2011年02月
2011年02月22日
110222, 目立ち過ぎは禁物
日本のGDPが中国に抜かれた。以前からマスコミが繰り返していたが、中国の躍進振りは本当に驚く。15年先には米国も抜いて、世界最大の国力を誇る国になるという。確かに人口が日本の10倍で、米国の4倍以上だから、GDPが世界最大になるのも不思議な話ではない。その結果、国際社会で中国の行動が自信満々になり、その振る舞いが益々横柄になってきたのが少々気掛かりだが。
しかし日本だって過去40年の間、米国に次いでNo.2の座を維持し続け、OECDや国連拠出金も最大であった。にも拘わらず日本は極めて控え目な態度をとり続け、(中国に猛反対されて)国連の常任理事国にもならず、はしゃぐことも殆どなかった。その前はイギリスが世界No.2であったのだろう、イギリスも横柄さはなかったと思うが、拒否権だけはちゃんと確保している。
戦後の日本を振り返えると、繊維産業から始まって、鉄鋼、造船、時計、カメラ、半導体、自動車。。と欧米が創り出した近代産業の殆どの分野で、欧米企業を追い越して王座を奪い取った。その時の米国や欧州諸国の胸の内は穏やかではなかっただろうし、悔しい思いをしたことだろう。例えば池田首相がフランスを公式訪問したとき、当時のドゴール大統領が、日本からトランジスターのセールスマンが来たと、陰で嘲笑したと言う有名な話も少しは分かる気がする。
しかし世界の誰もプライドだけではメシは食えず、背に腹は代えられない思いで、横柄な中国の態度には目をつぶりながら、需要拡大を続ける中国市場に参入している訳だ。日本と違って中国はその振る舞いが粗野で露骨だが、大声で非難すると差別されるのが怖くて誰も黙認を強いられている。まあこうなったら日本は、これからは量的な世界No.2は中国に譲り、ソフトパワー主体の質的な成長に方向転換を目指すべきだろう。
その意味で、先日音楽界の世界最高の名誉とかいわれるグラミー賞を4名の日本人が受賞したというのは嬉しいニュースだ。どんな立派な賞か、芸術音痴の私には殆ど分からないが、兎に角素晴らしい出来事なのだという。
スポーツでも先日の4大陸フィギャ-スケート大会で日本人の大活躍が目立った。女子は1位安藤美姫、2位浅田真央、3位の長州未来は米国籍だが生粋の日本人だから、日本人が3名表彰台に並んだことになり驚いた。これは目立ち過ぎではないかと少々不安になった。表彰台の長州未来は、自分を3月の世界選手権代表(東京)に選ばなかった米国に反省させてやりたい!などと心底から大和魂の持主だ。
男子も1位高橋大輔 2位羽生結弦 3位アボット(米国)と日本勢が圧倒的な強さだ。まあ選手達が一生懸命に頑張った結果だから、ケチを付ける気はないが、国際大会で日本人が表彰台を独占するのは、やはり出来過ぎではないかと私は少し心配に思うのだ。
昨年暮れのフィギャースケート北京大会でも浅田真央以下の日本勢が美しく舞ったが、広い会場の観客席は全くガラガラだったのに私は驚いた。あの華麗な女子スケートも中国人が活躍せず日本勢が目立ち過ぎると、地元の観客からは嫌われてしまう訳だ。その意味で、今年まだ鳴りをひそめている韓国フィギャーのエース金妍児が東京の世界選手権大会に出場するというのは嬉しいニュースだ。
ゴルフでも韓国女子勢の大活躍は超有名だが、これを嫌って米国では女子ゴルフのテレビ視聴率が下がり始めたことが問題になり、韓国等の外国女子選手の米国ゴルフ大会への参加基準を厳しくした。女子メジャー大会のいくつかを米国以外のアジアで開催し始めた理由は、韓国選手の活躍し過ぎで米国スポンサーが離れ始めたのが原因だと言う。その意味では先週宮里藍や宮里美香が米国初戦で敗退し、米国男子メジャー開幕戦でも石川遼、池田勇太、藤田寛之の日本代表全員が予選敗退したのも、意味がある結果だともいえる。私も国内の女子ゴルフは大好きだが、韓国選手が圧勝している時は、庭仕事をする方が楽しい気分になってしまう。
大相撲でモンゴル勢が強過ぎるのも同じことだろう。朝青竜の横柄さは別としても、モンゴル勢が強過ぎるので、国内の人気は低下気味だという。大相撲の人気低落には、八百長事件よりボディーブロー的に効くかも知れない。特定の外国選手が活躍し過ぎると、他の国民には余り気持がいいものではなく、どんなスポーツにも同じことではないだろうか。
しかし、先般のサッカーアジア選手権大会で日本が優勝した例だけは少し訳が違うと私は思う。もし再試合すれば、体力に勝るオーストラリアには多分負けるだろうし、たまたま川島が奇跡的なゴールセーブを果たし、李忠成のボレーシュートが成功したから勝てたのだから。香川真司が活躍したカタール戦や、クジ引きのようなPK戦で決着した韓国戦だって再試合すればどうなるか分かったものではない。
ただ、日本の政治だけは別世界で全く情けない限りだ。激しく動乱する世界政治とはかけ離れて、高給盗りの国会議員共は、毎日毎日足の引っ張り合いの応酬ばかりで、本当に軽蔑の至りだ。小さな北方領土にロシア大統領や国防大臣が来訪し、尖閣諸島では台湾漁船にまで挑発されて我々国民のプライドは多いに傷つけられているのに子供じみた遊びから抜け出せない。 少々強く出ても日本政府は反撃する筈がないと軽く見られているのだろうが、朝から晩まで枝葉末節な争いばかり続けている国会議員を見ると、これが我々の選んだエリートだったのかと情けない気持ちになってしまう。
しかし日本だって過去40年の間、米国に次いでNo.2の座を維持し続け、OECDや国連拠出金も最大であった。にも拘わらず日本は極めて控え目な態度をとり続け、(中国に猛反対されて)国連の常任理事国にもならず、はしゃぐことも殆どなかった。その前はイギリスが世界No.2であったのだろう、イギリスも横柄さはなかったと思うが、拒否権だけはちゃんと確保している。
戦後の日本を振り返えると、繊維産業から始まって、鉄鋼、造船、時計、カメラ、半導体、自動車。。と欧米が創り出した近代産業の殆どの分野で、欧米企業を追い越して王座を奪い取った。その時の米国や欧州諸国の胸の内は穏やかではなかっただろうし、悔しい思いをしたことだろう。例えば池田首相がフランスを公式訪問したとき、当時のドゴール大統領が、日本からトランジスターのセールスマンが来たと、陰で嘲笑したと言う有名な話も少しは分かる気がする。
しかし世界の誰もプライドだけではメシは食えず、背に腹は代えられない思いで、横柄な中国の態度には目をつぶりながら、需要拡大を続ける中国市場に参入している訳だ。日本と違って中国はその振る舞いが粗野で露骨だが、大声で非難すると差別されるのが怖くて誰も黙認を強いられている。まあこうなったら日本は、これからは量的な世界No.2は中国に譲り、ソフトパワー主体の質的な成長に方向転換を目指すべきだろう。
その意味で、先日音楽界の世界最高の名誉とかいわれるグラミー賞を4名の日本人が受賞したというのは嬉しいニュースだ。どんな立派な賞か、芸術音痴の私には殆ど分からないが、兎に角素晴らしい出来事なのだという。
スポーツでも先日の4大陸フィギャ-スケート大会で日本人の大活躍が目立った。女子は1位安藤美姫、2位浅田真央、3位の長州未来は米国籍だが生粋の日本人だから、日本人が3名表彰台に並んだことになり驚いた。これは目立ち過ぎではないかと少々不安になった。表彰台の長州未来は、自分を3月の世界選手権代表(東京)に選ばなかった米国に反省させてやりたい!などと心底から大和魂の持主だ。
男子も1位高橋大輔 2位羽生結弦 3位アボット(米国)と日本勢が圧倒的な強さだ。まあ選手達が一生懸命に頑張った結果だから、ケチを付ける気はないが、国際大会で日本人が表彰台を独占するのは、やはり出来過ぎではないかと私は少し心配に思うのだ。
昨年暮れのフィギャースケート北京大会でも浅田真央以下の日本勢が美しく舞ったが、広い会場の観客席は全くガラガラだったのに私は驚いた。あの華麗な女子スケートも中国人が活躍せず日本勢が目立ち過ぎると、地元の観客からは嫌われてしまう訳だ。その意味で、今年まだ鳴りをひそめている韓国フィギャーのエース金妍児が東京の世界選手権大会に出場するというのは嬉しいニュースだ。
ゴルフでも韓国女子勢の大活躍は超有名だが、これを嫌って米国では女子ゴルフのテレビ視聴率が下がり始めたことが問題になり、韓国等の外国女子選手の米国ゴルフ大会への参加基準を厳しくした。女子メジャー大会のいくつかを米国以外のアジアで開催し始めた理由は、韓国選手の活躍し過ぎで米国スポンサーが離れ始めたのが原因だと言う。その意味では先週宮里藍や宮里美香が米国初戦で敗退し、米国男子メジャー開幕戦でも石川遼、池田勇太、藤田寛之の日本代表全員が予選敗退したのも、意味がある結果だともいえる。私も国内の女子ゴルフは大好きだが、韓国選手が圧勝している時は、庭仕事をする方が楽しい気分になってしまう。
大相撲でモンゴル勢が強過ぎるのも同じことだろう。朝青竜の横柄さは別としても、モンゴル勢が強過ぎるので、国内の人気は低下気味だという。大相撲の人気低落には、八百長事件よりボディーブロー的に効くかも知れない。特定の外国選手が活躍し過ぎると、他の国民には余り気持がいいものではなく、どんなスポーツにも同じことではないだろうか。
しかし、先般のサッカーアジア選手権大会で日本が優勝した例だけは少し訳が違うと私は思う。もし再試合すれば、体力に勝るオーストラリアには多分負けるだろうし、たまたま川島が奇跡的なゴールセーブを果たし、李忠成のボレーシュートが成功したから勝てたのだから。香川真司が活躍したカタール戦や、クジ引きのようなPK戦で決着した韓国戦だって再試合すればどうなるか分かったものではない。
ただ、日本の政治だけは別世界で全く情けない限りだ。激しく動乱する世界政治とはかけ離れて、高給盗りの国会議員共は、毎日毎日足の引っ張り合いの応酬ばかりで、本当に軽蔑の至りだ。小さな北方領土にロシア大統領や国防大臣が来訪し、尖閣諸島では台湾漁船にまで挑発されて我々国民のプライドは多いに傷つけられているのに子供じみた遊びから抜け出せない。 少々強く出ても日本政府は反撃する筈がないと軽く見られているのだろうが、朝から晩まで枝葉末節な争いばかり続けている国会議員を見ると、これが我々の選んだエリートだったのかと情けない気持ちになってしまう。
2011年02月15日
110215, 政治もガラパゴス化
私は朝が早い。6:20には東京駅に着き、やまの手線から京葉線地下ホームへ7−8分歩く。長いエスカレーターを何回も乗り換えて、やっとB4の京葉線ホームにつき、暫く待って蘇我行き各駅停車に乗る。地下ホームはB4—B1間にエレベーターもあるが、殆どの人はエスカレーターを使う。B4ホームで暫く待つと轟音と共に各停電車が入って来る。乗客が降りて、入れ替わりに我々が乗り込む。
殆どの乗客は上りエスカレーターに急ぎ、B4→B3→B2→B1と上がって行くが、10人余りはエレベーターに殺到して、一気にB1へ上がる。運よくエレベーターがB4ホームに待っていれば、すぐ乗り込むが、運悪く上階にいると1分近く待つことになる、何だかその日の運勢のようだ。
しかし最近、意地悪な中年男が現れて、殺到する客が直ぐには乗れないように工作し始めた。40代かと思われるその大男は、電車が到着する前に何処からか現れてエレベーターに近づき、中に入って上昇ボタンを押して外に出る。乗客が殺到する寸前にエレベーターのドアが閉まって上昇し始めると、男は満足した顔でその場を去る。何も知らない乗客はエレベーターが下りて来るのを1分半近く待たされる。殺到する乗客が運よく閉まる寸前のボタンにタッチできれば、ドアは再び開いて、乗客を乗せて上昇する。離れて見ていた男は悔しそうな顔付きで上がるエレベーターを見ながら、千葉県民は歩け!歩け!とつぶやく。翌朝この男はタイミングを早めてエレベーターが先に閉まるよう工夫する。そしてうまくゆくとにっこり微笑んでその場から去る。
何とも意地悪なイタズラだが、その大男は毎日工夫しながら如何に乗客を長く待たせるか努力している訳だ。イタズラは止めるよう男に声をかける勇気は、老体の私にはない。また毎日の通勤途上で他人とモメ始めると、通勤が面倒になりそうなのも厭だから見ているだけだ。まあ最悪でも10人に1分半足らずの時間ロスを生じるだけだから、見過ごしてもいいだろうと自分に言い聞かせている始末。
JRについては私もその昔、キセル乗車で捕まり差額を何百円か弁済したが、買ったばかりの半年定期券まで没収されて、痛かった覚えがある。多くの人も何か似た経験を持ち、スリルを楽しんだ記憶があるかも知れない。まあ退屈な日常生活に一服の清涼剤と言えなくもないが、こんな些細ないたずらとは違って、桁違いにスケールが大きい無駄やイタズラが、この社会には満ち溢れているように思う。
話が大きくなって恐縮だが、例えば沖縄基地問題。確かに普天間基地は危険だから早く移転する必要があり、偉い人達が10余年間に渡っていろいろ検討した移転先として、人口過疎な宜野湾市のキャンプシュワブの沖合に決めた。しかし今度は宜野湾市住民の半数が反対を唱え始めた。騒音や危険性は殆どないが、沖縄に米軍基地がある事自体が許せないのだそうだ。日本を守る負担を沖縄住民だけに押し付けるな!という。沖縄は地理的に、日本を守る最適な場所にあるには事実だが、日本は米軍駐留を沖縄だけに負担させていると言う。沖縄基地を九州や東海、東北や北陸に移転してはその意味が無くなるのは誰も知っている。かくして沖縄問題は大騒ぎを経て、未解決のままデッドロックに乗り上げ、普天間の危険性は半永久的に固定化されることになる。
確かに沖縄の米軍基地は危険性もあるが、この不景気の時代に多数の雇用を生み出しているのも事実だ。しかし反対住民はそのことには触れない。気候温暖な沖縄に比べて、北陸や東北の住民は豪雪に痛めつけられ苦しんでいることにも関心ない。都会の住民は雇用には恵まれているのは事実だが、関西の住民6400人が大地震で亡くなったのは人ごとだ。必ず来襲し数十万人の犠牲者が出ると予言されている東南海大地震の恐怖の最中にいる東京名古屋の大都市住民は、好んでそこに住む自己責任だと言う訳だ。温かい気候の土地で、政府の助成金を受けながら、時々反対を叫んでは、のんびり暮らす沖縄はそれで満足なのだろう。
国会議員も同じ穴のムジナだ。消滅寸前の社民党は、誰が日本を守るかを全く論じることなく、沖縄の基地撤廃を叫び続け、日本の周囲が中国海軍に取り囲まれつつある危険性には知らん顔だ。将来のエースと言われた辻本清美議員が脱党するのも当然だ。法人税切り下げ反対を叫んで、国内企業を痛めつけて海外に追い出し、若者の就業の機会を益々奪い去っていることを知らない訳はないだろうが、それには触れることなく企業イジメを叫び続けている。
年金と消費税問題はもっとひどい。一人1000万円近い高額な借金を孫の世代に押しつけて、暇を持て余しながら暮らしているシルバー世代でさえ、消費税率を上げて子供や孫に押し付けるのは変えなくてならないと自覚し始め、世論調査でも6割の国民が消費税率アップの必要性を認めているにも拘わらず、国会での具体案の討議はいつになっても始まらない。予算組替で18兆円の財源は簡単に出てくるという民主党のマニフェストが頭にきている自民党は、マニフェストはインチキであったと宣言することが先決だと主張して、民主党に執拗な要求をし続けて楽しんでいる。野党時代の民主党から執拗なイジワルを受けた自民党は、その仕返しに政権与党の責任がどんなに重いかを民主党に味わせるべく、本来の政策論議はそっちのけで政局ゲームに耽っている。
農業問題も然り、臨終寸前の日本農業の現状は皆知っているが、議員達は目先の農民票の温存が目的で、その根本的な解決策を考えず、TPP 反対を唱え続ける農政族たちは、その結果、子供や孫達に巨大は損失を及ぼす事をどうするつもりだろう。素人議員達が、ブランド米を作れとか、所得補償制度を拡充せよとか、勝手なプランを連発する前に、先ずは農地法を撤廃して、農業の諸制約を撤廃し、民間の知恵と工夫に任すのが唯一最大の解決策なのだ。農業へ企業からの出資率を50%未満に制限し、手足を縛ったまま、建前だけ応援する農業族議員や農水省のバカさ加減にあきれる次第である。
郵政問題も然りだろう。小泉さんが頑張った郵政民営化は大騒動の結果、郵便局の所員の態度が様変わりして、非常に親切になったことは誰も認めるところだ。民間会社なら当たり前のサービスだが、郵便局でもやっと始まった。民営化騒動がこんな好結果を生んでいるにも拘わらず、郵便局を再び国営に戻して国家公務員25万人を増やそうとする亀井静香党首以下の国民新党の連中は、自分達のアナクロニズムに何故気づかないのだろうか?
公明党も期待外れだ。与野党接近の議員勢力のなかで、キャスティングボートを握る立場だから、自党の政策を具体化する絶好の機会なのに、子供手当支給法案で協力を要請し修正に柔軟姿勢を示す民主党に対し、基本姿勢が気に食わないとか益々ハードルを高めて議論を避けている。何だか政治を恋の駆け引きと間違えているような感じだ。
色々考えると、何年経っても日本の政治は相変わらずコップに中の争いばかりで、激動の世界政治の中で日本だけは独自のガラパゴス現象を貪り続けているようだ。もし菅さんが行き詰まれば、安倍首相→福田首相→麻生首相→鳩山首相→菅首相→そして誰か新首相へと、毎年首相が交替する異常な現象になってしまう。米国、ロシア、中国だけでなく、世界からも相手にされなくなるだろう。京葉線地下ホームでの大男のイタズラを笑うのとはレベルが違う、本当に憂慮すべき大問題だと思うのだが。
殆どの乗客は上りエスカレーターに急ぎ、B4→B3→B2→B1と上がって行くが、10人余りはエレベーターに殺到して、一気にB1へ上がる。運よくエレベーターがB4ホームに待っていれば、すぐ乗り込むが、運悪く上階にいると1分近く待つことになる、何だかその日の運勢のようだ。
しかし最近、意地悪な中年男が現れて、殺到する客が直ぐには乗れないように工作し始めた。40代かと思われるその大男は、電車が到着する前に何処からか現れてエレベーターに近づき、中に入って上昇ボタンを押して外に出る。乗客が殺到する寸前にエレベーターのドアが閉まって上昇し始めると、男は満足した顔でその場を去る。何も知らない乗客はエレベーターが下りて来るのを1分半近く待たされる。殺到する乗客が運よく閉まる寸前のボタンにタッチできれば、ドアは再び開いて、乗客を乗せて上昇する。離れて見ていた男は悔しそうな顔付きで上がるエレベーターを見ながら、千葉県民は歩け!歩け!とつぶやく。翌朝この男はタイミングを早めてエレベーターが先に閉まるよう工夫する。そしてうまくゆくとにっこり微笑んでその場から去る。
何とも意地悪なイタズラだが、その大男は毎日工夫しながら如何に乗客を長く待たせるか努力している訳だ。イタズラは止めるよう男に声をかける勇気は、老体の私にはない。また毎日の通勤途上で他人とモメ始めると、通勤が面倒になりそうなのも厭だから見ているだけだ。まあ最悪でも10人に1分半足らずの時間ロスを生じるだけだから、見過ごしてもいいだろうと自分に言い聞かせている始末。
JRについては私もその昔、キセル乗車で捕まり差額を何百円か弁済したが、買ったばかりの半年定期券まで没収されて、痛かった覚えがある。多くの人も何か似た経験を持ち、スリルを楽しんだ記憶があるかも知れない。まあ退屈な日常生活に一服の清涼剤と言えなくもないが、こんな些細ないたずらとは違って、桁違いにスケールが大きい無駄やイタズラが、この社会には満ち溢れているように思う。
話が大きくなって恐縮だが、例えば沖縄基地問題。確かに普天間基地は危険だから早く移転する必要があり、偉い人達が10余年間に渡っていろいろ検討した移転先として、人口過疎な宜野湾市のキャンプシュワブの沖合に決めた。しかし今度は宜野湾市住民の半数が反対を唱え始めた。騒音や危険性は殆どないが、沖縄に米軍基地がある事自体が許せないのだそうだ。日本を守る負担を沖縄住民だけに押し付けるな!という。沖縄は地理的に、日本を守る最適な場所にあるには事実だが、日本は米軍駐留を沖縄だけに負担させていると言う。沖縄基地を九州や東海、東北や北陸に移転してはその意味が無くなるのは誰も知っている。かくして沖縄問題は大騒ぎを経て、未解決のままデッドロックに乗り上げ、普天間の危険性は半永久的に固定化されることになる。
確かに沖縄の米軍基地は危険性もあるが、この不景気の時代に多数の雇用を生み出しているのも事実だ。しかし反対住民はそのことには触れない。気候温暖な沖縄に比べて、北陸や東北の住民は豪雪に痛めつけられ苦しんでいることにも関心ない。都会の住民は雇用には恵まれているのは事実だが、関西の住民6400人が大地震で亡くなったのは人ごとだ。必ず来襲し数十万人の犠牲者が出ると予言されている東南海大地震の恐怖の最中にいる東京名古屋の大都市住民は、好んでそこに住む自己責任だと言う訳だ。温かい気候の土地で、政府の助成金を受けながら、時々反対を叫んでは、のんびり暮らす沖縄はそれで満足なのだろう。
国会議員も同じ穴のムジナだ。消滅寸前の社民党は、誰が日本を守るかを全く論じることなく、沖縄の基地撤廃を叫び続け、日本の周囲が中国海軍に取り囲まれつつある危険性には知らん顔だ。将来のエースと言われた辻本清美議員が脱党するのも当然だ。法人税切り下げ反対を叫んで、国内企業を痛めつけて海外に追い出し、若者の就業の機会を益々奪い去っていることを知らない訳はないだろうが、それには触れることなく企業イジメを叫び続けている。
年金と消費税問題はもっとひどい。一人1000万円近い高額な借金を孫の世代に押しつけて、暇を持て余しながら暮らしているシルバー世代でさえ、消費税率を上げて子供や孫に押し付けるのは変えなくてならないと自覚し始め、世論調査でも6割の国民が消費税率アップの必要性を認めているにも拘わらず、国会での具体案の討議はいつになっても始まらない。予算組替で18兆円の財源は簡単に出てくるという民主党のマニフェストが頭にきている自民党は、マニフェストはインチキであったと宣言することが先決だと主張して、民主党に執拗な要求をし続けて楽しんでいる。野党時代の民主党から執拗なイジワルを受けた自民党は、その仕返しに政権与党の責任がどんなに重いかを民主党に味わせるべく、本来の政策論議はそっちのけで政局ゲームに耽っている。
農業問題も然り、臨終寸前の日本農業の現状は皆知っているが、議員達は目先の農民票の温存が目的で、その根本的な解決策を考えず、TPP 反対を唱え続ける農政族たちは、その結果、子供や孫達に巨大は損失を及ぼす事をどうするつもりだろう。素人議員達が、ブランド米を作れとか、所得補償制度を拡充せよとか、勝手なプランを連発する前に、先ずは農地法を撤廃して、農業の諸制約を撤廃し、民間の知恵と工夫に任すのが唯一最大の解決策なのだ。農業へ企業からの出資率を50%未満に制限し、手足を縛ったまま、建前だけ応援する農業族議員や農水省のバカさ加減にあきれる次第である。
郵政問題も然りだろう。小泉さんが頑張った郵政民営化は大騒動の結果、郵便局の所員の態度が様変わりして、非常に親切になったことは誰も認めるところだ。民間会社なら当たり前のサービスだが、郵便局でもやっと始まった。民営化騒動がこんな好結果を生んでいるにも拘わらず、郵便局を再び国営に戻して国家公務員25万人を増やそうとする亀井静香党首以下の国民新党の連中は、自分達のアナクロニズムに何故気づかないのだろうか?
公明党も期待外れだ。与野党接近の議員勢力のなかで、キャスティングボートを握る立場だから、自党の政策を具体化する絶好の機会なのに、子供手当支給法案で協力を要請し修正に柔軟姿勢を示す民主党に対し、基本姿勢が気に食わないとか益々ハードルを高めて議論を避けている。何だか政治を恋の駆け引きと間違えているような感じだ。
色々考えると、何年経っても日本の政治は相変わらずコップに中の争いばかりで、激動の世界政治の中で日本だけは独自のガラパゴス現象を貪り続けているようだ。もし菅さんが行き詰まれば、安倍首相→福田首相→麻生首相→鳩山首相→菅首相→そして誰か新首相へと、毎年首相が交替する異常な現象になってしまう。米国、ロシア、中国だけでなく、世界からも相手にされなくなるだろう。京葉線地下ホームでの大男のイタズラを笑うのとはレベルが違う、本当に憂慮すべき大問題だと思うのだが。
2011年02月08日
110208 ,八百長相撲
相撲界が八百長で揺れている。朝青竜が横綱の時以来、八百長相撲が週刊誌で喧伝されていたが、力士の八百長は二人だけのごく心理的な出来ごとだから、なかなか証拠が挙がらなかった。しかし今回は警視庁が接収した携帯電話の記録から14人の名前が明らかになり、証拠が明確な春日錦、千代白鳳、恵那司は自白、否認を続けている清瀬海も明白な証拠で有罪と断定しされたが、他の10名は否認し続けているという。確かに自白が無ければ有力な物証が無い限り有罪の証明は難しい。八百長の起きる主な原因は、十両に上がると月給104万円、一歩陥落すると月給ゼロになり、その格差が大きすぎることが主因と言われているが、元横綱朝青竜や元大関千代大海などの大物力士も疑いが濃く、八百長に無縁なのは稀勢里や、鶴竜、豊真将、高見盛など少数の力士しかいないのかも知れない。
スポーツを自認する相撲の八百長は余り頂けないが、我々の回りには八百長じみた行為は結構沢山あり、完全に潔白な人生を歩んできたと言い切れる人は少ないだろう。50年近い大昔のことでとっくに時効だが、私も八百長を強いられた苦々しい経験がある。
工学部を卒業して尼崎の中堅企業に研究職として入社した時、私は一大決心して神戸の国立大学の経済学部(夜間)の工業政策科に再入学した。しかし上司のK課長は無茶苦茶な乱暴者で、部下を奴隷のように扱うことで有名だったので、技術系の私が経済学の勉強をするなど、決して認める訳がなく、従って上司に無断で夜間大学に通学し始めた。上司のK課長は退社後いつもマージャンに耽っており、その時間帯に私が夜間大学に行くのがどうして悪いのかという反感もあった。
しかし、官庁と違って民間企業の研究職は、終了時間が不規則で、毎夕の通学は色々困難があった。夜間大学の授業は1時限目はpm17:30―19:00, 2時限目はpm19:10―21:00の2回であった。普通の大学では出欠をとる際、欠席者に頼まれて代返(ダイヘン)することはあるが、これには殆ど金銭の授受を伴わず、文科系学部の講義では頻繁に行われていると思う。しかし文科系といえども神戸の夜間大学は出欠を厳重に確認した。具体的には、係員が小片の受講券を1枚づつ学生に手渡して回り、氏名を記入して提出する方式になっていた。1時限目は17:30の講義開始と同時に係員が入ってきて、受講券を1枚づづ手渡しながら回り、2時限目は授業が終る21:00の寸前に配って、講義の終了前に学生が退室しないよう工夫していた。
会社は夕方16:30が定刻の終業時間だったが、毎日2時間の残業は常識で、私はいつも18:30に退社し、尼崎から神戸まで片道1時間かけて六甲中腹の大学に19:30過ぎに到着、既に始まっている2時限目の講義の後半を受講して、終了寸前に配られる受講カードに名前を記入して帰宅する毎日だった。出席券だけを狙って登校する私を、級友達はいつも笑いながら見ていた。
この方式を半年続けると1日も休まず登校しても出欠は●○●○●○●○●○●○●○●○の8勝8敗となり、出席率50%が最低条件の期末試験をやっと受けることができる。しかし研究職の私は時折遅くまで仕事が延びて、1回講義を休むと●○●○●○●○●○●○●○●●の如く7勝9敗と2差の大ダメージとなり、苦労して通い続けた科目の期末試験の受験資格を失うことになるので、仕方なく八百長することになった次第。 何だか1敗の差で幕下に陥落する力士の気分にも近い。
登校できない時は、私は級友に電話して、彼の受講券を500円で買い、私の名前を記入して提出するよう頼んだ。月給15,000円時代の500円は、今日でいえば8,000円程度に相当する高額な金額であり、更に受講する科目は10数科目あったので、半期毎の受験資格を確保する為、15万円程度は支払ったかと思う。力士が1回の八百長に20万円支払ったという理屈も何だかうなずける気持だ。
しかし、無理を重ねて通学した3月の期末試験の時、試験は定刻のpm17:30から18:30までの1時間なので、私は定刻16:30に会社を飛び出し、17:30過ぎに神戸の試験会場に走り込む必要があったが、運悪く、連日16:30の定刻に退社して駅に急ぐ私をK課長が見つけ、飛んで来て私を引き留めた。
一刻を急ぐ私は寸秒も無駄にできず、理由を説明する余裕すらなく、理由は明日説明するからと、泣きながら押し留める上司を振りきって駅に急ぎ、15分遅れの入室限界寸前に試験会場に飛び込んだ苦しい思い出がある。
翌朝は噴怒の顔のK課長が待ち構えていた。そして技術屋に経済学は不必要、自分が勉強していない経済は部下にも不要、夜学を止めなければ通学不可能な美川工場(石川県)に転勤させる、と脅された。 結局私は期末試験が終了したら直ちに退学することを約束して、一応10余科目の期末試験だけば無事終え、退学届けを出す約束をさせられた。
しかし折角学習し始めた経済学には未練もあり、私的な時間に経済学の勉強だけは厳禁という不条理も頭にきていたので、退学届ではなく休学届(2年間有効)を出して、取り敢えず通学をやめた。しかし運よく2年後の春、K課長が東京に転勤となったので、再び復学して更に2年間通い続け、晴れて経済学士の資格も得た次第。
全く田舎者で乱暴なK課長の下で、苦渋に満ちた波乱の夜間通学ではあったが、それなりに青春を謳歌し、また実証データを分析して結論を導き出す経済学の初歩的な考え方も理解したので、夜間大学の卒業を契機に、この論法を活かして、当時社内に募集していた懸賞論文に応募して見事に最優秀賞を獲得したのは、少しばかり胸のすく気分でもあった。
しかし、地方工場勤務の無名の新人が裏付けあるデータに基づいた本格的な論文を提出したことに本社の幹部連中は衝撃を受けた。そして私に社長賞だけは取らせない対抗策を考え始めた。取り敢えず9月末日期限の懸賞論文の提出期限を年末まで延期して、先輩の某企画課員を代表者として、対抗論文を合同で作成した。しかしその内容は、当時の著名な米国経営学者P.ドラッガーの、新しい酒は新しい革袋に!を抜き書きして切り貼り合わせた、所謂コピー&ペイスト版だったのだが。このようなインチキ論文まで作っても本社の権威を維持したい魂胆を知り、青雲の志に燃える私には大きな落胆であり、今も心静かではないが、論旨から大きく外れるので、その後の経緯は省略する。
2011年02月03日
110203, サッカーアジア選手権
先週1/29のAsia-Champion-Shipの決勝戦、日本:オーストラリアはなかなか見応えがあった。真夜中から始まる試合は翌日寝不足になるので普段は見ないが、土曜だったので、早寝して夜中に起き出してみたのが正解だった。延長戦に突入し、結局終わったのは朝方4:00だったが、寝不足感もなく大変興奮した。間延びするプロ野球より、サッカーの方が緊迫感もあり面白いと思い始めた。
試合は、高さとパワーを誇るオーストラリアに対して、体力に劣る日本は防戦一方で 内容的には負け試合、オーストラリアのシュート20本に対して、日本は9本しか打てなかった。 しかしゴールキーパー川島の奇蹟的な奮闘で、豪雨のように降り注ぐ強烈なシュートを防ぎきった。そして延長2回目に、李忠成の華麗なボレーシュートが見事に決まり1:0で日本が辛勝した。 本当に興奮だった。韓国戦も内容的には接戦で日本が押され気味であったが、更にオーストラリア戦ははっきり負け試合だった。ゴールキーパー川島の働きで、なんとか持ち応え、延長戦終了間際の李忠成の豪快なシュートは、無失点記録を誇っていた敵の守備陣とゴールキーパーが微動もできない内に、相手ネットに鋭く突き刺さった。
李忠成は在日4世だそうで、現在はサンフレッチェ広島だ、長い期間、私の隣町の柏レイソルに所属していたが、なかなか出場機会に恵まれず、昨年広島に移って、今回ザッケロール監督の目に留まり、代表に選ばれた。
その間、韓国ナショナルチームにも招聘されて一時帰国していたが、日本育ちだと蔑視され、言葉の問題もあって殆ど活躍できず、やはり自分の祖国は日本以外にないと観念して、帰化して日本国籍を取得した。それでもなかなか出場機会に恵まれず、オーストラリア戦の終盤まで悶々としていたという。たまたまザッツ監督の全員起用の方針で延長戦終了の寸前に出場し、あの絵にかいたような美しいボレーシュートを放ったのには、世界中が驚いた。
彼に冷たかった韓国は一転して、李忠成が日本に優勝をプレゼントしたと言っているようだがこれには笑止千万。試合終了間際に起用された李忠成には、敵陣も注目していなかったことが幸いして、広いスペースを許され、長友からのクロスを豪快なボレーシュートで決めた、逆にもし彼が失敗していたら、その評価は地獄に落ちていただろう。
正月初めに13才の私の孫が挨拶に来た時、たまたま李忠成の移籍話がでたが、彼が移籍してもレイソルには殆ど影響ないんだよ!軽く笑い飛ばしていたが、今回会ったらどんな顔をするだろうか。
人が誰でも長い人生で、運命や時代の大波に影響され、自己の力量や信念が正当に評価されないという苦い経験を山ほどもっている。 例えば1988年、非難の大合嵐に耐えながら3%の消費税を導入した竹下登元首相や、それを5%にした橋本竜太郎元首相は国民から激しい非難を浴び、草の根運動の指導者、菅直人や市川房江から徹底的に攻撃された。しかし20年後に菅直人が首相となった途端、今度はその税率を10%に上げたいと言い始めた、竹下登や橋本竜太郎には信じられない思いだろう。
しかし菅首相の立場で言えば、毎年1兆円づつ増加し、遂に30兆円を突破した福祉厚生の財源は、消費税10%増税以外に対策が無いのだと懸命に説明しても、自民党は何故正当に議論に応じてくれないのかと嘆いている。しかしそれは野党時代の民主党が無駄の削減で18兆円程度の財源を軽く捻出できると豪語し、本格的な議論は避けて自民党をいじめ続けたのと全く同じことで、菅首相が嘆く道理はさらさらない。
似た例で、最近強制起訴された小沢元代表が、検察が無実と言明して起訴しなかった自分を、民間の検察審査会が何故、再び起訴するのかと憤激している。国民の生活第一で働いている自分を何故世間は理解してくれないのかと小沢元代表は本気で怒っいる。しかし実情は逆で、検察が探し求めた物的証拠は殆ど事前に小沢元代表が素早く破棄して証拠隠滅し、残ったのは生々しい状況証拠だけだというのが真実なのだ。死刑囚が無実を訴え続けると本気で無実を信じ込むというが、小沢元代表もその例に漏れず、自分の無実に酔って、国民の無理解を嘆いているのだろう。
卑近な例で恐縮だが、私の例では、昭和45年に初めて企画課長になった時、課員の鈴木一郎君と一緒に大門のPhillips石油に井上氏を訪問して、PPS樹脂を日本で初めてDICに導入したが、その後40年が経過して今日ではDICの唯一最大の成長製品に育っている。しかし大昔に誰がタネを蒔いたかは誰も知らん顔で、DICの歴史のなかに葬り去られてしまった。もしPPSが失敗に終わったら、誰が最初に導入したのかと犯人探しが始まっているのは間違いないのだが。
試合は、高さとパワーを誇るオーストラリアに対して、体力に劣る日本は防戦一方で 内容的には負け試合、オーストラリアのシュート20本に対して、日本は9本しか打てなかった。 しかしゴールキーパー川島の奇蹟的な奮闘で、豪雨のように降り注ぐ強烈なシュートを防ぎきった。そして延長2回目に、李忠成の華麗なボレーシュートが見事に決まり1:0で日本が辛勝した。 本当に興奮だった。韓国戦も内容的には接戦で日本が押され気味であったが、更にオーストラリア戦ははっきり負け試合だった。ゴールキーパー川島の働きで、なんとか持ち応え、延長戦終了間際の李忠成の豪快なシュートは、無失点記録を誇っていた敵の守備陣とゴールキーパーが微動もできない内に、相手ネットに鋭く突き刺さった。
李忠成は在日4世だそうで、現在はサンフレッチェ広島だ、長い期間、私の隣町の柏レイソルに所属していたが、なかなか出場機会に恵まれず、昨年広島に移って、今回ザッケロール監督の目に留まり、代表に選ばれた。
その間、韓国ナショナルチームにも招聘されて一時帰国していたが、日本育ちだと蔑視され、言葉の問題もあって殆ど活躍できず、やはり自分の祖国は日本以外にないと観念して、帰化して日本国籍を取得した。それでもなかなか出場機会に恵まれず、オーストラリア戦の終盤まで悶々としていたという。たまたまザッツ監督の全員起用の方針で延長戦終了の寸前に出場し、あの絵にかいたような美しいボレーシュートを放ったのには、世界中が驚いた。
彼に冷たかった韓国は一転して、李忠成が日本に優勝をプレゼントしたと言っているようだがこれには笑止千万。試合終了間際に起用された李忠成には、敵陣も注目していなかったことが幸いして、広いスペースを許され、長友からのクロスを豪快なボレーシュートで決めた、逆にもし彼が失敗していたら、その評価は地獄に落ちていただろう。
正月初めに13才の私の孫が挨拶に来た時、たまたま李忠成の移籍話がでたが、彼が移籍してもレイソルには殆ど影響ないんだよ!軽く笑い飛ばしていたが、今回会ったらどんな顔をするだろうか。
人が誰でも長い人生で、運命や時代の大波に影響され、自己の力量や信念が正当に評価されないという苦い経験を山ほどもっている。 例えば1988年、非難の大合嵐に耐えながら3%の消費税を導入した竹下登元首相や、それを5%にした橋本竜太郎元首相は国民から激しい非難を浴び、草の根運動の指導者、菅直人や市川房江から徹底的に攻撃された。しかし20年後に菅直人が首相となった途端、今度はその税率を10%に上げたいと言い始めた、竹下登や橋本竜太郎には信じられない思いだろう。
しかし菅首相の立場で言えば、毎年1兆円づつ増加し、遂に30兆円を突破した福祉厚生の財源は、消費税10%増税以外に対策が無いのだと懸命に説明しても、自民党は何故正当に議論に応じてくれないのかと嘆いている。しかしそれは野党時代の民主党が無駄の削減で18兆円程度の財源を軽く捻出できると豪語し、本格的な議論は避けて自民党をいじめ続けたのと全く同じことで、菅首相が嘆く道理はさらさらない。
似た例で、最近強制起訴された小沢元代表が、検察が無実と言明して起訴しなかった自分を、民間の検察審査会が何故、再び起訴するのかと憤激している。国民の生活第一で働いている自分を何故世間は理解してくれないのかと小沢元代表は本気で怒っいる。しかし実情は逆で、検察が探し求めた物的証拠は殆ど事前に小沢元代表が素早く破棄して証拠隠滅し、残ったのは生々しい状況証拠だけだというのが真実なのだ。死刑囚が無実を訴え続けると本気で無実を信じ込むというが、小沢元代表もその例に漏れず、自分の無実に酔って、国民の無理解を嘆いているのだろう。
卑近な例で恐縮だが、私の例では、昭和45年に初めて企画課長になった時、課員の鈴木一郎君と一緒に大門のPhillips石油に井上氏を訪問して、PPS樹脂を日本で初めてDICに導入したが、その後40年が経過して今日ではDICの唯一最大の成長製品に育っている。しかし大昔に誰がタネを蒔いたかは誰も知らん顔で、DICの歴史のなかに葬り去られてしまった。もしPPSが失敗に終わったら、誰が最初に導入したのかと犯人探しが始まっているのは間違いないのだが。