心がざわつく時は、何度も何度もその問題のシーンが頭の中にくり返し浮かんでくる。追い払っても、頭をシェイクしても、その不安のもくもくはおこってくる。
公園で とくはブランコの鉄さくに腰を下ろし、ケイタイのゲームをやっていた。中学生のお兄ちゃんが、貸してくれた!!と言った。
とく 4才の小さな男の子。ブランコそばでは、ベストを着た中学生の男の子。その子は一人ぼっちだった。いつも公園に一人でやってきては遊ぶ相手を探している。ジャングルジムに上って、3才4才の子と遊んだり、ブランコをこいでいる。身体は大人だけど、心は幼児のままだ。それにひきかえ、とくは身体は幼児だけど。言葉や考え方は、会社に来たり いつもパパやママそして大人と会話しているので、かなり成長している。心は幼児で身体は大きくって、中学生の環境にいるお兄ちゃんと話せて遊べるのに、とくはぴったり!!それでお兄ちゃんはとくとお友達になりたくって・・・・、とくが大好きなケイタイのゲームを特別に貸してあげた。そこに運悪くバーバがやってきた。
“ダメ、返しなさい。それは、お兄ちゃんの大切なケイタイだから。それに公園はみんなと走り回って遊ぶところでしょ!! ケイタイのゲームはお家で一人で遊ぶものだよ!!”
と、押し問答の末。パパとママに電話するよ、と卑怯な手段をバーバは使って、とくからお兄ちゃんへケイタイを返させた。
下を向いて、イジイジ砂をかき回すとく。
ブランコを大きく大きくビュンビュンこいでまぎらすお兄ちゃん。
バーバはとくに声をかけた。
“ さあ、かくれんぼしよう!!” “うん” と、またかけっこが始まって、小さい子供が一人、また一人と加わって、
“ ウァー、キャー ” と元気な声が公園に響きだした。しかたなく、お兄ちゃんは、一人でサッカーボールをけりながら、かくれんぼで走り回るとくとつかず離れずとしている。
バーバはママにかわって、マンションに戻った。
とるに足らないことだけど、なんか心がざわつく。
“ また明日も公園にくる ” とお兄ちゃんは言っていたらしい。心が幼児で身体は大人。お友達がいないお兄ちゃん。とくとお友達になりたい。とくだとお兄ちゃんのことがわかるから、二人はお友達になれる。けど・・・・、多分何かある。どうして、お兄ちゃんの心は、同じ年令のお友達に開かないんだろう。そして、どうして、いつも公園に来て、ジャングルジムやブランコをこいでいるんだろう。・・・・・・。

「サロベツ原野の小動物たち
世界最小の哺乳類の一つ、トウキョウトガリネズミを北海道北部のサロベツ原野で捕獲したことがある。そこに体長4.5センチ、体重2グラムほどの小獣が棲息していることを聞いた。昆虫の先生がオサムシ用のワナに稀にかかると言ったのである。以来15年ほど私は数年おきに、時には毎月のようにサロベツへ出かけた。サロベツ原野は広大な湿原で単調に見えるが、わずかに起伏があり、50センチほどの高みは乾燥していて、ササの群落があり、やや低いところは、ヨシやスゲが茂り、水面すれすれのところはミズゴケで覆われている。この高低に応じて小動物が棲み分けている。野分の風が吹きすさぶ晩秋、飛ばされそうになって湿原を歩いていた時、あまりの寒さにササの群落に腰を下ろした。すると、そこは風が遮られて暖かく、たくさんの小さな生き物がいることに気づいた。湿原に棲息するクモや昆虫などが飛ばされてきて、ササの茂みにひっかかるのである。湿原の真冬は厳しいが、枯れ草やササの群落の上に降り積もった雪は、小動物ごとすべてを包み込み、地表と積雪との間に3〜10センチほどの空間をつくる。そこには小動物たちの通路が張り巡らされ、“食う、食われる” の小さな世界が広がる。植物が豊富で、マイナス4℃以下にはならず、空からの天敵の攻撃もうけない。雪の湿原は風が唸り荒涼とした景色だが、雪の下には豊かな動物たちの世界が広がっている。一つのミニ生態系が出来上がっているのである。冬が暖かくなったら、もちろんこの小さな生態系はたちまち消滅するだろう。 動物学者 今泉忠明 」

バーバの心のざわつきも、とりこし苦労だろう。