オリオン座の1等星、ベテルギウスが暗くなっている状態は相変わらず続いています。
天文ファンのみならず、一般の方の噂にものぼるようになり、超新星爆発が間近なのではないかという人もいますが…。

つい最近、ヨーロッパ南天天文台(ESO)がベテルギウスの最新画像を公表しました。

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(Credit: ESO/M. Montargès et al.)

この画像を見ると、星の形状が歪ですし、明るさにもムラが見えます。
「やはり超新星爆発が間近なんだ!」と思ってしまいそうですが、ベテルギウスは星の表面から大量のガスを宇宙空間に向けて放出しており、そうしたガスが光球の一部を遮って、明るさのムラを作っていると考えられています。
形状が歪なのは、補償光学系の処理過程に原因があるのかもしれません。
いずれにしても、この画像だけを見て「ベテルギウスに異常が見つかった」と決めつけることはできないように思えます。
ベテルギウスの減光も、光球面から放出された大量のガスが光を遮っているための現象であることが考えられます。
もちろん、ガスを大量に放出しているということは、いずれにしてもベテルギウスが星としての寿命を迎えているという証左でもありますので、いずれは超新星爆発を起こすことになることは確かなのですが、光球面の画像だけを見て、いますぐに異変が起こるということには結びつかないような気がしています。

ベテルギウス周辺に放出された大量のガスをとらえたのが下の画像です。

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(Credit: ESO/P. Kervella/M. Montargès et al., Acknowledgement: Eric Pantin)

VLTによって撮像されたこの画像を見ると、ベテルギウス周囲には驚くほど大量のガスが存在することがわかります。
現在の減光が、こうしたガスによってもたらされているという可能性は高いように思います。
そうだとすれば、ガスの動きによってベテルギウスが再び増光に向かうことも十分に考えられ、現在のまま減光が続くことはないのではないでしょうか。

いずれにしても、赤色巨星の進化過程について私たちが知っていることはごく僅かであり、今回のベテルギウスの異変がすぐに超新星爆発には結びつかないにしても、宇宙の驚くべきドラマを見ることができるかもしれない貴重な機会に遭遇できていることは、有難いことと考えた方が良いでしょう。

ただ、一天文ファンとしては、仮にベテルギウスが超新星爆発を起こすのであれば、ベテルギウスが太陽と同じ方向に見える夏場は避けてほしいと思います。
超新星爆発が起こったとすれば、数か月間は非常に明るく見えるはずですが、太陽と同じ方向にベテルギウスがある期間は、観測は困難です。
といって、夜間にベテルギウスが見えている時期に超新星爆発が起こるのも、ベテルギウスの明るさによって他の星が観測できなくてしまいますので、それはそれで困ったことではあるのですが…。