ちんぺち日記

マンガを中心に、音楽や映画など、自分の趣味に基づいて偏ったものをつらつらと

2017年07月

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南Q太にハマったので、他の作品も読んでみようかと思い購入したグッドナイト。これ描いてる時の作者の心情が計り知れないほど重い。

設定的に昼ドラで実写化?とも頭をよぎったけど、(種類は違うけれど)ひばりの朝や、ミスミソウで覚えた、どうにも抵抗のしようのない抑圧と、それに伴うやり切れなさが強烈。

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姑に虐げられる毎日を送る晴子は、過去に自分が産んだ子供を夫の姉に奪われた過去がある。
親戚会議で決まったという欠席裁判のまま、成す術もなく子供は奪われていく。

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登場人物の誰もが常軌を逸していて、その中で精神が壊れていく晴子。時系列はバラバラで進んでいくものの、疲弊して擦り切れていく表情が秀逸すぎて辛い。

なんというか、姑と小姑のキャラクターを見ていると、魅力的なほどに胸糞で、まるで実在するかのように憎悪を抱いてしまう。それまでに南Q太のキャラクターに込める人間性が深い。

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2巻が発売してから暫く経つが、まだ3巻の発売は未定のよう。こんなのコンスタントに描いてたら描いてる方も変になってしまいそう。

読んでいてずっと涙が出そうだった。悲しみなのか怒りなのか気持ち悪さなのか、よく分からない感情が自分の中に湧いてきたけど、多分読んだ人はみんなよく分からない感情を味わうんじゃなかろうか。

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時代時代の風俗を、個人の体験とともに描く漫画は数多いけれど、90年台中後半からを描いてるものは珍しい。
何でこんな最近の話を…と思ったけど、数秒後に、いやいやもう20数年前じゃないかと思い出し、時の流れの速さを実感して身震いがおきる。

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たまごっち、携帯電話、ポストペット、ゲーム機、当時の小学生の流行など、ほぼ自分と同じ世代(作者は3つ上)の流行が次々と登場して、平成の歴史資料集を読むようであり、アルバムをめくり返す様でもある。

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と同時に、友人岡崎との何とも言えない距離感の友情物語でもあり、徐々に変わっていく周囲・変わりたくないけれど変わらなければならぬと踠き、それでも変わりきれない自分・その隣でいつまでも変わらないでいてくれる岡崎という成長物語でもある。

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物や情報が必要以上に溢れ始めた時代(特にインターネットの普及)、その過渡期だからこその不安感が、同じ時代を生きてきたからこそ、強く共感できる。リアルがある。

コミカルな画風で笑わせた後の、巻末の明朝体のあとがきが、強い切なさを与えてくる。楽しみながらも、その中で悩みながら成長してきた作者が、古い友人の様に感じられる。

「岡崎に捧ぐ」の終着点は、岡崎の結婚式だろうか。(当初、結婚式のサプライズとして描きあげる予定だった)
なんかすごい友情。小中の友人(高校の記憶はない)とすっかり疎遠になってしまった自分としては、こんな幼馴染を羨ましいと思ってしまう。

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ドイツ編に入っても最高。
クリスとの別れが2巻の肝の1つ。
ブルージャイアントはジャズの物語で、前章で大が語っていたように、ロックバンドなどとは違ってジャズバンドはメンバーを固定しない。これがこの漫画の面白さの1つだなと実感する。

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別れる人たちの言葉の1つ1つが印象的に、とは裏腹に尾を引かないつくり。ココが上手いところだなー!と脱帽。
そんでもって巻末の毎回のアレが憎い。泣ける。

今回はベーシストのハンナを仲間にしようとするストーリー。

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ジャズの持つ力強さを信じながらも仲間に恵まれず、苛立ち、大のことも東洋人故に下に見てしまうハンナ。
性別も国境も超えると信じながらも、自己矛盾が生じている。

そして最後に目の当たりにする大のプレイで、今までの登場人物と同じように自分の中の信念が呼び起こされる。
という次巻へのヒキ。ずるすぎる…

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南Q太のPop Lifeが面白い。
離婚してシングルマザーとなった2人が1つの家で暮らす、わりかし日常もの。

鳥飼茜のおんなのいえチックな設定だけど、男性への恨み辛みではなく、単純にその生活を描いている。
その生活スタイルに至る過程を省いている(後に描くかもしれないが)ことで、生活そのものにフォーカスしている。

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単純な感想としては、シングルマザーが1つの家で生活するというかたちは、なかなかにアリ。というか利点はありそう。
とはいえ条件もある。例えばお互いの子供の年齢がある程度離れているとか。期限付きであるとか。

女手一つで育児をしながら生計を立てるのはハードルが高い。それをPop Life方式でシェアハウスすれば、お互いを補完しあえる。

実際に調べてみると、シングルマザー用のシェアハウスってのもあるようで。再婚を望まなかったり、子供が大きくなるまでの止まり木としてだったり、需要ありそう。

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漫画的には南Q太を初めて読んだのだけど、ストレスを感じない漫画家なんだなと。
独りよがりな心理描写も、女尊男卑もない。
それは、この漫画自体の目的がそこではないからなのかな。

ときどき、ふと思い出すこの生活の終着点の存在。
1冊の中における、その憂いの割合がベストだと思う。

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ギャグ漫画の感想を書くのはとても恥ずかしい。
かつて「俺を分析するな、ただ興味は持て」と上田晋也がラジオで言っていたように、笑いを分析したり、批判すると冷めてしまったりするしね。

とはいえ、巨悪学園、面白い。
監獄学園と同じ系譜だと思うけど、絵がガチな人がどうでもいいことを、その画力をいいことに延々と引っ張り続けるタイプのギャグ漫画。

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そんでもって、劇画タッチなのでひたすらページが黒い。とにかく黒い。生徒の裏社会を牛耳るおっさん(に見える16歳の生徒達)がとにかく視覚的にも中身的にも黒すぎ。

教室で薬は打つ、葉巻は吸う、酒は飲む、女を連れ込んでセックスする、暗殺の指示を出す。
(あそこまで堂々と飲酒されると何故未成年が飲酒禁止なのか疑問にさえ思うぜというセリフが好き)

なんか、ジャンプレベルのお色気で教育的配慮が叫ばれているけど、(あれは少年誌だからだろうけど)こんな漫画どう思われるのだろう。

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ギャグ漫画読んでると、編集とどんな打ち合わせしてるんだろうとか、執筆中に自分のギャグが本当に面白いのか分からなくならないのかとか考えてしまうけど、考えたらダメだよね。

バカになって読むのが、読者としてのマナー。
分析はしない、ただ興味は持つ。

image 物語の出だしでギャグに走るわけでもなく、過剰な登場人物のキャラ説明をするわけでもなく、一話目からしっかりとストーリーであると主張してくる気がする。 image 富士山の麓、自衛隊基地の程近くの病院の前で、男が倒れていたところから物語が始まる。 医師の玉木が治療にを施すが、同様の患者が次々と現われ亡くなっていく。 パンデミック物だけども、アイアムアヒーローのようなトンデモ設定ではない。トンデモ設定ではない分、エンターテイメント性は低いかも知れないけれど、「無くはない」という背筋裏にかんじる恐怖と、それでも程よいスピード感で一気に読み終えてしまった。 image 病院が物語の中心であるが、自衛隊や感染病研究者、そして次々に押し寄せる大量の発症者で、主人公のまわりが慌ただしく回っているので、退屈な展開にはならないし、読むのに苦労するような医学解説も少ない。 image 感染が一気に広がり、その発表を受けての展開は絶望的。 その中で、自分を信じ続けることを意味深に研究者の原神が語るシーンが、今後の展開を明るくも暗くも暗示させ、次巻への引きとしては最高だと思う。 うるさくなく、じっくりとそれでもスピーディーに。 地力のある漫画家だなと思わずにいられない。 image

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やれたかも委員会、まずは発想が謎すぎる。
発想を思いついたとして、それを漫画にする感覚も謎だし、持ち込みで断られ続けたのに、唯一後押しした山本英夫も謎だし、書籍化されて買ってしまった自分も謎。

やれたかも委員会を訪ねた人々が、いつかのアバンチュールの夜、だけど何もなかったひと時を語り、「やれた」「やれたとはいえない」を委員会の3人が判断する、だけをワンパターンに続けていく。

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なんか無限に描ける気がする。
そこに確固たる読者へ訴えかけるメッセージがあるとも到底思えない。だから死ぬほど気軽に読めるんだけど。

ただ面白さを言えば、決して最後まで行かない寸止めを食らわされ続けるわけで、1番の昂まり所で一話一話が終わっていくからこそ面白いのかもしれない。

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ラブラブエイリアンとか、フリンジマンみたいに、なに考えてこんな漫画描こうと思ったんだろうなーってソファに横になりながら読める漫画が1つあると、なんか楽だなと思う。

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青野くんに触りたいから死にたいは、同時期発売のボクはイケメンと偶然にも似たような境遇で、死んだ人が近しい人の前に現れて、なんやかんやで憑依する話。

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とはいえ、こっちの方はある程度ホラー路線を走っているのが面白い。
死んでしまった青野くんは自分にしか見えない。触ることもできない。けど付き合って2週間で死んでしまって、まだ何もしていない。

霊として現われる青野くんは、優しさで優里と過ごすけど、時々正気を失ったような青野くんに豹変する。

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時々怖い。今回2ページだけど、サブリミナル的に差し込まれた意味不明な暗い部屋の描写からの、現実なのか不安定な場所に戻ってくる描写は鳥肌。

絶対的にホラーを予想せずに買ってしまったからか、その落差にやられた。しかもこの人の描くユーモアって何処と無く、進撃の巨人の諫山創に似たところがあって、ブラックなところがある。そんなところも含めて、絶妙な怖さ(怖いと言い切れない)を維持しながら1巻が終わる。面白い。

優里のメンヘラさから、破滅的に豹変した青野くんを受け入れていくところも、なんかいい。
全て無くして、危険な世界に飲み込まれてもいいというメンヘラさ加減がたまらない。

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時期を逸してはいるのだけど、間違いなく2017年上半期のベスト1なので書いておこうという気持ち。

恋のツキは2巻で緩やかな下降を辿るかと思いきや、3巻の強烈なアッパーの伏線だった。

結婚を控える2人だけども、ふうくんの「相手の浮気を許した」「会社の同僚に誘われても最後には断った」という、優越感の浅ましさが目立つ回だった。

とはいえ、これは自戒を込めて書くけども、「病めるときも健やかなるときも」と違った男女でも、誰もが聖人のように死ぬまで誓い切れるわけではないのだろう。

そして、特に男は本能的に女性よりも優っていたいという潜在意識があるから、生活の中の様々な事象を所謂ポイント制で扱いたがる。

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相手が家事をしなかった、マイナス1点。自分が浮気をしなかった、プラス1点。あ、今2点の差があるな。こんな具合で。

じゃあ、誰もがみんな初めから、そんなに打算的に生活しているか?これが恋のツキの怖いところ。
要は慣れ。慣れは少しづつ尊重を削って蝕んでいく。

例えばそれを打破する1つの術がセックスだったとして、恋のツキの場合、パートナーだけでなく、浮気相手のイコくんとも関係を持ったために、愛情(一時的かもだけど)の湧出さえも倒錯してしまっている。何もかもがはたんの方向へ動いていく。

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恐ろしいのは、これが恐らく多くの恋愛経験のある人には当てはまってしまうだろうというところ。
かつて感じた気持ちは、いとも簡単に流れていってしまうから、注意深く掌に留めとかなくちゃならないんだな…

松本剛のロッタレインという作品をネットで試し読みして、ちょっと興味が湧いたので過去作を読もうと思ったら、Kindleに置いていない。

Amazonで中古を買いました。

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甘い水、上下巻。
北海道を舞台に高校生の夏生は眞千子と出会い付き合うことになるけれど、眞千子の抱える秘密によって2人の関係も眞千子自身も崩れていく。

半分胸糞系のストーリーではある。
もはやネタバレだけど、眞千子は実の父親に自宅二階で売春させられている。
胸糞ではあるのだけど、それ以上に無力感を強く感じる。

2000年頃の作品ではあるが、時代背景は80年代前半。
故に携帯電話もなく、札幌などの栄えた繁華街からは離れた場所が舞台。とはいえ北海道、どこまでも続くような何もない土地と、眼前には港から広がる暗い海で、高校生の2人には抗いようのない圧迫感が立ちふさがる。

「何も無さ」故の圧迫感イコール無力感が全編にわたって随所に現れている。

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眞千子が夏生に自らの境遇を告白した帰り道、2人の足取りは重く、だけど自分の対処できる範囲を超えた問題に為すすべもない。
その2人の帰り道をロングな描写で見開きにして、空はページ上部から2人に覆いかぶさるに連れて重みのある黒にグラデーションを描いていく。

その反面、その事情をしる夏生の友人が「忘れろよ」と告げるシーンでもやはり見開き描写になるものの、夜明けの空のグラデーションは、先程と対比するように夏生に近づくによって太陽の柔らかい光が包み込んでいく。

夏生が、抗いようのない事実から目を背けることで、みずからを救う、諦めを覚えるシーン。そのコントラストがとても印象的。


結局、完全なハッピーエンドではない。
かと言って、読者に問いかけているのかも分からない。もはやうろ覚えではあるが、昔見た家なき子のような思い胃もたれのような「痞え」がのこる。

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