上がります!
私は、憧れていた島にようやく来られた嬉しさでいっぱいでした。
まだ海に入るには早い5月でしたから、プールサイドのデッキチェアで日光浴をしました。
燦燦と降り注ぐ日差しの下で青と白の景色を眺めていると、日常の仕事や喧噪から解き放たれてリラックスできます。
プールサイドでサントリーニの空気に浸った後は、フィラの街の散策に出かけました。
サントリーニの中心にある広場には白亜の大きな教会があります。
そこを中心に、たくさんの小さなお店や、見晴らしの良いカフェが狭い道幅の道路に沿って並んでいます。
町を散策しながら見つけたカフェ・ザフォラはフィラで一番といっていいほどお勧めしたいカフェです。
一番海に近い席に座れば、遮るもののない美しいエーゲ海を眺めることができるのです。
高台の上にあるサントリーニの街にはしばしば強い風が吹きますが、ここには透明な風よけがあるので、ゆっくりと過ごすことができます。滞在中頻繁に立ち寄ってはカフェ・フラッペで一休みをする憩いの場所になりました。
マネージャーの方もとても親切で、何度か行くうちにすっかり仲良くなりました。
濃くて冷たいカフェ・フラッペで一息入れてから、街の散策を続けます。
道沿いには、様々な店が立ち並んでいます。ギリシャ特有のレースのドレスを売るお店もあります。
ギリシャの女神が身にまとうような、優雅な白いドレスが並んでいます。
ウインドーショッピングをしながら歩いていると、小さなアクセサリーショップに目が留まりました。手作り感を残しながらもモダンなデザインの素敵なブレスレットやイヤリングがキラキラと輝いています。中に入ると、素敵なマダムが出迎えてくれます。私はこのお店でオリーヴの葉をモチーフにしたゴールドのアクセサリーを購入しました。
サントリーニ初訪問の記念と同時に、また訪れることができますようにとの願いを込めて。
フィラの中心の広場には夕暮れ時になると大勢の人が集まってきて、海を茜色に染めて沈んでゆく太陽と、キラキラと光る海をただ黙って見つめていました。
それは、アルチュール・ランボーが詩に詠んだ通りの光景でした。
永遠。それは太陽に溶け込む海だ。
太陽が水平線に消えていくと、今度はゆっくりと月が現れ、高台の街を照らし始めました。
ディナーのためのお店を探しながら歩いていきます。沢山のレストランがあり決めがたいのですが、弾き語りを聴きながらお料理をいただけるレストランを見つけて、入ってみることにしました。
少しメランコリックなメロディーをギターで響かせながら、若い男性が歌っていました。
ギリシャ語の歌詞の意味は残念ながら分かりませんが、おそらく昔から伝わる曲を歌ってくれているのではないでしょうか。歌に包まれながら郷土料理をいただき、ギリシャに来た気分が一層高まりました。
素敵な歌と美味しいお食事を満喫して、ホテルに戻りました。
今回はサントリーニ島の中心フィラの魅力あふれる景観や街をご紹介しましたが、
次回はイアの町や島の歴史も辿ってみたいと思います。
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