観際メルの哲学レンズ

『嘲笑せず、嘆かず、呪わず、ただ理解する』(スピノザ)
16歳の女子が、気に入った本などを書いていきます。

カテゴリ: 哲学の本

・面白さ    ★★★★☆
・読みやすさ  ★★★☆☆
・本の概要
1998年のノーベル経済学賞を受賞した、アマルティア・センの講演集。『経済学の再生――道徳哲学への回帰』の文庫版。

・気になった箇所

「自分が評価するものを獲得すること(または獲得する能力をもつということ)は、この点で幸福、豊かな生、自由といった他の評価項目と特に違うわけではない。したがって、幸福、豊かな生、自由などがそれぞれの客観的評価関数によって数値化されるなら、ほとんど同じようにして、自分が評価するものを獲得すること(もしくはその能力をもつこと)も適切な関数で数値化が可能である。評価対象である目的の性質とその根底にある問題は区別しなければならない。客観的な理論であったも、人々が実際に評価するものやそれを獲得するために必要な能力に重要な役割を与えることができる。」(69ページ)

一応、入門書という位置づけになっていますが、少し難しく感じました。
私はあまり経済学の知識を持っていないので、内容を吟味する以前に専門用語を理解するのが大変でした。

ですが、勉強しなおしてまたチャレンジしたい本です。
倫理学で扱うような主題を経済学で見るというのはとても興味深いので、とにかく経済学に沢山触れ、慣れてから読むと、また良い視点が得られるのではないかと思います。

・面白さ    ★★★★★
・読みやすさ  ★★★★☆
・本の概要
フランスの哲学者、シモーヌ・ヴェイユの著作集。工場日記などが収録されている。

・気になった箇所

「奴隷制を感じさせる一日の最初の小さな出来事はタイムレコーダーである。自宅から工場への道は機械的に決められた一秒前に到着しなければならないという事実に支配されている。五分、十分前に来ても無駄である。このことから、時間の流れは、いかなるものも偶然にまかせない何かしら無慈悲なものに思われる。それは労働者の一日の中で、機械の中で過ごされる生活のすべての部分を残忍さが支配している規則にしばられる最初の耐え難い印書である。偶然は工場内では居住権がない。もちろん他所と同じようにそこにも偶然はあるが認められていない。しばしば生産を犠牲にして、許されるものは次のような兵営の原則である。《わたしはそれを知ろうと望まない》虚構は工場内では非常に強力である。決して守られずしかし永久的に効力を持っている規則がある。矛盾した命令は工場の論理によれば矛盾していない。それらすべてを越えて労働が行われなければならない。労働者は解雇の危険をおかしてそれを何とかしなければならない。そして何とかする。」(239ページ 『工場生活の経験』より)

シモーヌ・ヴェイユ(女性です)は、学校の教授をやめた後、複数の工場でしばらく働いていました。
しかし、ヴェイユの家は貧乏だった訳ではなく、学生時代は非常に優秀な生徒だったそうです。
収録されている『工場日記』や『工場生活の経験』、工場関係者に送った手紙などからは、エリート的な思考が現れながらも、労働者の心理や工場の労働環境を的確に観察しているのが読み取れます。
個人的には、経営者側と労働者側のどちらの言い分にも耳を傾け、平等に観察対象にしようとする姿勢がとても好きでした。

それぞれの著作を読み、共感できる箇所が多すぎて、何を抜き出そうか本当に迷いました。
これも、バイト経験があったからですね。

ヴェイユは、亡くなるまで自らの著作を一つも発表していません。
彼女にどんな考えがあったのかは分かりませんが、世間に名を知られることなく、雑念を排除してレポや著作を書きたかったのかもしれませんね。
もしそうだとしたら、私にとって本当に尊敬できる歴史上の人物になりそうです。

・面白さ    ★★★★☆
・読みやすさ ★★★★☆
・本の概要
宗教哲学者マルティン・ブーバーの主著「我と汝」「対話」の2編を載せている。

・気になった箇所

「対話的なものは、人間相互の交わりに制限されない。すでにそれはわれわれに例示されたごとく、相互に人間が向かい合う態度である。ただ人間の交わりにおいて、じつにこれがよく表されているにすぎない。
したがって、会話や伝達がおこなわれなくとも、対話的なものの成り立つ最低条件には、内面的行為の相互性が、意味上分離しがたい要素となっているようである。対話によって結ばれている二人の人間は、明らかに相互に相手の方向に向かい合っていることでなければならぬ、それゆえ、――どの程度、活動的であったか、どの程度活動性の意識があったかということはとにかくとして――向かい合い心がそこに立ち帰るということでなくてはならない。」(184ページ)

ブーバーの思想は、「対話」が主題ですね。
「我」と「汝」が語り合うことによって世界は拓けるという思想です。
科学的、実証的な知識と関わるよりも、「我―汝」という関係で精神的存在と関わることが大事だと言っています。
そして、相手と自分を関係性として捉えることが「対話」なのだそうです。

ブーバーはユダヤ系宗教哲学者なので、ユダヤ教の要素がちょいちょい入ってきますね。
ユダヤ教の「安息日」は、自分や家族と対話したりするのが好ましいとされているようです。
そこから、ブーバーの思想は生まれているのかもしれませんね。

・面白さ    ★★★★☆
・読みやすさ ★★★★☆
・本の概要
ヤスパースのラジオ講演『哲学入門』全十二講演をまとめたもの。

・気になった箇所

「端的に問われるところの場所としての「哲学すること」においては、私は直接に言表します。神は存在するか、現存在において無制約な要求が存在するか、人間は未完成であるか、神による導きは存在するか、世界存在は浮動し、消滅するものであるか、と。もしおよそつぎのような無信仰性の言表に当面するならば、私は答えざるをえないでしょう。

第一 ――神は存在しない。なぜなら、存在するものはただ世界と、世界生起の法則だけだからである。世界が神である。
第二 ――無制約的なものは存在しない。なぜなら、私が従うところの要求は、発生したものであり、変化するものだからである。これらの要求は、習慣や訓練や伝承や服従などによって制約されている。あらゆるものは果てしなく制約のもとに立っている。
第三 ――完成された人間が存在する。なぜなら、人間は動物と同様によくしつけられたものでありうるから、人は人間を訓練することができるであろう。人間には原則的な不完全性もなければ、根本的な破滅もない。人間は中間的存在ではなくて、完結的・全体的である。なるほど人間はこの世にある万物と同様にはかないものではあるが、しかし人間は自己自身の根拠をもち、自立的で、自己の世界内でっ充足しているのである。~」(129~130ページ)

ドイツの実存系哲学者、ヤスパースの講演です。
「哲学の入門書」というより、「ヤスパース自身の哲学」という印象でした。
元々言及しているものが難しい議題である上、ラジオをそのまま本にしたものなので、だいぶ読みにくいです。
(仕方ないことかもしれませんが)3行で説明できるところを3ページにわたって長々と解説しているようなイメージですね(笑)
読みこなすことができれば、様々な議題に触れているので、哲学好きにはとても面白い本になるでしょうね。

思い出してみれば、この本は2年前に「入門」という言葉に惹かれて買ったのはいいけれど、題名とは裏腹にとても難しく、泣く泣く読むのを断念していました。
今読むととても面白く感じたので、きっと私の読解力が上がったのでしょうね。
嬉しい限りです(笑)

・面白さ    ★★★★★
・読みやすさ ★★★★☆
・本のポイント
トマス・ホッブズの著書の中でも特に有名な本。主に政治哲学や人間の感覚などを綴っている。1の続き。

・気になった箇所

「 〈自由な状態とはどのようなものか〉
このように本格的な、広く受け入れられた意味での「自由な人」とは、どのような人間か。それは、「自分の力と才知によって実行に移すことのできる事柄に関してであれば、自分の意志の貫徹を妨げられることのない人間」をいう。しかし、自由という言葉を運動の主体以外のものに当てはめると、それは言葉の誤用になってしまう。なぜなら、運動しなければ妨げを受けることもないからである。したがって、たとえば、「道が自由である」というときの自由は、道そのものではなくて、止められることなく道を闊歩する人間の自由を意味しているのである。また、「贈与が自由である」と言うときの自由は、贈与そのものではなく贈与する者が、いかなる法律や契約にも縛られることなく贈与をおこなう自由を意味しているのである。同様に、私たちが自由に話すときの自由は、声や発声の自由ではない。それは、いかなる法にも縛られず、自分の話したい通りに話す人間の自由である。最後に、自由意志という言葉を取り上げよう。その使い方から抽出される自由は、意思・願望・志向の自由ではなく人間の自由である。その眼目は、自己の意志・願望・志向にもとづく行動をとるにあたって他からの制約を受けない、というところにある。」(84~85ページ)

上の箇所はとても納得できました。
特に一番下の文。
「自己の意志・願望・志向にもとづく行動をとるにあたって他からの制約を受けない、というところにある。」
分かりやすく言えば、「法律や契約などの制約に縛られず、自分のやりたいことができる」ということでしょうか。
「自由」というのは、“やることそのものの自由”ではなく、“それをする人間の自由”であるという感じです。

これで『リヴァイアサン』読破しました。
一年後くらいにまた読み返したいですね。
前にも書きましたが、訳はとても素晴らしかったです。
あまり哲学に慣れていない人でも読めそうな気がします。

・面白さ    ★★★★★
・読みやすさ ★★★★☆
・本のポイント
トマス・ホッブズの著書の中でも特に有名な本。主に政治哲学や人間の感覚などを綴っている。

・気になった箇所

「人間はだれしも、自己評価に匹敵するような高い評価を仲間から得たいと願う。そして、少しでも軽蔑や過小評価の気配を感じると、自分を侮った人間に打撃を与えることによって、また、他の者に対してはそれを見せしめにすることによって、もっと高い評価を引き出そうと知らず知らず力を尽くす。それは、双方をなだめる共通の権力が存在しない場合、互いに相手を滅ぼすのに十分であるほど激しいものとなる。
以上のことから、人間の本性には紛争の原因となるものが主として三つあることが分かる。第一に、敵愾心。第二に、猜疑心、第三に、自負心。」(215~216ページ)

あの有名な「万人の万人に対する闘争」が書かれている章から抜き出しました。
「万人の万人に対する闘争」というフレーズを見た瞬間、テンションがものすごく上がりました(笑)

よく、赤ちゃん同士を合わせると「万人の万人に対する闘争」状態になると言いますよね。
個々の能力がまだはっきりしておらず、ある意味みんな平等なので、自然権を行使しようとすると互いにぶつかってしまうという仕組みのようです。

ホッブズは、この「万人の万人に対する闘争」を避けるには、国家に対して自然権を全部譲渡しなければならないと述べました。
絶対王政を合理化したんですね。
そのためか、ルソーが登場したフランス革命の時代には、この理論はこっ酷く批判されたそうです。

今回読んだのは、光文社の古典新訳文庫のものです。
訳は非常に的確で分かりやすく、感動してしまいました(笑)
『リヴァイアサン 2』が残っているので、そちらも読みたいと思います。

・面白さ    ★★★★★
・読みやすさ ★★★★☆
・本のポイント
幸福論で有名な、バートランド・ラッセルのエッセイ集。ファシズムから建築まで、内容は様々。

・気になった箇所

「私たちは創造主になりきっている。もう穴居人のように、ライオンや虎、マンモースや野猪を恐れる場合は起らない。私たちはお互人間同士敵対する時の外は、みな安全だと思っている。大きい動物は、もう私たちの生存をおびやかさないが、しかし小さい動物は、話が違う。この地球上の生物の歴史をみると、小型の動物が大型の動物にとって代っている。何年も恐竜は、お互同士を恐れる外は心配せず、自分たちの支配が絶対であることを疑わず、平気で沼や森を歩きまわっていた。しかし彼らは姿を消し、小さな哺乳動物――廿日鼠、小さなはり鼠、やっと鼠ほどの大きさの馬の先祖がとって代った。なぜ恐竜が死にたえたかわからないが、それでも恐竜の脳が小さい上に、多くの角の形をした攻撃用の武器を発達させるために、一切を捧げてしまったからだと思う。それはともかく、生命が発展するのは、攻撃の武器の方面からではなかった。(218~219ページ)

「人間対昆虫」という章の一部分です。
この章は個人的に好きですね。
昆虫は、「実は人間よりも強いかもしれない」という内容です。
ディストピアな感じで、少し怖くなってきます(笑)

ラッセルの幸福論は好きなので、この本も楽しく読めました。
エッセイなので、あまり堅苦しくはありません。
一章が短いので、少し休憩したいときに読むといい感じです。

・面白さ    ★★★★☆
・読みやすさ ★★★★★
・本のポイント
カントの入門書。筆者は早稲田大の文化構想学部教授。三批判(『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』)と『永遠平和のために』の解説。

・気になった箇所

「私たちの認識には現に普遍性・必然性をもつものがあるのではないでしょうか。しかし、そうした認識がどうやって成立してきたのだろうという問題を考え、その起源をすべて「経験」に求めるなら、先に見たように、私たちは逆に普遍性にも必然性にも関われなくなってしまうのです。
この問題を解決するためにカントが持ち出すのが、自分で考える人だけに訪れる「思いつき」です。私たちは、自分が見たり聞いたり触ったりして経験したことを、しばしばそのまま信じています。しかし、自分で考える人はそういった経験に対して「どうして」という問いを発します。それは、見たまま聞いたままのことを信じるのではなく、そう見え、そう聞こえるという事実を可能にしている〈可能性の次元〉に立って考え直すことです。」(40~41ページ)

とても分かりやすい入門書でした。
カントの思想の仕組みをただ説明するだけではなく、現代の例に合わせて解説してくれていたので、入り込みやすかったです。
岩波ジュニア文庫ですが、これは中高生には少し難しいかもしれませんね。

カントが生きた時代は、イギリスは植民地支配で大きくなっており、フランスは革命が起きていて、アメリカが独立したという、正に激動の時代です。
「ドイツちょっと遅れてるんじゃ?」という感じだったのかもしれません。

ドイツは思想的にも遅れていた可能性もあるので、カントは頑張っていたのではないでしょうかね(笑)
カントの後には、ヘーゲルやフィヒテなどの功績を残した哲学者が沢山出ました。

ですが、ちょっとカントの哲学は「〇〇すべき」という言葉が多いなという印象です。
少し理想主義な気もしてきますね。
ヘーゲルの言う「徳の騎士」なのではないでしょうか。
それでも、功績を残したことにはかわりありません。

豆知識ですが、厳密に言うと、カントはドイツの人ではありません。
東プロイセンという国の、ケーニヒスベルクというという都市で生涯を過ごしました。
ケーニヒスベルクは、現在はカリーニングラードという地名で、ポーランドの北に位置するロシアの飛び地となっています。
ドイツには、旅行で通りかかったことすら無いそうです(笑)

・面白さ    ★★★★★
・読みやすさ ★★★★☆
・本のポイント
哲学美学比較国際センターの所長を務めた、美学専門の東大名誉教授の本。

・気になった箇所

「真のない芸術は技がいかに巧みであっても飽きられてしまうということは、決して嘘ではない。人間は、自己の教養を増やすためや、自己の慰めのために芸術を利用することはできるけれども、それは、本来、まことを愛する精神が、事物の方向に傾かないように自己の内的教育の場として、また、この精神が利害の世界でおのれを失わぬように、その本来の領域に向かうための転回点として、芸術をたしなむからなのである。芸術に娯楽の面があることは確かであるが、芸術はそれで終るものではないし、また教育で終わるものではない。芸術はそれらを通して精神が自己自身に帰り、自己自身の美しさを実現するためにあるものと言わなければなるまい。」(161ページ)

とにかく、「美とは何か」「芸術とは何か」という問題を追求している本です。
筆者の“美”に対する熱い思いが伝わってきます。
「はじめに」から強烈な個性がにじみ出ていて、早々と圧倒されました(笑)

マニアックな芸術家についてや、かなり多くの哲学者の理論が出てきます。
少し勉強してから読むと分かりやすいと思います。

・面白さ    ★★★★★
・読みやすさ ★★★★★
・本のポイント
アメリカ独立の時に発表された、「独立宣言」の内容に大きな影響を与えた。

・気になった箇所

「わたし自身の議論の筋道は光線と同様に真っすぐで、明白である。わたしの信念が変わらないかぎり、全世界の富をやると言われても、攻撃的な戦争を支持する気にはなれない。なぜなら、それは殺人行為だと考えられるからだ。しかももし盗賊がわたしの家に押し入って、家財を焼いたり、打ち壊したりしたなら、またわたしや家人を殺したり、殺すぞと脅したりしたなら、どうだろうか。わたしは盗賊の絶対的な意思に「いついかなる場合にも拘束される」ことに我慢できるだろうか。こんなことをする者が、たとい(原文ママ)国王であろうと庶民であろうと、郷里の人間であろうとなかろうと、また一人の悪人であろうと悪人どもの軍隊であろうと、そんな区別はわたしにはどうでもよい。物事の根本をよく考えてみると、そんな区別はできないことがよくわかるだろう。またなぜ一方の場合には罰せられ、他方の場合には許されるのか、この正当な理由を見つけることもできないだろう。人がわたしを反逆者と呼ぶなら、勝手に呼ばしておこう。わたしはそんなことを気にとめない。しかしもしも飲んだくれの、ばかな、しぶとい、くだらない、野蛮な性格の人間に忠誠を誓って、わたしの魂を売り渡さねばならないとしたら、耐え難い不幸を味わうことになるだろう。そして最後の審判の日に悲鳴を上げて山や岩に身を隠し、またアメリカの孤児や未亡人や殺害された者を恐れて逃げ回るような人間の慈悲を受けることを想像すると、これまで身の毛のよだつ思いがする。」(128~129ページ)

アメリカ独立に大きく関わっている、トマス・ペインの『コモン・センス』。
もともとは政治冊子で、パンフレットでした。
堅い文章かと思いきや、言いたいことを思い切り叫んでいるような、自由な印象でした。

「イギリスとの問題を解決するには、独立し、共和制にすることが一番だ」という趣旨の本なので、イギリスの王政や植民地支配をこてんぱんに批判しています。
読んでいてスカッとしてくるくらい(笑)

さて、今日から年度が変わりましたね。
おそらく、今年が人生で一番暇な年になりそうです(笑)
本を読むのと、英語を頑張ろうと思います。
ジョージ・オーウェルの『動物農場』を原書で読むのが目標です!

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