2007年01月10日

1.2.4  浮体式洋上風力発電に関する研究の現状・課題

前節において洋上風力発電の長所と短所、および導入に向けた課題について述べたが、ここでは、”浮体式”に的を絞って、これまでに行われてきた研究を紹介し、実用化へ向けた課題を整理する。
これまで浮体式洋上風力発電に関する研究は我が国において盛んに行われてきた。この背景には沖合に向けて急速に深度を増す我が国の海底地形は、ヨーロッパのような着底式ウィンドファームに不向きであることが挙げられる。また、米国においても風力発電の導入は急速に進んでおり、その中で浮体式洋上風力発電の導入検討がなされ始めている。ここでは、特に我が国における検討事例と米国における検討事例について触れることにする。
 浮体構造物の開発に関しては海洋の資源開発などの分野で発展してきており、いくつもの浮体形状が提案されている。洋上風力発電に向いていると考えられる海洋構造物の形態をFig. 1.10に示す。
 我が国における浮体式洋上風力発電に関する技術的な検討事例の一つとして、日本海洋産業開発協会(JOIA)による「海洋資源・エネルギーを複合的に活用する沖合洋上風力発電等システムの開発調査研究* 」が挙げられる。この研究の中で、各種浮体を用いたコンセプトが提案され、技術的・経済的な面から比較検討が行われた。100m〜200mの大水深域ではセミサブ型とSpar型が、20m〜50mの比較的浅い海域においてはポンツーン型と重力型(着座型)のコンセプトの検討が行われた。JOIAにおける検討以降にも、造船各社や海上技術安全研究所などからコンセプトが提案されている(Fig. 1.11)。当研究室においても動揺特性に優れ、大水深域での利用が可能であるSpar型浮体に着目し、Spar型浮体に大型風車(5MW)を搭載した場合の動揺特性の解明及び浮体設計の最適化を中心に検討を行ってきた*8* * 。この検討より、Spar型浮体を用いた洋上風車に対して発電可能な程度に浮体動揺を抑え、なおかつ経済的に成立できる見通しを得た。


Fig. 1.10: 洋上風力発電の各種コンセプト概念図
Table 1.5: 浮体構造物の特徴


   
Fig. 1.11: 浮体式洋上風車のコンセプト(左:IHIマリンユナイテッド、右:日立造船)*

次に米国における浮体式洋上風力発電の研究の状況を、Department of Energy(米国エネルギー省)、National Renewable Energy Laboratory (NREL)の主導する研究プログラムを中心に概観する。米国における風力発電の位置づけは日本におけるものと少し違う。広大な国土を有する米国ではすでに陸上での風力発電の導入がかなり進んでいる。今後も陸上を中心に、風力発電の導入は進むと考えられる。そのような状況の中、米国において洋上風力発電を推進する意義として以下のようなものが挙げられる。

・ 米国の陸上風力発電のポテンシャルはとても大きいが、風況のよい地点は必ずしも電力需要地に近くはない。
・ 州をまたぐ広域電力網はまだまだ未整備である。
・ 大きな技術革新の必要はなく既存技術で利用可能なエネルギー資源である。(海洋資源開発の経験と既存風力発電技術の融合)
以上のような観点から、米国において洋上での風力発電は有力な発電オプションのひとつとして導入にむけた調査研究が進められ、10〜15年後の大水深域での風力エネルギー開発の実現、洋上風力発電産業の成熟を目指している。NREL主導のプログラムに参加している研究機関としてはGE(General Electric)の研究所GE Global ResearchやMIT(Massachusetts Institute of Technology)などが挙げられる。主な研究項目は以下の通りである。

・ 大型風車の洋上での実証実験
・ 沖合自然条件のモデリング手法の開発
・ アンカーを含めた浮体式洋上風車用係留系の開発
・ 沖合における波風共存場での風車挙動解析ツールの開発

Fig. 1.12にMIT(Massachusetts Institute of Technology) の研究におけるTLP型浮体およびSpar型浮体のコンセプトを示す。この研究の目的は浮体式洋上風車の挙動を評価するコードの開発および計算結果に基づく浮体の最適設計である。


Fig. 1.12: MITの浮体式洋上風車コンセプト*

以上、浮体式洋上風車の研究開発について概観したが、研究開発の課題としては以下の項目が挙げられる。

・ 風車−浮体システムの最適設計
・ 洋上での建設・運用における効率のよい作業方法
・ 洋上風車用の安価な係留系の開発
・ 沖合における自然条件(水中も含む)の推定手法の開発
・ エネルギー輸送手段の確立(系統問題、エネルギー変換)


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