今回はカッコ悪い話・・・。

どんな小さなパーツでも、事前にきちんと点検をしておくべきものですね。
いや、出発前に点検はしておいたのですが、長旅による震動の故なのか、悪魔の悪戯か・・・?

北硫黄島

部分食が始まる直前、余裕のよっちゃんだった私は、おもむろに望遠鏡にカメラを取りつけました。
Teegulは、本来、写真撮影用に作られていないので、Teegulに合うように、ビクセンの古いカメラアダプターとEOSマウントを組み合わせておいたのですが・・・。
カメラを取りつけると、おや? このアダプターには写野回転機構などないはずなのに、なぜか自由にカメラが回る。
おっかしいなあと思いつつ、アダプターを点検すると・・・。

なんと、ふだんは取り外せないはずの接続部分が緩んで、アダプターがふたつのパーツに分解しかかっているではありませんか。
さらに仔細に観察すると、ふたつのパーツを固定しているメガネ用の小さなネジが3本とも緩んでいることがわかりました。
通常、取り外さない部分なので、そんなトコロにネジがあるなんて気にしたこともありません。
これまで20年以上使ってきて一度も緩んだことのないネジが、なぜこの大事なときに3本とも緩んじゃうの! やる気あんのか、おい、コラ!
このときになってもなお余裕の表情を崩さず、心の中だけで思い切りちっちゃなネジに毒づきながら、私は撮影準備に余念のない周囲の人たちに声をかけて回りました。
 「あのー、メガネ用の精密ドライバーなんか持ってませんかねー」
そう、このときまでは、みんな精密機器をいっぱい持ってきているんだから、誰かがきっと持っている。そう信じていました。
 「いやー、持ってないすね」「家にはあるんですがねえ」
強気の予想に反して、返ってくる答えはどれも×××。
家にはあるんですけどねえ、って、ここになきゃ意味ないじゃないの!と、理不尽な怒りに心の奥を震わせつつ、とうとう第一接触1分前になり、私は精密ドライバーを諦めました。食が始まってからそんなことを聞き歩いてたら、めちゃくちゃ間抜けなお邪魔虫です。

残された手段は、まことに消極的な対処しかありません。
 一言でいえば「何もしない」こと。
どうやら触れば触るほどちびネジは緩んでゆくようです。
となれば、何とも逆説的ではありますが、皆既が終わるまでできるだけカメラやアダプターに触らないようにして、外れかかっているふたつのパーツが本当に分解してしまわないようにするしかありません。

というわけで、部分食はできるだけ撮らないようにして、皆既までアダプターを温存することにしました。
結果的にはこれで何とか持ちこたえ、すでにお見せした皆既の画像は撮れたのですが、皆既の最後の方になると、いよいよアダプターは分解寸前、カメラが落ちるのが早いか、皆既が終わるのが早いかという状況になりました。
結局、第3接触(ダイヤモンドリング)まで撮り終わることができましたが、悲しいことにダイヤモンドリングの画像は、ふたつのパーツがいよいよ分解しかかっていたためにピント位置が変化し、ピンぼけになってしまったのです。
こんな恥ずかしい画像は後悔、じゃなかった、公開したくないのですが。

kinkan02a

ええ、これ以上、大きな画像は出せません。
これでも画像復元ソフトを駆使して、だいぶ修正してあるんですよ。
慌てていて皆既と同じ露出で撮影してしまったため、露出オーバーでもあるという情けない画像です。まあ、時には失敗もあるということでご勘弁を。

とりあえず皆既を撮り終え、カメラを外したとたん、アダプターは分解しました。
よくぞ持ちこたえてくれたと讃えるべきなのか、この大切な瞬間になんでちびネジが緩んじゃうのさ!と怒るべきなのかはわかりません。
もちろん、悪いのはちびネジを増し締めしていなかった私なのですが、そんなところにちびネジが隠れているなんて、20年間、一度も気にしたことなかったんだよー!

とまあ、これが予期せぬアクシデントです。
ちなみに撮影が終わって部屋に戻り、同室のKさんにこのバカ話をしたところ、「ああ、精密ドライバーなら持ってるよ。ほら」。
・・・というわけで、日食が終わったとたんに、アダプターは元気になりました(泣!)。

アクシデント、もうひとつ。
ちびネジの乱にあたふたしながら皆既を撮影していると、むむ、どうも足元がしっくりこない。なぜこうも足の裏が熱いのだ?
いぶかしく足元を見ると・・・。
なんと、左の靴の底がすっぽりとはがれていて、私は靴下一枚で焼けた甲板の上に立っているではありませんか!
まだ新しい靴で、日食の直前まで元気に私に仕えてくれていたんですよ。
それが、こともあろうに皆既の瞬間に突然、反旗を翻しやがって!
このバカ靴め!と心の中で罵りながら、それでも顔は余裕で皆既を撮り終えました。
横にいたogawa嬢は、なんでこのヒト、ハダシなんだろ? と思っていたそうです。
 『気合を入れるためサ!』と、運動会のリレーを裸足で走る爽やかなスポォツ少年のようなセリフをとっさに口にすべきだったと、今では思っています。

靴、ですか?
船内用のサンダルを持っていたので、とりあえず事なきを得ましたヨ。
父島で1,380円の靴も買ったし。
島ではレンタバイクを借りたのですが、手続きを終えた私の第一声は「あの、このヘンで靴屋さん、ありませんか?」でした。
どこが景色が良いかとか、美味しいお店はどこ? 的な質問を予想していたレンタバイク屋のお姉ちゃん、一瞬、言葉をなくしていました。

写真:ピンぼけのダイヤモンドリング・北硫黄島(この近海で観測しました。ほとんどの人は一生、見る機会のない島でしょう)