本日はお疲れさまでした。
素晴らしい質問をありがとうございました。
今日一日で「還流防止措置」の根拠ががらがらと崩れ落ちましたが、問題となった文
化科学研究所の報告書には、まだ指摘されていない、大きな欺瞞がありますので、こ
こに書き送らせていただきます。
文化審議会著作権分科会などで今回の著作権法改正〜還流盤防止措置の根拠として、
扱われてきたのは、ご存じのように、三菱総研の報告書と文化科学研究所の報告書です。
三菱総研はアジアでの5年後、8年後の日本の音楽の需要予測を行い、文化科学研究
所はその三菱総研の予測をもとに、還流盤の増加の予測を立てています。
なぜ、ふたつの報告書が必要だったのでしょうか? 三菱総研の報告書は冒頭で還流
防止の効果について触れていますが、還流盤についての予測はせずに、その部分だけ
が文化科学研究所に手渡されたのです。
三菱総研の報告書も還流盤の問題を念頭において作成されたものであるのは間違いな
いでしょう。文化科学研究所の還流盤予測は、その三菱総研の「需要予測」をもとに
しています。しかし、三菱総研の報告書は、予測の前提として「輸入権」の創設を上
げています。「輸入権」の創設によって、日本の音楽はアジアで飛躍的な需要拡大を
果たすことができる。その結果、2012年には7019万枚まで成長するというのが、三菱
総研の報告書の結論です。
その場合の還流量はゼロです。「輸入権」によって還流は阻まれていますから。
にもかかわらず、文化科学研究所はその「輸入権」が創設された場合の「需要予測」
を前提条件として、還流盤の量を予測しています。「輸入権」の創設によって飛躍的
な成長が果たされた場合の数字が7019万枚なのですが、その18%が還流すると言って
いるわけです。
「輸入権」が創設された場合、このような飛躍的な需要拡大を果たすことができると
いうのが、三菱総研の報告書の骨子ですから、まったくもって履き違えた報告書を文
化科学研究所は出していることになります。
「輸入権」がなかった場合には需要予測ははるかに下方修正されねばなりません。そ
うでなければ、「輸入権」の効果が否定されますから。となれば、還流盤の量も1265
万をはるかに下回らねばならないでしょう。
文化科学研究所の「日本音楽ソフトの還流量調査報告書」はこのように、子供でも分
かる前提条件の間違いを犯しています。文化審議会著作権分科会の誰もそれに気付か
なかったというのは、考えがたいことです。常識的に考えれば、このような報告書は、
突き返されるはずでしょう。
しかし、三菱総研と文化科学研究所のふたつの報告書に分けたことで、目先のゴマカ
シが利いてしまったのかもしれません。
なぜ、三菱総研は還流盤予測を行わず、そこは文化科学研究所が依頼されて行ったの
か、ということも僕は疑問に思いますが、いずれにしろ、これらが依頼者に都合の良
い、初めに結論ありきの報告書なのは間違いないと思います。