2017年04月08日

シリア攻撃の必然性

残念ながらトランプのシリア攻撃の予言を書くことができなかった。
せめて、今後の展開について予言しておこう。

継続的か断続的かは別にして、トランプの外国介入は続く。

理由は「間が持たない」から。
国内で移民排斥法は司法で負け、オバマケアの修正も議会が否定。
これ以上、国内の政治で大きなことができないことははっきりした。
そうなると支持層に飽きられてしまうのは明らかで、
あとは軍事・外交でなんとかするしかない。
シリアはどうせ泥沼化するし、
それが済んでも世界には火種がいたるところにある。

ちなみに、国内が手詰まりになって、
外に関心を向ける手法は安倍もオバマも同じ。
もちろん、安倍は議会も抑えているから国内でやった感を出す余地はあるし、
オバマは得意の法律力でexecutive orderを連発したのだが、
トランプにはそれらがないし、たぶん次の議会選挙で共和党は負けるので、
こうなると益々やることがなくなってしまう。

meitei2005 at 15:45|PermalinkComments(0)TrackBack(0)政治 

2017年03月25日

UAE対日本

W杯最終予選、第6戦、0−2

・日本のスタメン

大迫
原口、香川、今野、久保
山口
長友、森重、吉田、酒井宏樹
川島


審判は安定と信頼のイルマトフ。
この時点で半分は勝ったようなものだ。


◆感想

この試合に関する感想はアトさんと大体同じで、
日本の組織(連携)もイマイチだが、UAEが弱すぎた。
小さな国でエースがいないと、こんなものと言えばこんなものだが、
それにしてももう少し何とかならなかったんだろうか。
http://atlanta.blog24.fc2.com/blog-entry-3063.html

逆にいえば、ホームでこれに負けたのは、
判定ミスがあったにせよ日本も大概だ。
そして、この試合でも個々人の良いプレーで2得点できたが、
圧倒したという感じでもないのが悲しいところ。

個々人の能力では圧倒的に上回っている。
日本の選手のミドルシュートは良いものが多く、
ふかしまくりのUAEは20年前のJリーグのようだった。
特に前線にクラブで試合に出ている選手を出したため、
連携などはあまりないのに個人技で何とかしてしまう。
1点目は久保のシュートの上手さが際立ったし
(酒井のアシストも、この時だけは何故か正確だった)、
2点目は大迫の空中戦の強さ、久保のキックの正確性、
今野の良く分からない才能がかみ合った場面だった。

守備でもDFが相手のドリブルを1対1で完全に止めた。
吉田は安定感を増し、両SBは身体能力で圧倒。

所属クラブでも出場機会がほとんどない川島の起用は謎。
そうとうシュートを打たれると思ったのか、
シュートブロックの能力を買って、なのだろうか。

上でも書いたように、組織と連係面は酷かった。
まずハリルは4−1−4−1を試したことがあっただろうか。
香川はアギーレ時代やドルトムントで経験済みなのだが、
いかんせんインサイドハーフとしての守備力が低すぎる。
攻撃面では良い部分を見せたのだが、
リードした後に早速交代させたのは当然の措置。

山口も相変わらず成長が見られない。
不要なファウルは多いし、ポジショニングも悪く、
コーチングも行えていない。
まあ、あの身体能力で欧州で通用しないということは、
どこか別に大きな問題があるのは明らか。
(同様のことは酒井宏樹にも言える)

長谷部の年齢と今回の負傷を考えると、
山口を起用し続けるのは非常にリスクが高い。
遠藤航を追加招集したが、
柴崎も含めてボランチの層を厚くしておきたい。

もちろん、最も深刻なのはSH(WG)
今は原口が死ぬほど働いているが、
一体彼がいなかったら、
この最終予選はどうなった(なる)のだろうか。
彼もお疲れ気味なので、
6月のイラク戦以降は少し怖い部分がある。

久保も、点は取ったが、SHが最適とも思えない。
FWあるいはトップ下の方が良いだろう。
本田の状況が改善するとも思えないし、
乾を呼ばないことは今もって謎のまま。
原口が左SHだから乾と被ると思っているのか。
原口は右もできるのだが。。。
武藤が復活するかが、かなり大きい。

結局監督が何を考えているかということになるのだが、
短期的な視点のみでやっているのだろう。
今回の今野など、彼の起用の成功率が高いのも事実なのだが。


meitei2005 at 17:15|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ハリルホジッチ・ジャパン 

2017年02月06日

プーチン時代の終わりの始まり

偶然、ロシア絡みの記事の連投。

オバマの「弱腰」外交とトランプのラブコール、
そしてアレッポの陥落で、
ロシア=プーチンの存在感は冷戦終結以降おそらく最も高まっている。
しかし、私は今がピークで後は下るだけだという印象を持っている。

ウクライナの件は永遠に解決しなくなってしまい、
ヨーロッパとの関係改善はほぼ不可能だろう。
シリアは短期的にはアサド政権が勝ちそうなのだが、
国内に火種は残ったままで、しかもスンニ派の怒りをかった。
元々ロシアには周辺地域との軋轢が絶えなかったのだが、
更に火に油を注ぐことになった格好だ。
現状ではあまりテロは起こっておらず、
相当力ずくで抑え込んでいるのだと思われるが、
今後はISやアルカイダもロシアを狙ってくるだろう。

ロシアの大統領選は2018年にあり、
直近の下院選挙などを見ている限り楽勝に思える。
しかし、その6年後はどうなるのだろうか。
ロシアでは憲法で三選が禁止されており、
2008年では腹心のネドヴェージェフを大統領に据えた。
だが、2024年にはプーチンは72歳になっており、
そろそろ後継争いが深刻化してもおかしくない。

更に経済が良くなる見込みもあまりない。
結局は資源価格の動向によるのだが、
アメリカのフラッキングとイラク・イランの国際社会への復帰等で、
長期的に資源価格が上がる可能性はあまり高くない。

その上、あまりメディアでは指摘されていないが、
プーチンの健康状態は良さそうには見えない。
体も一回り小さくなった感じだし、何より顔が優しくなってきた。
プーチンは外交の首脳を待たせることで有名だが、
あれも本当に体調が悪いのではないかと思う。

今、プーチンが死ねば、ソ連崩壊後のロシアの再建者として、
少なくともロシアの歴史には英雄として記録される。
だが、今後も権力にしがみつくようだと、どんどん状況は悪化し、
最悪の場合は不名誉な形で死を迎えることになる。

まあ、そんなことも知らずに、どこかの国の大統領と総理は、
プーチンに入れあげてホクホクしているわけなんですが。。。

meitei2005 at 18:57|PermalinkComments(2)TrackBack(0)政治 | prophecy

2017年01月14日

チェルノブイリのガスマスク(Gas Mask in Chernobyl)

チェルノブイリのガスマスクが散乱した部屋は有名だ。
特に子供用のものだからインパクトが大きい。

しかし、冷静に考えてみると、なぜガスマスクが散乱しているかが分からない。
(知っている人がいたら、教えてください)

少なくとも下のワードで検索してもそれらしいものにヒットしなかった。

Chernobyl "why * mask"
Chernobyl "reason * mask"

ます、チェルノブイリで「ただちに」多数の子供が死んだことは知られていない。
放射線汚染が酷いのは衣類等も同じだし、
実際に死人が出たのなら死体と同様の処理がされただろう。

考えられるとしたら、嘔吐をする子供が多く、
窒息の恐れがあるので外したパターンだろうか。
(その割に、ゲロまみれ、という感じはしないが)

あるいは、つけてはみたものの、
息苦しいなどの理由で外したのだろうか。

そもそも、当初はソ連自体が事故をひた隠しにしていて、
子供だけが一か所に集められてマスクをしたシナリオが考えにくい。

更に、逆にあんなに均一に散らばっているのも不思議だ。

近年、チェルノブイリの観光地化が進んでいる。
日本でもクレイジー・ジャーニーなので取り上げられた。
どうにも本物だとは思えなくなってきた。





meitei2005 at 23:33|PermalinkComments(0)TrackBack(0)社会 | media

2017年01月13日

トランプ支持者とロシア(Consistency in Trump Supporters on Russia)

またもや、全く需要のない政治のお話。

トランプ支持者は白人・地方・男性・高齢者・非高学歴と言われている。
特に高齢者・非高学歴は反共・反ソのような気がするのだが、
支持者はここに矛盾を感じていないのだろうか?
もう25年も前の話なので、忘れ去ってしまったのだろうか?
(昔話はお年寄りのお得意だが)

最近のロシアがらみの話は、ひょっとしたら流れを変えるかもしれない。
(と、先に言っておくと、後で当たったら嬉しい)

meitei2005 at 22:56|PermalinkComments(0)TrackBack(0)社会 | 政治

2016年12月31日

縁故民主主義(Crony Democracy in Japan)

縁故資本主義(Crony Capitalism)という言葉は有名だが、
現在の日本や世界の政治は「縁故民主主義」と、
それへのポピュリスティックな反発(Populism)と考えると分かりやすい。

アメリカではEstablishmentとかWashington (Insider)などと呼ばれる、
政治・経済・メディアを含めた既得権益が、
トランプとその支持者の攻撃対象となった。

日本ではメディアの統制が強固なので、これが議論になることは少ない。
例えばアベノミクスの中身は要は円安推進で、
製造業・大企業の業績を改善させて日経平均などを上昇させ、
その恩恵を受ける旧来型メディアを黙らせるというものだった。
新聞の消費税の軽減税率だけがメディアへの利益誘導ではない。
もちろん、そもそもの前提として新聞の独禁法での扱いと、
テレビ局の電波法での扱いで優遇されていることは言うまでもない。

この点では、アメリカの既存メディアは(Foxなどを除き)
反トランプに偏っているとトランプや保守層で怒っている人は多いが、
思想面ではともかく経済面では既存メディアはあまり甘い汁を吸っていない。

日本でもネットで情報を得ている人にとって、
既存メディアの腐敗というのは耳タコだろうが、
それがどちらかというと左右の対立やメディア単独の利益の問題として扱われ、
政治・経済も含めた既得権益だという議論は相対的に少ない気がする。

meitei2005 at 18:58|PermalinkComments(0)TrackBack(0)社会 | 政治

2016年11月18日

三浦九段のスマホ不正疑惑について

サウジ戦と見せかけて、斜め上の将棋の話題。
しかも読者層を絞り切れていない、長い悪文。。。


この問題は不正があった派、なかった派でもめている。
先に自分の意見等をまとめておく。


・白か黒か

自分は羽生さんと同じように(寄らば大樹)
白とも黒とも言えないだろうというもの。
白の証明は原理的に不可能だし(悪魔の証明)
黒であることも証明は難しいだろう。
もちろん、スマホやPCから通信記録等が出てくれば別だが、
まともな悪人なら証拠を残すようなことはしないだろう。


・一番悪いのは将棋連盟

電王戦が始まって以降こうした問題が起こることは懸念されてきたし、
例えば田中寅彦九段は理事会でスマホ制限等を提案したが、
結局総会に回されて、そこで否決されてしまったらしい。
もっと早い段階で対処しておくべきだった。


・渡辺竜王も悪くない

彼の行動やその理由、いきさつについては彼のブログに書かれている。
あの時点、状況では仕方なかったと思う。


・将棋連盟の更なるミス

連盟は10月12日に処分を発表し、会見を行っている。
ここで問題だったのは、処分理由を明確にしなかったこと、
あるいは明確に伝えられなかったことである。
また、棋士個々人にメディアへの対応を許したことも大きなミス。
ここで情報をコントロールしなかったことで、
不必要な混乱を生み、棋士個々人に負担をかけてしまった。
本来であれば緘口令を出して、
情報を一本化しなければならなかった。
特に直後に竜王戦を戦う渡辺竜王は辛かったと思う。


・私の棋力

私の棋力はアマチュアレベルで、
その実力は20年前に地方の道場で初段だった、
という人と互角ぐらいでやっていた程度。
最近はもっぱら「見る将」で指してすらいない。
従って、三浦九段の手がソフトっぽいかなどは全く分からない。


・さらに、さらに

私は将棋ソフトを持ってもいないし、
インストールして自分でデータを取ることすらしていない。
(忙しい暇人なので)

関心があれば、アプリを使って確認してほしい。


・以下の文章の意図

上に書いたような自分の棋力なので、
個々の手について自分の感想を述べることはほとんどない。
以下では主に、三浦九段が不正をしたと言われている数局で、
最早プロよりも強いと考えられるコンピューターソフトと、
手の一致率が非常に高いという点について考える。
結論を先に書くと、一致率が高いことは必ずしも不正を意味しないが、
逆にプロの存在意義がより怪しくなってくる、というものだ。


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meitei2005 at 00:44|PermalinkComments(0)TrackBack(0)社会 

2016年10月15日

オーストラリア対日本

ロシアW杯最終予選、第4戦、1−1

気温は15度程度とかなり涼しい模様。


・日本のスタメン

本田
原口、香川、小林
長谷部、山口
槙野、森重、吉田、酒井高徳
西川


・オーストラリアのスタメン

ユリッチ9
ロギッチ23
ルオンゴ21、ジュディナク15、ムーイ13、ジアンヌ17
スミス13、スピラノビッチ6、セインズベリー20、マクガワン19
ライアン1

中盤13番のスキンヘッドのムーイがブレシアーノに見えるオールドファン。


◆アジアの戦いは難しい

これまでと戦術も選手起用もかなり変えてきた日本。
両サイドにスピードのある選手を起用し、槙野をSBにして、
最近ボールをつないでくる豪国相手に守りを固めてきた。
いろいろ意見はあるだろうが、「この時点での」最前手だったと思う。
トップ下が清武ではなく香川だったこと、
浅野と交替したのが本田だったことも、
コンディションということを考えたのだろう。

もちろん「中長期的な」チーム作りには課題も多い。
こうした戦術を起用するのであれば、
特にそれに相応しいSHの準備がおろそかになっていて、
彼らの動きが悪くなった後半には押し込まれてしまった。
前線も本田と香川の起用がベストだったのかは微妙だ。
日本の攻撃的な選手が守備に走り回る姿は確かに違和感がある。
ただ、武藤の負傷というアンラッキーがあったことや、
これまで日本相手にボールを持ってくる相手とやっていないこと、
これらを考えると仕方ないのかもしれない。

だから、現時点での最大の問題はUAEに勝てなかったことなのだろう。
このあたり、考えたら分かりそうなものなのだが、
やはりアフリカやフランスでの経験が多い監督だと、
チームに守備や規律を求めることが優先されて、
下手でもべたべた守ってくる相手をいかに崩すか、
という点についてはなかなか上手い答えを出せないのだろう。
おそらく、その答えが宇佐美へのこだわりだったのだろうが、
彼の個人技で崩せるほどアジアは甘くはない。
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meitei2005 at 18:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ハリルホジッチ・ジャパン 

2016年10月12日

日本対イラク

WCアジア最終予選、第3戦、2−1。審判団は韓国

オーストラリア戦後で完全周回遅れです。。。
(追)酒井宏樹はこの試合のイエローで豪国戦は出場停止です。


・日本のスタメン

岡崎
原口、清武、本田
柏木、長谷部
酒井高徳、森重、吉田、酒井宏樹
西川


◆豪国戦の選手起用から振り返るイラク戦

この試合、勝つには勝ったが後半ロスタイムの決勝点で、
とても褒められた試合内容ではなかった。

この試合については選手や監督について多くの言及がされているが、
それぞれそれなりに正しいと思うので、細かくは繰り返さない。
(おそらく)あまり言われていない点としては、
審判団が韓国だったので笛がまともで、
先制点も含めて日本に非友好的ではなかったことは大きかった。

この次の豪国戦は、もちろん負傷した岡崎は別だが、
それ以外も大きく選手が入れ替わっていて、
豪国対策ということの他に、
イラク戦で監督が良く思わなかった選手が代えられたのだろう。

清武は前半こそ良かったが後半には消えてしまい、
柏木も得意の良いパスを見せる機会はなかった。
地味に深刻なのは酒井宏樹で、
特に攻撃面で本田と連係が取れないことが痛い。

おそらく、この試合の監督の意図した攻撃パターンは、
原口のいる左サイドからしかけ、
本田が第二のストライカーとしてゴール前につめるもの。
シンガポール戦で武藤を左SHにしたのと逆の発想で、
本田は最初から中に入っていることが多かった。

問題だったのは、組み立ての段階でイラクの守備に対応できず、
同点になるまでこのパターンをほとんど使えなかったこと。
イラクは4−4−2にして2トップが日本のボランチをケアして、
日本のCBへのプレッシャーは比較的緩かった。
日本のCBのフィードがイマイチなことを見透かしていた。
ボランチが下がって組み立てを助けようとするが、
他の選手が連動しないのでパスがつながらない。
結局CBに戻して適当なフィードを弾き返されてしまった。

上手くいかなかった原因は色々あると思う。
選手が監督の言うことを聞きすぎることや、
余裕がなくリードした後に落ち着いてボールを回せないこと、
ここに酒井宏樹の組み立てのセンスのなさが加わるが、
内田がいないのが地味に響いている。
また、柏木も良いパサーだが、
遠藤にようにゲームをコントロールする力はないので、
組み立てが単調になってしまうのも辛い。

リードした時間帯のもう1つの問題はカウンターがとれないことで、
これは日本が格下相手の試合を強いられていて、
こうした展開にならないことが痛い。




meitei2005 at 16:18|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ハリルホジッチ・ジャパン 

2016年10月08日

入山章栄著『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』

著者にとってこの本は『世界の経営学者はいま何を考えているのか』に続く2冊目。
この2冊は内容がかなり被っているので、両方買うと損した気分になるかもしれない。

この著者が書いていることは次のように大きく2つに分類できる。


A、最先端の経営学の紹介(経営学の内容)

B、世間の人が経営学(者)に抱いているイメージと実際の違い(メタ的な話)


本書の挑発的なタイトルは、
Aの部分で「世界最先端の経営学」を教えますよ、ということと共に、
Bの部分で、なぜ「学べない」のかを説明する、ということを意味している。

Aの部分は、内容の選択の偏りはあるのかもしれないが、
普通に勉強になるような内容だと思う。

Bの部分での著者の主張は次のようなものである。

1、経営学は科学である(経営学者は科学者である)

2、経営学を学べば儲かるというのは短絡的な考え方である。
  経営学は「思考の軸」を提供するものであり、その意味で「役に立つ」

3、しかし、現状のMBA(経営学)の教育は2の意味で不十分である。
  その理由の1つが最先端の経営学が「ツール化」されていないことである。
  ツール化されない理由は、それが経営学者の研究業績にならないからだ。

1の点については「何が科学か」とかいう議論をし始めたらきりがないが、
とりあえずデータを使った定量的な分析をしている、というところだろうか(*)
だから経営学は「居酒屋トーク」とは違うし、経営学者はドラッカーを読まなくてもよいし、
経営学者は自然科学と同じように主にデータを使った研究で評価されるし、
ハーバードのようにケース分析をしているのはむしろ少数派だ、ということになる。
これに関することだが、本書の最終章(26章)で、MBAと経営学Ph.Dは全く違い、
後者では科学者を育成するための教育が行われていることを伝えている。

(*)「科学」についての議論は多いが、
   データや実験でだけなく、ある程度まとまった理論体系がある、
       というのも科学の条件に挙げられることが多い。
   その意味では経営学は未だ科学として不十分だ、という議論はありえる。


議論を呼ぶのは3の部分だろう。
現役の経営学者が、いくら所属先と異なる国での出版とはいえ、
経営学の教育が全体的にイマイチだと言うのは度胸がいる。
ただ、これは別に経営学に限らず経済学なんかも同じだと思うが、
外部から見てそうなんじゃないかと思うことで、違和感はない人が多いと思う。
このあたりが、MBAはまだ大丈夫なのかもしれないが、
近年の旧国立大学の文系解体論に繋がっていると思う。

(経営学でも会計等の制度的な知識は使えるが、
 法学でも憲法関係なんかは使えない。
 最初から短期的な利益を放棄している文学・哲学は関係ない)

ただ、疑問なのは3の後半の部分だ。
もし本当に最先端の経営学が「役に立つ」ものであるなら、
なぜそれを「ツール化」する人が現れないのだろうか。

例えば近年「ビッグ・データ」という言葉が盛んに使われている。
そこではSTATA, SPSS, SASという統計パッケージが用意されている。
これらは、本来プログラミングで実装するのが面倒な手法を
予め用意してくれているという、まさに「ツール化」されたものだ。
これらは別に統計学者が研究業績になるから作ったのではなく、
お金になるから会社や専門家が用意したものだ。

なぜ同じようなことが「最先端の経営学」では起こらないのだろうか。
確かに統計的手法と異なり統計パッケージとして売ることはできなくても、
本にして売れれば、その後の講演生活も含めて、著者として十分に割に合うはずだ。

1つの考えられる理由は、そもそも「ツール化」が難しい、というものだ。
これは、問題がそもそも難しいのだから、それを解けないのは恥ずかしいことではない。

しかし、これは現行のMBAの存在自体を否定するものである。
冷静に考えてみれば、たった2年間の教育で高度に専門的な技能が身につくはずもない。
自然科学は「最先端の経営学」よりも遥かに勉強することが多いと思うが、
それは小学校からコツコツと理科等で知識を積み上げて来ているのが大きい。
それでも最近では、それこそ最先端の分野では修士では対抗できなくなって、
博士でなければ待遇が悪くなる分野なども出てきている。
法学でもロー・スクールは通常3年だし、
それもそれまでに社会科学系の大学教育を受けてきていることが前提になっている。
「最先端の経営学」では、自然科学ほどではないにせよ統計や数学の知識がいるし、
実際にデータを回すとなると最低限のプログラミングの知識もいる。
また、本書でも挙げられている「リアル・オプション」や、
前著で議論された「内生性」の問題など、社会科学独自の考え方も必要だ。
文系で楽しい学生生活を送り、社会人になって非知的な環境で過ごした人間が、
こうした知識を習得するのにはいったい何年かかるのだろうか。
日本人には、さらにこれに英語という足枷が加わることになる。

更に問題になってくるのは、
ツール化の難しい最先端の経営学がそんなに役に立つのなら、
なぜそれを身に着けた最先端の経営学者を企業が雇わないのか、という点だ。
自然科学系を考えたらこれは明らかで、
自然科学の知識は役には立つが、簡単なマニュアルに落とし込むことは難しいので、
企業は修士や博士を持った人間を好待遇で採用している。
最先端の経営学を学んだ人間が同じ扱いを受けないのは、
そもそも最先端の経営学がやっぱり役に立たないのか、
世界中の企業経営者が揃いも揃ってバカだ、ということを意味している。

結論をまとめると、「最先端の経営学」は「役に立たない」し、
それをMBAで2年で学ぶというのも無理だろう、というものだ。
念のために書いておくと、アカデミックな意味で経営学が無意味とは限らない。

しかし、こうなると最後に疑問になってくるのは、
「役に立たない」経営学がなぜこれほど世間でもてはやされているかだ。
1つは、ケースなど古典的な学習法は役に立つ、というものだろう。
また、これも従来からよく言われることだが、
MBAはそこで学んだことにほとんど意味はなく、
そこで得られる人脈が重要であり、
あるいは高い授業料を払い、厳しい環境を潜り抜けてきたという
シグナルに意味があるのだ、という意見も多い。
特に大学が大衆化した現代では、シグナルは重要になっていると思われる。

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