May 30, 2004

デタラメにつぐデタラメ(また三菱総研)

昨日のBLOGについて、今日、とある方から指摘のメールを頂いた。
それによると、三菱総研の報告書は
1. アジアの音楽ソフト市場は、今後GDP成長並みに拡大する
2. 海賊版は今後、各国の取り締まり強化等によって2007年で2割、2012年で4割減少する
3. アジアでの日本の音楽への関心が高まる⇒日本音楽ソフトの現地市場でのシェアが上昇する
の三つを前提条件とするものであり、輸入権の創設による還流盤防止〜アジア市場への日本のレコード会社の積極参入は考慮外、ということだった。
しかし、報告書を読み返しても、そうは思えない。

報告書の要約版は、最初のパート、1では「正規盤市場の活発化」の条件として、「日本からのライセンス盤の還流が防止されると」という仮定が述べられ、さらに「レコード輸入権が創設されれば、現状より対応を積極化させたい、と回答した(レコード会社が)過半数にのぼる」という調査結果が添えられている。
これらから、輸入権創設が、アジアでの正規盤市場の拡大、日本のレコード会社の積極参入の条件であると、この報告書がしているのは、明らかだ。
続く2のパートでは、「中国での正規盤発売タイトルの増加」が日本の音楽のシェア拡大の条件とし、現在は日本の有力アーティストでも正規盤を発売していないという調査結果も添えている。
1に遡れば、その原因は還流盤が防止されていないため、レコード会社が積極参入できないことと理解できる。
実際の予測は最後の3のパートで行われているが、そこには「ここまでの調査結果をもとに」と書かれている。こうした構成から、3の予測が1、2の調査結果とは無関係に行われたものと読むことは不可能だ。
もしも、3の予測が1、2とは無関係であるならば、還流盤の存在がレコード会社の積極参入を妨げている状態での予測がこれということになる。それはそれで、1で述べていることと矛盾する。
還流防止をしなくても、5年で400%、8年で1400%の成長が見込めるとなれば、還流防止の根拠はどこにある?ということになる。

ところが、メールのやりとりの後、報告書の詳細版が手に入った。すると、そこにはまったく違う構成の報告書があったのだ。調査報告を読み進んでも、還流盤のカの字も出てこない。
全体は1〜5までのパートになっているが、4までが先のメールにあった三つの前提条件による調査報告であり、5になってようやく、それ以前とは独立したパートとして還流防止の必要性についての提言が述べられている。つまり、詳細版はメールで指摘された通り、輸入権創設〜還流防止措置を考慮外とした調査報告書としか読めない。
しかし、要約版はその最後の提言を前提条件として、輸入権創設〜還流防止措置があった場合の調査予測になっているのだ。
これが「要約」だろうか? まったく違う主旨の報告書ではないか?
どちらも三菱総研が作ったものだとしたら、これは研究所への信頼を大きく損なうばかりでなく、今回の法案提出の根拠を揺るがす重大な問題を孕むだろう。国政、立法の根拠となる調査報告書が、すでに二枚舌なのだから。

さて、ここで平成15年9月24日の文化審議会著作権分科法制問題小委員会〔第4回)議事要旨を見てみよう。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/03092501/003.htm
この委員会にレコード協会の生野秀年氏が提出している「レコード輸入権に関する関係者との協議の状況等について」で参考資料として添えられているのは「要約版」の方だ。
一方、2012年には1265万枚の還流盤が入ってくるとした文化科学研究書の「日本音楽ソフトの還流量調査報告書」は2003年12月3日の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第8回)で資料として配られたようだ。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/03121003/001/003.htm
文科研の調査報告書が三菱総研の「詳細版」をもとにしたものならば、昨日のBLOGに僕が書いたことは間違いとなる。しかし、問題はそこで大きくなることはあっても、小さくなることはない。内容の違った「詳細版」と「要約版」が同じ文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の中で都合よく使い分けられていたのだから。

ここで国会での質問を考えてみよう。
河村文部科学大臣にはぜひ、こう質問したいものだ。
「還流防止措置によって、アジアでの日本の音楽はどの程度の市場拡大が得られるのか、調査報告は得たのでしょうか?」
大臣はどう答えるだろうか?
「調査報告はない」と答えれば、大問題だろう。肝心要の還流防止措置の効果について、何の調査報告も得ないまま、今回の法案提出したことになるのだから。
しかし、「調査報告はある」といって三菱総研の数字を出せば、昨日、僕が書いた文化研の報告書の矛盾を指摘されざるを得ない。
どちらにしても、大臣はトラップにはまる。

そもそも、還流防止の効果について予測をするならば、それがアリの場合とナシの場合の両方の予測を立てなければ、効果を推し量ることなど出来ないのだ・・・と書いて、もうひとつだけ、別の可能性を思いついた。「詳細版」も「要約版」もどちらも正しい、ということはあるかもしれない。還流防止をしても7019万枚、しなくても7019万枚。その場合は、還流防止措置なんてものは何ひとつ効果がない、という結論が導き出される。アハハ(て、笑ってる場合じゃないが)。

大臣に対して、こんなトラップを仕掛けたのは、もちろん、僕ではない。文化庁の役人と、研究所の研究員達だ。官僚と御用学者が国を滅ぼそうとしている。たまたま、僕は自分の専門である音楽に関わる法案制定において、その一端を垣間見たに過ぎないだろう。もはや音楽文化を救え、どころの話ではないようだ。国を救え。マジでそう思います。

Posted by memorylab at 01:58 │TrackBack(11)

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