本を閉じて猫を追いかける。

構成要素の殆どは 『猫との空騒ぎ』。時々、本のことを長々と。

本のこと。「窓の魚」西加奈子


まどのさかな


川沿いの温泉宿に宿泊する男女四人が抱える、恋や苦悩。
第三者によって語られる、ひとつの事件、残された死体。

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ふらっと本屋に行き、
平積みの新刊を面白そうに思い手に取って、店内を一巡りして、
なんとなく気にかかり手に取った文庫本。
それがこの 「窓の魚」 でした。

読んでみて、びっくりしました。
ここまで余韻のある小説だとは思っていなかったからです。


何か大きな事件があってその謎解きをするとか、だれかが主人公の恋愛成就の過程だとか、そういう感じではなく、完全なる群像劇であり、もしかしたら、出てくる登場人物すべてが主役ではないかというくらいです。

それくらい、密度が濃いのです。

舞台がまた見事で、温泉宿だけれど、喧噪からは隔絶された、どこかうらさびしいような感じのする旅館です。

庭に池があって、その池がガラスで仕切られていて、そのガラスがそのまま風呂の窓になっている。風呂の水面より池の水面のほうが高いので、ガラスの向こうで錦鯉が泳ぐさまが見える。

印象深い舞台設定はそのまま登場人物たちの心の描写の一部のようでもあり、なにかの象徴のようでもあります。

わたしはこのなかの登場人物の誰にも感情移入しては読みませんでした。

一番多く語られる若い四人の男女にはそれぞれの思いや過去や苦悩や挫折があり、それらひとつひとつが、すごくリアルで、深くて、それでいて淡々と描かれています。
ひとりひとりに対する掘り下げがすごいのに、大して長く書かれているわけでもない。いい意味で、このなかのだれかひとりを特別にみる、ということができませんでした。

この小説には謎が多いです。
けれどそれはたぶん、こうだよ、という回答に意味はなくて、
そういうことを考える時間が、本を閉じた後にもあるということが、
とても価値があるように思うのです。

とても薄い文庫本ですが、たぶんすごく重い。
読んた後すぐに再度読もうか、と思ってしまった小説です。
面白かったです。







 

本のこと。「屍人荘の殺人」今村昌弘


ぞぞぞっ


屍人荘の殺人 今村昌弘

大学でミステリ愛好会会員の明智、葉村は、剣崎比留子という女性との取引により、かねてから出席を熱望していたコンパ兼合宿に参加する。この合宿は、脅迫文が届いたり、前回参加者が自殺しているいわくつきのものだった・・・。
しかし、そういったこととは全く別のある理由から、彼らはそこに閉じ込められる。
全員の生命が危うい極限状態の中で、殺人は起こった・・・。

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本屋で平積みになっているのを手に取って、なにやら面白そうな感じがしたので、買ってすぐ読みました。面白いです。

とにかく新しい感じがしました。

斬新で、ミステリの王道を行くクローズドサークルの新しい形。
超がつくほどの非日常で、
けれどちゃんとそれがひとつのピースとしてはまっていて、
絶対に外すことが出来ないものになっています。

だから、好き嫌いはあるかもしれませんが、
納得せざるを得ないのではないかと思います。

わたしはとても楽しく、面白く読みました。


斬新さのなかに王道の筋がある感じがします。
登場人物もなかなか楽しく魅力的で、とくに探偵役がまた面白い。

探偵の類型みたいなものをまとめるとするなら、たぶん、あたらしいカテゴリが必要かもしれないくらい、意外な感じです。

また、細かいところも凝っているので、読んでいて読み応えがありました。
たとえば、語り部の葉村の前にエメラルドグリーンのクリームソーダがあるシーンは、何やら印象的なのですがそれにも意味があったり。

相手が頼んだコーヒーに対して、クリームソーダの色はすごく鮮やかで、おそらくここが不思議に印象に残ると思うのですが、それがあとから効いてきます。

読みやすくて楽しくて、いろいろ展開にびっくりなので、買ってすぐ読んでよかったと思います。
なんだかクリームソーダが飲みたくなりました。






本のこと。「四つの嘘」大石静


かつての同級生である美波がニューヨークでフェリーの事故で死亡した件をきっかけにして、専業主婦の満希子、シングルマザーの詩文(しふみ)、医師のネリは、連絡を取り合うようになる。
死んだ美波(みわ)と詩文の間には、学生時代一人の男性をめぐって諍いがあった・・・・。

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以前ドラマ放映されていたのを見ていて、当時、結構楽しみにしていました。
原作があることを知って、読んでみたいと思いつつほったらかしで、最近、読みました。
細かな違いはあるけれど、ドラマと筋は大体一緒です。ただ、大きく違うなあと感じたのが、詩文の描き方かな、と思います。

詩文は老舗本屋の娘で、思わしくない経営状態のまま細々と本屋を続けている。小さなころから文学を読みふけり、早熟で、艶めかしい色気のある、世間を斜めに見ているような女性です。
そして、常に男がいる。人から奪ってみたり、気晴らしで男を簡単におとす。

こういう女性が年を取っていくことにはある種、残酷でさびしいような結末を想像させるものが多いような気がします。
ドラマだと、あまりそういう感じはありませんでした。
貧乏で、とても幸せそうには見えなかったけれど、自由に、今を受け入れて、ふてぶてしく生きている感じがありました。

けれど原作を読んでみるとなんだかニュアンスが違っていました。
少しだけ苦いような、現実路線とでもいうような、堅実な結末と心理描写だな、と思います。

人間、四十代になると、かつての同級生などとは明らかに人生が違って、格差のようなものがはっきりしてきて、今までどう生きてきたのか、ということが如実にあらわれるのだと思います。
その時、本の中の詩文は思うのです。

自分はなんと半端な人間なのだろう、
物事を斜めに見ていた若いころが懐かしい、と。

そうかもしれません。実際そうなのでしょう。
ドラマの影響が大きくて、わたしは個人的にはそちらのほうが好きです。

人生の選択で、こうなってしまったことは自己責任かもしれませんが、
そう生きるしかないというものは、あるのかなと思います。

この四人のなかであなたはどの女性ですか?

解説のなかに、このような文言があります。
その答えにはなりませんが、
わたしは、一番詩文に感情移入して読みました。
似たところはあまりないけれど、共感できる部分があります。

読む人によって誰に感情移入するか、だれが気になり誰が嫌いか、色々だと思いますが、それはそれで面白いと思います。
ドラマと一緒に楽しむと、よりいいかなと感じました。

私はドラマのほうに一票です。




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最近は猫ブログ < 読書系ブログになりつつある・・・かな?
ふらふら~と不定期更新中~
(詳細はカテゴリ「猫の説明書。」)
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’15.01/01☆


そのほか、本に関するヒトリゴト記事も細々と書いてます。
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