May 18, 2004

いろいろ出てきましたね

まずは自民党、河野太郎議員のホームページから。
http://www.taro.org/ml/mailmagazine/index.php?mode=day&log=200405&date=16

先のITMEDIAによる文化庁・長官官房著作権課の森下平氏(法規係長)への取材でも、還流防止を目的にした法案が、還流盤以外の輸入盤にも「副作用」があることを文化庁は認めたわけですが、ここでの河野太郎氏の書き方を見ると、もう「副作用」どころか、そもそも洋楽輸入盤全般の規制が目的であったと、理解するしかありませんね。
だって、US盤やEU盤の輸入は止まりません、先進国のCDだから。が、発展途上国からの輸入盤は、マイケル・ジャクソンのような洋楽も国内発売があれば止まります、と河野太郎氏は公言しているわけです。自民党の有力議員がそう言うのだから、法案施行後はそうなると考えた方が良いでしょう。
発展途上国からの並行輸入盤(海賊盤をのぞく)も、もちろん、立派な輸入盤です。還流盤ではありません。それも止めるわけです。目的は「輸入盤」規制でした。その量は還流盤よりはるかに多いでしょう。世界中の発展途上国で発売されている、日本の音楽以外、すべてが対象ですからね。影響のあるタイトル数は桁違いです。大変なことです。
僕のようなブラジル音楽ファンはいよいよ心配の種が増えましたね。ブラジルは先進国に含めてもらえるのだろうか?

さらに、河野太郎氏によれば、「この改正では先進国では同じような価格でCDが販売されるという前提に立っているので、先進国で生産されたモノとその他の国々で生産されたモノを区別しています」ということです。主語がないので、私がそう考えているのか、法案作成した文化庁がそう考えているかが分かりませんが、ともあれ、価格で先進国と発展途上国を区別するなら、アメリカはどちらでしょう? 僕が先日、買ったスガシカオの台湾盤CDは2079円でした。日本盤より3割安い。しかし、昨日、買ったジャネット・ジャクソンの新作のUS盤は1280円でした。日本盤より五割も安い。そういう意味では、台湾の方が価格的にはアメリカよりもずっと先進国水準でしょう。
果たして、河野太郎氏はこうしたマーケットの現状をご存じなのか? 非常に疑問がありますね。

与えられた権利があれば、最大限の利益を得るためにそれを行使するのは、商取り引きにおいては、当然の原理です。台湾盤を止めるのと、アメリカ盤を止めるので、どちらが多国籍企業であるレコード会社にとって利益が多いか、なんて考えてみれば明らかでしょう。US盤は5割も安く売れらてしまっているのですから。レコード会社がそれを防止したいのは分かりますよ。防止してもいいです、あの手、この手で並行輸入を締め出すなら。あるいは、せいぜい関税で価格差に対処すればいい。著作権法ではやらないで欲しい。やれば、たくさんの弊害が出るのです。音楽文化の専門家である25誌以上の雑誌編集長、200人以上の音楽評論家が指摘しているように。

もうひとつ、河野太郎氏は輸入禁止措置が取られる場合の要件として
「三、そして、発展途上国で生産されているCDに「日本での流通販売を禁止する」という表示がしてある場合」
というのを挙げています。法案にはもちろん、そんなことは書かれていません。「日本での流通販売を禁止する」という表示がしてある、のが必須条件であると断言したことに、河野氏は責任を持つのでしょうか?
また、まさか河野氏はアメリカ合衆国を発展途上国と考えてはいないでしょうから、もしもUS盤が1枚でも輸入規制の対象になった場合、河野氏の責任は問われなければならないでしょう。

さて、次に来たのはコレです。
洋楽輸入盤に関するRIAA(全米レコード協会)の考え方について
http://www.riaj.or.jp/whatsnew/w040518.html
もともと、RIAAは還流盤防止に限らない法案を求めていたわけですが、彼らも発展途上国からの輸入盤全般の規制が望みであったことを明らかしています。
では、アメリカからの輸入盤はどうなのか? 文面をよく見てください。そこでは「我々」と「私」が巧みに使い分けられているのに気づきます。「我々」はRIAA、「私」はRIAA国際担当上級副社長、ニール・ターケウィッツ氏です。
「我々=RIAA」は、日本が米国などのレコード会社にも輸入をコントロールする権利を与える法案を作ることを求める。
しかし、その権利を得ても五大メジャーはUS盤の輸入は止めない、と、「私=ニール・ターケウィッツ氏個人」は理解している、と答えるにとどまっています。
確証はどこにもない。先のRIAJ(日本レコード協会)の声明は、メジャー各社の署名を伴ったものでした。しかし、この声明にはニール・ターケウィッツ氏の署名しかありません。
RIAAの公式見解とはとても認められない、一役員の個人的な理解を示したものに過ぎないものなわけです。

先日の記者会見でも、どうしてRIAAはやらない、と言っているのに、あなな達はそれを信用しないのか?という質問がありました。その答がここにもあります。RIAAの声明には一社たりとも、加盟しているレコード会社の署名はなく、法案施行後に五大メジャーが輸入権を行使しても、責任はニール・ターケウィッツ氏個人の理解にしか問われないようになっている。
還流防止という目くらましに始まり、こういうゴマカシばかりが次々に繰り出されるから、よけいに人々の不安や危惧、疑心暗鬼が広がるのです。いくらレコード協会や文化庁、あるいは与党政治家がその打ち消しに躍起なっても、そこに音楽ファンに対して、真摯な態度で説明して、理解を得ようという姿勢がなければ、逆効果でしょう。
そして、その結果、どれだけの人々が、レコードというエンターテインメントに失望し、離れて行ってしまうのか? もう手遅れだよ、という坂本龍一氏の気分にも同意したくなりますね。

memorylab at 16:52│TrackBack(7)

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