季節の切り抜き帳 〜 Clipping of Season 〜

移り変わる季節と日々の暮らしの記録

カテゴリ: 近藤 史恵

4
4103052554スティグマータ
近藤 史恵
新潮社 2016-06-22

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
ドーピングの発覚で失墜した世界的英雄が、突然ツール・ド・フランスに復帰した。
彼の真意が見えないまま、レースは不穏な展開へ。
選手をつけ狙う影、強豪同士の密約、そして甦る過去の忌まわしい記憶…。
新たな興奮と感動が待ち受ける3000kmの人間ドラマ、開幕!

チカ、おかえりなさい。
二コラのサポートとして復帰したチカ、ツールを走る姿をまたみることが出来たのが本当にうれしい。
ただ「走ること」が好きで、「勝つこと」には貪欲ではなかったチカだが、少しだけ欲が出てきた様子。
長く走り続けるためには、結果を出さなければならない、少し大人になったチカを見た気がする。
結果を出すためのスタンドプレーや、一番になることを意識する他のメンバーの中、その欲にゆすぶられながらも最後まで二コラをサポートし、職人に徹するチカ。
もう一人の日本人・伊庭との対比もとても良く、ミッコとのプライベートと試合中のちょっとした会話や態度もそれぞれのキャラをとても良く表していて、ファンにはたまらないシーンでした。
ドーピング事件から復活しようとするかつての英雄、彼を憎むかつてのチームメイト・・・と、今回は様々な局面もあり、本当に楽しめました。
大好きなこのシリーズ、唯一腹立たしく感じる悪女たち、今回のヒルダにはそれを感じなかった。
ヒルダ、これから彼女との関係も進んでいくのかしら?
悪女に変身しないことを祈るばかりです。

3
4408536822モップの精は旅に出る
近藤 史恵
実業之日本社 2016-04-15

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【内容紹介】
おそうじ上手は謎解き上手――
読めば元気になれる大人気ミステリ〈清掃人探偵・キリコ〉シリーズ第5弾!
キリコは、オフィスや学校、病院に派遣される清掃作業員。
ミニのフレアにハイヒールで軽快に掃除をしながら、事件を解決する名探偵だ。
「大丈夫、世の中はお掃除と一緒だよ。汚れたらきれいにすればいい。
また、汚れちゃうかもしれないけど、また、きれいにすればいい」――
そう言ってこれまで鮮やかに謎を解いてきたキリコだが、今回の事件はかなり厄介なようで……
ハートウォーミングな連作短編ミステリ。
■第1話 「深夜の歌姫」
英会話学校の事務員・翔子に受講生から突然婚姻届が届いた直後、その男性の身に思いがけない出来事が――
■第2話 「先生のお気に入り」
女性に人気のハンサムな英会話講師・ハンソンが、ある生徒を気に入ったことから、学校内に不穏な影が――
■第3話 「重なり合う輪」
フリーランスの5人が、共同で部屋を借りているコワーキングスペース。
メンバーのひとりが倒れた理由は――
■第4話 「ラストケース」
いつも活動的なキリコが自室に閉じこもった。
心配する夫・大介だったが、閉じこもったのは虫の知らせだった――

久しぶりのキリコちゃん。
1話、2話は、英会話スクールが舞台。
どちらも男女間のトラブルが原因。
英会話スクールの女性職員とキリコちゃんが仲良くなって昼間にランチを食べたり・・・
今までは、どちらかというとオフィスで男性が主人公の事の方が多かったから、こんなシーンは初めてじゃないかな?
でも、こんなキリコちゃんをみるのもいい感じ。
第3話はコワーキングスペースを共有する大学時代の友人たちの話。
スポーツドリンクの入れ替えがされているのだけれど、メーカーが違えば味も違うと思うのだけど・・・
開封時には、元の味で飲んだだろうし、自宅でもこの人は飲んでると思うんだよね。
まぁ、そんなツッコミはパスしておいて…
動機の部分は、男にとっては軽いイタズラが・・・という視点は興味深かった。
男性諸氏、こんなイタズラは、くれぐれもNGですよ。
第4話、キリコちゃんの姿が痛々しかったです。
タイトルからもしかしたら・・・と思っていたのですが、これでお別れなのは、本当に悲しい。
あとがきに近藤さんが描かれていますが、確かに最初に書かれたときからリアルタイムが過ぎていたら、キリコちゃんはかなりのおばさんかもしれない。
でも、時間なんて気にされずにキリコちゃんを描いて欲しかった。
もう会うことは無いのかな。
最初は随分と突飛な設定で自由気ままなあなたがちょっと苦手でした。
でもいつの間にか、あなたを見ることでたくさんの力と勇気をもらっていました。
いつかどこかで、サブキャラとしてでも会える日を願っています。
今までありがとう、キリコちゃん。

3
4396634811スーツケースの半分は
近藤史恵
祥伝社 2015-10-08

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【内容情報】
人生は、一人旅。明日はどこへ行こう?
相棒は青いスーツケースただ一つ。
今日も残りの半分に、温かいドラマが詰まってゆく――
心がふわっと軽くなる、幸せつなぐ物語。
三十歳を目前にした真美は、フリーマーケットで見つけた青いスーツケースに一目惚れ、衝動買いをしてしまう。
そのとき、彼女の中で何かが変わった。
心配性な夫の反対を押し切り、憧れのNYへ初めての一人旅を決意する。
出発を直前にして、過去のある記憶が蘇り、不安に駆られる真美。
しかし、鞄のポケットから見つけた「あなたの旅に、幸多かれ」というメッセージに背中を押され、真美はNYへ旅立った。
やがてその鞄は友人たちへとバトンされ、世界中を旅するうちに、“幸運のスーツケース"と呼ばれるようになってゆく――。
大丈夫。一歩踏み出せば、どこへだって行ける。
NY、香港、アブダビ、パリ、シュトゥットガルト……新しい自分に出会う、切なく優しい旅ものがたり。
【目次】
ウサギ、旅に出る/三泊四日のシンデレラ/星は笑う/背伸びする街で/愛よりも少し寂しい/キッチンの椅子はふたつ/月とざくろ/だれかが恋する場所/青いスーツケース

青いスーツケースが繋ぐ出会いと成長の物語。
フリーマーケットで一目惚れしたスーツケースのおかげで、自分から閉ざしていた殻を破り、憧れのNYに旅立てた真美さん、良かったね。
「いつか」「いつでも」という夫と、「今じゃなきゃ」と思う妻、夫婦の間の気持ちの微妙な違い、あるあるでした。
でも、ダンナがふざけんじゃね〜よ、な方でなくて良かった。
その後、幸運のスーツケースとして友人に繋がれていく。
4人の物語は読みやすく楽しかったけれど、元々の持ち主の母娘と、伯母の物語の方が胸にジーンと来たかな。
娘が旅立つことに不安を感じる母、やっとドイツに来たものの何となく過ごしてしまっていることに後悔し始める娘、そして娘の元を訪れた母・・・、二人の気持ちが良く描かれていました。
読みやすくはあったのですが、近藤さんにしては少し軽めだったかな。
次はドスンと来るのをお願いしたいです。

4
4569825907昨日の海は
近藤 史恵
PHP研究所 2015-07-18

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【内容情報】
いつも通りの夏のはずだった。その事件のことを知るまでは……。
海辺の小さな町で暮らす高校生・光介。
夏休みに入ったある日、母の姉・芹とその娘の双葉がしばらく一緒に暮らすことになった。
光介は芹から、心中と聞かされていた祖父母の死が、実は「どちらかがどちらかを殺した」無理心中事件であり、ここで生きていくために事実をはっきりさせたい、という決意を聞かされる。
カメラマンであった祖父とそのモデルも務めていた祖母。
二人の間にいったい何が起こったのか。
残された写真が語るもの、関係者たちの歪んだ記憶、小さな嘘……。
そして真相を追う光介が辿り着いた、衝撃的な事実とは……。
『サクリファイス』『タルト・タタンの夢』などで話題の著者が、海辺の町を舞台に、青年のひと夏の冒険と成長を描く、切なくてさわやかな青春ミステリー。

近藤さんの新作、さすがの安定感、読ませる文章力、流石です。
田舎町の閉鎖性の描き方が非常に巧い。
海辺の小さな町に伯母と小さな従妹が戻ってきた。
その存在すら知らなかった二人と突然一緒に暮らすことになった高校生・光介の視点で物語が進行していく。
光介が知らなかった祖父と祖母の死の真実、田舎町で暮らしていくために過去を封印した母、そして生きるために一度町を出た伯母は、時を経て真実を探そうとする。
光介は、伯母から聞かされた祖父母の無理心中の話に戸惑いながらも過去を辿り始める。
東京から突然田舎暮らしをすることになってしまった少女・双葉、彼女の様子や光介達が彼女に寄り添う様子もとても良かった。
田舎の小学校になかなか馴染めず、軽いいじめにあっていた双葉、双葉と一緒に憤る光介の母の姿がとても良かった。
今は亡き、若かりし頃の美しい祖母、写真の中から睨み付ける彼女が見ていたものは・・・
そして真実に辿り着いた叔母と光介、それぞれのこれから・・・
田舎町で生きていくことはこれからも難しいだろう、強く未来目を向けて生きる姿をみたいです。

3
4198639337岩窟姫
近藤史恵
徳間書店 2015-04-09

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【内容情報】(出版社より)
後輩アイドルが自殺した。あんなに可愛らしくて、みんなから愛されていたのに……。
しかし、蓮美の死を悼む暇もなく、蓮美は激動の渦に巻き込まれる。
沙霧のブログに、蓮美のいじめが原因で死ぬとかかれていたのだ。
身に覚えのない蓮美は、己の無実を証明するために沙霧の死の真相を追う。
「サクリファイス」シリーズの著者が、女たちの葛藤や嫉妬を鮮やかに描き出す!

タイトルと表紙の装丁からだけだと内容の予測がつかず、一体どんな作品?と楽しみにしていました。
可愛い女の子、アイドルのお話、近藤さんが?と少し意外な感じ。
しかし冒頭の一日にして世界が一転してしまう恐怖の描き方は絶妙。
後輩アイドルの自殺、人気アイドルだった彼女の死は、衝撃的だった。
しかし本当の衝撃は、その後にやって来た。
彼女が遺したブログ、「いじめ」が原因で自殺をしたと書かれていた。
原因とされた蓮美、全く身に覚えがない、あんなに仲が良かったのに何で・・・
彼女の戸惑いや、業界に対する不信感が伝わってくる。
全てを失い、引きこもりになり、宅配ピザを食べ続け、太り続ける蓮美の姿が痛々しい。
仲が良かった沙霧が自分をターゲットにしたことにどうしもて納得出来ず、事件の真相を探り出し・・・
芸能界で昔から囁かれる噂、やっぱり本当?いやいや小説だから・・・と疑問は解決されないのですが、タイトルに使われている「姫」の意味の使い方や、協力者など、近藤さんらしさが感じられました。
女同士のドロドロがリアルすぎてキツかった、次は違う視点のものが読みたいなぁ。

3
4062192055私の命はあなたの命より軽い
近藤 史恵
講談社 2014-11-13

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
東京で初めての出産をまぢかに控えた遼子。
夫の克哉が、突如、ドバイへ赴任することになったため、遼子は大阪の実家に戻り、出産をすることに。
実家に帰ると、両親と妹・美和の間に、会話がないことに気がつく。
そして父は新築したばかりの自宅を売却しようとしていた。
実家で何があった?
明らかになっていく家族を襲った出来事とはー。
「どうして人の命の重さには違いがあるの?」
『サクリファイス』の著者が「命の重さ」を描く渾身ミステリー!!

久しぶりに戻った実家で感じた違和感。
仲が良かった家族がバラバラに・・・
両親と会話をしない妹、妹の存在を無視する父、新居を売却しようとする両親・・・
妊娠中の姉を心配させないため・・・と、何があったかを教えてくれない。
ねぇ、一体何があったの!?と、ジリジリしながら読み進める。
冒頭、姉の不安感に読者を同調させていく過程の巧さは、近藤さんらしい。
近所の人の視線、噂話、古い友人からの罵声・・・、これがかなりキツイ。
しっかりものの姉が妹のことを思い、何かできないか、どうにかして妹を・・・と身重な彼女が奔走する。
前半のジリジリから、一転し、姉妹のええ話やなぁ〜な展開に、意外な気持ちがしました。
ん〜、肩透かしかなぁ・・・とも。
しかし、ラストでビターな一匙が・・・、近藤さんらしい後味の悪さ。
この落差を描きたかったんでしょうね。
ただ、タイトルから考えて、もっと姉妹の確執みたいな部分が描かれていてもよかったのかも・・・
もう少し、分量がある作品でしっかりと読みたいテーマでもあったので少し残念に感じました。

4
4093863806胡蝶殺し
近藤 史恵
小学館 2014-06-20

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【内容情報】
市川萩太郎蘇芳屋は、を率いる歌舞伎役者。
花田屋の中村竜胆の急逝に伴い、その息子、秋司の後見人になる。
同学年の自分の息子・俊介よりも秋司に才能を感じた萩太郎は、ふたりの初共演「重の井子別れ」で、三吉役を秋司に、台詞の少ない調姫(しらべひめ)役を俊介にやらせることにする。
しかし、初日前日に秋司のおたふく風邪が発覚。
急遽、三吉は俊介にやらせる。
そこから、秋司とその母親由香利との関係がこじれていく。
さらに、秋司を突然の難聴が襲う。
ふたりの夢である「春鏡鏡獅子」の「胡蝶」を、ふたりは舞うことが出来るのか…?

タイトルから近藤さんだから梨園絡みの殺人ミステリー?と思っていました。
表紙を見て、え〜、この子たちのどちらかが殺されてしまうのかしら・・・と思いながら読み始めたら・・・
梨園ものとして非常に面白かった。
表紙の御曹司ふたり、一人は花田屋の御曹司・父を亡くした秋司(表紙では下の方かな)、もう一人は秋司の後見人になった市川萩太郎の実子、俊介。
秋司には素晴らしい才能があり、実施・俊介はまだ歌舞伎に興味がなく初舞台も踏んでいない。
秋司をひきとることで、二人が切磋琢磨していくのではという淡い期待をもつ、萩太郎。
萩太郎も、萩太郎の妻も、実に良い人なので、秋司の母・由香利とバトルにならずに済むのが嬉しい。
でも、これなら穏便に済み、「殺し」にならないのでは・・・と思われた。
しかし、初日前日に秋司がおたふくかぜに・・・
急遽、代役に抜擢された俊介は無事に演じ終え、その後、歌舞伎に興味を持っていった。
一方、秋司はおたふくかぜの後遺症の難聴を患い、演じることを諦めた。
あぁ、「殺し」の意味はここにあったんだ・・・と何とも、やるせない気持ちに・・・
あんなに素晴らしい才能を持っているのに・・・と残念でならない。
二人の胡蝶を観る夢は叶わないのだ・・・と。
その後の大学生になった俊介の様子、とても彼らしくほほえましい気持ちで読んでいました。
そこに、二度と会うことはないと思った秋司の姿が!
その後の話、特に俊介から秋司への言葉が、あの時に俺は・・・という強い思いが、秋司を動かしていく過程が素晴らしかったです。
ミステリーと決めつけずに、是非、多くの方に読んでもらいたい一冊でした。

3
4041106494さいごの毛布
近藤 史恵
KADOKAWA/角川書店 2014-03-26

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
幼い頃から自分に自信が持てず、引っ込み思案。
家族とも折り合いが悪く就職活動も失敗続きだった智美は、友人の紹介で、事情があって飼い主とは暮らせなくなった犬を有料で預かる老犬ホームに勤めることになる。
時には身勝手とも思える理由で犬を預ける飼い主たちの真実を目の当たりにして複雑な思いを抱く智美は、犬たちの姿に自らの孤独を重ねていく。
最期を飼い主の代わりに看取る「老犬ホーム」。
身勝手な過去とすれ違うばかりの愛情が、ホーム存続の危機を招いてー。
『サクリファイス』の近藤史恵が紡ぎ出した新たな感動物語。

老犬ホーム、人との付き合いが苦手な智美が行き着いたその場所は、彼女にピッタリの場所だった。
人には様々な理由があって、老犬ホームに犬を預ける。
犬にはそんな理由なんて解らない。
そのことに、憤りを感じる智美。
確かにそれは理不尽すぎるだろうと思うものもあったが、確かに避けきれない理由もあった。
老犬ホームなんて場所が無いのが一番良いのだろうが、今の世の中、この場所のお陰で犬だけでなく、人も生きていけるだと感じた。
我が家にも猫がいるし、自分もこれから老いることを考えると、考えるものが多い作品でした。

4
4103052546キアズマ
近藤 史恵
新潮社 2013-04-22

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【内容情報】
決して交わるはずのなかった、俺たち。
喪失を超えるように、ただ走り続ける――。
命をかける覚悟? 誰かを傷つける恐怖?
そんなもの呑み込んで、ただ俺は走りたいんだ。
ひたすらに、自分自身と向き合うために。
助けられなかったアイツのために――。
一年間限定で自転車ロードレースに挑むことになった正樹。
走る喜びと恐怖の間で葛藤しながらも、レースに挑んでいく。
走ることが祈ることであるかのように…。
「サクリファイス」シリーズ最新長編、新たな舞台は大学自転車部。
「サクリファイス」シリーズ4作目、新たな舞台は大学自転車部!
ファン待望の最新長編小説。

今回の舞台は大学自転車部。
あれ・・・?今までとの繋がりは?
誰かの過去の物語かと思いながらも、登場するメンバーの名前に記憶が無い・・・
いくつかの試合でも、なかなかプロチームとの接触もなく・・・でしたが、後ほどやっとリンク場面が登場しました。
本作は、今までとは別ラインでの物語なようです。
今回はキャラの設定が非常に解りやすく、読みやすい。
一見ヤンキーに見える関西弁の櫻井と、柔道経験者でフランス帰りの岸田。
全く接点を持たなかった二人が、ある事故をきっかけにして、近づき、化学反応を起こしていく。
怪我をさせてしまった村上の代わりに1年間だけ弱小大学自転車部の部員になった岸田。
全く適正など無いと思われていた岸田だが、柔道と重いトモスによって鍛えられた足腰によって、ぐんぐんと頭角をあらわしていく。
強気のエース・櫻井は、亡くなった兄と二人分の想いを轍に込め走ってきた。
いきなりエース級になった岸田に対してつぶやいた「なんでおまえやねん」という言葉。
今まで全てを捨てて積み重ねてきた努力が、あっという間に追い越されてしまう。
素質とか才能というものなんでしょうね。
スポーツや芸術畑の人たちが突き当たる壁、近藤さん流石見事に描いていました。
せっかくの才能を持ちながら、過去の事故のトラウマに縛られ、自転車を辞めてしまおうとする岸田に対する櫻井の憤りも、とても良く描かれていました。
岸田の過去の問題、豊くんに女の子の問題が関わってくるのですが、1作目のような嫌な女子キャラ出なかったことが本当に良かった。
豊からのメール、どんな内容だったのかな・・・
様々な過去の呪縛と闘いながらペダルを回す青春成長譚、清々しくとても良かったです。
自転車シリーズ、こうやって裾野を広げてくれたおかげでもう少し楽しめそうなのが嬉しいです。

4
4344022416はぶらし
近藤 史恵
幻冬舎 2012-09-27

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【内容紹介】
脚本家の鈴音は高校時代の友達・水絵と突然再会した。
子連れの水絵は離婚して、リストラに遭ったことを打ち明け、1週間だけ泊めて欲しいと泣きつく。
鈴音は戸惑いながらも受け入れた。
だが、一緒に暮らし始めると、生活習慣の違いもあり、鈴音と水絵の関係が段々とギクシャクしてくる。
マンションの鍵が壊されたり、鈴音が原因不明の体調不良を起こしたり、不審な出来事も次々と起こる。
水絵の就職先はなかなか決まらない。
約束の1週間を迎えようとしたとき、水絵の子供が高熱を出した。
水絵は鈴音に居候を続けさせて欲しいと訴えるのだが……。
人は人にどれほど優しくなれるのか。
救いの手を差し伸べるのは善意からか、それとも偽善か。
揺れる心が生む傑作ミステリー!

出た!ブラック近藤史恵!w
近藤さん、ハートウォーミングな作品も書かれますが、こういったダーティな負の感情を描かせると本当にリアルです。
子連れで転がり込んできた水絵、あなたはラッキーでいいよね、と言い放つ彼女に、こちらも気分が悪くなっていく。
タイトルに使われる「はぶらし」のエピソードが実に巧い。
水絵の性格を実によく表している。
そしてスカイエマさんの表紙も実に良い。
風呂の残り水のエピソードも、水絵と鈴音の関係をギクシャクさせた日常のエピソードのひとつなので、読んでいるとああ・・・と思い当たる感じがお見事。
裏表紙に居る耕太くんの所在無さ気な雰囲気もまたいい。
ひとつひとつのエピソードが、女性ならああ・・・と誰もがちょっと眉をひそめたくなるような感じのリアリティがあるとこも近藤さん、流石です。
実は読んでいて、もっと凄いことを実は鈴音は企んでいた・・・という展開を予想していたのですが、この淡々としたリアルな感じのほうが読後に実に嫌な感じを残してくれるということが解りました。
ラストのその後の耕太のシーンが書かれたことは、近藤さんのホワイトな部分かな。
そう、本当の被害者は鈴音よりも耕太だったのだものね。

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