岡田ジャパン

2010年07月02日

岡田ジャパン総括

◆谷間の世代が中心

最終的な岡田ジャパンのメンバーを見てみると、
大久保・松井・阿部・トゥーリオ・駒野とアテネ世代が中心だった。
また、佐藤寿・前田・田代・田中達・石川あたりは
代表に呼ばれなかったのが疑問視される選手たちだ。
それは年齢だけを考えれば当然の話で、
アテネ世代は現在28、29とサッカー選手としてピークの年齢にある。
逆に言うと、その年齢効果を上回るほど
他の世代がアテネ世代を凌駕していたわけではない。

それでも谷間の世代と言われるようになったのは、
その前の黄金世代と比較されたからだ。
ワールドユース(WY)準優勝、シドニー五輪ベスト8の黄金世代に対し、
2001WY・アテネ五輪ともにGL敗退となっている。
しかし、その後の世代を見ると、
北京五輪は3連敗でGLを敗退しているし、
WYも真っ当にGL突破したのは2003と2007で、
2005は2分1敗、2009は出場すらできていない。

そもそも、若い世代の国際大会の結果で世代を論じることに無理がある。
活躍した2003WYの選手をどれだけの人が思い出せるだろうか。
日本代表クラスの選手は川島・今野・徳永ぐらいのもので、
大会得点王になった坂田はマリノスでスタメンになるのに汲々としている。
この世代の長谷部はユースでスタメンになれず、大会に参加していない。
特に日本人選手には遅咲きの選手が多いし、
監督の能力や協会の力の入れ具合によって結果が大きく左右される。

アテネ世代を中心として、その前後の世代を加えたのが今回の代表だが、
このあたりに日本サッカーの底上げが感じられる。
日韓WCの時は、選手の質が上昇している時期で、
そのため若い世代を中心として選手が起用されることになった。
しかし、現在ではアテネ世代の前後も高い水準にあったため、
他の世代の特別能力の高い選手を起用したり、
アテネ世代の穴のポジションに補強することが出来た。

逆に言うと、これができなかったのがドイツWCの失敗の一因だった。
ジーコは高さが足りないことを日本の弱点だと言ったが、
それなら既に強豪となっていた浦和のトゥーリオを呼べばよかったわけで、
彼がいれば豪国戦の大逆転負けはなかったかもしれない。
中盤にパサータイプばかりが集中してしまったのも、
アテネ世代のドリブラーを起用すれば解決したはずで、
それなら中田や俊輔のパス能力を生かせる可能性も広がったはずだ。
また「水を運ぶ選手」として阿部・鈴木・今野が呼ばれることもなかった。

黄金の世代は、確かに素晴らしい選手が数人いたが、
全員が素晴らしかったわけではない。
それをカバーできなかったのは元代表監督の能力の問題もあるし、
現NHK解説者のアテネ五輪監督の無能さによって、
アテネ五輪の結果が散々なものに終わってしまったことも大きい。


◆8年前の振り出しに戻ったのか?

今大会ではベスト16という結果が出た。
これは日韓大会の時と同じ成績だが、
自国開催ではないこと、パラグアイに負けなかったことを考えると、
ジーコ時代の失われたドイツ大会を乗り越え、
半歩あるいは一歩前進したと受け止められるだろう。

しかし、日韓大会の教訓からすると、
今大会の結果は必ずしも前進とは考えられないかもしれない。
8年前のトルコ戦で敗れた際に多くの人が思ったことは、
日本はリアクションではそれなりのレベルに達したが、
リードされた展開から追いつくことはできない、というものだった。
トルシエのチームと岡田監督のチームはある意味で似ていて、
前半に攻撃的なサッカーを志向したものの、それに失敗し、
そこから守備とカウンターに軌道修正して成功し、
しかしベスト16で得点を奪えずに敗退している。

これを受けてのジーコ・オシム・岡田(大会直前まで)だったわけだが、
ジーコと岡田は監督の能力が追いつかなかった。
この問題は次の代表監督の大きな課題となるだろう。

1つの方向性として、今のやり方の精度を上げることが考えられる。
まずは選手選考とオプションの準備だろう。
また、現在の代表は守ってカウンターしかないので、
もう少しパスワークの質を上げて、
時間帯によってはより攻撃的に出る柔軟性を用意する。

もう1つの方向性は、抜本的に攻撃的な編成にすることだ。
これをやろうとしたのがジーコ・岡田なわけだが、失敗している。

前者の方向性がより普通なものではないかと思う。
これなら特別な指導者を呼ぶ必要もないし、
プチ・セリエと呼ばれるJリーグとの親和性も高い。
後者の方向性はよほど腰をすえてやら無くてはいけないが、
それだけの覚悟が協会にあるかといわれると・・・


◆トップ10を目指した戦い

今後の日本代表はFIFAランク10位以内が1つの目標になる。
これに入ればWCで第1ポッドに入る可能性が高くなるし、
そうなればGLを1位で突破しベスト16でも勝てる可能性が高くなる。

このためには、現在のトップ10相手に負けず、
それ以下のチームには高い確率で勝てなければならない。
つまり、カメルーンやデンマークだけではなく、
パラグアイにも勝てるようにならなければならないし、
オランダ相手でも引き分けに持ち込めなくてはならない。

そう考えると、今大会のように大会直前にチームを作るのではなく、
きちんと継続して結果を出し続けなくてはならない。
今後はそうした基準で代表が評価されるべきだと思う。

meitei2005 at 16:19|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2010年06月30日

感動の後味

日本対パラグアイ、WC決勝トーナメント1回戦、0−0(PK3−5)

・日本のスタメン

本田
大久保
松井、遠藤、阿部、長谷部
長友、トゥーリオ、中澤、駒野
川島

・パラグアイのスタメン

ベニテス、サンタクルス、バリオス
レベロス、オルティゴサ、ベラ
モレル、アルカラス、ダ・シルバ、ボネット
ビジャール


◆試合展開

ビデオを見返していないので、簡単におさらいを。

試合展開は予想通り0−0の我慢比べが続いたが、
結局はそれが120分間続くことになってしまった。
いかにも決勝トーナメントらしい戦いだった。

パラグアイはここまで3戦スタメンのバルデスを外し、
運動量がある彼を後半の勝負どころで日本が疲れたときに投入する狙い。
ボールを支配するものの、前の3人以外はさほど流動的な攻撃は見られず、
バランスをとることを最優先していた。

一方の日本はここ3戦と同じのスタメンなのだが、
長谷部があまり前に出ずにバイタルのスペースを埋めることが多く、
遠藤トップ下の4−4−1−1で守る時間が長かった。
本田が一方のCBのケアをして、
もう一方のCBにボールが回ると遠藤が前に出て対応。
これまでの試合ではCBをフリーにしてパスを出されることがあったが、
そのあたりの修正がなされていた。

後半、日本はこれまでの試合ほどは押し込まれることもなく応戦。
この試合で始めて憲剛を後半36分に投入したが、
スピードがあってパスを散らせる彼の投入は正解。
オプションが無かった日本代表だが、
最後の最後に岡田監督なりの仕事を見せてくれた。


◆Good Loser

この試合に関しては、現状のやり方・選手編成の中では、
選手・監督ともにほぼベストを尽くしてくれたと思う。
少なくともパラグアイ程度であれば負けないことは確認できた。

特に選手は120分間全く集中力を切らさなかった。
おそらく耐え続ける展開になることは覚悟していただろうが、
後半・延長戦になってからも足が止まらなかったのは素晴らしい。
コンディショニングに成功していたのが大きい。
デンマーク戦は、特に2点取って以降は、ほぼ2位抜けが決まっていて、
省エネモードで跳ね返すことに専念していたようだ。

交代策も、定番になっている松井→岡崎は当然としても、
阿部→憲剛は、勝ちに行く姿勢に驚かされたし、実際に有効だった。
今野あたりを入れて守備の手入れをしてくると予想していた。
玉田の投入はやはり効かなかったが、
あの時間で他に有力な選手もいないのでしょうがない。
もちろん長谷部→森本として本田をトップ下に下げ勝負する手もあるが、
流石にリスキーすぎると判断したのだろう。

チーム一丸となっている姿は良かった。
負けた後もPKを失敗して泣く駒野とそれを慰める選手や、
全力を出し切って佇むトゥーリオもよかった。

試合後の監督と主将のインタビューも好感が持てた。
監督はこれまで「日本社会はうんたら」と軽薄なことを言って顰蹙を買っていたが、
この試合後に日本サッカーの将来を問われて、
それに答えられなかったことは現在の試合に集中していたことが現れていた。
一方の主将は「選手の多くはJリーガーなのでJリーグを見てください」と
試合前から用意していたんじゃないかと思うほど素晴らしいコメントを残した。


◆選手・監督

本田。本気で守備をしていて、それがそれなりに有効だった

大久保。延長戦までキレが続いた

遠藤。前半はミスが多く心配したが、後半以降はミスが減り運動量も維持

駒野。後半疲れたところでバルデスを抑えた

中澤・トゥーリオ。ほぼ完璧な鉄壁の守り

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2010年06月25日

日本対デンマーク

WC、グループリーグE組、3−1


・日本のスタメン

本田
大久保
松井、遠藤、阿部、長谷部
長友、トゥーリオ、中澤、駒野
川島

・デンマークのスタメン

ベントナー
トマソン
カーレンベルク、ヨルゲンセン、C・ポウルセン、ロンメダール
S・ポウルセン、アッゲル、クロルドルップ、ヤコブセン
ソーレンセン


◆試合展開

上記の通り、日本のスタメンはここ2試合と同じだが、
なぜかシステムを4−1−4−1から4−4−1−1に変えてきた。
岡田監督によると「攻撃的に」とのことで、意図はよく分からないが、
引き分けでも良いという状況で消極的にならないための
メンタル・コントロールを考えてのことだろう。

ところが、この新しい守備戦術が機能しない。
本田・大久保と後ろの8人の距離感が悪く、
CHのヨルゲンセンとC・ポウルセンにプレスがかからない。
中央では2ラインの間に楔を入れられ、
サイドではSB(特にS・ポウルセン)の攻め上がりに着いて行けず、
駒野が前に出るとその裏にトマソンに走りこまれる。
この展開を見て、立ち上がり15分で日本は早速システムを元に戻した。

特に仕事が難しいトップ下を、大久保にやらせた判断が最悪だった。
例えば、08−09CL準決勝のバルサ戦のチェルシーは同じシステムだが、
トップ下で守っていたのは頭脳明晰なランパードだった。
(この試合の詳細は蹴球計画を参照)

4−4−1−1で守る際にはトップ下には高度な判断力が求められる。
例えば本来マークすべきCHがDFラインに入ってパスを回してくるとか、
もう一人のCHと共に中盤の4枚の前でボールをキープしてくるとか、
サイドに流れてサイドで数的有利を作ろうとしてくるとか、
様々な状況に対して適切なポジショニングをしなくてはならない。
それを大久保に求めるのは酷な話で、
長谷部か遠藤をトップ下にする方が大分マシだった。

しかし、こうした戦術的な話とは関係ないところで試合は動く。
17分に本田、30分に遠藤のFKが決まって2−0で日本がリード。
これで、ほとんど試合の趨勢は決まってしまった。

後半も見慣れた展開で、プレスがかからなくなった日本を相手に
HL付近からデンマークはフリーでボールを入れ続け、
日本はペナ付近でひたすら跳ね返し続ける。
岡崎を入れるものの、ついに後半36分にPKを取られてしまうが、
その後に本田の崩しから岡崎が決めて勝負あり。


◆勝敗を分けたもの

もちろんFKが決まったことは運だが、
そこでFKをとれたことには必然性があった。

大きかったのは、やはりデンマークが勝たなくてはならなかったこと。
ボール支配率をみると、大体どの時間でもデンマークが上回っている。
もちろん日本陣内でゲームが進むリスクもあるのだが、
カウンターになってみるとスペースを与えられて、
俊敏性のある日本のWGが勝負できていた。
そうなると、どうしてもファウルで止める場面が増えてくる。

これが逆だと厳しいことになる。
引いて守る屈強な守備陣相手に日本は攻めなくてはならず、
しかもロンメダールなどスピードのある相手のカウンターも怖い。

日本のスタメンが試合展開に相応しい構成になっていることも大きい。
ロングボールを入れられる体の強い1トップ、
スピードと俊敏性があってドリブルができるWG、
パス能力があって長い距離を走れるCHとSB、
ロングボールを跳ね返せる高さと強さがあるCB。


◆パラグアイ戦

パラグアイの守備は堅く、今まで以上に我慢を強いられる展開。
ただサンタクルスがいるものの、通常の攻撃力はさほどでもない。

要注意なのは、これまでのチームにない流動的な攻撃。
パラグアイは伝統的に守備が堅いが、攻撃力がなかった。
今大会は引いた相手には前線がポジションを大きく変えてかく乱してくる。
こうしたチームはこれまでなかっただけに、対応できるかどうか。
デンマーク戦でもトマソンに動かれると苦労したが、
あれを3人ほどでやってくる可能性がある。

攻撃面では、今までのような俊敏性のミスマッチは使いづらい。
従って、いいところでFKをとるのは難しい。
むしろCKなどで高さ勝負をした方がいいかもしれない。
流れの中でも本田の高さをSBにぶつけたいところ。

両者の特徴からして0−0の時間が長くなる可能性が高い。
そうなるとオプションの差が明暗を分けそうだ。
今大会では岡田監督の交代は遅いが、
まともなオプションがないことも原因の一つ。
岡田監督の力量が問われることになりそうだ。

日程的にはこれまでと同じ中4日なので、
これまでと同じ感覚でコンディション調整ができる。
ここまでは気合でなんとかなっているが、
そろそろ体力の回復具合が気になってくるところ。


◆その他

本田は地味にポストプレーが巧くなっている気がする。

松井が疲れたかどうかを見極めるには、
軽くて無駄なプレーが出てきたかどうか。

日本のCBはロングボールに対して目測があっていないことが多い。
高地と低地を行き来しているので、飛び具合を測りかねているのか。

meitei2005 at 21:48|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2010年06月21日

奇策は二度は通じない

GL第2戦、オランダ対日本、1−0


・日本のスタメン

本田
大久保、遠藤、長谷部、松井
阿部
長友、トゥーリオ、中澤、駒野
川島

・オランダのスタメン

スナイデル、ファンペルシー、カイト
ファンボメル、デヨンク、ファンデルファールト
ジオ、マタイセン、ハイティンガ、ファンデルヴィールト
ステケレンブルフ


◆試合展開

日本はカメルーン戦と同じスタメンで基本的に同じ戦い方。
ロベンがいない上にコンディションが良くないオランダと前半はいい勝負。
しかし、前半で日本がシュート数で上回っていたことからも分かるように、
前半の日本は明らかに飛ばしすぎで、後半にバテるのがミエミエ。
案の定、カメルーン戦と同様に後半の早い時間から足が止まり始め、
押し込まれた挙句にバイタルを空けてスナイデルにミドルを叩き込まれた。
ここのシュートの精度が高いのがオランダとカメルーンとの差。

松井に代えて俊輔を投入したときに引っくり返った人は多かったに違いない。
その後に投入された玉田共々まったく機能せずに終了。
オランダは得点後はペースを落とし主力を交代させ体力温存モードに。
日本にまともな攻撃オプションがないのを見越していた。


◆構造的欠陥

もちろん他のやり方はあったのだろうが、ほぼ必然の敗戦だった。

まず、本田をあそこで使うという奇策が通用しなかった。
カメルーン戦ではアスエコト相手にロングボールを使うという意味があったが、
ジオはもう少し守備ができるし、オランダの中盤はもう少しカバーしてきた。
もちろん、CBと競っても勝てるはずがない。

中盤の選手の負担が大きいため、後半に足が止まるのも仕様。
今大会ではやたらと長谷部のパスミスが目立つが、
コンディションの問題で無ければ、やはり体力的な問題だろう。

そして、思いつきで出来たチームだけに対応策が準備されていない。
本来、本田のところに起用すべき高さのあるFWがいない。
その手があれば俊輔のところでそのFWを入れ、
サイドの守備に目をつぶっても本田を右WGに回すか、
4−4−1−1にして本田をトップ下に置くのが本筋だろう。
WGの交代要員も不十分だし、長谷部の交代要員もいない。

走れるSH(WG)、高さのあるFW、短い時間で効果的な攻撃的な選手。
このブログをご覧の方なら、大分前からご存知の問題。
それが今ここで現実となって露呈しているわけだ。
内田のところの問題は幸い解消されているが、
露呈していないだけでCBの控えの問題も解決せずにここまで来てしまった。
カメルーン戦だって運よく先制できたから良かったものの、
そうでなければどうなっていたことやら。

逆に言うと、これだけ準備がなされていない状態で、
酷い状態とはいえカメルーンに勝ち、
駒落ちで体力温存モードとはいえオランダに1点差。
やはり日本の選手のレベルはかなり高いところにある。
それだけに、監督や協会のレベルの低さが残念。


◆デンマーク戦

オランダ戦を見ていて驚いたのは、日本が同点ゴールを狙いに行ったこと。
前回書いたように、デンマークがカメルーンに1点差で勝つとすれば、
引き分けと1点差の負けに実質的な差は無くなってしまう。
もちろん結果的に1失点で済んだから良かったのだが、
GKとの1対1を2回作られたのだから相当リスキーだった。

もちろん、デンマークが2点差以上で勝つ可能性もあったし、
逆にカメルーンが勝つか引き分ける可能性だってあった。
しかし、今大会のカメルーンの仕上がりからすると、
デンマークに勝ってしまう可能性はかなり低いし、
引き分けたとしても消化試合のオランダ相手でも勝てる可能性は低い。
また、デンマークの攻撃力もイマイチなので、
デンマークが2点差をつけて勝つ可能性も低そうだ。
そのあたりの計算をきちんとやったのだろうか。
それとも「正々堂々」オランダと戦いたかったのだろうか?

ともかくデンマーク戦で引き分けでも決勝Tに出場できる環境は整った。
デンマークはCBが出場停止だし、ベントナーも怪我気味。
そもそもベテランが多くて3戦目にどれだけの調子かも微妙。
従って日本が引き分け以上の確率は低くはないのだが、
やはり上記の構造的な欠陥があって楽観視は難しい。

まずスタメンの構成が悩ましい。
今の雰囲気では本田を外すことは難しそうだが、
彼を使いつつバランスを保つことは至難の業。
中盤中央の3枚を代えれないし、サイドに穴を作らないとしたら、
やはり今の本田1トップしか残されてないのだろう。
しかし、オランダ以上にロングボールが効かないデンマークに、
本職ではない本田が競らなければいけないのは辛い。

また、リードされたときに攻撃に出るオプションはないし、
逆に守備を固める交代策もほとんど無いのが現状だ。
WGの交代枠は一応、矢野と岡崎なのだろうが、
仕様となっている長谷部の交代要因は誰になるのか。
同点以上なら今野で守備固めとなるのだろうか。
もう少しペースを落とした戦い方が出来れば長谷部ももつかもしれないが、
なかなかそういった展開をできるとも思えないわけで。

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2010年06月15日

日本対カメルーン

南アフリカWC、GL、E組第1戦、1−0

・日本のスタメン

本田
大久保、遠藤、長谷部、松井
阿部
長友、トゥーリオ、中澤、駒野
川島

・カメルーンのスタメン

ウェボ15、モーティング13、エトー9
エノー18、マティップ21、マクーン11
アスエコト2、バソン5、ヌクル3、エムビア19
ハミドゥ16


◆ソングの乱

おじのR・ソングの起用をめぐってA・ソングも監督と確執。
そのため、日本戦には欠場してしまっている。

とはいえ、一人二人の中心選手が出られないだけなら言い訳にならない。
やはりコンディション作りが上手くいっていないように見えた。
1対1の場面で日本の選手の方が出足がよく、
ボールをカットしたりファウルをもらったりしていた。

また、エトーを右WGで起用してチャンスメークをさせたため、
最も怖い選手がゴールから遠くにいるハメになってしまった。
このあたりにも、アフリカ特有の選手層の薄さが透けて見える。


◆日本の戦術

日本のポイントは右サイドから中心に攻めて行くこと。
エトーがいる左サイドのSBは上がりにくいし、
カウンターを食らうとエトーに攻め込まれてしまうのが怖い。
また、攻撃に特徴があるアスエコトの方から攻めた方が効率がいいし、
左WGのウェボはあまり守備をしようとしない。
長谷部も絡めて右サイドから日本は多くのクロスを入れていき、
逆サイドの大久保はとにかく走ってゴール前の人数を増やす。

ゴール・キックなどロングボールでは本田とアスエコトが競る場面が多いが、
日本で最も体の強い選手をカメルーンで最も細い選手に当てる作戦が成功。
これで時間を作れたことが守備をかなり助けていた。

このパターンだと大久保、松井、遠藤、長谷部の負担が多くなる。
そこで松井と岡崎、大久保と矢野を交代させたのだが、
遠藤と長谷部がバテて相手のCHにプレスがかからなくなり、
後半途中からは一方的に攻められる時間が続いてしまった。
また交代で右サイドに入った矢野がアスエコトに振り回される。
俊敏性のミスマッチが起きていて、あまり守備で効かなかった。

このあたりに、今回の岡田ジャパンの行き当たりばったりさが見える。
矢野ではなく石川だったらアスエコトに着いていけるしカウンターの種になる。
長谷部の代わりも柏木だったら一方的に攻められるリスクは減ったはず。
岡田監督お気に入りの玉田や内田の出番が全く無さそうなのが痛い。


◆松井の気迫

この試合でもっともポジティブな驚きだったのが松井のプレー。
ドリブルやクロスが上手いのは当然だが、守備でも健闘が目だっていた。

特に素晴らしかったのは先制直後のプレッシャー。
点を取った方はどうしても気持ちが緩みがちだし、
取られた方は取り返そうと前に出てくる。
ところが松井が猛然と追い回して相手の出鼻を挫いていた。
これほどの知性と気迫がある選手だとは思わなかった。


◆オランダ戦

デンマーク対カメルーン戦の結果によるのだが、
デンマークが1点差の勝ちであれば、
日本はオランダ戦に1点差の負け以上で
最後のデンマーク戦を引き分けで決勝Tに上がれることになる。
デンマークとカメルーンが引き分けた場合でも、
オランダがカメルーンに負けるとは考えにくいため、
やはり日本の最終戦は引き分けでいいことになる。
つまり、次のオランダ戦は2失点しないことが重要になる。

日本は作戦を変えてくるかどうか。
同じパターンならファン・ブロンク・ホルストに本田を当て、
右サイドからの攻撃に活路を見出すしかない。
しかし、ファン・デル・ファールトがいる中盤を抑えるのは難しい。

あるいは、本田1トップを諦めてしまう手もある。
オランダのCBは高さはあるがスピードは無いため、
森本や岡崎あたりを先発させて積極的にDF裏を狙う。

日程に余裕があることもあり、本田1トップは変わらないだろうが、
どちらにせよ、中盤の4人の運動量が必要で、
今度こそ遠藤と長谷部がガス欠を起こしたときの対策が必要になる。

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2010年05月30日

逃避の代償

親善試合、日本対イングランド、1−2


・日本のスタメン

岡崎
大久保、遠藤、長谷部、本田
阿部
長友、トゥーリオ、中澤、今野
川島

・イングランドのスタメン

ルーニー、ベント
レノン、ランパード、ハドルストン、ウォルコット
A・コール、テリー、ファーディナンド、ジョンソン
ジェームズ


◆イングランドの状況

イングランドにとってこの試合の意義は、
主力のコンディションの確認と最終メンバー(オプション)の確定にあった。
そのことが災いして、特に前半は低調な内容になっていた。
そのため、この試合の結果を日本は善戦と捕らえることには無理がある。

イングランドは24日にメキシコと親善試合を行っており、
その試合でも上の2つのポイントのチェックが行われたため、
そこの出場選手と比較すると分かりやすい。
但し、FAカップ決勝をやったチェルシーとポーツマスの選手は欠場。
(ポーツマスの選手はGKのジェームスだけ)


・メキシコ戦

スタメン

ルーニー、クラウチ
ミルナー、キャリック、ジェラード、ウォルコット
ベインズ、キング、ファーディナンド、G・ジョンソン
グリーン

選手交代

46分 グリーンout ハートin
46分 ファーディナンドout キャラガーin
46分 クラウチout デフォーin
61分 キャリックout ハドルストンin
77分 ウォルコットout レノンin
85分 ミルナーout A・ジョンソンin

キング・キャラガーのCB、
キャリック・ハドルストンのCH、
ウォルコット・レノンのWGタイプのSH、
Aジョンソン・ミルナーのSH、
クラウチ・デフォーのルーニーとの相性、
これらのチェックが行われた模様。


・主力のコンディションの確認

優勝候補の一角に挙げられるイングランドだが、
主力に不調の選手が多く、優勝は難しいと私は見ている。

ルーニーは足首が痛く、ファーディナンドも怪我から十分に回復してはいない。
スタメン落ちしたジェラードも怪我からの回復具合が不透明。
テリーは言われるほど不調ではないと思うが、
最も良かった時期と比べるとやや怪しい部分もある。

特にCBが本調子でないのは、守備的MFの目処が立たないだけに怖いところ。
前半に岡崎が抜け出してシュートを上に外した場面があったが、
あの場面ではまずテリーがロングボールの対処をミスして後ろにそらし、
ファーディナンドもクリアをし損ねて岡崎に抜け出されている。
これがキング・ドーソン・キャラガー・アプソンが30人に残っている要因。

また、イングランドは結局のところルーニーのチームなので、
彼のコンディションが整わないのは気になるところだ。
ここがしっかりしないと、優勝どころかベスト4も危うい。


・最終メンバー(オプション)の確定

イングランドはまだ23人を決めておらず、30人が選考に残っている。
とはいえ、カペッロは20人は決まっていると述べており、
残りの3枠を9人が争っている段階と言うことになる。
後半頭から一気にフィールドプレーヤー4人を入れ替えてきたのは、
交代した選手の多くが当落線上にいるということだろう。
この試合ではハドルストン・レノン・ウォルコット・Jコール・SWP。

特にハドルストン以外はWGタイプのSHの選手で、
ここの最終確認がこの試合の最大のポイント。
そのため、前半はあえてレノンとウォルコットを並べて先発させ、
それぞれがどれだけやれるかをチェックしたようだ。
しかし、WGタイプを揃えたことで中盤の構成力が低下し、
ランパードが代表ではあまり目立てないこともあって、
ルーニーにかかる負担がかなり大きくなってしまった。
このあたりが、前半のイングランドが低調だった原因。

イングランドの前半のもう一つの問題は、ハドルストンが低調だったこと。
得意のパスで制度を欠き、守備でも俊敏性に優れる日本の選手を捕まえられない。
ここもバリーの負傷が響いており、それがジェラードの足かせになってしまった。
CHではパーカー・キャリック・ミルナー・ハドルストンの誰が残るか。

23人に確定の他にもオプションの確認も行われた。
今季プレミアで大活躍したベントはルーニーと相性が良いかどうか、
バックアップがいない右SBをキャラガーがこなせるかどうか、
リードされた試合でランパード・ジェラードをCHに並べて機能するか、
J・コールをセカンドトップにするのはどうか。


◆日本の問題点

上記のようなイングランドの事情があるため、
遠藤の復調、アンカーの阿部が機能したとはいえ、
この試合の内容と結果ではあまり明るい材料とはならない。

特にコンディションの悪い選手が多いことは致命傷になりかねない。
俊輔・内田・稲本あたりが本番で使えるかどうかが不透明。
また、地味に楢崎が良くないのも気になる。
韓国戦の2失点は、1失点目もクリアしたかったし、
2失点目のPKも飛び出しのタイミングが悪かった。
この試合で代わった川島は良かったものの、どうするのだろうか。

また、選手のバランスが悪いことも痛い。
この試合は格上相手ということで、かなり守備を意識したスタメンだった。
しかし、いざうっかりリードできてしまうと、守備を固める手段がない。
岡崎と森本の交代は運動量を考えればまだ分かるが、
守備で効いていた大久保と松井の交代は失敗。
1失点目は松井の守備での位置取りの悪さが躓きの一歩目で、
彼の横をレノンに縦パスを入れられたところからピンチを招いた。
もちろん、2人でレノンに寄せながら外されて、
サイドでフリーになったJ・コールにパスを通された阿部と長友が戦犯だが。

押し込まれた後半に、運動量を上げるオプションがないのは厳しい。
特にサイドの守備も受け持つSHの負担が大きくなるだけに、
柏木など走れるSHを用意してないことは大問題。
本田も守備では多くは期待できないため、日本のサイドは穴。
ただ、幸い日本の対戦相手のSBはイングランド程ではないため、
そこまで酷いことにならない可能性は高いが。
また、この試合の4−1−4−1だとCHの控えも憲剛だけで、
稲本が帰ってきたとしても運動量が多いタイプの選手がいない。

あれだけ走ることを強調する岡田監督が、
選手選考ではそういったタイプを用意していないのは皮肉だが、
このあたりに夢想家の夢想家たる所以がみえる。
WC直前に目が覚めたとしても遅すぎる。
サッカーの世界でも日本人は、ルーピーに悩まされることになりそうだ。


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2009年10月15日

「普通の」日本代表

親善試合、日本対トーゴ、5−0


・日本のスタメン

森本、岡崎
憲剛、遠藤、長谷部、俊輔
長友、トゥーリオ、中澤、徳永
川島


 玉田離脱と憲剛左OHの4−2−2−2の採用で、
日本代表はようやく普通のチームになってきた。
FWの組み合わせは1stストライカーの森本と2ndの岡崎。
OHは技術があって、SBやボランチがそのフォローと追い越し。
攻撃パターンはサイドからの崩しにFWが飛び込んで、
その後ろのスペースを憲剛や長谷部が狙う。
合理的で整合性のある構成。

 コンディションの落ちていた内田のところに徳永を用意。
攻撃的オプションとしては佐藤、本田、大久保、石川。
守備のオプションは今野や阿部あたりになる模様。
最終23人の予想となると、SBは微妙なところ。
今野が左SBの控えだとなれば駒野out徳永inかもしれない。
ただ、SBの攻撃参加はこのチームの生命線なので、
長友が負傷してしまうと厳しいことになる。

 普通のチームなので、残る課題も常識的なもの。
CBの控え、守備能力の高いOH(SH)、高さのあるFWを用意すること。
ブラジル・アルゼンチン・英・独・仏・伊・西あたりの強豪だと、
攻撃能力の高いSBや1対1では対応が難しいSHがいる。
その場合にはOHの守備力が求められるが、憲剛・俊輔では危ない。
大久保は調子を落としているか劣化しているので厳しいかもしれない。

 負けている試合でパワープレーをする際には高さのあるFWが必要で、
今の召集メンバーにはこういったタイプの選手はいない。
最後の15分に疲れているCBを上げるのは効果が薄い。
田代・巻・長谷川あたりをオプションにしておきたい。

 大抵のチームは引いた相手を崩すのに苦労するものだが、
高さの無い日本は特に考えておきたいポイント。
今のところは憲剛のミドルぐらいしか武器が無い。
ドリブラーがペナ付近でファウルを取ってくれたらいいが、
そういったタイプも多くはない。
石川がどれだけ通用するかが重要になってくる。
押し込んだ際のロングカウンター対策も、
CBのスピードがないだけに重要な問題。

 あと、今のメンバーでは高さが無いので、
攻守のセットプレーでは工夫が必要になるかもしれない。
クローザーという意味でも高さのあるFWは1人欲しい。
CBの控えがSBを兼ねられるのが望ましいが、
あまりそういうタイプは思いつかない。

 普通のチームは勝てるチームであることを意味しない。
ただ、現状の日本の実力を測るには良い試み。
上記の課題をクリアすれば、もちろん相手によるが、
GL突破の可能性は30%ぐらいはあると思う。


meitei2005 at 00:25|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2009年09月08日

オランダ対日本

親善試合、3−0。

追)一つ書き忘れたので、補足を。(ガーナ戦の文章はありません)
この試合でもセットプレーの流れから失点してしまっているが、
高さが足りない、というのも岡田ジャパンの慢性的な問題点。
GK楢崎と両CBにはそれなりの高さはあるものの、
その次に来るのが長谷部とか内田ではいかにも心もとない。
前線に巻を起用しろ、というのには防空という意味もある。
もちろん他のポジションに高さのある選手を使ってもいいのだが、
SBはとにかく運動量・攻撃力というのか岡田の方針のようだし、
今更中盤を大きくいじってくるとも考えにくい。
もちろん、高い位置からのプレッシングでゴールから遠いところでボールを奪い、
支配率を上げて守る回数を減らしてしまうというバルサ方式もあるが、
今の日本代表がどれだけやれるかはかなり疑問。


◆オランダ酷すぎワロタ

 2ch的に前半のオランダを評すると、こんな感じでしょうか。

 FIFAランキング3位とか、最低でもWCでベスト4を目指すとか、
オランダはいかにも世界の強豪といった雰囲気だが、
年々スケールダウンして今では並みの強国といった程度。
08ユーロでは準々決勝でヒディング=ロシアに完敗、
06WCでは一回戦でポルトガルとの泥試合で敗退、
02日韓WCではそもそも出場できていない。
04ユーロではベスト4に残ったものの、
準々決勝ではスウェーデン相手に内容では押されながらのPK勝利だった。
WC予選では7連勝であっさりと出場を決めているが、
グループ9の対戦相手はスコットランド、ノルウェー、マケドニア、アイスランドと
弱小チームぞろいで勝っても何の自慢にもならない。

 この試合の前半も驚くほど酷い内容だった。
まず自陣からボールをつなごうとするのだが、
DFとボランチにパスが上手い選手がほとんどいないため、
積極的にプレスを掛けられると簡単に立ち往生してしまう。
(それにしてもボランチのメンデスは酷かった)
WC予選で相手にしている弱小国なら、
「オランダ」という名前だけで引きこもってくれるのだろうが、
身分不相応なWCベスト4を掲げる狂信的な極東の国に執拗に追いかけられると、
情けないほどボールをつなげないことが露呈していた。
前半途中から業を煮やしたスナイデルがボランチの位置まで下がってくる始末。

 ボールがつなげないならロングボールしかないのだが、
これを上手くやれないのがオランダの厳しいところ。
CFにカイトを起用しているのだが、空中戦でトゥーリオに完敗。
このあたりは去年のユーロでロシアに完璧にやられたパターンだった。
ただ、フンテラールを入れてからは多少マシになっていた。

 一つ抑えておかなければならないことは、オランダのコンディション。
欧州ではシーズンが始まったばかりで、選手のコンディションは整っていない。
スナイデルやロベンはまだ1試合をこなした程度だ。
前半のオランダは日本相手に様子見だった、あるいは手を抜いたという見方もあるが、
試運転状態だったと考えた方が妥当ではないかと思う。


◆日本の惨状

 しかし、こうした相手にも勝てないどころか完敗してしまうのが日本の現状。
前半はプレスが効いてボールを奪うことに成功していたが、
肝心のカウンターの仕込がなくフィニッシャーがいないため点にならない。

 玉田は相変わらず周りと連携が悪いのだが、
いったい今のメンバーと何試合やっているのだろうか?
無駄にサイドに開いてボールを受けるものの、
そこから相手を抜き去るほどの実力はなくてボールを中盤に戻すだけ。
お陰で肝心のゴール前に人数が不足して、
岡崎が間に合わないと1人もいないということすらあった。
なぜSBが相手ゴールに一番近い位置にいたりするのだろう?

 本来なら森本を試したかったところなのだろうが、
彼以外にも佐藤などトップに適正がある選手はいる。
にもかかわらず、岡田は相変わらず意味不明な選手起用を続けている。

 また、前半から運動量を上げまくっている割には、
交代策がほとんどないという問題もそのままだ。
今のやり方だと岡崎の負担が尋常ではないことになるが、
SHを任せられるタイプを全く用意できていない。
ここも香川とか訳の分からない起用を繰り返した報い。

 本田が上手くいかない、というのは容易に分かることなのだが、
この試合ぐらいは使ってみるという判断は理解できる。
ただ俊輔が文句を言っていた様に、特に途中出場の選手としては最悪。
もちろん本田の一発に期待するという考え方もあるのだが、
だったら他のメンバーとの整合性とか…

・日本のスタメン

玉田
岡崎、憲剛、俊輔
遠藤、長谷部
長友、トゥーリオ、中澤、内田
川島


・オランダのスタメン

ロベン、カイト、ファン・ペルシー
スナイデル
デ・ヨング、メンデス
ジオ、マタイセン、ローフェンス、ビール
フォルム

meitei2005 at 17:59|PermalinkComments(10)TrackBack(0)

2009年06月18日

ジーコ時代の悪夢、再び

◆単純な話

もちろん、私は岡田監督がジーコと同レベルだと主張したいわけではない。
前者は曲がり形にも、若手の抜擢、まともな選手起用、適切な交代策が備わっている。
前者が魅力の無い実務的な福田内閣だとすると、後者はアルカイダぐらいの違いがある。


 以前この様に書いたのだが、
今ではこれでも見通しが甘かったのではないかと思い始めている。

 岡田監督は日本が目指すサッカーについて、
守備では数的優位を作ってプレスを掛けること、
攻撃ではサポートを早くしてボールを動かすこと、と述べている
本当に今でも岡田監督がこう考えているかは不明だが、
一応これを前提にして豪国戦のスタメンを見てみよう。


玉田
松井、憲剛、岡崎
橋本、今野
長友、トゥーリオ、阿部、内田
楢崎

 まず守備では早速プレッシングという狙いが破綻している。
松井の守備は期待できないし、玉田・憲剛も微妙なところだ。
岡崎も本来なら走れる選手なのだが、
サイドの守備と前線の飛び出しの2重の負担がかかっており、
しかも交代策がないため90分動きを維持するのは難しい。

 攻撃面でも松井、岡崎、今野の起用は理解できない。
松井はボールスキルはあるが判断が悪く、ボールを受ける動きに乏しい。
この他に玉田もドリブルとスピードはあるものの判断が悪い場面が多く、
スペースを消されてしまうとポストプレーが上手くないので機能しない。
また、サイドアタックを狙うのに中が玉田というのも矛盾している。

 憲剛のトップ下での起用もミスだろう。
彼の川崎でのプレースタイルを考えたら、
どうしても縦に早いスタイルになってしまう。
回りのフォローもないのにポゼスをしろと言うのが無理だ
また、この点についてきちんと憲剛を指導した形跡もない。



◆対案

 それでは誰を起用すればよかったのだろうか。
とりあえずDF4人を固定させた上で対案を考えてみよう。

 プレッシングを機能させようと思えば、前線に守備能力の高い選手が必要だ。
FWでは巻・矢野、SHでは柏木を起用すればいい。

 攻撃面でポゼッションを機能させるにはどうすれば良いだろうか。
遠藤・俊輔がファースト・オプションなのはいいとして、彼らが出場できない時にどうするか。
CHには憲剛の他にも青山や森崎和を使うことができる。
SHにも万能型の小川や、調子の良い石川、他には狩野もいる。
特に小川や石川はボールの受け手やフィニッシャーにもなれるので、
大久保不在の際には貴重な戦力になりうる。

 FWには誰を起用すべきだろうか。
ポゼスとの相性ではポストプレーが上手い選手を使う手があるが、
現状の日本人選手ではあまり適任がいない。
前田か佐藤、あるいは柳沢あたりだろうが、決定力を考えたら佐藤か。
サイドからの攻撃に拘るのであれば、巻・佐藤の優先順位が高い。

 ただし、FWの選択は4−2−3−1の3に誰を置くかも重要になる。
フィニッシャーになれる田中・大久保・岡崎、あるいは小川・石川を使うとすれば、
DFの裏を狙ってスペース・メイクできる佐藤がいいかもしれない。
あくまで憲剛システムに拘って彼のミドルを使いたいのなら、
前田や柳沢を使う手もあるかもしれないが、機能するかどうか…

 実はプレスもポゼスも狙っておらず、
引きこもってロングカウンターを狙っているのかもしれない。
憲剛の起用を考えたら、今の岡田監督の狙いはむしろこちらなのかもしれない。
しかし、だとしたらCBには岩政あたりを呼ぶべきだろうし、
SBも特にハイボールに弱い内田ではなくCBタイプを起用すべきだ。
前線にもスピードを考えて興梠、佐藤、石川、佐々木を使うべきだろう。
SH(WG)に長い距離を走らせたいのであれば矢野を先発にする手もある。

 また、松井や本田の一発芸に期待しているのかもしれない。
その場合には守備をしない・できない彼らのカバーが重要になる。
その意味ではこの試合のメンバー構成は悪くないようにも見える。
数年前のロナウジーニョがいた時のバルサを思い浮かべて欲しいが、
中盤中央の3人とSBが松井をケアをして、逆サイドのWG(岡崎)は長い距離を走る。
ただ、松井はそこまでスペシャルな選手ではないし、この試合でも何もできなかった。
また、その場合にはトップに決定力のある選手(エトー)が必要なので、
やはり玉田の起用には全く合理性がない。


◆選手起用の背景

 つまり、どう考えても岡田監督の選手起用に合理性がないのが分かる。
松井にせよ本田にせよ、ワンポイントでアクセントや切り札にするならともかく、
彼らを、特にスタメンで起用することの理由を探すことは難しい。

 しかし、上手く説明できてしまうマジックワードがある。それは「海外組」だ。

 岡田監督は、選手のタイプや組み合わせなどを全く考慮せず、
なんとなく世間の評判の高い「海外組」を起用しているだけなのではないだろうか。
長谷部が抜擢されたのもドイツに行ってからのことだったし、
機能しないことが分かりきっている稲本や小野が試されたこともあった。
「海外組」で呼ばれていないのは、明確に拒否している森本だけだ。
彼もひょっとしたら1年後に日本代表として出場しているかもしれない。
逆に対案として出された選手は全員がJリーガーとなっている。

 こうしてみると、岡田監督とジーコの間に大きな違いがないことが分かる。
オール・スター的に選手を起用して、後はハッパをかけるだけ。
控え選手の用意・交代策・状況に応じた戦術の無さ、スタメンへの過度の依存、
ジーコ時代に指摘された欠点がそのまま岡田監督にも当てはまっている。
内田や香川といった見た目が派手な若手を偏重する点だけが岡田色なのかもしれないが。


 今の日本代表は想像以上に危機的な状態なのかもしれない。
WCで日本代表は勝てないとは思っていたが、もっと酷いことになるかもしれない。
しかし、それが認識され対処される気配は全く無い。
1年後に、またこう言わなくてはならないのかもしれない。


 それは危機の始まりではなく、幻想の終わりである


meitei2005 at 22:41|PermalinkComments(8)TrackBack(0)

オーストラリア対日本

WCアジア最終予選、2−1


・日本のスタメン

玉田
松井、憲剛、岡崎
橋本、今野
長友、トゥーリオ、阿部、内田
楢崎


◆箇条書き

・シュート数は9−10。しかし、
・ペナ内の危険なシュートが多い豪国
・玉田や松井の可能性0のミドルの日本

・支配率47−53、CK5−8では負けて当然

・MFの選手層の薄さと松井の起用
・欠場者がMFに集中したため
・阿部のCB起用でさらに問題が深刻化

・前回の豪国戦と同様に攻撃の形なし

・一方の豪国は最低限の攻撃の形
・ケネディへのロングボール
・ケーヒルの飛び込み
・阿部のCB起用で効果的に

・なぜ阿部をCBに起用するのか?
・ボールを支配してラインを上げていたオシム時代とは意味が全く異なる
・控えのCBをいつまでたっても用意できない

・サイドの守備は相変わらずボロボロ
・なぜSHはサイドの守備を免除されるのか?
・サイドをきちんと守れるSHを用意する気がないのか?

・玉田の起用
・メリットなし
・最近、彼が出た試合で良かった事がない

・憲剛トップ下
・意味不明

・松井の起用
・不可解

・内田の起用
・何をかいわんや


meitei2005 at 01:03|PermalinkComments(12)TrackBack(0)