本を閉じて猫を追いかける。

構成要素の殆どは 『猫との空騒ぎ』。時々、本のことを長々と。

本のこと。「T島事件」 詠坂雄二



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 無人島で映画のロケハンを行っていたスタッフが、全員死亡。
そのいきさつはほとんどすべて映像として記録されている。
すでに解決済であるはずの事件について、再度調査を依頼された月島前線企画は、探偵不在のまま再調査を開始する・・・。

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最初から、作中において、地味な事件で登場人物に華がないと断られてはいますが、確かに島で一人ずつ登場人物が死んでいく、というパターンから今までにない斬新な展開があるか、というと、それはあまり期待しないほうがよさそうです。

個人的には、そういう展開は大好きだし、前例がある展開だとしても、持っていき方が面白かったり、怯えや不安、スリルなどが味わえればわりと満足することがありますが、この作品は、わたしの好みからすると、もう少しどきどきしたかったな、というのが率直な感想です。

すべてが映像であるという不気味さと、画面の向こうからそれを見つめる目と、そういうものの、緊迫感のようなものと、謎めいた感じ、そういうものがもう少し欲しかったなと思います。

けれどこれはあくまでも個人的な欲求なので、この作品のテーマ、あるいは表現したかったことは全く別にあって、それに価値を見出すひとにとっては興味深いし面白いはずです。


テーマ。
ノンフィクションとフィクションと、フェイクドキュメンタリー。
そういった作品に心血を注ぎ、ついには自分自身を引き換えにしてしまう、という狂気。

だが何に対して?

どういう存在に対して?


こういう動機、あるいは展開に説得力を持たせるのは、かなり難しいことではないかなと思います。
一般的には理解しづらいし、また、その対象が客観的にどう魅力的なのか、よくわからなかったというものもあります。

わたしは机上の空論的な、まるで現実味のない殺人動機が推理小説に登場するのは全然嫌いじゃありません。
それが作品としてきれいにはまっているな、表現できているな、納得はできるな、という感じがすればいいと思います。

筋はわかります。
でも少しあっさりしていて、物足りない感じを抱いてしまいました。

ただ、どうおちをつけるのか知りたくて、ノンストップで読んだその感じ分だけは楽しめたと思います。



本のこと。「22年目の告白-私が殺人犯です-」浜口倫太郎


はじめまして・・・・


時効を迎えた殺人犯が手記を出版する。
残酷な連続殺人犯にもかかわらず、容姿端麗な犯人に世間は魅了され翻弄されるが・・・・




映画が気になっていたのに、先にノベライズ版を手に取ってしまいました。

数時間、睡眠を忘れて読みました。
読みやすいし、先が気になってやめられませんでした。
もし電車のなかで読んでいたら、うっかり駅を間違えそうです。

美貌の殺人犯が時効に守られながら、自分の犯行を暴露する。

なんて刺激的、

と思ってしまいました。
世間はどよめくし、被害者家族の憎悪を浴びる。平穏な生活など望めなくなるのですから。

それがどのように描かれるのか気になって、本を手に取ったのです。
先に映画を見たほうがいいかなあと思いつつ。

面白かったです。
とくに結末がよかった。

こういう話で、破滅劇場というか、ただ花火のように派手に犯人の怪物ぷりを延々と描くのもなんだかありそうな気がしていたのですが、結末はきっちりしています。

映画を見た後に読んだら、映画の世界観も混じるので、より面白いのかなという気もしますが、最初に活字で読んでもかなり楽しめると思います。

ストーリーがいかにも現代的な感じで、美貌の殺人犯に熱狂する世間、というのがすごくリアルで、本当にありそう。
殺人でも殺人犯でも貪欲に消費してしまう世界というのを薄々感じているからこそ、あるかもしれないと、思うのだと思います。

でも本当の見所はその奥のほうにある謎と目的のほうなので、美貌の殺人犯の謎と妖気を存分に楽しめたら、ラストに向かって加速度を増すミステリアスな展開にのめりこめるかと思います。




 

本のこと。「三四郎」夏目漱石


三四郎


最近徐々に読み始めたものの、文学はやはり読みづらい。
そんな私でも読みやすくて、好きだといっても嘘がないのが夏目漱石です。

「三四郎」 はいなかから出てきた学生が、東京のあれこれに驚かされたり、学問や講義について高揚したり失望したりする日々のなか、恋愛を知る、その描写がこまやかな作品です。

心と心の交流のことで、なかなかに言葉では言い尽くせないと思われる感情の流れや、美彌子と三四郎の、微妙にお互いを意識しあうところやつかず離れずの距離感が、読んでいて切ないようでいて懐かしい感じがします。

思うようにいきそうでいかない、もどかしい感じ。
それが読んでいて呼び起こされる感情です。

どうにもならないことはある。
もしかしたら、何かが違っていたら、成就したかもしれない。
そんな余地がある。

でも、結局思い通りにはいかない。



この小説の中の世界は、秋です。
空の美しい、それでいて空の色が濁りやすい季節であり、美しく、どこかさびしいような季節でもあります。

序盤はよく空が描写されます。それが本当に綺麗で、
わたしは夏目漱石は文章が美しいと思っていますが、わずかばかり読んだうちの中では、「三四郎」 は特に美しいと感じています。

初夏の今、本の中から秋の風と空を感じられるのです。

一冊の本の中のある秋の世界の、美しい空の下で、一人の女性に苦しむ学生のこまやかな心の動きが、読み手に繊細な感情を思い出させるような、そんな小説と感じました。






 
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最近は猫ブログ < 読書系ブログになりつつある・・・かな?
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’15.01/01☆


そのほか、本に関するヒトリゴト記事も細々と書いてます。
これまでの読書記事はこちら。

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