本を閉じて猫を追いかける。

構成要素の殆どは 『猫との空騒ぎ』。時々、本のことを長々と。

本のこと。「22年目の告白-私が殺人犯です-」浜口倫太郎


はじめまして・・・・


時効を迎えた殺人犯が手記を出版する。
残酷な連続殺人犯にもかかわらず、容姿端麗な犯人に世間は魅了され翻弄されるが・・・・




映画が気になっていたのに、先にノベライズ版を手に取ってしまいました。

数時間、睡眠を忘れて読みました。
読みやすいし、先が気になってやめられませんでした。
もし電車のなかで読んでいたら、うっかり駅を間違えそうです。

美貌の殺人犯が時効に守られながら、自分の犯行を暴露する。

なんて刺激的、

と思ってしまいました。
世間はどよめくし、被害者家族の憎悪を浴びる。平穏な生活など望めなくなるのですから。

それがどのように描かれるのか気になって、本を手に取ったのです。
先に映画を見たほうがいいかなあと思いつつ。

面白かったです。
とくに結末がよかった。

こういう話で、破滅劇場というか、ただ花火のように派手に犯人の怪物ぷりを延々と描くのもなんだかありそうな気がしていたのですが、結末はきっちりしています。

映画を見た後に読んだら、映画の世界観も混じるので、より面白いのかなという気もしますが、最初に活字で読んでもかなり楽しめると思います。

ストーリーがいかにも現代的な感じで、美貌の殺人犯に熱狂する世間、というのがすごくリアルで、本当にありそう。
殺人でも殺人犯でも貪欲に消費してしまう世界というのを薄々感じているからこそ、あるかもしれないと、思うのだと思います。

でも本当の見所はその奥のほうにある謎と目的のほうなので、美貌の殺人犯の謎と妖気を存分に楽しめたら、ラストに向かって加速度を増すミステリアスな展開にのめりこめるかと思います。




 

本のこと。「三四郎」夏目漱石


三四郎


最近徐々に読み始めたものの、文学はやはり読みづらい。
そんな私でも読みやすくて、好きだといっても嘘がないのが夏目漱石です。

「三四郎」 はいなかから出てきた学生が、東京のあれこれに驚かされたり、学問や講義について高揚したり失望したりする日々のなか、恋愛を知る、その描写がこまやかな作品です。

心と心の交流のことで、なかなかに言葉では言い尽くせないと思われる感情の流れや、美彌子と三四郎の、微妙にお互いを意識しあうところやつかず離れずの距離感が、読んでいて切ないようでいて懐かしい感じがします。

思うようにいきそうでいかない、もどかしい感じ。
それが読んでいて呼び起こされる感情です。

どうにもならないことはある。
もしかしたら、何かが違っていたら、成就したかもしれない。
そんな余地がある。

でも、結局思い通りにはいかない。



この小説の中の世界は、秋です。
空の美しい、それでいて空の色が濁りやすい季節であり、美しく、どこかさびしいような季節でもあります。

序盤はよく空が描写されます。それが本当に綺麗で、
わたしは夏目漱石は文章が美しいと思っていますが、わずかばかり読んだうちの中では、「三四郎」 は特に美しいと感じています。

初夏の今、本の中から秋の風と空を感じられるのです。

一冊の本の中のある秋の世界の、美しい空の下で、一人の女性に苦しむ学生のこまやかな心の動きが、読み手に繊細な感情を思い出させるような、そんな小説と感じました。






 

本のこと。「怪しい店」有栖川有栖


怪しい店


「暗い宿」に続く、今度は店をテーマにした短編集。

モノを買うことや、モノを売ること、
店というものの少し変わった見方ができる上、謎解きも楽しめる色鮮やかな短編集で、さらりと読めてしまいます。

どの作品も素敵ですが、特に気に入ったのが、「潮騒理髪店」です。

この短編は、いわゆる殺人事件が起こらない謎解きで、そもそも謎自体が、よほど観察力がないと見過ごしてしまいそうなささやなもので、物語の筋の持っていき方が絶妙なのと、理髪店の雰囲気が素敵なのが魅力です。

すべては推測なのですが、その流れがきれい。
特に結末がきれい。

わたしは連作短編という形式が大好きで、重厚な長編も良いですが、短い物語の連鎖が作る目に見えない行間の世界を感じることのできる作品が好みです。
さらにいえば、その中でとくに気に入った短編がどれか、そしてなぜそれに魅力を感じるのかを考えるのも好きです。

短編の世界は短くあざやかで鮮烈。
影の色が濃く、光はまぶしく、世界の遠近はつかめずに、結末はすぐにやってくる。

「店」というテーマは奥が深く、そして魅力があります。

毎日通り過ぎる道に面するこの店は、いったい何の店だろう?
ずっと通り過ぎるばかりの喫茶店、中はどういう感じなのだろう?

誰しも不思議な看板に首をひねり、中の見えづらい店が気になった経験はあるだろうと思います。
そんな店の扉を開くのをイメージしながら、ページをめくっていくのは楽しい体験でした。

テンポよく展開する短編集、面白かったです。






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最近は猫ブログ < 読書系ブログになりつつある・・・かな?
ふらふら~と不定期更新中~
(詳細はカテゴリ「猫の説明書。」)
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’15.01/01☆


そのほか、本に関するヒトリゴト記事も細々と書いてます。
これまでの読書記事はこちら。

※更新は予約投稿です。
(週末にまとめて書いてます)

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2010年5月ブログ開設
2011年1月ブログタイトル変更
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