二つ目の工場、ラ・ニタと今日契約をする。
これで、後戻りすることは許されない。
いや私は前にしか進んでいけない性分の人間だ。
とりあえず、またダンボールの山との戦いが始まった。
“とうとう今週ですネ”
フラビオが大きく深呼吸をして、言った。
“そうですね。ドキドキしちゃいますネ”
“えー、ウソでしょう”
ウソです。ドキドキなんて、か弱い女子が言うセリフ。
私は、どっしりとしたバーバ社長だ。
今日から、グッバイバレリーナのダイレクトメールがお客様のもとに届き始める。
とうとうここまでこぎつけることができた。
下仁田工場の契約。
トウシューズをレガート(自社製品)にはきかえて、バレエレッスン。
新しいメディアスタッフの面接、研修、会計士との打ち合わせ・・・・・・、たくさんの仕事を動かす中、タンゴを東京ドームホテルで踊る。
そして、とくも、ももも、お受験が始まる。
秋は実りの季節でありたい。
今まで種をまき、雨、風をしのぎ、お日さまにあて、くる日もくる日も、みんなで力を合わせ、あーだこうだと忙しく、ガヤガヤと、やってきたことが、実りだす季節だ。

「大波小波
日本学術会議が推薦した6人の学者を首相が任命拒否した事は、学問の自由を脅かす許し難い行為だ。最近の社会風潮は異論を排除し、表現や言論の自由を束縛する事実が目立つ。その折、桐野夏生“日没”は不穏で閉塞感が漂う現代の息苦しさを敏感に感知した極めて刺激的な詳説だ。政府機関から小説家に届いた召喚状。出頭すると彼女は拘束され、“社会に適応した小説を書く”ための療養所に収容される。読者からの政府機関へのメールで、彼女の書いた小説は暴力的猥褻、反社会的との指摘があったらしい。彼女の抗議は圧殺される。強固な全体主義による民主支配はわかりやす。しかし民主主義を標榜する国家でも、柔らかな締め付けは進行する。権力の本質は“規制”と“束縛”だ。恐いのは民衆が自分で進んで自由を権力に差し出すことであり、読者の批判をテコに圧力を加える権力の隠された意図。ドストエフスキーはカラマーゾフの兄弟の中で、人々はパンを得るため自由を売り渡す。と暗示的な話を書いた。大審問官の箇所である。 文学の課題は実に重い。(アリョーシャ)  」

銀杏の実が、雨にボトボトと落ち、誰一人拾う人はいない。
そのくさい果肉の中に固い殻の中、この季節は、青い透明な輝く実がつまっている!!
雨が上がり、青空が見えれば、いくつか食べるだけ集めてみようかしら。