プラットフォームが揺れている。正確に言えば揺れているのは自分の脳みその方なのだが、さすがに普段無駄な事ばかりを考えている自分のその、役に立たない脳みそですら動くのをやめカロリー温存にまわる程、今日という日は暑かった。茹だる様な暑さは都会では特に堪え難い。用事なんてなければこんなとこに来ずに済んだのにアソビはガクリ、と首の力を抜いた。この為だけに彼を新宿へと導いたF40号のカンバスが恨めしい。しかし今では其れも随分揺れて見える。アソビというのは友人が付けた渾名だ。単純解明、遊んでばかりいるから、アソビ。ソの音があがるのが動詞と、彼が持つ固有名詞の大きな違いだ。落ちた影の淵を視線でたどっているとふいに音が消えた。さきほどまであんなに騒がしかった周囲が、水を打ったように、示し合わせた様に、花火がちりぢりになる前の様に音が失われ、代わりにガリッという音が響きわたった。アソビが 視線だけを投げるとどうやらそれはクルミだったらしい、ちりぢりになったのはクルミだったのだ。いやいやそうではない。クルミをガリィッと歯で割ったらしいその少女の長い白髪が珍しく凪いだ風に揺れて目に痛い。すらっとした体躯、大きく少し垂れた瞳は昨日入ったプールと同じ色だ。縁には重くないかと思う程に髪と同色の睫毛が伸びている。ぼろぼろ溢れた殻を拾う事もせずに前を向いたまま少女は同じ様に視線だけをこちらに向けて言い放った
「息の吸い方おぼえてんの?」 
「は?」 
まさに溺れた様に、アソビの口からは、カラではなく息が溢れて目前に広がる雲に吸い込まれた気がした。