March 08, 2006

個別の対応よりも明確なガイドラインを(PSE法)

僕は実のところ、法律にも政治にも疎い。ほとんど専門知識がないので、何か書こうとすると、その度にいろいろ調べものをしなければならない。まあ、長年、物書きはやってきたので、限られた資料をネタにコラムをでっちあげる(それも昨日、今日に知ったことでも、ずっと引き出しに入っていた知識のように見せて)とかは、得意な方かもしれないが。

しかし、PSE法にまつわる混乱には参ります。調べれば調べるほど、混乱する。その混乱の原因はほとんどすべて経産省にあるのだが。

なにしろ、猶予期限が切れて、法律の本格施行が始まる1ヶ月前になっても、管轄の省庁の言うことが定まらない。これでは、民間業者が右往左往するのは当然だ。
国会答弁では、経産省の迎審議官も、二階大臣も、これまで周知が不十分であった分、販売業者には個別に親切に対応する、というような答弁を繰り返してきた。
しかし、明確なガイドラインを示すことをせずに、個別対応しかしていないことこそが、混乱を招いているのだ。
ネット上には、経産省やその地方局に電話で質問したら、このような答えだった、足を運んだら、担当者がこう応えた、という情報が飛び交っている。が、錯綜した情報の中で、憶測をめぐらすしかない、というのが、中小の販売業者、あるいは一般消費者の現状ではないだろうか?

目先の現実レベルで、最も問題なのは、修理や改造と中古販売の可否にまつわる法解釈だろう。
以下は、僕が間接的に得た情報をもとにしたものなので、間違いがある可能性がある。経産省が電話での質問などに個別に答えるだけで(しかも、その回答が一定でないという報告が相次いでいる)、明確なガイドラインを広く知らしめる気配が一向にないのだから、仕方がない。

まず、僕個人にとって、非常に気になる問題は、非PSE製品の修理の可否だ。
うちのスタジオは非PSEのヴィンテージ機材だらけなので、常に何かがメンテ必要だったりする。海外製品が多く、すでにメーカーが消滅しているものも多いので、プロ・オーディオの専門知識のある技術者を国内で探して、修理依頼するしかない(時には海外に送って修理していることもある)。これが出来なくなったら、スタジオはもう維持できない。

所有権が移転しない修理に関しては、4月以後も、業者に依頼しても問題なく行えるのか? 非PSE製品の修理販売は違法だが、修理のみならばOK、というのが経産省の回答だとも聞くが、ソースは2ちゃんねるだったりするわけで、経産省の公式な見解がネット上にあるわけではない。
そのくらい、さっさとFAQに乗せろよ。これから持ち込み修理に出したい機材が幾つかあるのだが、修理終了が4月以後になって、PSEマークが必要になったので、検査からやりなおしです、とかなったら怒るよ。怒られる修理業者も可哀想だが。

同じく、では修理よりも一歩踏み込んだ改造依頼は?というと、ここはさらに不透明。改造の場合はあらたな製品の製造にあたる、というのは、そういう解釈もなくはないとも思えるが、プラグやソケットの交換程度の簡単な改造、あるいは純正部品が入手できない場合の代替部品による修理、などはどうなのか? その線引きは誰がするのか?
さらに、それらと関連して、下の、販売業者やオリジナルの機能に戻すだけの純粋な修理を行う業者が、なぜ製造者として届け出可能なのか?という問題はどう考えたらいいのか? どう考えたって「製造」じゃないんだけれどな、オレが小学校で習った日本語では。

非PSE製品の中古販売については、PCなどの例外を除いて不可。中古販売するには、それにPSEマークを与えなければいけない。それは間違いない。
で、そのためには、販売事業者がなぜか製造者として届け出る必要がある。製造業者、あるいは輸入業者でなければ、PSEマークを作って貼ることは出来ないからだ。
では、PSEマークを作って貼るための要件は? 届け出さえすれば、検査→マーク貼り→販売、もしくは修理→検査→マーク貼り→販売が行えるのか?

この部分の情報がリミットが一ヶ月を切った今現在、錯綜している。
当初、特定電気用品以外は、販売事業者が製造業者としての届け出を行い、「外観、通電、絶縁耐力の自主検査を行えばいい」と僕などは理解していた。そのソースは経産省のサイトにあるテキストだったり、様々なメディアを通して伝えられる経産省の人間の説明だったりもした。
が、その後、経産省への問い合わせへの回答は二転三転していて、何らかの技術的改変を行わないと、製造したことにはならないので、製造業者として届け出はできても、製品にPSEマークを貼ることはできない、という回答を得たという話も聞く。
完全動作品でもわざわざ技術的改変を行わないと、製造にならず、PSEマークが貼れないので売ることができないって? 一体、この法律は何を目的としているのか? どこが安全のためだというのか?
だったら、そもそも販売業者や修理業者に製造業者として届け出させる理由は何なのだ? 製造しない言葉の上だけの製造業者なんて概念を作り出したのは経産省自身なのだ。が、結局、それは製造しないんだから駄目だって話でおしまい? 出口はこっち、みたいに人を導いておいて、袋小路に追い込むのかよ?
本当に訳が分からない。というより、狂っているとしか言いようがない。小学生程度の日本語を使う力も、社会常識もない人間が考えた回答にしか思えないわ。

二階大臣は残り一ヶ月で全力を尽くして周知を図る、というような国会答弁をしていたが、こんな肝心なところを曖昧にしたままで、一体、何の周知を図るというのだ? この期に及んで、まだ、後出しじゃんけんが出来るようにしておきたいのか?
しかし、こんな状態を続けたところで、経産省が思っているほど、販売業者も一般消費者も馬鹿ではないことを彼らは思い知るだけだろう。3月いっぱいをしのげばOKと思っているのかもしれないが、そうはいかないよ。4月以後も彼らが悲鳴を上げるほどの仕事を与えることは出来るのだから。

というわけで、言いたいことはタイトル通り。
ガイドラインを出せ!
それもまともな日本語で書かれたものをお願いする。

memorylab at 22:19│Comments(1)TrackBack(1)

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■電安法が本格施行間近 − 経済産業省の角井氏が「PSE問題」を語る (

この記事へのコメント

1. Posted by naka   March 08, 2006 23:04
こちらでは初めまして。
今日も経済産業省と電話でやりあっていました。
過去何度も何度も見解を問う電話をし、入手して情報はWEB 上で流すようにしていたんですが、同時に「早くFAQ ページに掲載してくれ」とも要求していました。
2/22 に「かくい」課長補佐から「WEB SITE 担当者に指示し、早急に対応します」との言葉を頂いたんですが現在全く更新されていません。その事について今日再度要求すると「早急に更新できるよう現在調整中です」との答え。
「何時を目標にされているんですか?」って訊いても「答える立場にありません」とだけ。
早急って何なんでしょう?

一応ヲイラが受けた回答。
【修理】
http://yoppa.blog2.fc2.com/blog-entry-236.html

「周知に関するあまりしられていない問題点」
http://yoppa.blog2.fc2.com/blog-entry-242.html

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