季節の切り抜き帳 〜 Clipping of Season 〜

移り変わる季節と日々の暮らしの記録

カテゴリ: 道尾 秀介

3
4163904808スタフ staph
道尾 秀介
文藝春秋 2016-07-13

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
街をワゴンで駆けながら、料理を売って生計をたてる女性、夏都。
彼女はある誘拐事件をきっかけに、中学生アイドルのカグヤに力を貸すことに。
カグヤの姉である有名女優のスキャンダルを封じるため、ある女性の携帯電話からメールを消去するという、簡単なミッションのはずだったのだがー。
あなたはこの罪を救えますか?
想像をはるかに超えたラストで話題騒然となった「週刊文春」連載作。

道尾さん初めての女性ヒロイン。
ランチデリバリをする夏都、仕事そのものについての描写、苦労したり、販売努力している点など、とても楽しく読めた。
甥との関係性も良く、甥の智弥の飄々としたキャラクターにも好感が持てた。
夏都が突然拉致されて・・・と、ここから一気に物語が展開していきます。
美少女と怪しいメンバー、ちょっとコミカル過ぎる?伊坂さん風な感じもあり、少し違和感がありました。
美少女・カグヤは魅力的なのですが、あまりに口が軽すぎたり、クラブでの行動も軽はずみすぎる気がする。
カグヤ達の目的とその手法もどうもスッキリしない。
好きなキャラだと感じていた甥の智弥だが、「家族」がテーマであれば、ひそめた想いがあれば何でも許されるの?
どうも私はこのラストがスッキリとは受け止められず、モヤモヤしてしまいました。
少年を描くのが巧い道夫さんだからこそ、それが目的でいいの?
あまりにも自分勝手で周りをまきこみすぎなんじゃないの?と感じてしまいました。
後、夏都と元ダンナの関係性も、どうもモヤモヤ・・・。
お金貰ってさっぱり縁を切っちゃった方がいいんじゃないの?
この点が女性目線ではないなぁ、と感じちゃったのは私だけなのかなぁ。

2
4255007837緑色のうさぎの話
道尾 秀介 半崎 信朗
朝日出版社 2014-06-24

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【内容紹介】
直木賞作家、道尾秀介がデビュー前の17歳の冬に描いた絵本の原作を、Mr.Childrenのプロモーションビデオ『花の匂い』『常套句』を制作し話題を呼んだ半崎信朗が描き下ろす、これまでにない質感の感動絵本!
いじめにあった緑色のうさぎが、自らの悲惨な境遇や大切な人の死を乗り越えて生きていく姿を美しく描く、こころ温まる物語。

道尾さんのあの物語が絵本に。
道尾さん、ご自身かなり思い入れのある作品なのだと思います。
プロムナードで読んだ時に、若き日の道尾少年に出会えたことは嬉しかった。
若さを感じる作品でした。
ただ、大人になってからだとどうしても、作為を感じてしまったのは私だけなのでしょうか。
ミスチルの「花の匂い」のアニメーションも素晴らしい作品だと思います。
ただ、これを同じ半崎さんの絵で描かれると世界観が似ていて、作品の意図も同じであるため、二番煎じという感覚になってしまったのが残念です。

4
4103003367貘の檻
道尾 秀介
新潮社 2014-04-22

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【内容情報】(「BOOK」データベースより) 
あの女が、私の眼前で死んだ。
かつて父親が犯した殺人に関わり、行方不明だった女が、今になってなぜ……
真相を求めて信州の寒村を訪ねた私を次々に襲う異様な出来事。
はたして、誰が誰を殺したのか? 
薬物、写真、昆虫、地下水路など多彩な道具立てを駆使したトリックで驚愕の世界に誘う、待望の書下ろし超本格ミステリー!

道尾さんのどんでん返し、やられた〜!というあの感覚が堪らなかった。
初期のそんな作風が作品が好きだったのですが、直木賞前後くらいから、「そういう作品を期待されても・・・」というニュアンスのインタビューを見て、ガッカリしていました。
確かに道尾さんの文章は美しい、特に直木賞後は文学作品としての完成度も高くなったと思います。
でも、昔からのファンは、高みに上った道尾さんのことを少しさみしく感じていたのではないでしょうか。
7年ぶりの書き下ろし、今回、道尾さん、少し考えを変えられたのか、ファンを驚かせる仕掛けを仕組んでくださいました。
『貘の檻』というタイトルも道尾さんじゃなきゃ付けられないよ。
夢幻、何処までが夢なのか、悪夢に苦しめられる男の物語にピッタリ。
水、蜻蛉、少年・・・と、このところ道尾さんがお気に入りのモチーフが本作でも見事に使われています。
これ、本当に美しく巧いよね。
特に少年の使い方は秀逸だと思う。
今の僕はこれです、って、道尾さんが言っている気がする作品でした。
鬱々とした雰囲気は重かったんだけどね。
好き嫌いはあると思いますが、道尾秀介、ここにあり!という作品だと思います。

4
4087715299鏡の花
道尾 秀介
集英社 2013-09-05

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【商品の詳細説明】
少年が抱える切ない空想、曼珠沙華が語る夫の過去。
老夫婦に届いた絵葉書の謎、少女が見る奇妙なサソリの夢。
姉弟の哀しみを知る月の兎、製鏡所の娘が願う亡き人との再会。
ほんの小さな行為で、世界は変わってしまった。それでもーー。
六つの世界が呼応し合い、眩しく美しい光を放つ。
まだ誰も見たことのない群像劇。

アンソロジー「あの日、君と」に掲載された掌編を素に、すばるで3年掛けて掲載され単行本化されたようです。
オリジナルとなった作品は、とても印象的で道尾さんらしかった。
最近の道尾さんの作品に登場する少年たちは素晴らしいです。
少年らしく、大人びてもおらず、変にいい子ぶってもいない、作品の中に登場する彼らの姿はとても自然であり、それでいてとても印象的。
2作目に読み進めた時に、???と感じたのですが、これこそが今回の作品のしかけ。
あの時、ああしていれば・・・、誰もが生きていく中で大小はあっても考えること。
それが家族や大切な人の死や別れに繋がってることであれば、強く強く何度も何度も繰り返し考えることです。
それを後悔という形で描くのではなく、別の世界・・・という形で描くのも道尾さんらしいです。
読んでいてずっと感じるのは、道尾さんの巧さ。
本当に巧い。
心理描写も構成も・・・
でも、少しだけ寂しい想いも・・・
読んでいる間、ずっとドキドキしてしまう昔の道尾さんの作品を何処かで期待してしまう。
今の作品はとてもレベルが高く、文学として素晴らしい。
でも、何処かで昔の作品を期待してしまうのは、ダメなのかなぁ・・・

3
4120044580笑うハーレキン
道尾 秀介
中央公論新社 2013-01-09

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
経営していた会社も家族も失い、川辺の空き地に住みついた家具職人・東口。
仲間と肩を寄せ合い、日銭を嫁ぐ生活。
そこへ飛び込んでくる、謎の女・奈々恵。
川底の哀しい人影。そして、奇妙な修理依頼と、迫りくる危険ー!
たくらみとエールに満ちた、エンターテインメント長篇。

ホームレス仲間や、家具職人の設定もとても好き。
ただ、前半がなんともダラダラし過ぎているのが・・・
道尾さんには新聞連載という書き方は向かないのでは・・・
掲載紙をとっていたので、最初少し読んでいた時期もあるのですが、どうにもテンポが悪く、まとめて読もうと断念した経緯もあり、加筆修正されるかと思っていたのですが、どうやらそのままだったようですね。
ホームレス仲間のやり取りと、東口だけに聞こえる相手との会話部分がちぐはく。
これも道尾さんらしい、その後の展開に・・・と読んだのですが、やはりしっくり来ませんでした。
家具職人の道具に対する想いや、技の部分も良いのですが、道尾さんが事前取材でワクワクされたであろうものをもっと伝えて欲しかった気もしました。
東口のやや何でも屋的な感じは「カササギ」にも通じ、私は非常に好きなので、前半のテンポの悪さが実に残念。
事件に巻き込まれてからの一気に展開するさまは、反対にもっと描いて欲しかった。
やっぱり新聞連載という時間の尺の規制がある書き方、向かなかったんじゃないかな、残念。

3
4103003359ノエル: a story of stories
道尾 秀介
新潮社 2012-09-21

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
物語をつくってごらん。きっと、望む世界が開けるからー
暴力を躱すために、絵本作りを始めた中学生の男女。
妹の誕生で不安に陥り、絵本に救いをもとめる少女。
最愛の妻を喪い、生き甲斐を見失った老境の元教師。
切ない人生を繋ぐ奇跡のチェーン・ストーリー。
【目次】
光の箱
暗がりの子供
物語の夕暮れ
四つのエピローグ

「光の箱」はStory Sellerで既読だったので、あそこで楽しめなかったのは残念。
チェーンストーリーの始まりのこの作品は、SSの頃から好きな作品でした。
しかし・・・絵本繋がりで描かれた本書、私にはやや物足りない。
道尾さんご自身は童話を書くことがお好きなのか時々拝見するのですが、あまりお上手ではない・・・と私は思うのですが…
素人っぽさを敢えて出しているのかもしれませんが。
「暗がりの子供」のややダークな感じも好きなのですが、白道尾作品なので綺麗にまとまりすぎてしまう感じがやっぱり物足りない。
ブランチで紹介されたりして道尾作品を読み始めた方には好評なようなので、こうやって読者層を広げるのが目的なのかな〜
それとも、やっぱりかつてのような作品はもう書かれないのかしら。
「向日葵」みたいなうんとダークな作品や、スカッと騙してくれるような作品に拘り過ぎているのは旧読者だけなのかなぁ・・・

4
4334928277
道尾秀介
光文社 2012-06-08

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【内容紹介】
あのころ、わたしたちは包まれていた。
まぶしくて、涙が出る――。
都会から少し離れた山間の町。
小学四年生の利一は、仲間たちとともに、わくわくするような謎や、逃げ出したくなる恐怖、わすれがたい奇跡を体験する。
さらなる進境を示す、道尾秀介、充実の最新作!

「Anniversary 50」に掲載された「夏の光」をシリーズ化して、連作短編集になっていたんですね。
このところ、少年の物語が多い道尾さん、「夏の光」はキャラがはっきりしていたので、あの一作だけでは勿体無かったので良い感じの一冊にまとまっていました。
道尾版・Stand by Me ですね。
人魚伝説にまつわる洞窟探検や、偽アンモナイト化石作り、友人の姉に対する淡い恋心・・・と、小4の少年らしいエピソードでした。
大人を巻き込んでの誘拐事件・・・これだけは、他の章と違っていて・・・
う〜〜ん、やっぱり大事件が必要だったのかな?
少年らしい、少年だったからこそ事件と感じられたようなエピソードだけでも良かったんじゃないかな。
キュウリー夫人はカッコ良かったけどねw
各章の最後にある太字フォントの部分、最初、すごく違和感があって、何故これを入れたんだろう・・・と思っていました。
多分、初出掲載時には無かったものだと思います。
これを入れる必要があったのかな・・・と思っていたのですが、終章でこの意味が・・・
ああ、道尾さんらしい仕掛けがあったのですね。
でも、そろそろミステリーも読みたくなりましたよw

4
4062172577水の柩
道尾 秀介
講談社 2011-10-27

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
老舗旅館の長男、中学校二年生の逸夫は、自分が“普通”で退屈なことを嘆いていた。
同級生の敦子は両親が離婚、級友からいじめを受け、誰より“普通”を欲していた。
文化祭をきっかけに、二人は言葉を交わすようになる。
「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない?」
敦子の頼みが、逸夫の世界を急に色付け始める。
だが、少女には秘めた決意があった。
逸夫の家族が抱える、湖に沈んだ秘密とは。
大切な人たちの中で、少年には何ができるのか。

『月と蟹』と同じ文芸路線の作品。
今回は全く無理を感じず、道尾さん、すっかり一つの路線を確立されたんだ・・・と感慨深いものがありました。
文章がとても美しく、優れた描写と構成に魅了されました。
ついつい今までの「騙されるものか・・・」という癖が抜けず、小さなエピソードに伏線が隠されているのでは・・・という読み方をするのは、もう余計な作業ですね。
蟹では少年同士でした今回は、少年の目から見た少女。
クラスでいじめにあっている少女に助けを求められ・・・という過程、少年の戸惑いと少女の思いつめた感じがとても良かった。
しかし、私は祖母の話の方が良かった。
かつては「お嬢様」だった祖母、旅館の女将を経て今は子守をしながらの隠居生活。
しかし、しつけや生活態度についてはとても厳しく・・・
そんな祖母が・・・という祖母の過去が見え隠れし、徐々に祖母が壊れていくシーンに引きつけられました。
ミノムシを装う遊び、今の子は知らないんだろうなぁ・・・
懐かしいこんなエピソードの使い方も、本当に巧い。
ダム湖に3人が訪れるラストも本当に余韻が残る良いシーンでした。
『天泣』という言葉も、その言葉の示す様子もとても印象的で美しかった。
もしかしたら、この言葉がこの作品が生まれるきっかけになったのかもしれませんね。
一つの言葉から作品を紡ぎだすというこの才能、本当に凄い作家さんです。
何だか道尾さんが高い所に登ってしまったようで、ほんの少し寂しい気もしましたが、素晴らしい作品でした。

4
4334927432カササギたちの四季
道尾秀介
光文社 2011-02-19

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
開店して2年。店員は2人。
「リサイクルショップ・カササギ」は、赤字経営を2年継続中の、ちいさな店だ。
店長の華沙々木は、謎めいた事件があると、商売そっちのけで首を突っ込みたがるし、副店長の日暮は、売り物にならないようなガラクタを高く買い取らされてばかり。
でも、しょっちゅう入り浸っている中学生の菜美は、居心地がいいのか、なかなか帰ろうとしない─。
【目次】
春 鵲の橋/夏 蜩の川/秋 南の絆/冬 橘の寺

直木賞受賞後、第一作はどう来るか…、楽しみにしていました。
う〜ん、こう来たか…。
今までにないほど、POPで明るく、ミステリータッチながらも誰も死なず、極悪人は登場しない。
どの話も親子がテーマで…優しく、最後にはほろりとさせられて…、道尾さん、こんな優しい作品も書けちゃうんだ〜。
凄いな〜。
リサイクルショップ・カササギの日暮と華沙々木のコンビは、しをんさんの多田便利軒の二人を思い出させる。
そういうと、道尾さんは誰かと比べられるのを嫌がるだろうな〜。
今までの作品と違って…なんて書くと、また「ぼくは自分の読みたい作品を書いているだけですから…」って言い出しそうだし…w
探偵マニアの華沙々木を影となってフォローしていくという、このコンビが最高。
まだまだ彼らの活躍を見ていたい。
日暮の過去の謎がちらちら見えては真相を見せてはくれなかったので、これは続編あり…と読んでいるのですが、どうでしょう…
是非、カササギコンビのその後を描いてくださいませ。

直木賞受賞作だからと、初めて「蟹」を読んでう〜〜んと思った方、そして「向日葵」を読んで合わない…と感じていた方、是非、もう一度、この作品を是非、手にとってください。
道尾さんは実に多彩な作家さんなんですから!

4
4163295607月と蟹
道尾 秀介
文藝春秋 2010-09

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」
「叶えてくれると思うで。何でも」
やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式。
やがてねじれた祈りは大人たちに、そして少年たち自身に、不穏なハサミを振り上げる。
やさしくも哀しい祈りが胸を衝く、俊英の最新長篇小説。

待ちに待った道尾さんの話題の新作。
流れるように美しい文章。
情景が浮かびがあるような見事な表現。
自分の力だけではどうにもならない現実を抱えている子供達の心情もヒシヒシと伝わってきます。
本当に巧い作家さんだと思います。
初期の『向日葵』に出てくる子供の残虐性、子供であるがゆえに背負わされる理不尽な世界は『龍神』、美しい表現は『光媒』…と道尾作品の良さの集大成とも言える作品だと思います。
しかし確実に賞狙いであることも伝わってきてしまうのが残念です。
計算しつくされたミステリーというのは面白いのですが、計算のベクトルが受賞になってしまった感じが哀しいです。
ミステリー書き、ドンデン返しの…と言われることを、どうしてそんなにも道尾さんは嫌がるのでしょうか。
素晴らしい表現力と構成の妙があってこその道尾さんのミステリーがやっぱり私は好きです。
この作品で受賞され、またミステリーに戻ってきてくれることを切に願います。
選考委員の方々、また難癖をつけて道尾さんをこれ以上、悩ませないでくださいませ。

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