May 12, 2004

時間ないけれど、一言だけ

「私たち音楽関係者は、著作権法改定による輸入CD規制に反対します」の声明文が、アジア盤の還流を容認するものではないか、という声があるようなので、そのことについて、僕個人として一言。
まず、基本的なことをいえば、今回のアクションは8人の呼びかけ人によって呼びかけられ(途中でピーター・バラカンが日本を離れたので、彼を含む呼びかけ人の名前は公表せずにやることなりましたが)、発表された声明文は僕を含む5人の有志の手によって作られました。そういう意味では、きわめて、個人的な繋がりから生まれているアクションです。
それに賛同してくださった人達が、賛同者として名を連ねていますが、声はかけたけれど、賛同していただけなかった人達、現在まで態度保留になっている人達ももちろんいます。ひとつの法案に反対するにしても、様々な立場があるのは当然で、法案には反対だけれどもこの声明文には賛同は出来ないという人々もいて当然でしょう。そもそも僕達には運動の中心になろうとか、ここに民意を集約して闘おうとか、そんな気持ちはさらさらありません。たぶん、全員が運動などやりたくないのです。だから、この運動に異議がある人は、オルタナティヴな運動をすれば良い。この運動の中に入って、運動の在り方を議論することにエネルギーを使うのは、無駄だと思います。僕達は政党でも、団体でもなく、そういう風になることを極力避けようと思いながら、しかし、法案を廃案にするために、自分達の出来ることをやろうとしている、個人の集まりなのですから。
次に僕個人についていえば、アジア盤の還流防止にも反対です。その他にも関連する問題、コピーコントロールや再販制度などについて、僕個人の意見があることは、過去ログを読んでいただければ分かるでしょう。でも、そうした僕個人の理念や心情と100%イコールの運動などありえないし、そういう運動にしたいという意思も僕の中にはありません。別の言い方をすると、オピニオン・リーダーになるつもりはないのです。
今回のアクションは基本的に音楽評論家と雑誌編集者を中心としたものです。二次賛同者として、ミュージシャンほかの音楽関係者もいますが、いずれにしても、集まった数百人は個人の集まりでしかなく、代表グループも何一つ、委任などされているわけではありません。だから、賛同を集めた声明文は、一字一句、変更されることはありません。一字一句でも変更するならば、また最初から、それに賛同するかどうか、意思確認が必要になりますから。そんなことになった時には、だからヤなんだよ、運動はってことで、僕はいちぬけたするでしょう。
「アジア盤の邦楽CDの逆輸入防止を目的とするならば、それを法案に明文化することを求めます」という一文を問題にしている人もいるようですが、僕個人についていえば、そこに僕個人の考え方との決定的な矛盾はありません。声明文は、5人の人間がこれならば自分の考えとも矛盾がなく、さらに多くの音楽関係者の賛同が得られるであろう、というところをめざして、推敲に推敲を重ねたものです。全員が何度も自分ヴァージョンを書いて、ここに辿り着いています。法案に反対するのか、それとも修正を求めるのか、ということももちろん、その中で吟味されています。
声明文の全体の構成は、1で法案が成立してしまった時に起こることへの危惧を述べています。2で法案の審議の手続きに対する異議を述べています。3で日本の音楽文化全体への悪影響を憂慮して、法案への反対を表明しています。修正すれば賛成などと結論づけてはいません。部分だけを抜き出されると、意味が誤解されることもあるでしょうが、「アジア盤の邦楽CDの逆輸入防止を目的とするならば、それを法案に明文化することを求めます」という一文は、あくまで、その前の「私たちは、この矛盾を許容できません」に続くものです。
その矛盾の指摘を受けて、もしも、法案が当初の主旨説明通りに修正されたなら、そこからまた賛成や反対の議論が行われることになる。僕は反対ですが、今回の賛同者の中にはそれならば問題なしとする人々もいるでしょう。いずれにしろ、一字一句でも法案が書き換えられたなら、すべてはふりだしです。法案は参議院に戻りますし、団体組織ではない僕達もばらけて、スタート地点に戻るわけです。その時に、僕個人が再び何かアクションするかどうかも分かりません。
というより、正直なところ、僕は現在やっていることはたいした「行動」だとは思っていないのです。以前にも書いたように、僕はプロモーションをしているに過ぎない。目的は最大限、この法案の存在、内容、問題点を世の中に知らせることです。そのために最も即効性のあると思われるプログラムを書いて、ボタンを押してみただけです。
「行動」としては、早くから署名集めなどをなさっている方々の方がはるかに尊い行動であると思います。僕自身が本当の意味での「行動」と思えるようなアクションをするとしたら、それはもう少し、後のことになるでしょう。プログラムは書いてあるけれど、でも、次はボタンは押さないかもしれない。期待だの、責任だのに応えるつもりはないのです。僕がやりたいのは恩返し、それだけですから。


memorylab at 16:10│

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1. 音楽関係者の声明と「邦楽還流」盤  [ 試される。 ]   May 13, 2004 03:06
前の「輸入権」関連エントリーで、 音楽関係者の声明とそれに対する意見を採り上げた。 焦点は「邦楽還流」盤に対する「輸入権」を 認めるのか否かということ。 私自身もいろいろ考えてはいたのだが、 納得しどころ
2. 著作権法改定による輸入CD規制  [ あそびをせんとやうまれけむ ]   May 13, 2004 09:58
昨年末の 「rickdom: アジア盤関係」→「owner's log by Kentaro Takahashi:時間ないけれど、一言だけ」→「私たち音楽関係
音楽関係者によるCD輸入制限反対の声明について。お詫びと追記をしました。