本を閉じて猫を追いかける。

構成要素の殆どは 『猫との空騒ぎ』。時々、本のことを長々と。

本のこと。「怪しい店」有栖川有栖


怪しい店


「暗い宿」に続く、今度は店をテーマにした短編集。

モノを買うことや、モノを売ること、
店というものの少し変わった見方ができる上、謎解きも楽しめる色鮮やかな短編集で、さらりと読めてしまいます。

どの作品も素敵ですが、特に気に入ったのが、「潮騒理髪店」です。

この短編は、いわゆる殺人事件が起こらない謎解きで、そもそも謎自体が、よほど観察力がないと見過ごしてしまいそうなささやなもので、物語の筋の持っていき方が絶妙なのと、理髪店の雰囲気が素敵なのが魅力です。

すべては推測なのですが、その流れがきれい。
特に結末がきれい。

わたしは連作短編という形式が大好きで、重厚な長編も良いですが、短い物語の連鎖が作る目に見えない行間の世界を感じることのできる作品が好みです。
さらにいえば、その中でとくに気に入った短編がどれか、そしてなぜそれに魅力を感じるのかを考えるのも好きです。

短編の世界は短くあざやかで鮮烈。
影の色が濃く、光はまぶしく、世界の遠近はつかめずに、結末はすぐにやってくる。

「店」というテーマは奥が深く、そして魅力があります。

毎日通り過ぎる道に面するこの店は、いったい何の店だろう?
ずっと通り過ぎるばかりの喫茶店、中はどういう感じなのだろう?

誰しも不思議な看板に首をひねり、中の見えづらい店が気になった経験はあるだろうと思います。
そんな店の扉を開くのをイメージしながら、ページをめくっていくのは楽しい体験でした。

テンポよく展開する短編集、面白かったです。






本のこと。「鏡の花」道尾秀介

万華鏡

「鏡の花」 道尾秀介

近しい人の死が連なる短編集。


今まで一回も読んだことのない作家さんの本を手に取り、移動時間中に読みました。
読んでみて、びっくりしました。すごく面白かったのです。

ひとつひとつは、身近な人の死を含む短編で、明るい話ではありません。
ですが、短編をひとつひとつ読んでいくと、やがて世界の形が見えてきます。

本全体の世界の構造が今までにない感覚なのが一番斬新なのですが、
ひとつひとつの物語中のエピソード、何気ない心理描写が深いのです。

やりきれない出来事、取り返しのつかない出来事、
どうしようもない喪失感が万華鏡のように紡がれるけれど、描き出しているものが鮮やかです。


切ない話なのですが、最後まで読んだとき光が差すので、
その深く不思議な鏡のなかをのぞき込んでみるのもいいかもしれません。

別の作品も読みたくなりました。





 

本のこと。「ジキルとハイド」スティーヴンソン


変身を伴う二重人格


あまりにも有名な、二重人格の代名詞。


「ジキルとハイド」 は、有名すぎて知っているような気でいただけで、
実は全く読んだことがない作品でした。
なんとなく二つの人格の話だというだけで、あらすじはおろか結末も知りませんでした。

夏になんとなく手に取り、冬の始まりに読み始めて、読み終わって、感嘆。

こういう話だったのか。
もっと早く読んでいてもよかった。

訳者の力量にもよるのでしょうが、
作品内にただよう雰囲気もよくて、そこにあるであろう光景や温度や湿度、
心地よさ不快さなどが感じ取れる文章が繊細でゆたかです。

いくつか私自身が思い込んでいたことと違う部分があったので、書いておくと、一つにはここでいう二重人格は、病気として存在する二重人格とはちょっと違っていると思います。
単純に、「善と悪」 というものかなと思っていいような気がしました。

本人はすべての記憶と連続して持っていて、自分の中にある善行による喜びと、邪悪な行いに対する欲望で揺れています。誰にしもありそうな感情ですが、ヘンリー・ジキルのそれはとても極端で、不幸なことに彼はその両立する術を見つけてしまうのです。



この作品はいくつかの視点から考察することができそうです。

たとえば、人の中にある善と悪の感情、欲望について。 品行方正で一途な友情について。 書き方によっては驚きの結末になる可能性を秘めた殺人事件になりそうな筋書きについて。 絶望について。 依存について。 自己というものについて。

たぶん私が思いつくことのない視点もあるかもしれません。

この作品の面白さは、取り扱う内容もさることながら、構成の見事さにもあるように感じています。

外の視点であるアタスンを語り部とする前半、当事者であるジキルの手記による終盤とラスト、この形式で作品の世界の色がくっきりと分かれていてるのが個人的には、ぴたりとなにかにはまるように、感じました。

物語を締めくくるジキルの手記の言葉は、
ながれるようできれいに絶望を描いています。

短いですが濃い名作だと思いますし、
思ったより読みやすいので、読んで、読んだ後、
いろいろな視点から作品を眺めまわすのも面白いかと思いました。



 
記事検索
人気ブログランキングへ


ペットブログランキング


blogram投票ボタン

■ ■ このブログについて ■ ■


最近は猫ブログ < 読書系ブログになりつつある・・・かな?
ふらふら~と不定期更新中~
(詳細はカテゴリ「猫の説明書。」)
↑ 内容を更新しました
’15.01/01☆


そのほか、本に関するヒトリゴト記事も細々と書いてます。
これまでの読書記事はこちら。

※更新は予約投稿です。
(週末にまとめて書いてます)

■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □


2010年5月ブログ開設
2011年1月ブログタイトル変更
2011年2月ハンドルネーム変更
すず → リリン
2011年2月ブログ休止
2011年3月更新再開
2011年4月コメント欄再公開
2012年9月ブログ休止
2012年12月こじろ永眠
2013年3月ブログ再開
2014年1月ブログ休止
2014年2月みい永眠
2014年9月はな永眠


当ブログはリンクフリーです。



livedoor プロフィール
月別アーカイブ