「筆洗
”ヨーロッパ諸国を巻き込んだ30年戦争は何年間、続いたか”
作家の井上ひさしさんが高校生の時、こんな試験問題が出たそうだ。30年戦争と言うのだからもちろん正解は30年だ。だがどういうわけか、クラスの半分以上が間違えたそうだ。まさかそんな問題がでるはずがないと思い込んだのか。井上さんにいたっては、‟30年戦争は100年続いた”と書いてしまった。」

そこは時がすっかり止まっていた。
川崎のアトリエ工場。ズラリと並んだミシンには、布がかけられている。
15サイズの小さなピンクのバレエシューズ。ベルトリボンをつければかわいい子供バレエシューズ。あと一歩の工程で、仕掛品として束ねられている。
急な階段を、‟気をつけて下さい” と社長のうしろに続いて上る。
数々のチロリアンテープ、レース、くるくると回るスカートはフワリと風を受けて、色とりどりに輝くだろう。
飾りたちが棚の中で、静かに縫子さんがやってくるのを待ち続けていた。
もしか、こうやって、貴重な文化や手仕事は時の中に埋もれ、忘れさられて消えてゆくのだろうか・・・・・。
久しぶりに30年前の頃の夢をみた。
まどかは、ストライプのズボンを着て、まるでキャンプに出掛けるような男の子みないな装い。
病気の母が待つ実家に早く帰らなければ。私はなぜか急いでいた。
いとこ達と遊んでいたい気持ちのまどかをせきたてて、早く、早く、日が暮れる前に帰ろう!!
と言っているところでハッと目が覚めた。
ぼんやりとした気持ちで目覚め、冷たい水シャワーを浴びる。
すると、シャキッと意識が戻ってきた。
靴職人は、‟ 次の世代につなげるように、もう一度全力を尽くす ” と話した。
私は社長に、‟ 土屋の血を守らせて下さい ” とお願いした。