・面白さ    ★★★★☆
・読みやすさ ★★★★★
・本の概要
江戸時代の画家、尾形光琳にフォーカスを当て、カラーの図版と共に作品や世界観を解説している。

・気になった箇所

「本来、屏風は室内に特別な場所を設ける調度である。当然、絵師は作品が飾られる場所や用いられ方を踏まえて描いたと思われる。早春の清洌な流水と紅白の花を咲かせる梅を描いた「紅白梅図屏風」は、婚礼の儀式を飾るにふさわしい。紅梅を描く右隻の前に新婦、白梅を描く左隻の前に新郎が座れば、人物の背景になることで、画面の奥行きはより自然に感じられ、左右の隻の対象的な表現も際立つ。この作品に用いられた色彩は、梅の花の紅白と苔の緑にすぎない。その他は、金銀と水墨である。光を受けて輝く様子はさぞかし華やかであっただろう。」(95ページ)

平凡社が出版している、『別冊太陽』の日本のこころー232です。
『別冊太陽』シリーズは本当に良いものが多く、毎回面白いテーマで作られています。

「燕子花図屏風」や「紅白梅図屏風」をはじめとする、尾形光琳が作成した屏風や工芸品の魅力を、惜しげもなく紹介してくれている本でした。
後の方は、光琳の弟の尾形乾山など、尾形光琳の画風を受け継いだ画家たちの作品が載っています。

光琳が描いた屏風などももちろん素敵だったのですが、一番印象に残ったのは、文中で紹介された上嶋源丞へ向けた光琳の言葉でした。
「とかく常ノ消息を相認候心二絵も書候ハねば、絵よくハ無之候。焼筆などもあまりとくとあてぬがよく候。有増ノ貌手足ノしるし斗して、其余ハ中にてぐわさぐわさと御書ならい可被成候。」(50ページ)

現代語に訳すと、「日常の手紙を書くような心で絵も描かなければ絵はよくならない」「(下書きに用いる)焼筆などもあまりじっくりとあてないほうがいい」「がさがさと描きなさい」になります。
「あまり深く考えすぎずに、心の赴くままに描きなさい」ということでしょうか。
とても大事なことだと思います。
頭が煮詰まってしまったら、なんというか、キャンバスが“負の連鎖”になってしまうので(笑)