メディカルレター
便秘
市販の便秘薬の殆どは腸の蠕動運動を刺激して排便を促すので、飲むとお腹が痛くなることも多く、また段々効果が薄れていくために飲む量が増えていく傾向にあります。何十年も飲み続けると大腸が空気の抜けた風船のように弾力性を失い、腸内に大量の便が有りながら少しづつしか排便できないとても困った状態になります。
中年以降では便秘に大腸癌が隠れている場合もありますので、一度は大腸内視鏡検査を受けられることをお勧めします。新聞などで便秘について述べられている先生の中には全く大腸検査などしていない方も残念ながらいます。ちょっと困ったものですね。
苦しくない胃カメラを受けましょう
胃内視鏡検査(胃カメラ)はつらい検査であると、皆さん思われていませんか? 全く何でもない楽な検査とは言いませんが、例えば10年前に比べればかなり楽になりました。
胃内視鏡検査を殆ど何も感じないで受ける方法として「麻酔を使って眠って検査を受ける」があります。これは正確には、鎮静剤でボーッとした状態(鎮静下)で検査するものです。楽そうに聞こえますが、実は結構大変。鎮静剤は標準的な量では十分に効かない人も多いし、中には興奮状態になってしまう場合もあります。そのため、標準的な量より多めに使ったり、最近では本来手術用に使う強力な薬剤を使う施設もあります。それでも、効果不十分ならば押さえつけて検査する、でも患者さんは記憶が無いから楽だったと思ってしまう。これは大変危険です。また多量の薬剤を使ったり、手術用麻酔剤を使うのも勿論危険。ご高齢の方では心臓の動きが低下することもあります。10年くらい前は私も鎮静剤を使っていたので怖い思いも何度かしました。
で、鼻からの内視鏡。これはそのような危険なく、それ程つらくなく検査ができます。でも、検査する医師が上手でなければ痛い。痛くない検査のコツは、まず左右の鼻を見て、広い方からゆっくりと周囲の壁(の様の見える粘膜)に触れないように喉の奥までファイバースコープを進め、食道の入り口まで来たら、右方向にゆっくり滑らすようにファイバーを動かすと自然に食道に入ります。そうすれば、もうこちらのもの。辛いところは過ぎました。
こう書くと簡単そうですが、微妙な抵抗感は口では表現できず手の感覚で覚えるものです。いくら本を読んでも習得できません。だから、この秘密を書いても大丈夫なのです。
皆さんはこれを読まれてもまだ疑問はあるでしょう。どうか、こちらに疑問をお聞きください。検査を十分に理解して受けて頂くことが最も大切です。無理やり押さえつけての検査なんてとんでもありません。
最新の内視鏡(胃カメラ)を導入しました
平成29年度の目黒区胃がん内視鏡検診は平成30年3月末日をもって終了いたしました。当院には300名近い受診者がいらっしゃいました。ご信頼を頂き、改めてお礼申し上げます。当院はもとより、目黒区全体で大きな問題なく検診が終了しましたことをご報告申し上げます。
平成30年度の胃がん内視鏡検診は4月から申し込み、5月から検診が始まります。昨年度受診されていない方は是非お受けください。詳しくは「内視鏡(胃カメラ)による胃がん検診を行っています」をご覧下さい。
また、当院ではこの4月から新しい内視鏡(胃カメラ)機器を導入致しました。オリンパス光学工業社製の290シリーズで、現在最も高性能な最高機種です。より一層精度の高い検査をいたします。
内視鏡(胃カメラ)による胃がん検診を行っています
平成30年5月から、目黒区では内視鏡による胃がん検診が始まりました。
お陰様で順調に進んでおり、検査を希望される方の人数は当初の予測を大きく超えています。当院では皆様から高い信頼を頂き、区内で最も受診者数が多くなっております。
私は医師会を代表してこの内視鏡検診を立ち上げに尽力しましたので、この検診に大変思い入れがあり、検査の質・精度は最高のものを目指しております。嬉しい悲鳴を上げることなく、皆様の信頼にお応えします。
検査ご希望の方は
- 目黒区健康推進課 TEL:03‐5722‐9589または03‐5722‐9423へお電話で受診券を請求して下さい。
- 受診券がお手元へ届いたら、当院TEL:03‐3712‐2222で予約して下さい。
内視鏡による胃がん検診が受けられます
平成29年5月から30年3月末日まで(以後、毎年同時期に実施)、目黒区で内視鏡による胃がん検診が受けられます。
- 目黒区在住で50歳以上の方
- 2年に1回、内視鏡による胃がん検診かバリウムによる検査がご自分で選んで受信できます。
- 区役所健康推進課
TEL: 03-5722-9589・9423
にお電話で申し込みください。 - 当院で検査希望の方は当院へお電話で予約できます。
TEL: 03-3712-2222
>> さらに詳しく [目黒区で胃がん内視鏡検診が始まります]
胃炎に対してもピロリ菌の治療をしています
但し、制度上の制約があります。それは「6か月以内に胃カメラを受けて(バリウムの検査ではダメ)、胃炎が存在することを確認していること」というものです。40歳を過ぎれば殆どの人は多かれ少なかれ胃炎がありますから、この制約は治療受ける人を制限するのではなく、胃腸科の専門医に治療を受けなさいという指導です。もちろん薬を飲むわけですから、それなりの副作用の可能性もあります。慣れた専門医で治療を受けることをお勧めします。当院でも、昨年来さらに多くの患者さんがピロリ菌の治療を受けられました。
食道癌治療について思うこと
その報道の中で、食道癌治療に携わっていた者として気になる部分がありました。氏は早期食道癌の内視鏡的治療後数年で亡くなられたわけですが、内視鏡的治療が可能な程の進行程度であったならば、殆ど完治だったはずです。内視鏡を用いた治療は患者さんの負担が小さく魅力的ですが、一方内視鏡で切除してみたら、想定していたよりも癌が進行していて、手術が必要になる場合もあります。やしき氏の場合はその辺がどうだったのでしょうか?
最近、患者さんの負担が少ない治療法がいろいろ開発されて、注目と期待を集めています。しかし、病気、特に癌の治療においてもっとも重要なのは言うまでもなく、きちんとした治療を行うこと、言い換えれば「癌をきちんと取り除くこと」です。これは主たる部分だけでなく、転移した(している可能性のある)リンパ節も全て取り除くことです。
患者さんの負担の少ない治療の開発は重要ですが、きちんとした治療ができるかどうかがポイントです。医療を行う側は当然ですが、受けられる患者さんも正しい判断の上で選択してください。そのためのアドヴァイスは勿論、必要ならばきちんとした医療機関、医師を紹介いたします。
ピロリ菌治療の保険適応が拡大されました
我が国の50歳以上の60〜80%がピロリ菌に感染していると考えられています。現在、毎年10万人以上が胃癌に罹り、5万人が亡くなっています。50歳までにピロリ菌を退治すれば、胃癌に罹るリスクを大幅に減らすことができ、胃癌で亡くなる方はいなくなるかもしれません。
ピロリ菌の退治に際しては、胃カメラで胃炎がある事を確認してからが望ましく、また専門医できちんとした治療をしないと、菌が薬に対して抵抗性を持ち、退治できなくなるのでご注意ください。当院では既に1000人以上の方が除菌治療を受けられています。
やっぱり鼻からの胃カメラは楽!
昨日うれしい事があったので、ちょっと自慢させて頂きます。
とても不安そうな様子の40代の女性が診察室に入ってこられました。喉から胸、上腹部に違和感があって胃カメラの検査を受けたいが、今まで検査を受けようとしても、苦しくて我慢できず5つの医療機関で途中で中止になったとの事。まず普通に口からの検査では反射が強くて全くダメだった。眠っている間に検査を受けようとしたが、緊張のあまり鎮静剤が全く効かなかった。鼻からの胃カメラも苦しく、さらに耳鼻科の細いスコープでも無理だった(耳鼻科の喉までのスコープは、胃腸科で使う鼻からの胃カメラよりもさらに細いのです)。
と、おっしゃって、ファイバースコープの検査に恐怖感をお持ちでした。
診察するとやはり胃カメラによる検査が必要と考えられたので、鼻からの胃カメラを受けて頂くことにしました。普通に鼻から局所麻酔をかけて、ゆっくり。とスコープを鼻から入れて進めていくと、難なく食道に入り、検査ができました。途中からは落ち着かれて、会話も可能でした。終わってからはとても安心されて帰られました。
検査は患者さん自身が楽なことは勿論大事ですが、ゲホゲホ、オエーッという反射が強ければ十分な観察ができず、見損ないや見落としかねません。どんなに最先端の器械を使っても、そこだけはどうにもなりません。
患者さんに苦痛無く検査を受けて頂くのは、患者さん自身の為だけではなく、医師にとっても大事なのです。
増え続ける大腸癌
では、食物繊維が豊富な食品を食べていれば大腸癌になり難いのか?残念ながら、理屈通りにはいかないようです。2005年「野菜や果物をたくさん食べても大腸癌になる危険性は変わらない」、2007年には「便通が2〜3日に1回の便秘がちな人も大腸癌になる危険性は高まらない」との研究結果を厚労省が発表しました。食物繊維の多い食品に大腸癌の予防効果を期待するのは無理なようです。一般的に何かを食べたり飲んだりすることによって癌を予防するのは不可能と考えた方が良いでしょう。それより、大腸癌で死なないためには便潜血反応による大腸癌検診を受ける方が余程効果的です。
我が国の5大癌といえば胃癌・大腸癌・肺癌・肝臓癌・乳癌ですが、胃癌はピロリ菌感染者の減少、肺癌は喫煙者の減少、肝臓癌はC型肝炎感染者の減少で将来的に減ると考えられていますが、大腸癌に関しては減少する要素がありません。大腸癌は早期発見可能な癌であり、早期発見すれば死亡に至る事は極めて稀です。是非、検診を受けて下さい。
順天堂大学下部消化管外科冨木裕一准教授の論文を基にしています。