人格障害(パーソナリティ障害)

人格(パーソナリティ)障害とは


■自己愛性人格障害
(自己愛性パーソナリティ障害)


ありのままの自分を愛せず、自分は優越的で素晴らしく特別で偉大な存在でなければならないと思い込む人格障害であるとされる。

自己愛性人格障害はどちらかと言うと男性に多いとされる。
50~70%は男性。


「俺様バンザーイ! 他人なんか糞喰らえ! 俺様バンザーイ!」


自己愛性人格障害の人は、見た目に華があり、注目を引く服装を格好よく着こなしています。
もったいぶった口調や自分の重要人物ぶりをほのめかすような言動もよく見られます。
ステータスや社会的地位の高い者に、自分から進んで接近しようとします。

自己愛性人格障害の人は、自分を賞賛してくれる取り巻きを求めます。
なぜなら、賞賛こそ彼の活力源だからです。
しかし、彼が他者の内面や存在の尊厳を省みることは、ほとんどありません。
他人が自分にとって利用価値がなくなったり、思いどおりに動いてくれなくなれば、その関係は終わりを告げます。
そして相手を「無価値でつまらないもの」として否定します。
他人の気持ちに無関心で、共感性が乏しいのです。

自己愛性人格障害の人は、気まぐれで、気分が良いと、ベラベラと調子のいい弁舌を振るいますが、機嫌が悪いと、些細なことでも、ヒステリックに怒鳴り声を上げ、耳を疑うような言葉で罵ったり、見当外れな説教をしたりします。

自己愛性人格障害の人が、権力や地位を得ると、周囲は散々な思いをします。
権限を笠に言うことを聞くように迫ったり、自分に媚へつらわない者を冷たく無視したり、虐めるように仕向けるなど、まるで子供のような真似を権力のもとに行います。

自己愛性人格障害の人は、共感性の乏しさや搾取的な態度から、しばしば虐待や攻撃に手を染めます。
「反撃されにくい弱者に対して行う」のが特徴で、強制猥褻セクハラストーキングDV(家庭内暴力)の加害者には、自己愛性人格障害の人がたくさんいます。

「支配的欲求の満足」は、醜く危険な病んだ自己愛を表しています。
他者を、同じ心を持った存在としてではなく、おもちゃのように扱うばかりか、服従させ、辱めを与え、思い通りに支配するということは、自己の優越性への欲求を、不正に満足させることに他なりません。


自己愛性人格障害の人は、自分の都合が何よりも優先されて当然だと思っています。
セクハラDVが多いのも、自分は偉く、自分のすることは、どんなことでも特別に許されるという思い込みがあるためです。

他者に対する共感性が乏しいと同時に、防衛による自己正当化が強力なため、自分を省みるということが非常に難しく、明らかに過ちを犯したときでも、謝罪は口先だけのもので、心の中では、自分が正しいと思っています。

ナルシストは、あまりにも自分を特別な存在だと思っているので、自分を教えることができる存在など、そもそも存在しないと思っています。
ましてや、他人に叱られることは、彼の尊大なプライドが許しません。
批判したり、欠点でも指摘しようものなら、あなたは、彼から全存在を否定されるでしょう。

自己愛性人格障害の人を動かすには、義務や道理を説くより、不安や嫉妬心、功名心を刺激することです。
自己愛性人格の人は、基本的に小心で、嫉妬深く、負けん気が強いので、正しく行動しなかった場合に生じる、不利益な事態について説明したり、競争心を突付くことが有効な動機づけとなります。

自己愛性人格障害の人は、非難されると、耳を貸さずに怒り出します。
なかなか自分の非を受け入れようとはしません。
しかし、それが逃れられないものだと悟った瞬間に、彼はすべてが台無しになったような思いに駆られ、ひどく落ち込みます。



◆自己愛性人格障害の特徴

自分を愛するという行為は、健全な心の発達のためには必要なものですが、それが病的に肥大化して自分に対する誇大感を持つようになると、それは自己愛人格障害と呼ばれるものになります。


自己愛性人格障害には、大きく二つのタイプが存在すると言われています。

一つは無自覚タイプです。

正に自己中心の塊です。
多くは、母親の過保護によって生じます。
愛情を注がれ過ぎたために起きます。
「特別な子供」扱いすることで、「私は特別な人間なんだ」と思い込んでるのです。
厚顔無恥、誇大、顕示欲の強さなどがこのタイプの特徴です。


もう一つは全く逆で、過剰警戒タイプです。

小さな頃から親の愛情を受けなかったため、褒められずに育ったために、「自分は本当はもっと凄いんだ」と空想して、傷付いた自尊心を取り戻そうとするタイプです。
傷付きやすさや、過敏性が強く密かな自己愛を持っているのが特徴です。


共通しているのは「自分は特別だ」と思っていることです。


● 御都合主義的な白昼夢に耽る
● 自分のことにしか関心がない
● 高慢で横柄な態度
● 特別な人間であると思っている
● 自分は特別な人間にしか理解されないと思っている
● 冷淡で、他人を利用しようとする
● 批判に対して過剰に反応する
● 虚栄心から、嘘をつきやすい
● 有名人の追っかけ
● 宗教の熱烈な信者


なんでも自分の思い通りになるという空想に耽ったりします。
内容的には、自分の万能感を満たすようなものになります。
全て自分にとって都合のいいように事が運んで、最後には自分が絶大な称賛を浴びるといったようなものです。
いろいろなパターンがあります。


聞かれもしないのに、やたらと自分のことをしゃべりたがる人がいます。
話が他へ移ろうとすると、強引に自分の話に戻そうとします。
話の内容は自慢話的なものばかりで、聞いている方はうんざりしてきます。
他人にはあまり関心がないので、相手がうんざりしていようとお構いなしです。


自分は特別な人間だ、一般人とは違うんだ、という意識から、小市民的な生き方を軽蔑し、そういう人達と一緒にされることを嫌います。
裏付けとなるものが何もないのに、一目置かれる存在であることに非常にこだわります。
あるいは、自分という人間は、特別な人しか理解することができないのだと思ったりします。


他人に対する共感に乏しく、他人を自分のために利用します。
他人の業績を横取りして自分のものにしたりします。
優越感に浸るために他人を利用します。
他人の存在とは、素晴らしい自分を映し出す鏡である、くらいにしか思っていません。
ですから、他人から批判されたりすると、すぐにカッとなって怒ります。
あくまでも自分は優れた存在なのです。


元々、裏付けのない優越感ですので、話の辻褄を合わせるために嘘をつくこともありますが、本人には嘘をついているという意識はあまりありません。
ときにはホラ話のように、話がどんどん大きくなっていって、どこまで本当なのか分からなくなります。


有名人に近付くことで自分を特別な存在だと思い込んだりします。
政治的な大物に近付いて自分の誇大感を膨らませることもあります。
自分も同じ世界の人間になったように錯覚して、裏付けのない空想的な野心にのめり込んだりすることもあります。


誇大感を持つ人には二つのタイプがあります。

自分は素晴らしいと言うタイプと、あなたは素晴らしいというタイプです。
あなたは素晴らしいというタイプの人は、その素晴らしい人に奉仕している私も素晴らしい特別な存在だと言うふうになります。
偉大な独裁者を崇拝する献身的な国民、偉大な神に身を捧げる熱狂的な信者、ワンマン経営者に心酔して滅私奉公する素晴らしい幹部社員、有名な歌手の応援をする熱狂的なファンなどです。


全てに言えることは、ありのままの自分が愛せないのです。
自分は優越的な存在でなければならず、素晴らしい特別な存在であり、偉大な輝きに満ちた存在でなければならないのです。
愛すべき自分とは、とにかく輝いていなければならないのです。
しかし、これはありのままの自分ではないので、現実的な裏付けを欠くことになります。

しかし、本人にしてみれば、高慢だと言われてもピンと来ないかもしれません。
それよりは、他人や周囲の出来事を過小評価していると言った方が理解されやすいかもしれません。
自分より優れたものを認めたがらず馬鹿にしているので、他人の能力や才能が見えず、他人の優秀さを無視します。
そして、他人を見下したり軽蔑したりすることに快感を覚えたりします。



◆自己愛性人格障害の臨床像

1.  内的には不安定であるにもかかわらず、外見はむしろ正常。
「頭がいい」「仕事ができる」「表現力がある」「人づきあいがうまい」「美人(ハンサム)である」などの長所がある。
そのため、彼らが不適応行動を起こしたとき、周囲の人は意外な感じを持つことが稀ではない。

2.  自分について素晴らしい理想的な自己像(誇大的自己)を抱き、自分は他人より優れた能力を持っているとか、自分は特別だと思い込んでいる。
自惚れが強い。
そして、誇大的な自己像を現実化しようと絶えず努力している。
次から次へと際限なく成功・権力・名声・富・美を追い求める。

3.  その背後で、常に深刻な不安定感や頼りなさを経験し、本質的には他者依存的である。
自尊心を維持するために、絶えず周囲からの称賛・好意・特別扱いを得ようとする。
あるいは、自分が理想とするような権力や能力のある人に頼り、まるで自分がその人であるかのように考えたり振る舞ったりする。

4.  妬み・羨望がとても強く、自分が持ちたい、成し遂げたいと思っているものを他人が持っている、成し遂げていると感じ、内心あるいは外見上その人に怒りや憎しみを持ったり、自分の不運を嘆く。
他人の失敗を喜ぶ。

5.  自己肯定感や自尊心が高まっているという感覚を、一定の期間維持することができる。
この感覚が自分を支配しているとき、自分が弱い傷ついた弱い一面を持っているということにほとんど気付かない。
しかし、誇大的な自己像が傷つけられるような体験をすると、一転して自分はだめだ、価値がない、無能だと感じる。
自分についても、ある一つの体験についても、良い面もあれば悪い面もあるといった捉え方ができない。

6.  自分に向けられた非難や批判に対し、怒りや憎しみを持つか、屈辱感や落胆を経験する。
これらの感情は必ずしも表面に表れず、内心そのように感じているということがしばしば。
自分に言い聞かせて自分を慰めることができない。
誰か他の人に慰め、認めてもらわないと、自分を維持できない。
失敗について本当に反省したり、そのときの辛さや痛みを認識する能力に欠けている。
失敗(あるいは批判)から新しく何かを学ぶことができない。
しかし、能力のある自己愛者は、褒められ認めてもらうために、自分を駆り立て休むことなく努力し、誇大自己を満足させようとする。
これは、本人にとっては残酷な作業であるが、社会的には成功する。
能力がない自己愛者は、より退行した形で他者からの是認を求めようとする。

7.  他者についての評価が理想化と軽蔑との間を極端に揺れ動く。
他者についても自分同様、長所と欠点を同時に認識してより深い統合的な理解を持つことができない。
従って、対人関係は相手から見た自分が「理想的・搾取的・サディスティック」で、自分から見た相手が「無力・服従的・マゾヒスティック」というパターンをとる。

8.  誇大的な自己像を思い描き、その空想的な思い込みの世界に浸っている。
他者と関係を持つにしても、それは自分の自尊心を支えるために人を利用しているにすぎない。
本当の意味で他者に共感したり、思いやりを持ったり、感謝したりすることができない(もっとも言語的表現力がしばしばあるので、うわべだけの思いやりを示すことに長けている)。
表面的な適応はさておき、他者との現実的な信頼関係を持つことができない。



◆自己愛性人格障害の発生原因

自己愛性人格障害の発生原因は、いろんな要因が組合わさった複雑な歴史の結果と考えられるが、特に目立ったものについて。

(1)乳児期の母親の共感不全

● 乳児期間はほとんど、どんな欲求も無条件に満たされ、また賞賛・評価される。

● この時、母親が乳児の欲求に応じなかったり、応じてもイヤイヤながらであれば、乳児は深く傷つくことになる。

● この時の母の共感的対応は、赤ちゃんにとって「心理的ミルク」(栄養)であり、発達に不可欠なものである。
これにより、子どもは、発達の一時期に必要な「万能感」を得られるのである。

● また、子ども発達段階に相応する万能感・誇大感に共感を持って反応することは、それを映し出す「ミラーリング」機能と呼んでもよく、これによって 乳幼児は自分らしさの発揮を促進され、より成熟した現実的な向上心を持てることになる。

● 逆にいえば、これに失敗すれば、成長時に必要な万能感や誇大感が充足されず、思春期や成人になってからも万能感・誇大感を追い求め続けることになる。


(2)両親が子どもの理想化対象になれなかった場合

● 幼児は発達と同時に現実にぶち当たり、万能感は崩されかける。
その時、万能感を失いかけた幼児が、その万能感を委託できるような対象として、両親が「手本」となればいいのだが・・・。
(幼児の要求・話しかけに適切に応じ、また幼児を理解し慰め励まし慈しみ、自信を持たせねばならぬ。決して過度な重すぎる期待を表明してはいけない)

● 両親が自分たちのことしか考えなくて、子どもの気持ちを考えずに行動したり、逆に子どもの要求に 無関心だった場合、「健康な自己愛・自尊心」が育たない。

● その結果、反動的に脆い自尊心を隠すため、誇大性の追求にばかり執着したり、傷つくことを異常なまでに恐れるようになる。


(3)変容性内在化が不十分

● 子どもは発達と同時に、現実の禁止に出会い思い通りにならないことを知るし、また、両親や周囲が自分の思い通りにならないことも知らされ、非常に辛い状況の追い込まれる。

● そんな時、失望やフラストレーションが適度であると、本人の中に理想化されている親の機能が本人の中に取り入れられる。
これが「変容性内在化」といって、人間の成長にとっての根本のひとつとなる。

● しかし、これが無関心で冷たい・禁止・ 強制的な命令・拒絶・虐待といった仕打ちだと、度を越えた不満・失望にしかならないから、当然「変容性内在化」は起こらない。

● また、逆に子供を、不満や失望をほとんど与えないような育て方をすると、これも「変容性内在化」が起こらず、成長しない。

● また、もともと適切なミラーリングや理想化が行われていなければ、「変容性内在化」が起きにくいと言われている。

● この「変容性内在化」が起きないと、いつまでたっても自信がつかず、また対象からの取り入れに執着して、他者からの評価にばかりビクビクする人間に成長してしまう。


以上、自己愛性人格障害になるには、(というより、自己愛障害レベルで発達が停止しているともいえる)まだ多様な原因があるとは思うがこの3つをあえて取り上げた。


これらは治療においても大切なことで、

1) 自己対象転移・鏡転移(適切な共感、ミラーリング)
2) 理想化転移(医師は患者の理想化を適度に受け入れる)
3) 微小共感不全(完全・完璧な共感は無理だと悟る)

などによる、適度なフラストレーションからの変容性内在化を計ることが大切だと思う。



◆自己愛性人格障害の治療

【症状】

期待通りに評価してくれないと、うつ状態に陥ることがあります。
また、この自己愛性人格障害は現代人に増えてきた人格障害と言えます。


【診断】

自己愛性人格障害特有の症状から診断がされます。
統合失調症精神病性気分障害などと区別することが大切です。
しかし、どの人格障害かを判別することはなかなか困難なようで、複数の人格障害の診断がなされる場合が多いようです。