観際メルの哲学レンズ

『嘲笑せず、嘆かず、呪わず、ただ理解する』(スピノザ)
16歳の女子が、気に入った本などを書いていきます。

カテゴリ: 芸術の本

・面白さ    ★★★★☆
・読みやすさ ★★★★★
・本の概要
江戸時代の画家、尾形光琳にフォーカスを当て、カラーの図版と共に作品や世界観を解説している。

・気になった箇所

「本来、屏風は室内に特別な場所を設ける調度である。当然、絵師は作品が飾られる場所や用いられ方を踏まえて描いたと思われる。早春の清洌な流水と紅白の花を咲かせる梅を描いた「紅白梅図屏風」は、婚礼の儀式を飾るにふさわしい。紅梅を描く右隻の前に新婦、白梅を描く左隻の前に新郎が座れば、人物の背景になることで、画面の奥行きはより自然に感じられ、左右の隻の対象的な表現も際立つ。この作品に用いられた色彩は、梅の花の紅白と苔の緑にすぎない。その他は、金銀と水墨である。光を受けて輝く様子はさぞかし華やかであっただろう。」(95ページ)

平凡社が出版している、『別冊太陽』の日本のこころー232です。
『別冊太陽』シリーズは本当に良いものが多く、毎回面白いテーマで作られています。

「燕子花図屏風」や「紅白梅図屏風」をはじめとする、尾形光琳が作成した屏風や工芸品の魅力を、惜しげもなく紹介してくれている本でした。
後の方は、光琳の弟の尾形乾山など、尾形光琳の画風を受け継いだ画家たちの作品が載っています。

光琳が描いた屏風などももちろん素敵だったのですが、一番印象に残ったのは、文中で紹介された上嶋源丞へ向けた光琳の言葉でした。
「とかく常ノ消息を相認候心二絵も書候ハねば、絵よくハ無之候。焼筆などもあまりとくとあてぬがよく候。有増ノ貌手足ノしるし斗して、其余ハ中にてぐわさぐわさと御書ならい可被成候。」(50ページ)

現代語に訳すと、「日常の手紙を書くような心で絵も描かなければ絵はよくならない」「(下書きに用いる)焼筆などもあまりじっくりとあてないほうがいい」「がさがさと描きなさい」になります。
「あまり深く考えすぎずに、心の赴くままに描きなさい」ということでしょうか。
とても大事なことだと思います。
頭が煮詰まってしまったら、なんというか、キャンバスが“負の連鎖”になってしまうので(笑)

・面白さ    ★★★★★
・読みやすさ ★★★★☆
・本の概要
ウンベルト・エーコが「美とは何か」という問いについて考える。『醜の歴史』と対をなす。

・気になった箇所

「じつは、われわらはある物を美しいと判断するに際して、われわれの判断力には普遍的価値があるに違いない(だろう)と考えてしまうのである。しかし、趣味の判断の普遍性は一致する観念の存在を必要としないから、美の普遍性とは主観的なものなのである。判断を表明する側にとっては正当な主張であっても、認知に関する普遍的価値はまったくないのだ。ヴァトーが優雅な情景を描いた絵の形が長方形であると知性によって「感じる」こと、あるいは、紳士たるもの困っている女性を助ける義務があると理性によって「感じる」ことは、問題の絵が美しいと「感じる」のと同じではない。実際、この場合は、知性も理性も、認識の領域や道徳の領域での覇権を捨てて、想像力による自由な戯れに身を投じ、想像力が定める規則に従わねばならないのである。」(264ページ)

『醜の歴史』より先に、『美の歴史』が出版されたようです。
この本も、フルカラーで美しい絵画や彫刻が沢山乗っています。
ですが、この美しさを見た後に、『醜の歴史』のインパクトある図版を見るとびっくりしてしまいそうですね(笑)

個人的に、マニエリスムについて書かれている章はとても興味深かったです。
マニエリスムは、後期ルネサンスの美術のことですが、不自然なポーズや歪みが特徴です。
見た人に不安を与えるような雰囲気を持っています。
しかし、その美術は確かに美しく感じるので、「優雅」「可愛らしい」「派手」「清らか」などの肯定的な美とはまた別の「美のカテゴリー」ができるのかなと思いました。

前々から紹介したいと思っていた本なので、今回レビューできて嬉しかったです。
とても分厚く、そして高額なので、図書館で借りることをおすすめします。

・面白さ    ★★★★★
・読みやすさ ★★★☆☆
・本の概要
カラヴァッジョ作品の紹介と解説が主だが、美術における「光と影」が意味するものについても綴っている。

・気になった箇所

「奇蹟というものは、客観的な復活や治癒などではなく、すべて内面的な現象にすぎす、神も信仰もつまるところすべて個人的な内面や心理の問題に帰着する。こうした考えは、プロテスタントだけでなく、イエスズ会やオラトリオ会など、個人と神との対峙を重視する当時のカトリック改革の宗教思想に通じるものである。しかし、それを説得力ある様式ではじめて視覚的に提示したのはカラヴァッジョであった。彼は宗教画を、遠い昔の出来事ではなく、観者の目の前に立ち現われるヴィジョンとして表現した。劇的な明暗、質感豊かな細部描写、画面からモチーフが突き出るような表現などすべては、観者のいる現実空間にリアルな幻覚をもたらすための仕掛けであった。」(66~67ページ)

カラヴァッジョの一生を追いながら、描いた作品やその雰囲気、モチーフ、構図、カラヴァッジョの意図などを詳しく解き明かしていく本です。
また、彫刻や近現代の洋画、日本画についても書いています。
「闇の美術」という題名、テーマ的にも、興味をそそられるのではないでしょうか。

カラヴァッジョの宗教画、その他の画家たちの沢山の絵画を用いながら、描かれている人物、明暗の描き分け、その絵画が描かれた背景をいっぺんに紹介してくれているので、とてつもない情報量です。
一回読んだだけでは、全て頭に入ってきませんでした(笑)
読み応えはばっちりです。
また、美術史を順に追っているので、歴史の勉強にもなります。
私は今、美術検定2級の勉強をしているので、とても有り難い本でした。

・面白さ    ★★★★★
・読みやすさ ★★★★★
・本の概要
狂言師の野村万之丞が、日本の能面のルーツや、世界の仮面文化について解説している。

・気になった箇所

「仮面の発生には諸説あるが、いずれにせよ人智では計り知れないものに対する気持ちが世界中の至る所で仮面を生み出してきた。宗教的なものとの深いつながりのなかで仮面は育ってきたことは疑いがない。人間の力の及ばない神という存在を崇めるために、またある時はそのものに成り代わるために、またはその力を分け与えてもらうために、悪霊から守ってもらうために、呪術的な神との交感の装置として仮面はあったのではないだろうか。」(93ページ)

私の好きな能面、狂言面、更に韓国、ブータンなどの世界の仮面についても詳しく解説してあります。
写真もフルカラーなので、面のビジュアルを余すことなく楽しむことができます。

また、仮面のもつ役割についても、野村万之丞の見解が載っています。
「隠す」「変身させる」「守る/暴露させる」などの役割があるそうです。
宗教的儀式とガッツリ繋がってきそうですね(笑)
そことの関係を考えてみるのも面白いと思います。

面好きな私にとっては、夢のような本でした(笑)
みなさんも、仮面の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

・面白さ    ★★★★★
・読みやすさ ★★★★★
・本の概要
宝石をめぐって渦巻く、価値観や人の動きの歴史を解説している

・気になった箇所

「 「欲しい」と「必要」は別のものだ。もし、ダイヤモンドを手に入るべき「正しいもの」「最も良いもの」だと考えなければ、私達はこれほどまでにダイヤモンドを「必要だ」と考えるだろうか。憧れの人や、そうなりたいと思う人、崇拝する人をダイヤモンドが連想させることはないだろうか。一方、自分が持っていなくて、持てたらどんなにいいかと思うようなものをすでに持っている人がいたら、その人を嫌悪するということもある。
 ダイヤモンドが地球上で最も強いのではない。強いのはそうした認識のほうなのだ。
人々に価値が高いと教え込んでおいてから、外から圧力をかけて、それを買うように仕向けるところに、デビアスの戦略の真髄はある。私達に価値が高いと信じ込ませた物について、人為的に希少性のパターンを作り出すことで、ほぼ百年前に業界の支配権を掌握したデビアスは、絶対に価値を失うことのない製品を生み出したのだ。」(75ページ)

デビアス社や御木本、マリー・アントワネット、ロマノフ王朝のイースターエッグなど、宝石に対する価値観の操作や、歴史に残る宝石のスキャンダルが綴られています。

どこを読んでも面白いのですが、特に、デビアス社のダイアモンドの章は物凄かったですね。
皆が「高価なもの」と思い込んでいる、ダイアモンドの驚きの裏側を知ることができます。

ネタバラシはしたくないので、ぜひ手にとって読んでみて欲しいです。
久しぶりに「ページを捲る手が止まらない」本に出会いました。

・面白さ    ★★★★☆
・読みやすさ ★★★★★
・本の概要
モチーフで読む美術史シリーズ。昆虫や動物はもちろん、2は天候も解説している。

・気になった箇所

「蜘蛛 ――邪悪の象徴

家の中に蜘蛛がいても平気な人はいるが、苦手な人は多い。蜘蛛は本来、蚊や蝿、ゴキブリやダニを捕食する益虫であり、ムカデとちがって人に噛みつくこともないが、その外見だけで損をしているのだ。日本にいるもっとも大きな蜘蛛であるアシダカグモは、手のひらほどのサイズがあるため、田舎でこれが出るとぎょっとしてしまう。
蜘蛛には毒があると思われがちだが、毒のあるものは実際には少ない。聖ノルベルトゥスは持物として蜘蛛の入った聖杯を手にするが、この聖人は、ミサのとき聖杯に毒蜘蛛が落ちてしまったが、それを飲んでも平気だったという奇蹟による。
獲物を捕らえるために糸の巣を張る蜘蛛は、その残忍な捕獲方法から旧約聖書では不義や悪、虚偽や貧欲を意味していた。古代神話では、ミネルヴァ(アテナ)に織物競争を挑んで敗れたアラクネは、罰として蜘蛛に変身させられている。」(24ページ)

偶然2を見つけたので、読んでみました。

私の家にも、大きな蜘蛛が住み着いています。
何度外に逃がしても、いつの間にかまた家の中に居るのです。
最近は、愛着が湧いてきてしまいました(笑)

この本は、フルカラーではありませんが、絵画の写真が沢山載っています。
モチーフがどこに描かれているのか、探すのも楽しいですね。
美術鑑賞の入門書として最適な本だと思います。

・面白さ    ★★★★☆
・読みやすさ ★★★★★
・本の概要
「絵画によく出てくる動物や虫などは、どのような意味で描かれているのか」という疑問を解決する。

・気になった箇所

「 羊  ――子羊はキリストを表す  ~
乾燥地帯に暮らす遊牧民にとって羊は最も重要な家畜であり、その脂肪と毛が尊重された。羊の乳も栄養分に富み、その皮は羊皮紙に加工されるなど、利用範囲は広い。日本ではなぜか北海道以外ではあまり食べられないが、イスラム圏をはじめ、世界的にはもっとも多く食されている動物だ。
キリスト教が生まれたイスラエルでも、羊は人々の生活に欠かせない存在であった。聖書には羊が頻出する。神やメシアに導かれるユダヤの民が羊にたとえられ、羊は神に捧げるべき動物であった。とくに、子羊は広く古代の中近東で宗教的儀礼に用いられ、新約聖書においても、人間の罪を背負って十字架で死んだイエスが子羊の犠牲にたとえられた。」(38ページ)

今月は「秋の美術強化月間」と自分で決めたので、美術系の本を沢山読んでいきます。

絵画に出てくる「モチーフ」の辞典のような本です。
目から鱗な情報で溢れていました(笑)

意味を少し頭に入れておけは、絵画を見ることが一段と楽しくなるはずです。
また、日本画に出てくるモチーフも説明されています。

『モチーフで読む美術史2』もあるようです。
これも読んでみたいですね。

・面白さ    ★★★★☆
・読みやすさ ★★★★★
・本の概要
西洋の美術史を解説している。だいぶ皮肉が効いている。

・気になった箇所

「古今を問わず、ほとんどの美術コレクターに共通することだが、おそらく彼らは自分の判断に自信がもてなかったのだろう。それじゃあ、そんな購買層を引きつけるために、美術学校は何ができたのだろうか。彼らは生徒の作品を展示することにしたのである。その後、地位の確立した芸術家の作品も展示しだし、それによって、コレクターに選択の余地を与えたのである。
 これが一般に公開された展覧会のはしりだが、このような展覧会は当時、最高の社交場となっていった。ひとかどの人物なら誰もが展覧会に足を運んだ。したがって展覧会は、画家個人にとってすばらしい(そして金になる)新人の作品公開手段になった。」(134ページ)

古代から現代までの西洋美術史を、イギリス人の著者が解説しながらぶった斬ります(笑)
イギリス人の性格からでしょうか、あまり好きではない時代や画家には、皮肉たっぷりに解説しています。
そこがこの本のミソなのかもしれません(笑)
ブラックジョークがだいぶ多めな印象です。

ですが、美術界の裏話や、画家たちの変わった生涯などを知ることができるので楽しいですね。
衝撃的な肖像画の書き方など、「まじかよ!」と思ってしまうようなネタが沢山載っています。

・面白さ    ★★★★★
・読みやすさ ★★★☆☆
・本の概要
美術や宗教における「醜の歴史」を、ウンベルト・エーコが解説する。絵画などの沢山のフルカラー画像付き。

・気になった箇所

「古代から、敵は常に何よりもまず「他者」、よそ者であった。その外見はわれわれの美の基準に合わないように見えたし、もし食習慣が違っていれば、その臭いが鼻についた。時間をそれほど遡らなくても思い出せるのは、中国人が犬を食べることを西洋人は受け入れられないし、フランス人が蛙を食べるのをアングロサクソン人は受け入れられないことだ。外国語の理解不可能な音はいうまでもない。ギリシア人はギリシア語を話さない者をすべてバルバリ(つまり、ぶつぶつ話す人々)と定義した。また、ローマ彫刻では、ローマ軍団に破れたバルバリをもじゃもじゃ髭と獅子鼻で表わした。
 キリスト教が目の前に見出した最初の敵はサタンの代理人、反キリストであった。そして、反キリストの顔に関して知られているすべての文献(しかし、ダニエル書などの聖書原典を霊感源としている)は、初期の数世紀から、アドソ・デ・モンティエ・アン・デルの『反キリスト論』やビンゲンのヒルデガルトまで、その顔のいやらしい醜さを主張している(時には、ユダヤ人という血統がその理由だとされる)。」(185ページ)

「秋の美術強化月間」ということで、図書館で借りてきました。

「醜」の多様性や傾向、「美」との関係性など、古代から現代における「醜の歴史」を解説しています。
また、その時代の著名な小説などから「醜」について書いてある箇所も沢山載せています。
その時代の文化や社会情勢から読み解く「醜」は興味深いですね。
ウンベルト・エーコが綴っている部分はとても面白かったです。

ですが、この本で気を付けなければいけないことが一つあります。
この本は、悪魔崇拝、死、地獄、キリストの受難などの「醜」の象徴のような絵画がフルカラーで載っています。
グロテスクだったり、不気味だったり、不快な気持ちになるような絵画も載っているということを頭に入れて読んだほうが良いでしょう。
私も、中盤まで読み進んだ辺りで吐き気を催してしまいました(笑)
慣れている方は良いのですが、そうでない方は閲覧注意の本です。

・面白さ    ★★★★☆
・読みやすさ ★★★★★
・本のポイント
能楽の、「恋」に焦点を当てた本。恋愛関係の演目のあらすじと解説が主になっている。


今日、能のセミナーに参加してきました。
能楽師の方が実際に演舞したり、お面や装束の解説など、とても有意義な時間になりました。
帰りに、図書館で能関係の本を借りてきましたので紹介します。

能面は小さい頃から好きだったのですが、最近になって演目や衣装にも興味が湧いてきました。
あまり堅苦しくなくて、私にもすんなり理解できそうなものはないかと探してみたところ、こんな本が見つかりました。

テーマが「恋」ということで内容にも入り込み易く、「こういう気持ち、すごくわかる!」といった感じで共感することもできました。
年齢差や身分差で叶わない恋や、嫉妬で鬼になってしまった女の人、悲劇的な別れなど、ドラマチックで少し悲しい演目が多かったですね。
ですが、読んでいてとても面白かったし、実際に能を見に行きたいという思いが一層強くなりました。

今度東京に行く時には、能楽堂に立ち寄ってみようかなと思います。

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