霧に近い雨が少しずつ大粒になっていく。
「こんなことなら、あと5分家を早く出ればよかったな」と後悔しつつ
駐輪場へとペダルを強く踏んだ。

関東もいよいよ梅雨入りだそうだ。
自転車通勤族にとっては冬とともに嫌な季節である。
駅までの道中、一軒家が立ち並ぶ道を
少し速度を落として走り抜ける。
この先の満員電車に乗る憂鬱な時間の前の
ささやかな楽しみ。
門扉や庭の花々が毎朝見送ってくれるのだ。
特にこの時季は、驚くほどの成長ぶりで
もうあじさいも花を咲かせている。

この道を抜けると駅へのまっすぐな道が広がる。
雨も強くなってきたしラストスパートだ!と
ぐんぐん進んだその時、頭に衝撃が走る。
あまりにも唐突であまりにも一瞬のことに
何が何だか訳がわからずにいると
後ろから「カアカア」とカラスの声。
ギャッ、カラスに頭をつかまれた上に
その後も執拗に追いかけてくる。
何故だ、何故だ、
好意的とまではいかないが
カラスに恨まれることなど覚えがない。
むしろ横浜でカラスの屍骸が数匹見つかった報道に
少しは心が痛んだほうだ。

調べてみると5~6月は子育ての時期らしく
子を守るため、または巣のための髪の毛がほしいそうだ。
それかな?と少し納得。

会社についた今でも
何だか頭をつかまれているような
奇妙な感触が残っている。
美容師にもほめられた
私の健康な髪が選ばれたのかぁと
ちょっと嬉しかったりする。

出勤までのその朝
「ガリレオ」の第七話を見ていたが
そこに登場するのは「烏天狗」
偶然の一致だろうか???