「文学周遊 志賀直哉 ‟濠端の住まい”
志賀が松江で過ごしたのは31歳だった大正三年の夏である。前の年に、人生を変える大きな事故にあった。山手線で電車にはねられ大けがをしたのだ。療養先に選んだのが兵庫県の城崎温泉だった。松江城の濠に面した家で生活を始め、そこでの出来事を記録したのが本作の ‟濠端の住まい” である。どんな日々だったのか。‟虫と鳥と魚と水と草と空と、それから最後に人間との交渉ある暮らしだった”。志賀はこう記す。とりわけ、隣の家で飼っていた鶏の母親が猫に殺された一件が強い印象を残す。その猫はわなにかかって松江城の濠に沈められる。生きものの最期を克明に描く筆致は、‟城の崎にて”に通じる。自然のなかで突然、死が襲いかかる生きものたちと、事故で死にかけた自分との違いは何か。志賀にとって松江は‟自然”にあふれた空間であり、人だらけの都会との対比で認識される。興味深い事実がある。志賀が松江を去った翌年、こんどはまだ学生だった芥川龍之介が同じ家に滞在した。‟羅生門”が世に出る直前である。(編集委員 高橋哲史)  」

行きは市ヶ谷で乗り換えたが、帰りは神保町で。ついでにちょっと寄り道しよう!! 深い階段をあがると、けっこう開けた街並みだ。
ヘエーここが本屋がたくさんあるという所かあ。初めて降りたってみた。
さっそく一軒目。
‟岩崎ちひろさんの絵本ってありますか?” ‟データ管理してないのでお調べできませんが、あるとしたら2Fの奥あたりでしょうか” と可愛らしい店員さんが教えてくれる。しかも一緒に階段を上って探してくれそうだったが、‟ありがとうございます。自分で探してみます” とお礼を言った。
歴史あるおもしろそうな本が所せましとビッシリあるので、まるで宝物を探すようなウキウキとした気分になってくる。そして探し物は何だったかすっかり忘れて2冊の本を手に持っていた。
シャガール600円と山下清600円。会計をしてあまりの安さにビックリした。
そこから、二軒目三軒目・・・ いやどこかでやめておかないと一日中でも本に浸ってしまいそうだ。と、自分を押しとどめた。
たっぷりとひとりの時間がある時に、また来よう。
すっごいお宝の場所を見つけてしまった。