本を閉じて猫を追いかける。

構成要素の殆どは 『猫との空騒ぎ』。時々、本のことを長々と。

本のこと。「ソラリス」スタニスワフ・レム


ソラリス


ソラリス

二つの太陽のまわりをまわる惑星ソラリス。
調査研究のためステーションに降り立ったクリスは、異様な雰囲気とその荒廃ぶりに戸惑う。
研究者たちは、「なにか」 を自室に隠し、ステーションで何があったかを明かすことなく、閉じこもっていた。
やがてクリスはその原因ともいうべき出来事に遭遇する・・・。

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ソラリスは、とあるテレビ番組で取り上げられていた時、気になってすぐに買って読んだ本です。
すべて読んだ後、テレビの解説などを見たので、その影響もあるかも知れませんが、とにかく深い話で、単にSFというジャンルでくくれない広がりがある作品と感じました。

ソラリスは海で覆われた惑星であり、その海がひとつの生命であるらしいと分かったとき、人々は熱心に調査研究を行いました。
しかし、その海が何なのか、意識があるのか、思考しているのか、そして人間とのコンタクトが可能なのか、ということが、どうしても分からないままでした。
やがて人々は、その熱意を幾分引くようにして、ステーションに数人の専門家を滞在させて研究させる形とするのです。

そのステーションの中では、異様なことが起こっていました。
そのさなか、クリスはステーションに降り立ち、自身もソラリスの海がもたらす不思議な出来事に遭遇するのです。


この物語をどうとらえるのか、と考えると、それは色々な側面から考えられると思います。

けれど、根底にあるのは、ソラリスの海という、人間には全く理解できないもの、人間とは通じ合えないもの、人間の尺度の外にあるものというものを描くこと、だと思います。


ソラリスの海はすごい。
読んでいるとその不可解さ、不気味さ、底知れない可能性と生き物のどこか生臭い感じがするのに、何か高性能な機械が無感情に時々作動しているというような印象があります。

人間のあたえる刺激にただ反応するだけで、そこには深い思考があるのか、感情があるのか、そういうことは全く分からなく、意味がないのです。

人間は人間の器の限界の中で物事をとらえ、考えますが、ソラリスの海はその外にあり、そとに或ることをうすうす感じながらも、それをどう考えたらよいのかが分からない、という土台が横たわっているのです。

たとえば海は、ステーションの専門家たちの記憶かあるいは心を読み取り、そのなかで強烈な感情をともなう何かの存在のほとんど完璧に近い複製を送り込む、ということをします。
けれどなぜそんなことをするのか、ということは正確には分かりません。

クリスにとってそれは自分の言葉のせいで自殺した恋人ハリーであり、他の研究者たちは徹底気にそれを隠していて、作中に明かされることは一切ありません。

その見えそうで見えないものがとても不気味で、悪夢のようなまがまがしいものであることが想像できますが、海はまるで神のように、その人の深い心の奥の何かと対峙させるのです。

しかしここに人間にとって分かりやすい理由や動機を簡単に位置付けられないのです。
そしてそれが、本質であるようなのです。

不可解な、圧倒的な、決して通じ合えない巨大なものを前にしたとき、
世界は、個人はどうするのでしょう。

人間には人間の器、限界があって、万能のように思うわたしたちが最後まで理解しえないものが確かに存在したとき、どうなるのでしょう。


作中延々と語られるソラリス研究の歴史も詳細で、それがまたとても興味深かったです。
おそらくその詳細さが、ソラリスの海と通じられない人類との平行線を、くっきりと表わしているように思いました。

勿論その他にも、クリスとハリーの恋や、自分が何者なのだろうというハリーの苦悩など、見所や魅力を感じる箇所はたくさんあります。
人によってはラブストーリーとして読むことも可能だと思うので、その側面だけで楽しむのもわたしは個人的にはまったく有りだと思います。
(解説などでは作者の意図としてはそれはあまりなかったようですが)

ただ、根底にある土台の凄さと、その上で展開される物語が凄くて、とにかく一気に読んでしまった本でした。
面白かったです。




本のこと。「窓の魚」西加奈子


まどのさかな


川沿いの温泉宿に宿泊する男女四人が抱える、恋や苦悩。
第三者によって語られる、ひとつの事件、残された死体。

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ふらっと本屋に行き、
平積みの新刊を面白そうに思い手に取って、店内を一巡りして、
なんとなく気にかかり手に取った文庫本。
それがこの 「窓の魚」 でした。

読んでみて、びっくりしました。
ここまで余韻のある小説だとは思っていなかったからです。


何か大きな事件があってその謎解きをするとか、だれかが主人公の恋愛成就の過程だとか、そういう感じではなく、完全なる群像劇であり、もしかしたら、出てくる登場人物すべてが主役ではないかというくらいです。

それくらい、密度が濃いのです。

舞台がまた見事で、温泉宿だけれど、喧噪からは隔絶された、どこかうらさびしいような感じのする旅館です。

庭に池があって、その池がガラスで仕切られていて、そのガラスがそのまま風呂の窓になっている。風呂の水面より池の水面のほうが高いので、ガラスの向こうで錦鯉が泳ぐさまが見える。

印象深い舞台設定はそのまま登場人物たちの心の描写の一部のようでもあり、なにかの象徴のようでもあります。

わたしはこのなかの登場人物の誰にも感情移入しては読みませんでした。

一番多く語られる若い四人の男女にはそれぞれの思いや過去や苦悩や挫折があり、それらひとつひとつが、すごくリアルで、深くて、それでいて淡々と描かれています。
ひとりひとりに対する掘り下げがすごいのに、大して長く書かれているわけでもない。いい意味で、このなかのだれかひとりを特別にみる、ということができませんでした。

この小説には謎が多いです。
けれどそれはたぶん、こうだよ、という回答に意味はなくて、
そういうことを考える時間が、本を閉じた後にもあるということが、
とても価値があるように思うのです。

とても薄い文庫本ですが、たぶんすごく重い。
読んた後すぐに再度読もうか、と思ってしまった小説です。
面白かったです。







 

本のこと。「屍人荘の殺人」今村昌弘


ぞぞぞっ


屍人荘の殺人 今村昌弘

大学でミステリ愛好会会員の明智、葉村は、剣崎比留子という女性との取引により、かねてから出席を熱望していたコンパ兼合宿に参加する。この合宿は、脅迫文が届いたり、前回参加者が自殺しているいわくつきのものだった・・・。
しかし、そういったこととは全く別のある理由から、彼らはそこに閉じ込められる。
全員の生命が危うい極限状態の中で、殺人は起こった・・・。

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本屋で平積みになっているのを手に取って、なにやら面白そうな感じがしたので、買ってすぐ読みました。面白いです。

とにかく新しい感じがしました。

斬新で、ミステリの王道を行くクローズドサークルの新しい形。
超がつくほどの非日常で、
けれどちゃんとそれがひとつのピースとしてはまっていて、
絶対に外すことが出来ないものになっています。

だから、好き嫌いはあるかもしれませんが、
納得せざるを得ないのではないかと思います。

わたしはとても楽しく、面白く読みました。


斬新さのなかに王道の筋がある感じがします。
登場人物もなかなか楽しく魅力的で、とくに探偵役がまた面白い。

探偵の類型みたいなものをまとめるとするなら、たぶん、あたらしいカテゴリが必要かもしれないくらい、意外な感じです。

また、細かいところも凝っているので、読んでいて読み応えがありました。
たとえば、語り部の葉村の前にエメラルドグリーンのクリームソーダがあるシーンは、何やら印象的なのですがそれにも意味があったり。

相手が頼んだコーヒーに対して、クリームソーダの色はすごく鮮やかで、おそらくここが不思議に印象に残ると思うのですが、それがあとから効いてきます。

読みやすくて楽しくて、いろいろ展開にびっくりなので、買ってすぐ読んでよかったと思います。
なんだかクリームソーダが飲みたくなりました。






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’15.01/01☆


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