10月1日、新しい月の朝。
あおい朝が明けていく。ベートーヴェンを聴く。
金庫の奥にある、とっておきの日につけていく指輪をつけた。
“これはユーニークピースですよ” 宝石を買う時は、買った時の値段が下がらないもの、特別な石、特別なデザイン、大量生産じゃなくて個性のあるものを選んでください。と、フランス人のショウメの社長は言った。
“この指輪はどうですか” と私は、ハスの花のような形に、真ん中にまあるくビー玉のような、神秘的な赤い石のリングのことを聞いた。
“もちろんこれは世界に一つしかないユーニークピース。この大きな丸い石を探すのにデザイナーは苦労したと言っていました。”
指につけても、ずっしりと重いリング。私の血管が浮き出るごつい手でも、七難隠してくれる。
私は一大決心んして、パリから日本へと持ち帰った。右手に、アフリカの魔除けのラピスラズリ青い石のリング、左手に大きな赤い石のハスの花のリングをつけて、出かけた。
いくつもいくつも書類にハンコを押していく。売主と買主で、ハンコを押し合う儀式が、銀行の大きなテーブルの上で繰り広げられる。先方の銀行員、当方の銀行員、不動産会社二社、司法書士、12名がシーンと静まり返った中、もくもくとハンコを押し続ける。
人々の目には否応なく、ハンコを押す手元に集中する。先方のオーナーのお母さまも、大きな象牙の細工ペンダントをつけておられた。多分あのペンダントはご主人に買ってもらったか、または、先祖代々伝わっているものか、しっかりと持ち主を守るオーラを感じた。年をとると、女の命の輝きを守ってくれるものは、宝石だ!! と、私は考えている。とくに、私のように、年とった女が、弱肉強食のビジネスの世界で、何とか細い綱の道を歩いていくには、特別な石の力が必要だとかたく信じている。
そして、つつがなくすべての契約は終了した。

「とうとう老後2000万円問題の報告書が事実上の撤回となったね。25日の金融審議会の総会で報告書を麻生太郎金融相に答申しないまま議論を再開すると決めたんだ。ネット上では、これで貯蓄が2000万円なくても、生きていけるようになった!と皮肉をこめた書き込みがあふれていた。でも豊かな老後を送るために十分な蓄えが必要なことに変わりはない。十分な資産が必要なのは若い世代も老後世代も同じだ。みずほ証券は高齢顧客専門の営業員を2022年までに2倍に増やす計画だ。ファイナンシャルプランナー、相続診断士のシニアコンサルタントが相談にのる。」 日経ヴェリタス

義理の母は宝石が大好きな人だった。
会社役員ではぶりのよかった父は、たくさんの着物や宝石を買ってあげていた。義理の父は先に亡くなり、うちの家に引き取った母、最後に入院をした病院でお見舞いに行った時の母はぽつりと窓の外を見ていた。その手は、痩せてしわがれていた。大好きなエメラルドのダイヤの指輪はつけていない。“どうして!?”あれだけは、絶対手放すはずがないのに・・・・・。“病院はどんな人がいるかわからないから、なくしちゃだめだから、持ってきてないの。”と、聞いたが、真相はわからない。
母を守っていた、父からのプレゼントのエメラルド。今はどこにあるのかしら。
なぜだか、今でも、私はしっかりと、その石の深いそしてなめらかな優しい緑の光を思い出す。

今ワタチを守る石はこれ
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歩行器
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とく、もものお古だけど、代々引き継がれた私を守る由緒あるわっかです。
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