季節の切り抜き帳 〜 Clipping of Season 〜

移り変わる季節と日々の暮らしの記録

4
4488025544冬雷
遠田 潤子
東京創元社 2017-04-28

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
大阪で鷹匠として働く夏目代助。ある日彼の元に訃報が届く。
12年前に行方不明になった幼い義弟・翔一郎が、遺体で発見されたと。
孤児だった代助は、日本海沿いの魚ノ宮町の名家・千田家の跡継ぎとして引き取られた。
初めての家族や、千田家と共に町を守る鷹櫛神社の巫女・真琴という恋人ができ、幸せに暮らしていた。
しかし義弟の失踪が原因で、家族に拒絶され、真琴と引き裂かれ、町を出て行くことになったのだ。
葬儀に出ようと故郷に戻った代助は、町の人々の冷たい仕打ちに耐えながら、事件の真相を探るが…。

久しぶりに感想を綴った理由は辻村さんだけではなく、遠田さんのこの作品のせいでもありました。
ストーカーだった女性の遺言から始まる冒頭、今回は少し感じが違う?と思ったのですが、重厚な遠田さんらしい作品でした。
地方の因習、血縁・・・、遠田さんにしか描けない重苦しさ。
冒頭で自殺したことが分かっている愛美の代助への粘着が怖い。
愛美の書いていた日記の存在、代助には全く覚えがない二人の愛の日々・・・
ただの妄想日記かと思っていたら・・・。
愛美の存在が代助と真琴の愛を壊したのかと思っていたのですが、いやいやそんな簡単なことだけではなかった。
千田家の血縁をめぐる様々な人たちの感情がここまでもつれ込んでいたとは・・・
千田家の当主に投げつけられた代助への言葉、代助の心が千切れていく、それが何度も繰り返され・・・
地方ならではの因習、都会から見たらちっぽけすぎることなのに、それにとらわれ、多くの人が狂わされていく。
姫と怪魚の伝説を絡めて描かれる幻想的なシーンも良かったです。
ゆっくりじっくりと今のペースのまま作品を紡いでほしいと感じる作家さんです。

3
410332743X新任巡査
古野 まほろ
新潮社 2016-02-22

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
平凡だけど心優しい、キラキラネームの上原ライト。
首席の女警でいつも能面、歩くパソコンこと内田アキラ。
警察学校で大きな差のついた新任巡査ふたりは、ターミナル駅の東と西で、人生初の交番勤務を始める―朝から次の朝まで、24時間の泊まり勤務。
ライトは生き残ることができるのか。アキラはやっぱり優秀なのか。
ふたりを襲う、あまりにも過酷な試練と陰謀とは?

読友さんのおススメ本だったのですが、分厚さに圧倒され中々読めずにいたのですが、続編「刑事」が出ることを知り、慌てて読むことに。
元警察キャリアだったという著者、警察官あるあるがあちこちに散りばめられていて最初はそれが教務深かった。
しかし、分厚い・・・、警察官の職務自体に興味がある方には良いのかもしれませんが、もう少し絞り込んでも良かったのでは?
何度かリタイアしかけたのですが、何とか頑張って後半へ。
一見平凡なライトと歩くPCことアキラ、彼らがなぜ、同じ管轄に配備されたのか。
女性であるアキラのクールな行動の理由は?
徐々に明らかになり、最後に一気に全容が見えているのは良かったです。
彼はこのまま復帰しないのでは・・・と思われたのですが、「刑事」になって戻ってくる彼の成長を楽しみにしたいです。
敢えてそぎ落とす作業がされているといいなぁ。

5
4591153320かがみの孤城
辻村 深月
ポプラ社 2017-05-11

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
どこにも行けず部屋に閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然、鏡が光り始めた。
輝く鏡をくぐり抜けた先の世界には、似た境遇の7人が集められていた。
9時から17時まで。時間厳守のその城で、胸に秘めた願いを叶えるため、7人は隠された鍵を探す―

仕事が忙しくて久々のBlog up、本は読んでいたけれど感想はもう書ききれないかなぁと思っていたのですが、辻村さんの新作が私の心を揺すぶってくれました。
青春の生き辛さ、心の奥の闇、「冷たい校舎」や「スロウハイツ」のあの感じが再来、いや大きくそして優しく膨らんで帰ってきたのが何よりも嬉しい。
結婚、出産とその時々のご自身や周囲の体験を膨らませて作品にされてきた辻村さん、ママになってこれからはその傾向が強くなるのかなぁ、と思っていたのですが、(その作品たちも大好きですが)またあの頃のような心のどこかがシクシクと痛むような作品に会いたかった。
そして出会えた。
本当にうれしいです。
もしかしたら育児中の絵本がきっかけだったりするのかな、どんどんと進化する素晴らしい作家さん。
「狼」のフラッグの立て方、中学の同窓生という謎、どれもお見事。
そして最後にすべての秘密がこう繋がるなんて・・・
本当に素敵な作品をありがとうございました。

3
4620108219東京會舘とわたし(上)旧館
辻村深月
毎日新聞出版 2016-07-30

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
海外ヴァイオリニストのコンサート、灯火管制下の結婚式、未知のカクテルを編み出すバーテンダー…
“會舘の人々”が織り成すドラマが、読者の心に灯をともす。
大正十一年、丸の内に誕生した国際社交場・東京會舘。
“建物の記憶”が今、甦る。激動の時代を生きた人々を描く。直木賞作家の傑作長編小説!

辻村さんが描く「東京會舘」の物語。
上巻は、旧館の物語。
戦時下、戦後、特別な場所としてあり続けた場所。
辻村さんが、この建物に出逢い、伝えたいと感じ紡がれたことが伝わってきます。
過去にあったことを丁寧に事実に近い形で伝えたいという気持ちはとても良く伝わってくるし、歴史の重みもとても良く表現されているのですが、広報誌的な感じが少し漂ってしまったのが残念でした。

3
4048655639お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂 (4)
似鳥航一
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2015-11-25

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
三社祭の夜。葵の笑顔に秘められた過去を、栗田は垣間見る。
それは多くの人生を狂わせた、重苦しいものだった。栗田は思い悩む。
葵との出会いはひょんなことから。それは和菓子がとりもつ乙の縁。
だが、いまやかけがえのないものになっている。願わくはともに歩んでいきたい。
ならば、過去から彼女を救わなければいけない。
決意を固める栗田だが、周りは放っておいてくれないようで。
和菓子にまつわる奇妙な依頼は変わらず舞い込んでくる。
はてさて今日の騒動は?

敵キャラ、登場しました。
和菓子を扱っているからには、いつか登場するだろうなと思っていた茶道の次期家元。
もっとねっちこい嫌なキャラかと思ったんだけど、意外にあっさり。
葵さんを挟んで恋のライバルって設定に進むのではと思っていたんだけど。
水羊羹の話も良かったけれど、「きんつば」の話も良かった。
今はもうない菓子の味の再現、難しいだろうなぁ。
記憶は時に美化され、何を作っても違うとなってしまうだろうから。
あの食品の別名が「きんつば」というのは知らなかったので、興味深く読めました。
どうやら次の巻で結論が出る様ですね。
楽しみでもあり、少し寂しくもあるかな。

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