もうすぐ冬休み。
天体や野鳥観察のお伴として双眼鏡の購入を考えている方もいるのではないでしょうか。
「さっそくホームセンターへ買いに行こう!」
「ネットで高倍率の双眼鏡を買っちゃおう!」
そう思われた方、ちょっと待って下さい。

ありていに言います。
ホームセンターや通販で売っている双眼鏡のうち、特に高倍率をうたったズーム式双眼鏡は粗悪品の割合が高く要注意です。
営業妨害をしようとしているわけではなく、長年、天体観測を続けてきて光学製品を扱ってきた経験から言わせていただいているのです。

まず買ってはいけない双眼鏡特有のキャッチコピー。
『100倍の大倍率で遠くのものが手に取るように見えます!』
そうかぁ、100倍ならさぞかし良く見えるんだろうなあ。
普通の人はそう思ってしまいます。
でも、双眼鏡や望遠鏡には、有効最高倍率というものがあります。
口径(対物レンズの直径)を㎜で表した数値が、その光学機器を有効に使える倍率です。
ホームセンターや通販でよく売られている双眼鏡の口径は28mm程度が多いですから、28倍が最高倍率となり、それ以上の倍率をかけてもピントの悪い写真を大きく引き延ばしているのと同じで、良く見えるようにはならないのです。

加えて、双眼鏡は手持ちで使うことがほとんどです。
手持ちの場合は、7倍から10倍程度が使用に耐える最高の倍率となります。
それ以上の倍率では、手の振動も倍率の分だけ拡大されてしまい、視野が震えるばかりで実用になりません。

もうひとつ。
粗悪な双眼鏡は視野(見える範囲)が非常に狭いものが多く、注意が必要です。
売られている双眼鏡を手にとって、遠くの景色を覗いてみて下さい。
丸い視野は広々と周辺までクリアでしょうか。
針の穴から覗いたように狭くありませんか。

また、視野の中の像に赤や紫の妙な色がついていないでしょうか。
色収差という欠点をどのレンズも持っていますが、質の悪いレンズほど色収差が多く、像が着色して見えてしまうのです。

両目で覗いた際に、左右の像はぴったり一致しますか。
二本の鏡筒の向きをピタリと一致させるには、非常に精密な加工技術が必要です。
粗悪品の場合は左右の像が重なり合わず、双眼鏡としての機能を果たしません。

双眼鏡は両目で見るために、単眼で見る望遠鏡以上に精密な加工技術が必要です。
光学製品は、豊富な知識を持つ店員が常駐する専門の販売店で、自分の用途をよく説明した上で買い求めることが絶対に必要です。

これだけ世の中が進歩しているにもかかわらず、なぜ一般向けの光学製品だけがいつまでも粗悪品のまま販売されているのか、非常に不思議です。
双眼鏡や望遠鏡の購入を検討されている方は、天文やバードウォッチングに精通した方に相談された上で、必ず専門店で購入されることをお勧めします。