June 15, 2004

270分喋りました

文化庁著作権課で90分、京都METROで180分。申し訳ないけれど、ここでその内容をすべてまとめる書くエネルギーはなさそうだ。京都との往復が続いたのは疲れたし、ここ一カ月ほどの不摂生がたたってか、ちょっと体調も落ち気味。でも、METROのイヴェントが終った後は、今までと違って、イヤ〜な気分に沈むことはなかったかな。
前にも書いたけれども、5/4のシンポジウムや5/11の記者会見や6/1の参考人招致の後は、ショージキ、苦くて重い気分、一体何やってるんだろう、オレはという気持ちから逃れることが出来なかった。でも、もう慣れたのかな。あるいは、法案が成立し、国会も閉会し、僕も「反対派」であることから解放されたからなのか、ん〜、よくは分からない。
謎工さんが6/16のBLOGに書いていることは、まさしく、その通りだと思った。法案提出の根拠をボロボロになるまで論破し、主旨と条文と運用をめぐる矛盾、ひいては法案としての出来の悪さをあそこまで白日のもとに曝したのに、国会ではあっさり数の論理が勝利を持ち逃げしていく。
そのことはあらかじめ分かってもいた。でも、気分は悪いですよ。空しいですよ。そんな世界で闘うのは。それよりは、これから先のことの方が楽しんで出来るんじゃないか。そういう気はしていたりする。

文化庁著作権課へは、北中正和さん、石川真一さんと3人で。先日、お会いした森口審議官と俵調査官、森下係長の3人に応対していただく。
最初に衆議院での付帯決議が実際の運用にどのように反映されるか、北中さんに用意していただいた質問をもとに聞きたかったのだが、これはまだ答える用意がないということで、今回はスルーに。なので、僕が持っていった「日本国内、あるいは海外のレコード会社等が還流盤防止措置を行使する場合について」の質問書を出して、その14項目について話し合いをするという形になりました。その質問書は以下に。
http://www.ceres.dti.ne.jp/~donidoni/questions.txt
6人で話したこともあり、きちんと録音テープを起こさないと、こう言った、言わないということも起きそうなので、細かいやりとりについては今日は書きません。
そのかわり、会談後にあらためて整理した、文化庁、税関、そして、輸入権(還流防止措置)を行使するレコード会社に望むことを箇条書きにしてみることにします。

1
権利行使をするレコード会社、あるいは、その他の権利者は、日本国内盤が先に発売されている場合は、輸入禁止とする海外盤の発売される60日前、日本国内盤が後に発売される場合には、日本国内盤の発売される60日前までには、そのことを文化庁、税関に伝え、さらに小売り、輸入卸、一般にも周知させる。

権利行使をするレコード会社、あるいは、その他の権利者は事前に税関に利益の侵害を証明する契約書の写し、もしくは陳述書を提出して、差し止め請求をすることによって、権利行使をする。

権利行使をするレコード会社、あるいは、その他の権利者は、国内盤と輸入禁止される海外盤が、同じアーティストの同じタイトルのレコードであるだけでなく、完全に同じ内容のレコードであることを証明した上で、権利行使する。

税関は、差し止め請求がされた当該レコードについては、それをすみやかにインターネットの輸入禁止品目リストに加え、間違って輸入されることのないよう、周知に務める。

権利行使をするレコード会社、あるいは、その他の権利者は、当該レコードに関わるすべての著作権者、著作隣接権者の合意を得た上で、権利を行使する。

輸入禁止措置が取られる海外盤の「日本輸入禁止」の表示は、日本語で7ポイント以上のフォントで印刷する。輸入禁止の期限についても表示する。

同じアーティストの同じタイトルのレコードでも、一部収録曲が異なるもの、リミックス、ヴァージョン違いなど内容の異なるものは、同一とみなさず、輸入禁止に出来ないものとする。

同じアーティストの同じタイトルのレコードでも、明らかに違ったアートワークを凝らしたものは、同一とみなさず、輸入禁止に出来ないものとする。

SACD、DVD-AUDIO、アナログ・レコード、カセットなど、メディアの違うものは、価格が異なるのも当然であり、再生機器を選ぶ点からしても、同一とみなさず、輸入禁止に出来ないものとする。
(補足すると、現在の還流盤の需要には、カセットのカーステレオしか持たないドライバーが高速道路のサービスステーションで、アジア産のカセットを購入しているという側面もある。こうした需要を否定し、ドライバーの聞く権利を奪うことは本当に意味がないと思います。日本盤の出ていないSACDやDVD-AUDIOの輸入禁止は、次世代メディアの普及を妨げることにもなるでしょう)
10
輸入禁止措置が取られた場合、輸入禁止期間の間は、レコード会社は当該レコードの国内盤を廃盤(生産、販売が中止された状態にあるレコード)にすることはあってはならない。
11
文化庁は、輸入禁止措置が取られている当該レコードの国内盤を発売しているレコード会社に対して、6カ月おきに報告を求め、生産、販売が中止されていないことの確認を求める。もし廃盤化されていた場合は、すみやかに輸入禁止措置を解除する。解除措置の周知にも務める。
12
上記の輸入禁止措置の解除にあたっては、国内盤を発売していたレコード会社が海外盤の「日本輸入禁止」の表示をあらためる責任を負い、間違って、海外盤が差し止められないようにする。
13
文化庁は権利者の利益が不当に害されると判断される基準を明確に示し、インターネット上などで公開して、周知に務める。国内のレコード流通に関わる業者には、その内容を通知する。また、五大メジャーにとどまらない、世界各国の独立系レコード会社、著作権者の団体などに対しても、輸入禁止措置に必要な要件、ガイドラインを英文で通知する。
14
上記の利益が不当に害されると判断される基準は、各国のレコードの価格状況を常に注視し、著しく価格差のある邦楽還流盤以外には輸入禁止措置が及ばないように設定する。基準の変更にあたっては、内外に対し、その周知に務める。
15
個人輸入、小さなグループ(数人程度)での共同輸入については、輸入禁止措置の対象外とする。個人輸入代行業者によって行われる輸入も同様とする。

8、9については、文化庁は現在、同一のレコードと考える、としています。この考えをぜひ、あらためて欲しいですが、その一方では、レコード会社が権利行使しなければ輸入禁止にはならないのですから、同一メディアの日本盤が出ていない限り、権利行使しないようにレコード会社に対して、求めたいということでもあります。10〜12についてもそうですね。輸入禁止期間中は廃盤にしない、というのは当然でしょう。行政によって(ということは税金を使って)保護を受けている企業なのですから、保護を受けたコンテンツを大事に扱わないことは許されるはずがない。廃盤にしなければ、12のようなことも起きません。

あとは、問題は2の事前の差し止め請求がなかったにもかかわらず、「日本発売禁止」と表示されたレコードが入ってきて、税関でとめられた場合でしょう。これが最も裁判などになる可能性が高そうですし。
その場合、税関はすぐにそのレコードが日本発売されているかどうかを調べて、発売されていないならば、輸入禁止の表示があっても商品を通すべきです。国内盤があった場合は、今度はレコード会社が輸入権を行使するのか、しないのか、という確認がすぐに行われなくてはなりません。行使するなら、レコード会社はすぐに契約書の写しか陳述書を提出せねばならない。
それがグズグズしていて、税関で荷物がとまったままになったりすると、レコードは旬の時期を逃したら終わりの商品ですから、業を煮やした輸入業者が裁判に訴えるかもしれないですね。個人的には誰かが裁判起こして、譲渡権と輸入権、どちらが優先するか、一度、争ったら面白いとも思ったりもしますが、トラブルを避けるという意味では、もちろん、誉められたことではないでしょう。
そのためにも、2がルールとして守られることが非常に重要に思います。1、2を守らないレコード会社はトラブル・メーカーとされても仕方ないでしょう。

政令で定める輸入禁止期間については、6カ月が妥当、というのが僕の考えです。先日、タワー、HMVと話した時も、6カ月で時限再販が切れて、輸入(還流)禁止も解除になって、国内盤も輸入盤も自由な価格競争が始まるということだったら、消費者も納得しやすいだろう、ということで意見一致しました。J-POPのレコードの大半は発売から6カ月以内(もっといえばニ、三週間以内ですが)に売り上げの90%以上を売っているはずですから、著しい利益の侵害はもはや起こらない。と同時に、6カ月後にそうやって、もう一度、購買意欲を喚起できるというのは、市場の活性化にも繋がるでしょう。

京都METROでのイヴェントについては、テープを回していた方もいるでしょうから、どなたがレポートをアップして下さるのに期待します。
あと、新幹線の中で新聞を読んでいて思ったことをひとつ。多国籍軍への参加の問題についてですが、あまりに輸入権の問題と似ているので苦笑してしまいました。
「unified command」を「統合された司令部」と訳すことによって、統一された指揮下には入らないとするとか、「参加」ではなくて「中で活動する」だとか。でもって、結局はそうした日本政府の「基本的考え方(輸入権の場合は「心構え」でしたね)」をアメリカやイギリスが容赦してくれれば問題は起こらない、という。しかし、担保はない。イラクの現実の中で、非戦闘地域での人道支援活動に限られるという保証は、今だってないのだし。非常事態が発生して、多国籍軍全体への「指揮」が発動された時にはどうするつもりなのでしょう?
この国は本当におかしいですよ。こんな詭弁ばかりがまかり通るんだから。子供達はどう思って、見ているでしょうね。政治に関わる者こそ、そこで発せられる言葉のひとつひとつが、青少年等に与える影響について配慮すべきだ。

memorylab at 10:27│TrackBack(12)

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2. 音楽を自由に選択出来る権利を!  [ * taste top * ]   June 17, 2004 11:54
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