観際メルの哲学レンズ

『嘲笑せず、嘆かず、呪わず、ただ理解する』(スピノザ)
16歳の女子が、気に入った本などを書いていきます。

カテゴリ:哲学の本 > 哲学 入門書

・面白さ    ★★★★☆
・読みやすさ ★★★★☆
・本の概要
ヤスパースのラジオ講演『哲学入門』全十二講演をまとめたもの。

・気になった箇所

「端的に問われるところの場所としての「哲学すること」においては、私は直接に言表します。神は存在するか、現存在において無制約な要求が存在するか、人間は未完成であるか、神による導きは存在するか、世界存在は浮動し、消滅するものであるか、と。もしおよそつぎのような無信仰性の言表に当面するならば、私は答えざるをえないでしょう。

第一 ――神は存在しない。なぜなら、存在するものはただ世界と、世界生起の法則だけだからである。世界が神である。
第二 ――無制約的なものは存在しない。なぜなら、私が従うところの要求は、発生したものであり、変化するものだからである。これらの要求は、習慣や訓練や伝承や服従などによって制約されている。あらゆるものは果てしなく制約のもとに立っている。
第三 ――完成された人間が存在する。なぜなら、人間は動物と同様によくしつけられたものでありうるから、人は人間を訓練することができるであろう。人間には原則的な不完全性もなければ、根本的な破滅もない。人間は中間的存在ではなくて、完結的・全体的である。なるほど人間はこの世にある万物と同様にはかないものではあるが、しかし人間は自己自身の根拠をもち、自立的で、自己の世界内でっ充足しているのである。~」(129~130ページ)

ドイツの実存系哲学者、ヤスパースの講演です。
「哲学の入門書」というより、「ヤスパース自身の哲学」という印象でした。
元々言及しているものが難しい議題である上、ラジオをそのまま本にしたものなので、だいぶ読みにくいです。
(仕方ないことかもしれませんが)3行で説明できるところを3ページにわたって長々と解説しているようなイメージですね(笑)
読みこなすことができれば、様々な議題に触れているので、哲学好きにはとても面白い本になるでしょうね。

思い出してみれば、この本は2年前に「入門」という言葉に惹かれて買ったのはいいけれど、題名とは裏腹にとても難しく、泣く泣く読むのを断念していました。
今読むととても面白く感じたので、きっと私の読解力が上がったのでしょうね。
嬉しい限りです(笑)

・面白さ    ★★★★☆
・読みやすさ ★★★★★
・本のポイント
カントの入門書。筆者は早稲田大の文化構想学部教授。三批判(『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』)と『永遠平和のために』の解説。

・気になった箇所

「私たちの認識には現に普遍性・必然性をもつものがあるのではないでしょうか。しかし、そうした認識がどうやって成立してきたのだろうという問題を考え、その起源をすべて「経験」に求めるなら、先に見たように、私たちは逆に普遍性にも必然性にも関われなくなってしまうのです。
この問題を解決するためにカントが持ち出すのが、自分で考える人だけに訪れる「思いつき」です。私たちは、自分が見たり聞いたり触ったりして経験したことを、しばしばそのまま信じています。しかし、自分で考える人はそういった経験に対して「どうして」という問いを発します。それは、見たまま聞いたままのことを信じるのではなく、そう見え、そう聞こえるという事実を可能にしている〈可能性の次元〉に立って考え直すことです。」(40~41ページ)

とても分かりやすい入門書でした。
カントの思想の仕組みをただ説明するだけではなく、現代の例に合わせて解説してくれていたので、入り込みやすかったです。
岩波ジュニア文庫ですが、これは中高生には少し難しいかもしれませんね。

カントが生きた時代は、イギリスは植民地支配で大きくなっており、フランスは革命が起きていて、アメリカが独立したという、正に激動の時代です。
「ドイツちょっと遅れてるんじゃ?」という感じだったのかもしれません。

ドイツは思想的にも遅れていた可能性もあるので、カントは頑張っていたのではないでしょうかね(笑)
カントの後には、ヘーゲルやフィヒテなどの功績を残した哲学者が沢山出ました。

ですが、ちょっとカントの哲学は「〇〇すべき」という言葉が多いなという印象です。
少し理想主義な気もしてきますね。
ヘーゲルの言う「徳の騎士」なのではないでしょうか。
それでも、功績を残したことにはかわりありません。

豆知識ですが、厳密に言うと、カントはドイツの人ではありません。
東プロイセンという国の、ケーニヒスベルクというという都市で生涯を過ごしました。
ケーニヒスベルクは、現在はカリーニングラードという地名で、ポーランドの北に位置するロシアの飛び地となっています。
ドイツには、旅行で通りかかったことすら無いそうです(笑)

・面白さ    ★★★★★
・読みやすさ ★★★★★
・本のポイント
生い立ちや人間関係から、「語り得ぬものには沈黙せねばならない」などの名言の解説まで、ヴィトゲンシュタインについて知るにはもってこいの1冊。

・気になった箇所

「ところで、言語ゲームがいかに多様だとはいえ、それらがすべて「言語ゲーム」と言われるからには、それらすべてを貫く何か共通の本質があるはずではないか。ここで、それらすべてを「言語ゲーム」たらしめている当のものは何か、というソクラテス的な問いが立てられることになる。
 ヴィトゲンシュタインは、この問いを拒否した。同じ名で呼ばれているからといって、そのすべてに当てはまり、他のものには当てはまらないような、何か一つの共通本質があるわけではないのだ。むしろ、相互に別々の点で類似しているものが集まって、一つの家族をなしているのである。彼はこのことを、比喩的に「家族的類似性」と名付けた。ひとつの家族は、体格、顔つき、眼の色、歩き方、気質、といった別々の点で互いに似ているのであって、何かひとつの点で互いに似ているのではない、ということである。だから、「ゲーム」と呼ばれるすべてのものに共有されるような本質的特徴は存在しないのである。
 「ゲーム」だけではない。「数」の本質も、「生命」の本質も、「言語」の本質も、「科学」の本質も存在しない。さまざまな言語ゲームの中で、緩やかな家族を成したそうした語が、実際に有効に使われている――それだけなのである。」(152~153ページ)

多忙なもので、更新頻度がかなり落ちています。
年末年始を過ぎたらペースを上げるつもりです。
明日は今年の振り返りを書く予定。

今年最後の書評は『ウィトゲンシュタイン入門』です。
ヴィトゲンシュタインの理論は好きなのですが、ちょっとかじった程度なので、この際しっかり学んでみようと思いました。

最初はヴィトゲンシュタインの生い立ちや人格の解説から始まるので、とても入りやすかったですね。
いきなり理論の解説からだと頭がこんがらがってしまう人も多いと思うので、哲学書を読み慣れていない方でもオススメできます。

ヴィトゲンシュタインは、前期と後期で理論の展開がガラリと変わります。
前期は数学を用いた論理的なもの。
あの『論理哲学論考』は前期に書かれました。
後期は「言語」に焦点を当てており、あまり論理的ではないイメージでしょうか。
「言語ゲーム」が有名ですね。

ちなみに私は前期が好きです。
「語り得ぬものは沈黙せねばならない」という名言も、前期に生み出されました。
実は最強の名言だったりします(笑)

・面白さ    ★★★★☆
・読みやすさ ★★★★★
・本のポイント
筑摩書房のウェブサイトに連載されていた「はじめての哲学的思考」を本にまとめたもの。「哲学のことを全く知らない」という人におすすめかも。

・気になった箇所

「もっとも、現時点では日本は死刑存続を“欲している”人のほうが多いそうだから、それはそれとして尊重される必要がある。何度もいうように、社会的な当為は欲望のすり合わせによって導き出されるほかないからだ。
でも、その上でなお、僕は死刑制度については次のようにいうべきだと考えている。
「人は自由に生きることを欲し、それゆえに「自由の相互承認」の原理にもとづいた社会を欲する。そのために、社会は“私闘”を禁止しなければならない。したがって、“私闘”の論理である“報復”にもとづいた死刑制度もまた、廃止されるべきである」
もちろん、この論はいつだって反論に開かれている。絶対の当為なんてない。だから僕たちは、これからもこのテーマについて、“共通了解”めがけて対話しつづけていく必要がある。」(133~134ページ)

この方がよく言っている「自由の相互承認」については他の本にも詳しく書いているので、他のところを抜き出しました。

私が小学3年生のとき。
死刑制度はどうしても理解ができませんでした。
「人を殺してはいけない」と国は言っている。
でも死刑判決を下すということは、「人を殺せ」と言っていることと同じ。
そして戦争になると、「とにかく殺せ」と言うようになる。
この矛盾に疑問を持っていたのです。
今でもそう思っています。

“人を殺した”報復として“あなたを死刑にする”
この考え、どうなんでしょうね。

・面白さ    ★★★★★
・読みやすさ ★★★★★
・本のポイント
東大総合文化研究科の教授が、哲学について書いたエッセイ。柔らかい雰囲気で読みやすく、色んな話題で楽しませてくれる。

・気になった箇所

「論理的な文章を書きたい。言いたいことが明確で全体として筋が通っている文章、一読してすっと頭に入ってくる文章、そういう文章をどうすれば書けるようになるのだろうか。」(84ページ)

「しかし、そんな技術論よりも、もっとずっと大事なことがある。自分の文章を読む相手をリアルに感じることだ。あなたは自分ではよく分かっていることを書く。しかし、読む人はそうではない。このギャップに無頓着だと、伝えたいことが相手に伝わらない。自分が分かっていることを、それを分かっていない人の視線で見つめながら、書かなければいけない。
だから、いくらたくさん文章を書いても、それだけでは論理的な文章はうまくならない。例えば、日記をいくら書いても、論理的な文章を書けるようにはならない。日記は自分以外の読者を想定していないからである。誰かに読んでもらわねばならない。」(84~85ページ)

これは文章を書く人にはガツンときますね(笑)
確かに、読む人に上手く伝わらなければ、「面白くない・分からない文章」というレッテルを貼られてしまいますからね。
私の文章はどうでしょうか。
言いたいことが上手く伝わっているかな?

皆さんも、特に文章を書く人は、この機会に自分の文を見直してみるというのはいかがでしょうか。
何か、改善点や良い所が見つかるかもしれませんよ。

・面白さ   ★★★★☆
・読みやすさ  ★★★★★
・本のポイント
センター倫理の参考書。以前紹介した『蔭山のセンター倫理』と著者は同じだが、内容は別物。

前に紹介した参考書は、思想の説明や思想同士の繋がりについて説明してありましたが、こちらは人物に特化しています。
主にその人が考えたこと、著書をまとめています。

また、イラストがとても気に入りました(笑)
センスがあり、少し笑えるような感じです。

『蔭山のセンター倫理』と一緒に読むと最強ですね。
センター問題、解けそうな気がしてきました。

・面白さ   ★★★★☆
・読みやすさ  ★★★★★
・本のポイント
すごい仏師の息子が、フィギュアの原型を作る会社に勤めながら、仏を彫るとはどういうことかを学んでいくストーリー。全4巻。

今日は東洋思想の変化球ということで、漫画を紹介します。

この漫画は、仏の由来、歴史、それぞれの役割をざっと知ることができます。

京都で寺めぐりをするときに読んでいくといい感じですね。
ちなみに私はこれを読んで、立体曼荼羅のある東寺に行きました。

他にも、仏像を彫るための知識や、ポーズや持ち物の謎だったり。
みうらじゅんの『見仏記』以外で仏に関するライトな本をお探しの方にオススメです。

・面白さ   ★★★★☆
・読みやすさ  ★★★★★
・本のポイント
前に紹介した、『哲学男子』と同じような系統の本。「萌える☆」とあるが、正直言って萌え要素はあまりない。

結構詳しく書いてありました。
この本はかなり薄いのですが、その中にぎっしりと哲学の知識が入っています。

また、女性の哲学者も紹介されていました。
アーレントやボーヴォワールなど。
これは高ポ
イント。
哲学入門書は、女性の哲学者は省かれていることが多いのですが、ちゃんとスポットライトを当ててあります。

挿絵は、デフォルメや美人化されたものではなく、本物の写真や像をもとに描いてあります。
もっと可愛い、かっこいい絵がいい!という方には、この本はあまりおすすめしません。

全体的に見て、なかなかいい入門書でした。
漫画のような絵を多用しているものより、できるだけ本物に近くしたほうが私はいいと思います。
その方が哲学マニアからの苦情も入りにくいでしょうしね(笑)

・面白さ   ★★★★☆
・読みやすさ ★★★★★
・本のポイント
センター倫理のための参考書。哲学書と違って要点がきちんとまとめてあるので、哲学用語や哲学史を早く覚えることができる。

この本の中から、私が問題をピックアップしてみました。
解いてみて下さい(*^^*)
○×です。

問1、デモクリトスは「万物は流転する」という言葉で万物の対立・変化を説明し、その象徴としてのアルケーを火と考えた。(24ページ)  

問2、仏陀が示した正しい修行法は、正見・正思・正語・正業・正命の五行である。(74ページ)

問3、ウィトゲンシュタインは言葉の役割を重視した哲学者で、一定のルールの下で言語がやりとりされる日常会話は、一種の「言語ゲーム」であると主張した。(156ページ)




問1、× 「万物が流転する」と言ったのは、デモクリトスではなく、ヘラクレイトスです。

問2、× 五行はイスラム教徒の行為義務です。仏教は、これらに正精進・正念・正定を加えた「八正道」です。ややこしいですね。

問3、○ 正しい文です。ウィトゲンシュタインは、センターにもよく選択肢に紛れ込む人物だそうですよ。

全く分からない!という方もいたのではないでしょうか。

ちなみに私は分かりました(笑)
普段から哲学関係の本を沢山読んでるので。 

皆さんは全問正解できましたか?

・面白さ   ★★★★★
・読みやすさ  ★★★★☆
・本のポイント
コピペやサイボーグ、コミュニケーション能力についての考察を、フーコーなどの現代思想を用いて説明している。

・気になった箇所

「分かりやすい例として、ネット書店のアマゾンで書籍を購入する場合を考えてみましょう。
使ったことのある人はご存じのように、アマゾンで本を検索したり、買ったりすると、自動的に記録されていきます。その情報をもとにして、つぎにアマゾンを開くと、今度はその人の興味ありそうな分野の本が紹介されています。それを見ながら、「へー、こんな本もあるんだ!」とばかりに、新たに本を注文することも多いようです。ここでは、購入者の情報が筒抜けであるだけでなく、行動までもコントロールされているように見えるでしょう。」(68ページ)

「こうした状況を、はたして「監視」と呼ぶかどうかは、意見が分かれると思います。
アマゾンで本を買うときも、デパートで品物を買うときも、購入者には「監視されている」という意識がほとんどないからです。誰かが、かげに隠れて、その人を尾行しているわけでもありません。けれども、その人の行動はシッカリと掴まれているので、へたな「監視」より確実なのです。
生活がデジタル化されることによって、「監視」のありかたが変容したと言ってもいいでしょう。」(69ページ) 

「12歳から」と題名にありますが、これが12歳に読めるかというと……大多数は無理でしょうね。
(もちろん、理解できる12歳もいると思いますが。)
12歳どころか、大人でも理解できない人はいるかな。

フーコーのパノプティコンやジョージ・オーウェルなど、難しい話題が出てくるので、ちょっとついていけないところも出てくると思います。
小学生から読める本だからといって、甘く見ないほうがいいですね(笑)
 

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