June 05, 2004

久しぶりに

スタジオ・ワークに戻る日と思っていたのだが、そうも行かず。

午前中に、公開質問書の窓口だった文化庁、俵氏にメールでコンタクトを取っているいたら、前後して笹山登生氏の掲示板に文化庁森口審議官が現われ、文化庁はオープンですので、というメッセージを。僕は来週はまた東京を離れるので、今のうちにの思って、すぐに文化庁に電話。午後にお会いしてきた。
お誘いに乗った形だが、特定政党の議員に紹介してもらうのではなく、という示唆は、民主党川内議員ぬきで行きなさい、という意味あいであるのは明らかだし、オープンですのでいつでも話しあいに、というのは、反対派の情報がかなり集約されているだろう僕から情報を引き出すという意味あいもあるだろう・・・とは考えつつ足を運ぶ。
特定政党に偏らない方がいい、ということについては、もちろん、僕達も分かっていたし、川内さんにしても議員会館の中では、自分が引率する形ではなく、僕達が他の議員の部屋をまわることを望んでいた。
しかし、与党ルートがなかったから、今回は修正案可決まで持っていけなかったという意見に対しては、去年の9月からレコ協、文化庁、そして議員に働きかけていたタワーとHMVですら、最後まで面会すらかなわなかった与党側委員会理事がいたという事実もある。謎工さんや小倉弁護士も与党議員と接触はしていたしね。終ったことに対して、何が原因、誰の責任といったことを話し始めるのは、僕はあまり好きではない。音楽業界にしても、それで駄目になっちゃったんだしさ。
何が原因、誰が悪者って探し続けた結果が、CCCDであり、輸入権であり、あとは書かないけれど、今、レコード会社の中で起こっているいろいろなことだったりする。違うやり方を僕は見つけたい。今回のことが見つけるきっかけになればいい。既成のマナーに囚われるより、直感的に選び取ったことの方を重要視するという、音楽を作る上ではほぼ絶対的に正しいやり方で、政治を変えることは出来ないのかな。

森口氏とは1時間ぐらいお話したが、内容については、ここでは書かないことにする。窓口は開きました。すべてはこれから。

スタジオに戻ろうとしたら、中目黒の駅でまた急なミーティングの連絡。渋谷のNO MUSIC NO LIFEに。ちょっと早く着いたので、BOUNCEやMUSEの編集部で雑談。ほとんどの人が参考人招致の中継を見ていたので驚く。
そういえば、一部にはタワー・レコードが表ではレコ協に賛同姿勢を見せつつ、裏で糸を引いて、高橋に反対運動させていたんじゃないかという見方もあるそうで、まあ、それも悪くない噂ですね。一昨年にはタワーから功労章ももらったしている僕ですから、繋がりは深いし。
タワーでも1時間ほどミーティング。NO MUSIC NO LIFEのCEOに就任した旧友のフッシーとも立ち話。いろいろとアイデア交換。
さらに、夜には急な話がもう一本。TBSラジオの生番組の出演依頼。台本すらももらわずに、電話で10分くらい喋る。そんなこんなで、今日も自分の仕事はできず。

昨日、書いた付帯決議については、藤川くんのBLOGでテキスト化されていた。御苦労様。

あと、昨日書いた文化庁が「著しい不利益」があるかないかを著作隣接権料と著作権料を合算した金額で判断しようとしている件。これは考えれば考えるほど大問題だ。
以下、長くなるけど、行きますよ。

国会に提出された欧米と日本のライセンス料の比較データ資料(下のURLにPDFファイルあり)というのがあるのだが、これが例によって、とんでもない代物で、最初、見た時には全然、理解できなかった。海外とのライセンス・ビジネスに詳しいレコード会社の法務の友人に見てもらっても、何コレ?という反応。国会答弁で分かったのは、価格差のデータは、ネット上のオンライン・ショップの価格、しかも税込みを使ったということ。どうやら文化庁職員のやっつけ仕事だったようだ。レコード協会から、なぜ、ちゃんとした資料をもらえなかったのか?
ライセンス料の比較データなのに、EU諸国ではVATが18%もかかっている税込み市場価格をもとにしてしまっているから、ヨーロッパ盤のライセンス料が異常に高くなっている。アメリカ盤も実情よりかなり高いはず。
世界的に印税計算というのはPPD(卸価格)をもとにする。最近は日本でも定価ではなく、PPDを印税算出対象にした契約書が多くなっている。日本では再販価格に70〜72%を掛ければPPDになるが、日本以外では再販制度がないから、市場価格に70%をかければPPDになるというわけではない。その点でも、このライセンス料の比較データはお話にならない。国会に提出された資料だというのにね。
加えて、原盤ライセンス印税を30%としている。レコード協会からそれが標準だという答えを得たらしい。業界関係者の方は目を丸くするでしょう。30%もくれるらしいですよ、これからレコ協加盟社は。PPDを算出対象にしても、日本での一般的な原盤ライセンス料は17〜25%くらいでしょう。五大メジャーの親会社と現地法人の間では、プロモーション経費の負担の度合いによって、30%くらにまでなっていることもあるのかもしれないが、でも、それは厳密には原盤印税+プロモーション印税とみなすものであるはず。

という具合に、またしてもデータ自体が非常に根拠の怪しいものだったのだが、何よりも大問題なのは、そこでいうライセンス料というのが原盤印税と著作権印税の合算であったことだ。国会での答弁でも、「著しい不利益」があるかないかはそれらを合算した金額で判断する、と言ったので、僕は椅子から転がり落ちそうになった。
著作隣接権者であるレコード会社が受け取るライセンス印税は大きい。ここではPPDの25%としよう。それに対して、著作権印税はずっと小さい。自分で作詩作曲するアーティストの場合でもその著作権印税はPPDの8.5%くらい。実演家印税については25%の原盤ライセンス印税の中から2%をもらうぐらいだろう。日本のレコード会社の一般的な契約の場合。
「著しい不利益」があるかないかをこうした著作隣接権料と著作権料を合算した金額によってのみ判断するということは、輸入権の行使にあたって、レコード会社の利益、不利益が最優先されることに繋がる。

例えば、こういう例を考えてみよう。
台湾にAというアーティストがいて、台湾のレコード会社からライセンスされたAの作品の日本国内盤が出た。台湾および日本のレコード会社は当然、輸入権を行使して、安い台湾盤の輸入をとめたい。しかし、Aにとっては、実演家印税は台湾盤では2%であるのに対して、日本盤では1%だった。この場合、台湾盤と日本盤の4割近い価格差があっても、Aが受け取る実演家印税は台湾盤の方が大きい。さらに台湾ではAのマネージメントに2%のプロモーション印税も設けられていたので、著作権、著作隣接権以外の部分でも台湾盤から得る利益の方がずっと大きかった。
しかも、日本のレコード会社は日本発売するにあたって、ジャケットを変更した。アーティストであるAはオリジナルのジャケットの方を好んでいた。そこで、Aはレコード会社の輸入権行使に異を唱えた。

しかし、日本の税関当局は「著しい不利益」があるかないかを原盤印税と著作権印税を合算した金額によってのみ判断する。著作権者の中に、輸入禁止になると不利益を受ける者がある者がいたとしても、圧倒的に大きい原盤印税の大小による判断が優先されてしまう。Aの声は封殺されるだろう。これでは、すべての著作権者、著作隣接権者に権利を与えたと言っても、実質的に著作隣接権者であるレコード会社にしか権利を与えなかったに等しい。
ならば、小倉弁護士の意見にあったように、最初から著作隣接権者にのみ、権利を与えれば良かったのだ。そのように条文を変更すれば、洋楽の並行輸入に影響が出ることをかなり程度、防ぐことができたと小倉弁護士は以下に書いている。
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2004/03/_the.html
つまり、著作権者にも権利を与えると言って、洋楽の並行輸入盤も輸入禁止できる法律を作り、しかし、実際には著作権者には権利が与えられず、著作隣接権者にのみ、権利を与える運用をするというわけだ。アーティスト軽視、レコード会社のみを優遇する文化庁の姿勢がここにも表れている。

そもそも、著作権というのものが、金額の大小で判断されるということに、僕は強い違和感を持つ。著作物というのは、何らかの意志や感情の表現であることによって、著作物なのだ。印税が発生するとか、発生しないとかは関係ない。例えば、CDのジャケットは印税が発生しない。しかし、それも著作物だ。先のAの場合についていえば、アーティストが望んだオリジナル・ジャケットが日本に輸入できないということは、アーティストにとって著しい不利益にあたらないのか? それ以前に表現の自由、あるいは人々の知る自由の侵害にあたらないのか?
日本の音楽の還流防止ということについてだって、アーティストの判断は様々になりうる。すべての人が金で物事を判断するわけではない。音の悪い、再生不良の可能性もある日本盤よりも、音の良い台湾盤の方がオレ達の作ったオリジナルのサウンドだ、と言うアーティストだって出てくるかもしれないよ。

輸入権を行使するに足る「著しい不利益」が証明されるにあたっては、それが一方で、他の著作権、著作隣接権者の利益を損なうことにならないか、まで証明されるべきだろう。あるいは、それ以前に、輸入権を行使するにあたっては、行使をしようとする者が、そのレコードに関わるすべての著作権者、著作隣接権者に、その行使に同意するかどうかを確認するように求められるべきだ。そうでなければ、この法律はアーティストを軽視し、レコード会社のみを優遇する法律にしかならない。
だったら、最初から「著作隣接権者保護法案」として出せよ、まったく。なんか最初とは随分、語調が違ってきちゃったぜ、もう。

memorylab at 12:53│TrackBack(9)

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