2012年04月
2012年04月26日
120426反原発の大合唱
予想される今夏の電力不足の対策として、政府は福井県大飯原発の再稼働を計画している。今夏は特に関西電力及び九州電力が15%の不足となり、需給ひっ迫の見込みで、その電力不足分を大飯原発で補う考えという。大飯原発は関西電力で最新鋭原発であり、まずはこれを再稼働させて西日本の電力不足を乗り切りきりたい計画。これに対して反原発陣営は猛反対している。福島原発事故の総括ができていない内に同様な事故を再度起こしたら、政府はどう対応するのか?と誰も答えられない難問奇問を提起して反発し、妥協点の余地がない論争になっている。
原発の暴走などあり得ないとバカな想定をして、海岸近くの低地に緊急電源を配置したが、津波の第一撃で完全にダウンしてしまった無防備な東京電力福島原発を反省して、関西電力は緊急電源など対策可能な応急手当は全て実施済み、後は日数がかかる建設工事などのみと説明するが、反対派は予定ではダメだと子供レベルで騒いでいる。大阪で圧倒的な人気の波に乗る橋下市長まで、勢力拡大のチャンスとばかり、声高く再稼働反対を叫び始めた。電力が不足すると冷暖房完備の世界に住む自分達が一番困ることはまでる知らん顔だ。冒険家は自分の名声を維持する為、事故死するまで冒険をエスカレートさせるが、橋下市長も同様で、庶民の支持を維持するために段々過激な評論家に変身し始めた。この辺りが現実離れした日本の政治家の限界かも知れない。
確かに反原発論者は、早急に再生可能ルギ−へ転換を図れと主張する。太陽光発電や太陽熱発電、風力発電、地熱発電、バイオ発電など、多種多様な再生可能エネルギーがマスコミで提唱されている。しかし本当に将来の日本を支えるエネルギー源として信頼に足りるものは何ひとつないのだ。一番進んでいる太陽光発電も、高コストで短い耐久性では、既存の電力に対抗できず、政府の補助政策が終了すると途端に、企業倒産や撤退が相継いでいるという。バイオエネルギーは最悪の選択であり、アフリカで膨大な人数が餓死しつつある現状を横目に、貴重なトウモロコシを食糧ではなくアルコールに変換して燃やしてしまうというと悪魔のエネルギーだ。火山国の日本では地熱発電は原発数基分に相当する潜在エネルギーがあるらしいが、公園法の制約や観光業者の反対もあり、なかなか開発が進まない。
コスト的に有望な風力は、風の弱い本州以南では効率が悪く騒音もあって反対が根強く、常時3m以上の強風が吹く北海道が適地だが、大消費地の関東に輸送すると大きなロスが生じる制約がある。かくして、各種の再生可能エネルギーのなかで信頼に足るエースはまだ不在なのだが、それは政府が決めることだと知らん顔で、街のおばちゃん達と一緒になって原発反対を叫び、連日テレビを賑わして楽しむ無責任な偽エリートばかりだ。
その結果、不安定な電力事情のまま夏を迎えて、電力不足や計画停電を恐れる民間企業はますます日本からの脱出を急ぎ、国内の生産活動を減少させ、結果として大卒や高校生の就職口が更に狭くなる。将来は脱原発を目指しても、当分の間は、日本は原発にも頼らざるをえないという結論を、誰も内心では知っているにも拘わらず、それを口にすると進歩派の看板に傷がつき、評論家を失業するのが怖くて、安泰な反原発の大合唱に連なっている。
確かに原発は大きな危険を内蔵していることを福島原発は証明した。高レベル廃棄物が安定化するまでに、人類進化の年月以上の気が遠くなる程の長い年月が必要であることも、我々を不安に陥れているのも事実だ。しかし電力が不足して、今日の社会生活が半身不随になるのを避ける為には、完璧ではないかも知れないが最大限の努力を尽くして、経済の血液である電力をなんとか確保しなければならないのも現実だ。
それは丁度、政府の消費税Up方針に反対して、借金を子孫達に押し付けて遊び呆けるシルバー連中と同じ図式だ。或いは戦後60年以上も経過したが依然として自立できず、永年巨額の沖縄財政援助を受け取りながらも、基地撤廃運動だけは叫び続ける沖縄住民とも似た構図だ。何故日本人はここまで無責任で勝手な国民になってしまったのだろうか?
2012年04月23日
120423昔の部下が死んだ
人は誰でも長い人生で他人と険悪な関係に陥ることがある。私も70年の生涯で仇敵関係になった仲間が数人いた。その中の一人T君が先日肝臓がんで亡くなった。私より5才若い部下だった。
T君は長い間米国ロスで駐在員をやっていた。堪能な英語力で長くロスに駐在し、売上成果はゼロで組織的な動きを嫌ったが、機敏に動き回るのが評判だった。彼も管理職の年齢になり、日本国内のどこかの組織に適当な部署を探したが、その独善的な性格を知る国内の各部門は嫌がり、復帰先がなかなか見つからなかった。
同じ頃、私が日本社長を務める日米合弁会社の米国会長から、Marketing Managerのスカウトを要請された。日本側親会社はMarketingの何たるか知らないまま、英語が堪能でポジションを探していたT君を私に押し付けてきた。私も嫌な人事だとは思ったが、社長からの要請で断り切れず受け入れることにしたが、直ぐに問題を起こし始めた。
最初の事件はT君が米国会長に就任挨拶に行った時、交際費で購入した超高級ウイスキーを手土産に米国を訪問して会長を激怒させた。貴重な会社資金を浪費するな!とサラリ-マン感覚のT君をオーナー会長は激しく叱責したのだった。
日本社長の私と彼との関係も平穏には進まなかった。最初は従順だった彼は、直ぐに社内スタッフをオルグし始めて会社の実権奪取に動いた。T君の標的がどの程度具体的であったかは不明だが、新興企業のサラリーマン社長は往々にしてその地位を狙われやすく、社長である私の了解なしに、交際費を使って社内接待を繰り返すのは、トップの私には非常に不愉快で、厳しく注意したが、長年会社の金を勝手に使う習性が身についたT君は、接待費の用途は自分の権限だと反発して、我々二人の関係は段々と険悪さを増していった。
極めつけはT君が部下の営業部員と深刻なトラブルに陥ったことだ。日本の医薬営業には昔の悪い慣習が残り、巷ではルノアール営業とも呼ばれて、営業マンは昼間の殆どの時間を喫茶店ルノアールで過ごし、夕方ドクターが診察から解放される短時間を狙って病院に訪問して短い立ち話しで、その日の業務を終えるという極めて非効率な営業だった。それがT君には気に入らず(私も好きではないが)、部下の営業部員のインチキ臭い活動報告の裏付けを取る行動に出て、営業マンから猛烈な反発を買い始め、遂に営業部員一同からボイコットをされてしまった。
多数の営業部員の出勤拒否にまで発展して会社の危機を感じた私は、親会社の社長にT君を引き取るよう要請した。黙って聞いていた親会社の社長は、そうか、やはり合わなかったか!と初めから危惧していたことを認めた。
幸い昔の彼の上司が社長を務める別の子会社V社が引き取り、色々経緯を経てV社の社長を継ぎ、社長→会長へと昇進して引退したが、社内に摩擦が起きていることは間接的に聞こえていた。しかし彼は煌びやかな会社生活を全うして、優雅な余生を送っているだろうと私は想像していたが、実は肝臓ガンを患って苦しんでいたのだった。そして70歳寸前で先日旅立ってしまった。
どこの世界にも上司と部下との軋轢はあり、企画開発が専門の私も上司との間に色々な摩擦があった。特に私の上司は部下の業績を横取りして、更に証拠隠滅のため部下を抹殺する悪質極まりない性格の持ち主であったので、私は徹底的に警戒した。しかし私は、他人や部下の成果を盗むことだけは絶対にしなかった、素直に担当者の業績を公表して、会社の内外にPRした。
人間はお互いに相互扶助の社会に住んでおり、その結果得られた成果も割合は異なっても必ず協力作業の結果である。一般に失敗事例の場合、誰が犯人かは直ぐに周囲が喧伝して結論を出すが、成功事例に関しては多くの関係者が自分こそ最大の貢献者だと何人も名乗り出るのが通例である。特に画期的な技術や製品の開発では、訴訟問題にまで発展することがしばしば起きることは医薬品や電子機器業界で頻発し、新聞やテレビに報道されている。
合弁会社の社長時代の私は、業績を担当者の成果をPRすることを基本方針として、技術開発表彰、営業成果表彰、スタッフ部門表彰と名目をつけては、毎回早い時期に表彰を繰り返した。退職して10余年が過ぎた今日でも、私の社長時代は、社内が活動的で面白かったと間接的に聞える旧社員達の声は、強制的な管理は避けて部下の自主性を最大限に尊重した結果であると私は確信している。業績を全て部下の成果に帰すことに私自身は少々違和感もあり疎外感もあったが、社内が活性化することは、結果的に大きな成果が生まれ、最終的には社長の評価にも結びつくものであり、活気に満ちた雰囲気作りとその維持に心掛けた。
管理と自主性は相性が悪く、往々にして管理職は自分の権限行使の誘惑に誘われるが、管理職には常に自制とのバランス感覚が不可欠だと思う。
T君は長い間米国ロスで駐在員をやっていた。堪能な英語力で長くロスに駐在し、売上成果はゼロで組織的な動きを嫌ったが、機敏に動き回るのが評判だった。彼も管理職の年齢になり、日本国内のどこかの組織に適当な部署を探したが、その独善的な性格を知る国内の各部門は嫌がり、復帰先がなかなか見つからなかった。
同じ頃、私が日本社長を務める日米合弁会社の米国会長から、Marketing Managerのスカウトを要請された。日本側親会社はMarketingの何たるか知らないまま、英語が堪能でポジションを探していたT君を私に押し付けてきた。私も嫌な人事だとは思ったが、社長からの要請で断り切れず受け入れることにしたが、直ぐに問題を起こし始めた。
最初の事件はT君が米国会長に就任挨拶に行った時、交際費で購入した超高級ウイスキーを手土産に米国を訪問して会長を激怒させた。貴重な会社資金を浪費するな!とサラリ-マン感覚のT君をオーナー会長は激しく叱責したのだった。
日本社長の私と彼との関係も平穏には進まなかった。最初は従順だった彼は、直ぐに社内スタッフをオルグし始めて会社の実権奪取に動いた。T君の標的がどの程度具体的であったかは不明だが、新興企業のサラリーマン社長は往々にしてその地位を狙われやすく、社長である私の了解なしに、交際費を使って社内接待を繰り返すのは、トップの私には非常に不愉快で、厳しく注意したが、長年会社の金を勝手に使う習性が身についたT君は、接待費の用途は自分の権限だと反発して、我々二人の関係は段々と険悪さを増していった。
極めつけはT君が部下の営業部員と深刻なトラブルに陥ったことだ。日本の医薬営業には昔の悪い慣習が残り、巷ではルノアール営業とも呼ばれて、営業マンは昼間の殆どの時間を喫茶店ルノアールで過ごし、夕方ドクターが診察から解放される短時間を狙って病院に訪問して短い立ち話しで、その日の業務を終えるという極めて非効率な営業だった。それがT君には気に入らず(私も好きではないが)、部下の営業部員のインチキ臭い活動報告の裏付けを取る行動に出て、営業マンから猛烈な反発を買い始め、遂に営業部員一同からボイコットをされてしまった。
多数の営業部員の出勤拒否にまで発展して会社の危機を感じた私は、親会社の社長にT君を引き取るよう要請した。黙って聞いていた親会社の社長は、そうか、やはり合わなかったか!と初めから危惧していたことを認めた。
幸い昔の彼の上司が社長を務める別の子会社V社が引き取り、色々経緯を経てV社の社長を継ぎ、社長→会長へと昇進して引退したが、社内に摩擦が起きていることは間接的に聞こえていた。しかし彼は煌びやかな会社生活を全うして、優雅な余生を送っているだろうと私は想像していたが、実は肝臓ガンを患って苦しんでいたのだった。そして70歳寸前で先日旅立ってしまった。
どこの世界にも上司と部下との軋轢はあり、企画開発が専門の私も上司との間に色々な摩擦があった。特に私の上司は部下の業績を横取りして、更に証拠隠滅のため部下を抹殺する悪質極まりない性格の持ち主であったので、私は徹底的に警戒した。しかし私は、他人や部下の成果を盗むことだけは絶対にしなかった、素直に担当者の業績を公表して、会社の内外にPRした。
人間はお互いに相互扶助の社会に住んでおり、その結果得られた成果も割合は異なっても必ず協力作業の結果である。一般に失敗事例の場合、誰が犯人かは直ぐに周囲が喧伝して結論を出すが、成功事例に関しては多くの関係者が自分こそ最大の貢献者だと何人も名乗り出るのが通例である。特に画期的な技術や製品の開発では、訴訟問題にまで発展することがしばしば起きることは医薬品や電子機器業界で頻発し、新聞やテレビに報道されている。
合弁会社の社長時代の私は、業績を担当者の成果をPRすることを基本方針として、技術開発表彰、営業成果表彰、スタッフ部門表彰と名目をつけては、毎回早い時期に表彰を繰り返した。退職して10余年が過ぎた今日でも、私の社長時代は、社内が活動的で面白かったと間接的に聞える旧社員達の声は、強制的な管理は避けて部下の自主性を最大限に尊重した結果であると私は確信している。業績を全て部下の成果に帰すことに私自身は少々違和感もあり疎外感もあったが、社内が活性化することは、結果的に大きな成果が生まれ、最終的には社長の評価にも結びつくものであり、活気に満ちた雰囲気作りとその維持に心掛けた。
管理と自主性は相性が悪く、往々にして管理職は自分の権限行使の誘惑に誘われるが、管理職には常に自制とのバランス感覚が不可欠だと思う。
2012年04月18日
120418,大学同期会
50余年前に卒業した大学の同期会があった。全員後期高齢者で昔の若々しさは殆ど消え失せて名実ともに老人になっている。総数40名のうち8名は既に鬼籍入り、元気な32名も九州ではメシが食えず、大半は関東圏に移り住み、その内20名が出席した。殆どは超有名企業のOBだが、さすがに年には勝てず健康に関する話題が多い。
同期生ピカ一のダンディー男A氏は、肺線維症で亡くなっていた。個人的に尊敬しているMa氏はアルツハイマーで不参加。親友の優しいSa氏は千葉在住だが、ガンで入退院を繰り替えしているという。 内幸町の超大手化学会社の理事を経て引退し、成城に居を構えるI氏は社交ダンスで暮らす優雅な身分だ。長身の英国紳士風だから女性群から声がかかり忙しいことだろう。同じく雄弁なHo氏は、脱原発論の軽薄さを嘆いていたが、執念を燃やしたプロジェクトの見込みが立たず、方向変換してダンスを習い始めたという。彼も素敵な容姿で直ぐに人気者になりそうだ。国会議員に執念を燃やし続けていたCha氏は、流石に高齢で諦め気味だが、話しの内容はレベルが高く、世界情勢や日本経済が好きだ。しかし学生時代にあれほど元気で優秀であったK氏やN氏は年齢とともに変化して静かな生活に落ち着いている。
いつも自分の臆病さを隠して尊大そうな格好をするMi君は、老体になってもその癖が抜けず、静かに黙っていたが、誰からも話しかけられず、面白い話もないまま早々に会場を後にした。自分を曝け出す勇気がなく、なんとか誤魔化して生きる人種はどこの世界にもおり、彼もその典型だが、多分来年からは懇親会には参加しないだろう。
殆どの同期生は優秀な技術者であり、大企業の歯車として組織の1部分を担当し働き続けて引退し、平穏なサラリーマン生活を終えている。退職すると社会から隔離されて、平凡な老人生活へ直行だ。しかし少しアドバイスや手助けがあれば、彼らは貴重な経験を生かして、再び社会に役立つ仕事を続けることが出来る知識と経験があるのに誠に残念だ。少なくとも何人かは、機会さえあれば自分の知識経験を社会に生かたい意欲を持っているに違いないのだが。
殆どの同期生は大学4年になると、就職担当の助教授に呼び出されて、希望の職種や会社を聞かれ就職先を決めたが、私は完全にシカトされたことを会場で披露すると、みんな驚いていた。期末試験結果をK教授に質して激怒を買った私は、就職指導を拒否され、会社を紹介してもらえなかったのだ。結局私は有名な大手企業ではなく、新規な中規模会社に入社して変化に富んだ生活を送ることになった。不器用な私だが、反骨精神だけは人一倍旺盛で、他人の目を気にせず、その場その時で自分が最善と思う道を突き進んだ。
60歳で定年退職を迎えた私は、自分で小さな機械会社を設立したが、直ぐに倒産するだろうと多くの同僚は静観していた。心配した田舎の長兄も、無理だから中止しろと電話してきた。私自身も、遠くない内に行き詰まりそうな予感があり、家屋敷を家内に生前贈与してスタートしたが、100%自己資本で何とか生き延びてきた。激動する社会のニッチマ-ケットを対象に、小さいが波乱が多い経営だった。何だか頑固に独立技術を守りながら伝統的な経営を続けるヨーロッパの地方都市の個人企業と似ているとも思うが、大企業で部分的な専門家として大過なく過ごす生活とは違い、世界中を渡り歩く職業になってしまったが、思いで深い人生でもある。
同期生ピカ一のダンディー男A氏は、肺線維症で亡くなっていた。個人的に尊敬しているMa氏はアルツハイマーで不参加。親友の優しいSa氏は千葉在住だが、ガンで入退院を繰り替えしているという。 内幸町の超大手化学会社の理事を経て引退し、成城に居を構えるI氏は社交ダンスで暮らす優雅な身分だ。長身の英国紳士風だから女性群から声がかかり忙しいことだろう。同じく雄弁なHo氏は、脱原発論の軽薄さを嘆いていたが、執念を燃やしたプロジェクトの見込みが立たず、方向変換してダンスを習い始めたという。彼も素敵な容姿で直ぐに人気者になりそうだ。国会議員に執念を燃やし続けていたCha氏は、流石に高齢で諦め気味だが、話しの内容はレベルが高く、世界情勢や日本経済が好きだ。しかし学生時代にあれほど元気で優秀であったK氏やN氏は年齢とともに変化して静かな生活に落ち着いている。
いつも自分の臆病さを隠して尊大そうな格好をするMi君は、老体になってもその癖が抜けず、静かに黙っていたが、誰からも話しかけられず、面白い話もないまま早々に会場を後にした。自分を曝け出す勇気がなく、なんとか誤魔化して生きる人種はどこの世界にもおり、彼もその典型だが、多分来年からは懇親会には参加しないだろう。
殆どの同期生は優秀な技術者であり、大企業の歯車として組織の1部分を担当し働き続けて引退し、平穏なサラリーマン生活を終えている。退職すると社会から隔離されて、平凡な老人生活へ直行だ。しかし少しアドバイスや手助けがあれば、彼らは貴重な経験を生かして、再び社会に役立つ仕事を続けることが出来る知識と経験があるのに誠に残念だ。少なくとも何人かは、機会さえあれば自分の知識経験を社会に生かたい意欲を持っているに違いないのだが。
殆どの同期生は大学4年になると、就職担当の助教授に呼び出されて、希望の職種や会社を聞かれ就職先を決めたが、私は完全にシカトされたことを会場で披露すると、みんな驚いていた。期末試験結果をK教授に質して激怒を買った私は、就職指導を拒否され、会社を紹介してもらえなかったのだ。結局私は有名な大手企業ではなく、新規な中規模会社に入社して変化に富んだ生活を送ることになった。不器用な私だが、反骨精神だけは人一倍旺盛で、他人の目を気にせず、その場その時で自分が最善と思う道を突き進んだ。
60歳で定年退職を迎えた私は、自分で小さな機械会社を設立したが、直ぐに倒産するだろうと多くの同僚は静観していた。心配した田舎の長兄も、無理だから中止しろと電話してきた。私自身も、遠くない内に行き詰まりそうな予感があり、家屋敷を家内に生前贈与してスタートしたが、100%自己資本で何とか生き延びてきた。激動する社会のニッチマ-ケットを対象に、小さいが波乱が多い経営だった。何だか頑固に独立技術を守りながら伝統的な経営を続けるヨーロッパの地方都市の個人企業と似ているとも思うが、大企業で部分的な専門家として大過なく過ごす生活とは違い、世界中を渡り歩く職業になってしまったが、思いで深い人生でもある。
2012年04月12日
120412 死刑と無期
先日ラジオ深夜放送で聞いた話だが、拘置所にいる重罪犯のなかで、無期囚と死刑囚とではその状況が極端に違うという。無期囚は概して達観して明るいが、死刑囚の殆どは精神に異常を来たしているという。自分が犯した罪とはいえ、死刑宣告を受けた者は、来るべき恐怖に耐えかねて日夜苦しみ、殆どが精神異常になるらしい。
これほど重圧を与える死刑制度については、殆どの西欧諸国で廃止になり、逆に中国では毎年数千人が死刑執行されているという。日本では担当の法務大臣の気分によって中断されたり執行されたりと、右往左往を繰り返している。死刑廃止論者は、国家がこれほど残酷な恐怖を国民に与えてはならないと主張し、維持論者は自分の子供が殺されたら意見が変わる筈、と反論する。凡人の私には軽々しく意見を言えそうにない難しいテーマだ。
例えば松本サリン事件で死刑宣告を受けた浅原彰晃は、裁判が始まって直ぐに精神の異常状態を示し始め、その真偽すらも議論になっているが、本当に異常になっているのかも知れない。同じく死刑宣告を受けた彼の信者達10余名も苦しみ始めていることだろう。同様に先般の光市母子殺害事件では、23歳の若妻を殺して強姦し、幼児も締め殺して死刑判決を受けた少年Aは、これから半世紀にわたる彼の長い人生の間には、必ず死刑を執行される日が来るだろうから、その日まで彼は想像を絶する苦しみの毎日となるだろう。
別の例では、死刑を求刑されている練炭殺人事件の判決が明日の予定だ。3人の中高年男を色仕掛けの練炭中毒で殺したという37歳の木嶋佳苗被告は、絶対に殺人を犯していないと無罪を主張し続けている。検事の質問に答える彼女の説明は余りにも作為に満ちているが、物的証拠が皆無であり、傍聴者はただ呆れて白けているという。確かに彼女の手で殺したのではないだろうが、状況証拠は明らかにCO2中毒殺人事件だ。なんとか彼女の魔手を逃れた4番目の男性も、今静かに思い返してみると、普段はあり得ない不可思議な事件が連続して起こり、自分も殺される寸前だったという。誰が考えても常識的には木嶋香苗の殺人事件であり、私も有罪判決だと思うが、物的証拠がない重罪事件であり、死刑か無期かの判断に、裁判員は苦悩し、裁判官も苦しい判断を迫られるだろう。
犯罪としては軽いが、小沢裁判についても判決官はその判断に苦悩しそうだ。小沢派が都内に土地購入した資金の出所が、ゼネコンからの裏金か、銀行融資か、或は小沢氏の個人資金かと、説明は転々と変わったが、その経緯を小沢氏が承知していたか、或いは秘書の独断判断かで論争が続き、遂に4/26に判決が出る予定だ。常識的には誰が考えても4億円もの巨額資金を秘書が独断で動かせる筈がなく、説明を2転3転させた小沢氏の意向があるに違いないが、秘書の自白調書は証拠として採用されなかった。検察側は落胆し小沢弁護団は大喜びだが、裁判官は悩んでいるに違いない。
確かに自白調書は強要に近い環境で作られたらしいが、国民から選ばれた国会議員のこれほど真黒に近い事件を、疑わしきは被告人の利益に、と形式論で逃げてよいだろうかと裁判官は悩むだろう。もし証拠不十分で無罪判決となれば、今度は国民に証拠隠滅の合法性を認識させてモラルハザードを招く可能性が大きく、マスコミから批判の嵐が巻き起こりそうだ。
これほど重圧を与える死刑制度については、殆どの西欧諸国で廃止になり、逆に中国では毎年数千人が死刑執行されているという。日本では担当の法務大臣の気分によって中断されたり執行されたりと、右往左往を繰り返している。死刑廃止論者は、国家がこれほど残酷な恐怖を国民に与えてはならないと主張し、維持論者は自分の子供が殺されたら意見が変わる筈、と反論する。凡人の私には軽々しく意見を言えそうにない難しいテーマだ。
例えば松本サリン事件で死刑宣告を受けた浅原彰晃は、裁判が始まって直ぐに精神の異常状態を示し始め、その真偽すらも議論になっているが、本当に異常になっているのかも知れない。同じく死刑宣告を受けた彼の信者達10余名も苦しみ始めていることだろう。同様に先般の光市母子殺害事件では、23歳の若妻を殺して強姦し、幼児も締め殺して死刑判決を受けた少年Aは、これから半世紀にわたる彼の長い人生の間には、必ず死刑を執行される日が来るだろうから、その日まで彼は想像を絶する苦しみの毎日となるだろう。
別の例では、死刑を求刑されている練炭殺人事件の判決が明日の予定だ。3人の中高年男を色仕掛けの練炭中毒で殺したという37歳の木嶋佳苗被告は、絶対に殺人を犯していないと無罪を主張し続けている。検事の質問に答える彼女の説明は余りにも作為に満ちているが、物的証拠が皆無であり、傍聴者はただ呆れて白けているという。確かに彼女の手で殺したのではないだろうが、状況証拠は明らかにCO2中毒殺人事件だ。なんとか彼女の魔手を逃れた4番目の男性も、今静かに思い返してみると、普段はあり得ない不可思議な事件が連続して起こり、自分も殺される寸前だったという。誰が考えても常識的には木嶋香苗の殺人事件であり、私も有罪判決だと思うが、物的証拠がない重罪事件であり、死刑か無期かの判断に、裁判員は苦悩し、裁判官も苦しい判断を迫られるだろう。
犯罪としては軽いが、小沢裁判についても判決官はその判断に苦悩しそうだ。小沢派が都内に土地購入した資金の出所が、ゼネコンからの裏金か、銀行融資か、或は小沢氏の個人資金かと、説明は転々と変わったが、その経緯を小沢氏が承知していたか、或いは秘書の独断判断かで論争が続き、遂に4/26に判決が出る予定だ。常識的には誰が考えても4億円もの巨額資金を秘書が独断で動かせる筈がなく、説明を2転3転させた小沢氏の意向があるに違いないが、秘書の自白調書は証拠として採用されなかった。検察側は落胆し小沢弁護団は大喜びだが、裁判官は悩んでいるに違いない。
確かに自白調書は強要に近い環境で作られたらしいが、国民から選ばれた国会議員のこれほど真黒に近い事件を、疑わしきは被告人の利益に、と形式論で逃げてよいだろうかと裁判官は悩むだろう。もし証拠不十分で無罪判決となれば、今度は国民に証拠隠滅の合法性を認識させてモラルハザードを招く可能性が大きく、マスコミから批判の嵐が巻き起こりそうだ。
2012年04月09日
120409北ミサイルはチャンス
今月中旬に北朝鮮が打ち上げるミサイルに対抗するため、陸上自衛隊が最新鋭のMDミサイル部隊を沖縄に配置させた。少し大げさだが私は賛成だ。大騒ぎし過ぎるという沖縄県民も一部にはいるが、仲井真知事も表面的には歓迎の意向。北朝鮮のミサイルがすぐ近くの領海に落下するフィリピン政府は一言も発言できない。弱小軍隊しか持たず20年前にスービック海軍基地から米軍を追い出したフィリピンは誰にも助けを求められない。眼前の南沙諸島や西沙諸島を中国海軍に蹂躙されて世界に恥を晒しているが、軍事力無しでは侮辱の甘受を強いられることを世界に示すサンプル例だ。
陸上自衛隊にとっては今回の北朝鮮ミサイルは絶好のチャンスといえる。信頼性を欠く北朝鮮ミサイルはどこに落ちるかわからないが、この千載一遇のチャンスを利用して、最新兵器で武装したMD部隊を沖縄近海の与那国島に50名、石垣島450名、宮古島200名、沖縄本島に200名と総勢1000名の実戦部隊を派遣することができた。ミサイル発射事件無しに、これだけの実戦部隊を中国との国境周辺に移動させることは戦闘中以外には不可能だった。直ぐに大クレイムが付いて、中国も対抗部隊を同海域に派遣するのは必定だったから。 今回は、名目的に北ミサイルへの備えであり、米国艦隊も近くに派遣されており、中国も表立ってクレイムできなかった。多分ミサイル事件が過ぎても自衛隊は派遣した部隊の一部を周辺に残すだろう。南西諸島の防衛力強化を打ち出した政府には、自衛隊を南西諸島に常駐させる格好のチャンスとなった。
非常識な行動を繰り返す超大国中国を隣人に抱えるわが国は悩みが多い。しかし何処へも引っ越せず、中国と仲良くする以外に選択の余地はない。毛沢東を起源する中国軍隊は、Civilian-Controlが効かず、政府とは独立して動く怖い存在であり、対抗できる軍事力無しではフィリピンの二の舞になり、尖閣諸島や石垣島などは直ぐに中国軍に占拠されてしまう危険性があるのだ。
しかし日本も、PACS3を主力とする限られたMD部隊だけでは中国に隣接する広範な西南諸島を守ることはできない。増強を続ける中国海軍から先島諸島、八重山諸島、尖閣諸島を守るには、対抗できる大規模な戦艦が必要だが、これ事実上不可能だ。しかし代わって潜水艦なら同じ目的を達成できると聞く。潜水艦は忍者的に動くテロ攻撃に適した船であり、潜水艦1隻から戦艦を守るには10倍の戦艦が必要だと言われるほど効率的に戦闘力を発揮する。このことは第二次大戦で証明されており、限られた数のドイツU2潜水艦が広い大西洋を蹂躙した歴史がある。陸上戦でいえば、安物の地雷が百倍の陸上部隊の侵攻を防げるのと同じことだ。 日本は最新技術をつぎ込んで、静寂無比で高度な隠蔽性をもつ潜水艦の建造を急ぐべきだ。北方4島と違って西南諸島は日本が実質的に占有しているのだから、この有利な状況は絶対に維持しなければならない。その結果、中国と仲良い隣国関係を維持できるようになろう。
北方領土問題も同じことだが、今度はロシアが実質的に占拠している。この状況を変えて4島を取り返すことは絶対に不可能だと知っているにも拘らず、売国奴と呼ばれるのが怖くて、みんな4島一括返還を叫び続けている。どんなに大声で叫んでも4島返還はあり得ず、空念仏に終わるのは誰も内心では承知している筈だ。結局外交交渉とは双方が何らかの妥協する以外に解決はあり得ないのだから。
国境交渉は相手が実力のない弱い指導者では話にならないが、幸いロシアは実力No.1のプーチン大統領が交渉相手だから、この時期を逃してはならない。ロシアだって拡大を続ける中国のCounter-Partnerとして日本とは良好な関係を築くことを願っており、更にシベリアやアラスカ地方の開発に日本の技術を活用したい気持ちで一杯なのだ。
私案だが、択捉島はロシア領土と認めて、歯舞色丹国後の3島を日本領としては如何だろうか? 2島論の歯舞色丹の無人島ばかりではダメだが、国後島は根室と知床の目と鼻の先であり、誰がみても日本領土だ。択捉島は北方4島の中心で面積も最大だが、これをロシアに譲渡する。 いくら実力あるプーチン大統領でも4島全てを日本に取られては面目がまる潰れだ。ロシア人も多く住む中心の択捉島はロシア領として認め、経済援助などの付帯条件をつけてメンツを立てれば、面積的には3割の歯舞色丹国後島を日本に渡すことで何とか収まるのではないだろうか。そして豊富な資源をもち、地理的に補完関係にあるロシアと早急に友好関係を築くべきだ。日本がモタモタし続けると、直ぐにもう一人の厄介な隣人の韓国が経済開発を乗っ取ってしまうだろう。
陸上自衛隊にとっては今回の北朝鮮ミサイルは絶好のチャンスといえる。信頼性を欠く北朝鮮ミサイルはどこに落ちるかわからないが、この千載一遇のチャンスを利用して、最新兵器で武装したMD部隊を沖縄近海の与那国島に50名、石垣島450名、宮古島200名、沖縄本島に200名と総勢1000名の実戦部隊を派遣することができた。ミサイル発射事件無しに、これだけの実戦部隊を中国との国境周辺に移動させることは戦闘中以外には不可能だった。直ぐに大クレイムが付いて、中国も対抗部隊を同海域に派遣するのは必定だったから。 今回は、名目的に北ミサイルへの備えであり、米国艦隊も近くに派遣されており、中国も表立ってクレイムできなかった。多分ミサイル事件が過ぎても自衛隊は派遣した部隊の一部を周辺に残すだろう。南西諸島の防衛力強化を打ち出した政府には、自衛隊を南西諸島に常駐させる格好のチャンスとなった。
非常識な行動を繰り返す超大国中国を隣人に抱えるわが国は悩みが多い。しかし何処へも引っ越せず、中国と仲良くする以外に選択の余地はない。毛沢東を起源する中国軍隊は、Civilian-Controlが効かず、政府とは独立して動く怖い存在であり、対抗できる軍事力無しではフィリピンの二の舞になり、尖閣諸島や石垣島などは直ぐに中国軍に占拠されてしまう危険性があるのだ。
しかし日本も、PACS3を主力とする限られたMD部隊だけでは中国に隣接する広範な西南諸島を守ることはできない。増強を続ける中国海軍から先島諸島、八重山諸島、尖閣諸島を守るには、対抗できる大規模な戦艦が必要だが、これ事実上不可能だ。しかし代わって潜水艦なら同じ目的を達成できると聞く。潜水艦は忍者的に動くテロ攻撃に適した船であり、潜水艦1隻から戦艦を守るには10倍の戦艦が必要だと言われるほど効率的に戦闘力を発揮する。このことは第二次大戦で証明されており、限られた数のドイツU2潜水艦が広い大西洋を蹂躙した歴史がある。陸上戦でいえば、安物の地雷が百倍の陸上部隊の侵攻を防げるのと同じことだ。 日本は最新技術をつぎ込んで、静寂無比で高度な隠蔽性をもつ潜水艦の建造を急ぐべきだ。北方4島と違って西南諸島は日本が実質的に占有しているのだから、この有利な状況は絶対に維持しなければならない。その結果、中国と仲良い隣国関係を維持できるようになろう。
北方領土問題も同じことだが、今度はロシアが実質的に占拠している。この状況を変えて4島を取り返すことは絶対に不可能だと知っているにも拘らず、売国奴と呼ばれるのが怖くて、みんな4島一括返還を叫び続けている。どんなに大声で叫んでも4島返還はあり得ず、空念仏に終わるのは誰も内心では承知している筈だ。結局外交交渉とは双方が何らかの妥協する以外に解決はあり得ないのだから。
国境交渉は相手が実力のない弱い指導者では話にならないが、幸いロシアは実力No.1のプーチン大統領が交渉相手だから、この時期を逃してはならない。ロシアだって拡大を続ける中国のCounter-Partnerとして日本とは良好な関係を築くことを願っており、更にシベリアやアラスカ地方の開発に日本の技術を活用したい気持ちで一杯なのだ。
私案だが、択捉島はロシア領土と認めて、歯舞色丹国後の3島を日本領としては如何だろうか? 2島論の歯舞色丹の無人島ばかりではダメだが、国後島は根室と知床の目と鼻の先であり、誰がみても日本領土だ。択捉島は北方4島の中心で面積も最大だが、これをロシアに譲渡する。 いくら実力あるプーチン大統領でも4島全てを日本に取られては面目がまる潰れだ。ロシア人も多く住む中心の択捉島はロシア領として認め、経済援助などの付帯条件をつけてメンツを立てれば、面積的には3割の歯舞色丹国後島を日本に渡すことで何とか収まるのではないだろうか。そして豊富な資源をもち、地理的に補完関係にあるロシアと早急に友好関係を築くべきだ。日本がモタモタし続けると、直ぐにもう一人の厄介な隣人の韓国が経済開発を乗っ取ってしまうだろう。
2012年04月04日
120404,転職の誘惑
先日のテレビ報道によると、新入社員の多くは頻繁に転職し、高卒は3年以内に2/3が、大卒は1/2が転職するという。驚くほど高い数値だ。こんなに就職難の時代に正社員を辞めるなんて何とも勿体ない!と就活に苦闘中の現役学生は嘆く。何処でもいいから兎に角正社員を見つけたい学生達には、正社員の椅子を放り出すなんて信じられないのだろう。
私の場合、工学部の同僚が次々と超一流会社に内定するのを見ながら、教授と仲違いした私は日本ライヒホールトという尼崎の中堅の合弁企業に入ったが、学生時代から工学と経済学の両方を勉強したい願望を持ち、入社2年後に、大学に手紙を出して、経済学部に学士入学したいので卒業証明書を欲しいと頼んだ処、日本ライヒホールドは初めての会社だから、簡単に退職されては困る、と拒否された。
仕方なく、では夜間大学にすると連絡すると、書類は大学に直送しますとの返事だった。結局、神戸大学経済学部夜間に学士入学したが、今度は会社の直属上司から意地悪され続けたが、無事に経済学部も卒業して、何だか社会を見る目が広まった感じがした。
その後10年が経過して、業務上知り合ったヤクルト本社の某役員からスカウトの声がかかった。ヤクルトは乳酸飲料、化粧品、医薬品など幅広い商品群で気持ちは傾いたが、同社はフランチャイズ企業の集合体で、社内の派閥抗争が激しいと知って断念した。
しかし更に20年後、脂も乗って本社企画部長を担当していた時、髄膜腫を病んで慶応病院で脳外科手術を受けた。病は治癒したが、脳を患った企画部長と話題になり、悪質な言葉も聞こえてきた。既に定年迄の凡その道筋も見え始めた頃で、このまま平穏無事なサラリーマン生活を終えるより、見知らぬ世界を経験したいと思い始め、医薬品会社を米国と合弁で設立して私が社長としてSpin-Outした。業務命令ではなく自分の意思だから失敗したら100%責任を追及されると覚悟はしたが、このSpin-Outは私の人生を桁違いに豊かにしてくれたと深く感謝している。欧米では転職でCarrier-Upすることにより自分の価値を段々と高めると聞くが、私も波乱万丈の新しい世界を経験できた。
今度は合弁会社の社長として、私は数十名の経験者をスカウトし、彼らの豊富な実務経験には大いに助けられたが、なかには医薬品業界特有の悪質な営業マンもいて、当社に入社後もその悪業を重ねて、遂に私がクビにした人物も数人いた。欧米と違ってわが国では転職を重ねる理由は、職場に不適応なケースが多く、キャリアーUp目的とは必ずしも言い切れない。
いま就活中の若者は、会社概要を聞かされた程度では、入社後の仕事の内容は殆ど理解できず、入社して担当した業種が想像とは違い過ぎて満足できないケースがあると思う。更に実力不足や不慣れもあり、転職の誘惑に駆られることは誰にでもあるだろう。しかし今日のビジネスは格段に厳しくなり、中途半端な気持ちで転職すると、不幸な結果に終わる。特に中年以降の転職は、失敗すると再起は極めて困難になり、仕事も家庭も失ってホームレスに転落する可能性も大きい。やはりインターンシップ等である程度実務を経験しないと、仕事の内容はなかなか理解できないだろう。
更に業務内容とは別に、上司との関係の良し悪しが決定的に大きな要因となる。上司との関係が良ければ、少々の苦労には耐えられるが、相性が悪いと、やる気に燃えていた気持ちも簡単に萎えてしまい、我慢の限界に達する。私は10人近い上役に仕えたが、性格的に器用でなく、厳しい関係に陥り易く、心を許せた直属上司はごく少数だった。厳しい環境に陥ると、今度はそれが大きな材料となって心が奮い立ち、大きな推進力にもなった。しかし私は直属上司を越えた社長との関係が良好で厚遇を受け続けたが、そのことが更に直属上司を追いつめ、厳しい関係を深める結果にもなった。
転職の誘惑に悩む諸君に役立つアドバイスは少ないが、間違いなく言えるのは、性格的に明朗闊達で素直なことが重要だ。反対に暗い性格は多くの職場でマイナスに働き、何倍もの努力が求められる。余程の自信がなければ、中途半端な気持ちで転職すると、劣悪な状況に追いやられるので、よほど我慢の限界を越えた時を除いては、転職は避けた方がベーターだろう