「 こころの玉手箱
詩人 四元 康祐
母とは対照的に父は、米寿の一週間前まで生き延びて、後に残された二人、海を隔てた細く長い付き合いと相成った。
亡くなる前のことだ。入院中の父の家に寝泊まりしている。
真夜中天井裏から大きな足音。ダダダダと地団駄を踏むような派手な響きで、すわ曲者!
僕はベッドから飛び起きると、ほうきの柄で天井を突いて大きな声で誰何した。
業者に依頼したところ、
“イタチですね。家族で棲んでいるようです。”
“強烈な光と音楽を一週間程発して、家の外に追い出しておいてから、穴を塞ぎましょう。”
僕はすっかり感心したが、注文を見送った。
高額な施工費を見て、あと何年この家を維持するか分からないのに、と父が二の足を踏んだのだ。それはとりも直さず、彼自身の余命を思うことでもあった。
結局父が死ぬまでの数年間、帰省するたびに僕はイタチ家族と寝起きを共にした。
父が死んだ晩にも、父のベッドで彼らの足音を聞いた。父の晩年の、病苦に満ちた孤独な日々を、僕の代わりに見守っていてくれたのだと思った。
ちょうどその頃、いとこのミホちゃんが針金を使った造形アートで作ってもらったのがこのイタチだ。

僕にとってこのイタチは守り神のような存在で、毎朝父の位牌代わりに拝んでいる。
父の死後、実家は売り渡した。
買主に業者の報告書と見積もりを見せて、その分売り値から値引きした。イタチ一家は今も裏山で暮らしているはずだ。 」
田園調布の家に引っ越してから、アライグマなどを目撃するようになった。
ワカケホンセイインコは、カラスとゴミ出しの日は縄張りを争っているし、いちょう並木を歩くときは、犬のウンコにも注意している。
2025年は朝、窓を閉めていたので、うぐいすのなくのを聞き逃したが、すでにつばめは巣をつくり、高く低く飛んでいる。人間が多い都内からしたら、ここは自然が残っている。そういう場所は、少しほっこりとした気持ちになる。言葉がないので、私も動物のひとりとして、他の動物となかまになれそうな気がする!!
忘れかけていたものの、かけらが見えてくる。
詩人 四元 康祐
母とは対照的に父は、米寿の一週間前まで生き延びて、後に残された二人、海を隔てた細く長い付き合いと相成った。
亡くなる前のことだ。入院中の父の家に寝泊まりしている。
真夜中天井裏から大きな足音。ダダダダと地団駄を踏むような派手な響きで、すわ曲者!
僕はベッドから飛び起きると、ほうきの柄で天井を突いて大きな声で誰何した。
業者に依頼したところ、
“イタチですね。家族で棲んでいるようです。”
“強烈な光と音楽を一週間程発して、家の外に追い出しておいてから、穴を塞ぎましょう。”
僕はすっかり感心したが、注文を見送った。
高額な施工費を見て、あと何年この家を維持するか分からないのに、と父が二の足を踏んだのだ。それはとりも直さず、彼自身の余命を思うことでもあった。
結局父が死ぬまでの数年間、帰省するたびに僕はイタチ家族と寝起きを共にした。
父が死んだ晩にも、父のベッドで彼らの足音を聞いた。父の晩年の、病苦に満ちた孤独な日々を、僕の代わりに見守っていてくれたのだと思った。
ちょうどその頃、いとこのミホちゃんが針金を使った造形アートで作ってもらったのがこのイタチだ。

僕にとってこのイタチは守り神のような存在で、毎朝父の位牌代わりに拝んでいる。
父の死後、実家は売り渡した。
買主に業者の報告書と見積もりを見せて、その分売り値から値引きした。イタチ一家は今も裏山で暮らしているはずだ。 」
田園調布の家に引っ越してから、アライグマなどを目撃するようになった。
ワカケホンセイインコは、カラスとゴミ出しの日は縄張りを争っているし、いちょう並木を歩くときは、犬のウンコにも注意している。
2025年は朝、窓を閉めていたので、うぐいすのなくのを聞き逃したが、すでにつばめは巣をつくり、高く低く飛んでいる。人間が多い都内からしたら、ここは自然が残っている。そういう場所は、少しほっこりとした気持ちになる。言葉がないので、私も動物のひとりとして、他の動物となかまになれそうな気がする!!
忘れかけていたものの、かけらが見えてくる。
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