「夏の大三角」を形作る星々といえば、こと座のベガ、わし座のアルタイル、そしてはくちょう座のデネブです。
地球から見ると、3つの星の中ではベガが最も明るく、アルタイルやデネブはベガに比べれば、やや精彩に欠けるように感じます。
でもこれは、あくまで地球から見た場合のこと。
実際、3つの1等星の明るさ、そして大きさはどうなのでしょうか。

ベガもアルタイルも、高温で青白い星です。
表面温度は1万度近くあり、質量や半径も太陽の2~3倍ほど、光度は太陽の数十倍と、なかなか立派な(?)星であることには間違いありません。
それではもうひとつのデネブはといえば、なんと質量は太陽の15倍、半径は約100倍、光度は54,000倍と、けた違いに大きな星です。
それほど明るい星なのになぜベガよりも暗く見えるのかといえば、デネブまでの距離が非常に遠いことによります。
地球からデネブまでの距離は、1,300光年~1,400光年と考えられており、仮にベガの位置にデネブを置いた場合、地球から見た明るさは三日月ほどに達すると考えられます。
これは、宵の明星として知られる金星の15倍にも達する明るさです。

分類としては白色超巨星とされ、いわゆる主系列のなかでは銀河系で最も明るい星のひとつです。
恒星は基本的に質量が大きいほど寿命が短いため、デネブは数千万年後には主系列星から赤色巨星に進化し、やがては超新星爆発を起こすと考えられています。

私たちが夜空を眺める際には、どうしてもプラネタリウムと同じように、半球状のスクリーンに星が張り付いているように感じますが、実際はそれぞれの星までの距離はさまざまであり、私たちはドームスクリーンなどではなく、非常に立体的な宇宙の姿を見上げていることになります。
そう考えながら夏の大三角を眺めてみると、たかだか(と書いてしまいましょう)地球から25光年の距離にあるベガ、そして16光年の距離にあるアルタイルに比べて、もうひとつのデネブは1,000光年以上も遠方に輝いているのです。
なんだか、夏の大三角がすごく三次元的な立体感をもって見えてきませんか?
1,000光年以上も離れていながら1等星として輝いている…。
デネブって、実はすごい星なんですね。

なお、デネブという名称がついている星は他にもたくさんあります。
デネブとは、アラビア語で「しっぽ」や「お尻」を意味する言葉なのです。
はくちょう座の尾羽に輝いていることから「デネブ」と呼ばれているわけですが、他にもたくさんある同名の星と区別するために「Deneb Cigni」と表記うこともあります。
Cigniとは、はくちょう座のことで「はくちょう座のしっぽ」という意味合いがあります。

デネブから太陽を見ると…。
残念ながら、肉眼に映ずることはないでしょう。
望遠鏡的な暗い恒星として観測されるだけのはずです。