2018年12月
2018年12月25日
181225 過酷なスポーツ選手
全日本女子フィギュアでは、新人の坂本花織(18)が逆転して優勝し、トリプルアクセルの紀平梨花(16)は2位、4連覇を狙った本命の宮原知子(20)は3位に終わった。20才の若さで中学生,高校生選手に追撃される宮原は本当に辛いことだろう。ロシアでも世界チャンピオンのメドベ-ジェワ(19)や平昌オリンピック金メダリストのザギトワ(16)を蹴落として、14才の新人選手が4回転ジャンプを成功させて1位と2位を占めたという。全く目も眩むような若手ライバルの出現は、スポーツ世界の厳しさを如実に示している。
卓球の伊藤美馬(16)も11/4の卓球ワールドツア-スエーデン大会で、世界7位の劉詩文を撃破、準決勝では世界2位でリオ五輪女王の丁寧を叩きのめして放心状態にさせた。決勝では世界No.1の朱雨玲に1ゲ-ムも与えない完勝で、世界を席巻する中国軍団は大魔王が登場したと震え上がった。チョ-レイと大声で絶叫する張本選手に反感を感じる人もいるだろうが、中国勢を相手に一歩も引かない若者の雄たけびは従来の日本選手になかった勇姿だ。華やかなスポーツ選手も、頂上を極めると直ぐに若手に追撃され始める。多くのスポーツは20代後半から30才になると、新人選手の追撃を受けて屈辱を味わう羽目になる。
先場所で優勝して関脇に昇格した貴景勝は正月場所も再び優勝を狙うと豪語するが、白鳳が復調すれば厳しい場所になるだろう。問題は理事会から最期通告を受けた稀勢の里だ。彼は190キロ近い過体重を大幅に減量して白鳳(160kg)並みに下げないと俊敏な若手力士には敵わないが、体重を武器とする稀勢の里は簡単には減量に踏み切れない。当人は冬巡業を全休中だが引退する可能性も大きい。最近の大相撲は世代交代が進み、仮に稀勢の里が土俵を去っても心配はではなくなった。
スポーツ界では殆どの選手は優秀な成績を残せないまま敗北感に苛まされながら引退する、しかし彼らには新しい世界の可能性も残されている。大相撲では三役にもならなかった舞の海は、引退後に解説者として実績を残しつつある。マラソンではオリンピック金メダルの高橋尚子に比べて、目ぼしい実績を残せないまま引退した増田明美は、今では大阪芸大教授となり、マラソン駅伝の解説者として第一人者になっている。彼女は事前に選手達の練習状況やエピソードを集めて、実況の合間に挿入してレースを内容豊かにしてくれる解説者に成長した。
フィギュアスケートで世界から愛された浅田真央に比べて、殆ど実績を残せなかった八木沼純子は、歯切れよい解説者として地位を確立。実績を残した高橋大輔に比べて表彰台には手が届かなかった織田信成は、歯切れ良い解説者に成長しつつある。現役時代に実績を残せなかった選手も、引退後の人生は長く、落胆せずに努力すれば、新しい世界が開けてくることは、厳しいスポーツ選手達にも希望を与えてくれる筈だ。
卓球の伊藤美馬(16)も11/4の卓球ワールドツア-スエーデン大会で、世界7位の劉詩文を撃破、準決勝では世界2位でリオ五輪女王の丁寧を叩きのめして放心状態にさせた。決勝では世界No.1の朱雨玲に1ゲ-ムも与えない完勝で、世界を席巻する中国軍団は大魔王が登場したと震え上がった。チョ-レイと大声で絶叫する張本選手に反感を感じる人もいるだろうが、中国勢を相手に一歩も引かない若者の雄たけびは従来の日本選手になかった勇姿だ。華やかなスポーツ選手も、頂上を極めると直ぐに若手に追撃され始める。多くのスポーツは20代後半から30才になると、新人選手の追撃を受けて屈辱を味わう羽目になる。
先場所で優勝して関脇に昇格した貴景勝は正月場所も再び優勝を狙うと豪語するが、白鳳が復調すれば厳しい場所になるだろう。問題は理事会から最期通告を受けた稀勢の里だ。彼は190キロ近い過体重を大幅に減量して白鳳(160kg)並みに下げないと俊敏な若手力士には敵わないが、体重を武器とする稀勢の里は簡単には減量に踏み切れない。当人は冬巡業を全休中だが引退する可能性も大きい。最近の大相撲は世代交代が進み、仮に稀勢の里が土俵を去っても心配はではなくなった。
スポーツ界では殆どの選手は優秀な成績を残せないまま敗北感に苛まされながら引退する、しかし彼らには新しい世界の可能性も残されている。大相撲では三役にもならなかった舞の海は、引退後に解説者として実績を残しつつある。マラソンではオリンピック金メダルの高橋尚子に比べて、目ぼしい実績を残せないまま引退した増田明美は、今では大阪芸大教授となり、マラソン駅伝の解説者として第一人者になっている。彼女は事前に選手達の練習状況やエピソードを集めて、実況の合間に挿入してレースを内容豊かにしてくれる解説者に成長した。
フィギュアスケートで世界から愛された浅田真央に比べて、殆ど実績を残せなかった八木沼純子は、歯切れよい解説者として地位を確立。実績を残した高橋大輔に比べて表彰台には手が届かなかった織田信成は、歯切れ良い解説者に成長しつつある。現役時代に実績を残せなかった選手も、引退後の人生は長く、落胆せずに努力すれば、新しい世界が開けてくることは、厳しいスポーツ選手達にも希望を与えてくれる筈だ。
2018年12月18日
181218 地方都市の将来
私は山口県の山村から出て既に半世紀以上経つが、友人達の多くは田舎に留まっている。しかし田舎には仕事がなく生活できないといつもぼやく。子供達は都会を目指して去り、時折田舎に帰ってくるが、孫達はお年玉狙いを除いては殆んど顔を出さない。親が亡くなるともう誰も帰ってこなくなる。これからは都会以外に、子供や孫達が活躍する場はないのだろうか。
ある新聞に、国内の諸都市の10階建以上の昨年度の着工件数が床面積の順番に載っていた。東京が615件と圧倒的に多く、続いて大阪320件. 横浜65件, 名古屋152件, 福岡116件, 広島74、熊本41、札幌48 千葉13、神戸42 北九州37、仙台20の順番だ。横浜や千葉の件数が少ないのは建物の床面積が大きいからだが、この順番は各都市の魅力度の指標ではないかと私は思う、ダントツ東京は超高層ビルが圧倒的に林立し、建物の総床面積も格段に大きい。横浜、福岡の活況も目立ち、続いて広島、熊本、札幌、北九州の建築が盛んだが、仙台が意外に少ないのは少々気になる。杜に囲まれた落ち着いた街で東北地方の中核都市として欠かせない存在だが、大震災の影響を引きづっているのだろうか。
大学生の東京集中を避ける為、都内23区の学生数を制限してこれ以上の学生が都心に集中しないよう政府が提案して、東京都から猛反発を食っている。文系学生の立場からは、情報が集中する東京を去るのは死活問題であり、都内の大学に進まないと就活に大苦労する不安がある。理系の私から言えば地方でも就活に大きなハンディーはなく、逆に東京は直下型大震災で逃げ場が無い恐怖の都市とも思うが、就活で頭が一杯の文系学生は、そんな悠長なことを言ってはおられないのだろう。地方の国立大学をアンブレラ方式で連合して、地方国立大学連合法人に編成換えするアイデアも文系学生には便利かもしれない。大学の絶対数が減れば、企業側からもより積極的に地方大学連合に求人活動を活発化するだろうから。
私の感想を言えば、人口1,000万人の東京に次ぐ400万人の横浜は素晴らしい街で、住民層の厚さはピカ一だ。例えばシルバー人材センターに頼むとどのように特殊な知識経験をもつ高級人材でも横浜は紹介してくれた。しかし横浜居住者は、坂道が多くUp-Downの激しい街だと言う。大阪は金融も情報も東京に奪われてじり貧状態に苦しんでいるが、万博誘致に成功し、カジノも是非誘致して昔の勢いを取り戻そうと必死になっている。名古屋は世界のトヨタを中核に頑張っているが、もし電気自動車への転換に失敗すると、産業構造が壊滅して倒産企業が続出する大変な事態も予想される、東京からリニア1時間の地方都市に陥落しないよう創意が必要だろう。
福岡は私が戸惑いの青春時代を過ごした街だが、着工件数は116件で結構頑張っており九州地区の中核だが、私は大学卒業後の50年間に一度も訪れたことが無い 街でもある。熊本市41件と北九州市37件が予想外にマンション建設が盛んなのには驚かされる。
ある新聞に、国内の諸都市の10階建以上の昨年度の着工件数が床面積の順番に載っていた。東京が615件と圧倒的に多く、続いて大阪320件. 横浜65件, 名古屋152件, 福岡116件, 広島74、熊本41、札幌48 千葉13、神戸42 北九州37、仙台20の順番だ。横浜や千葉の件数が少ないのは建物の床面積が大きいからだが、この順番は各都市の魅力度の指標ではないかと私は思う、ダントツ東京は超高層ビルが圧倒的に林立し、建物の総床面積も格段に大きい。横浜、福岡の活況も目立ち、続いて広島、熊本、札幌、北九州の建築が盛んだが、仙台が意外に少ないのは少々気になる。杜に囲まれた落ち着いた街で東北地方の中核都市として欠かせない存在だが、大震災の影響を引きづっているのだろうか。
大学生の東京集中を避ける為、都内23区の学生数を制限してこれ以上の学生が都心に集中しないよう政府が提案して、東京都から猛反発を食っている。文系学生の立場からは、情報が集中する東京を去るのは死活問題であり、都内の大学に進まないと就活に大苦労する不安がある。理系の私から言えば地方でも就活に大きなハンディーはなく、逆に東京は直下型大震災で逃げ場が無い恐怖の都市とも思うが、就活で頭が一杯の文系学生は、そんな悠長なことを言ってはおられないのだろう。地方の国立大学をアンブレラ方式で連合して、地方国立大学連合法人に編成換えするアイデアも文系学生には便利かもしれない。大学の絶対数が減れば、企業側からもより積極的に地方大学連合に求人活動を活発化するだろうから。
私の感想を言えば、人口1,000万人の東京に次ぐ400万人の横浜は素晴らしい街で、住民層の厚さはピカ一だ。例えばシルバー人材センターに頼むとどのように特殊な知識経験をもつ高級人材でも横浜は紹介してくれた。しかし横浜居住者は、坂道が多くUp-Downの激しい街だと言う。大阪は金融も情報も東京に奪われてじり貧状態に苦しんでいるが、万博誘致に成功し、カジノも是非誘致して昔の勢いを取り戻そうと必死になっている。名古屋は世界のトヨタを中核に頑張っているが、もし電気自動車への転換に失敗すると、産業構造が壊滅して倒産企業が続出する大変な事態も予想される、東京からリニア1時間の地方都市に陥落しないよう創意が必要だろう。
福岡は私が戸惑いの青春時代を過ごした街だが、着工件数は116件で結構頑張っており九州地区の中核だが、私は大学卒業後の50年間に一度も訪れたことが無い 街でもある。熊本市41件と北九州市37件が予想外にマンション建設が盛んなのには驚かされる。
2018年12月14日
181214 年俸5000万が不満
先月9/25に発足したばかりの産業革新投資機構の役員が総辞職した。高額な報酬の条件を引き下げられたので約束が違うと怒ったらしい。
以前の産業革新機構が、ジャパンディスプレイ、ルネサスエレクトロニクス等で成果を出せなかったので、衣替えして産業革新投資機構として再出発したのだが。衣替えの主旨は、経産省の管理から解放されて大胆なリスクを取りながら有望な新事業を投資育成することだったが、社長報酬5,500万円+α (合計1億円迄)という前提が高額すぎると経産省から反対されて怒ったらしい。世耕経産相は、国の資金を使う以上はそれなりの相場があり、最大1億円とは高すぎるので修正したと説明する。辞職した機構社長の田中正明氏は、我々は1円でも働くつもりだったが、早々に報酬の約束を破られて、経産省との信頼関係が崩壊した?と反論する。更に認可制の子ファンドに下に、自由裁量の孫ファンド案を提案していたが、自由裁量はやりたい放題になるので全て認可制に戻す修正にも嫌気を差したようだ。
難しい問題だが、私見を言えば、経産省の固い管理下での運営は再び失敗するに決まっているだろう。やはり孫ファンド程度は自由にしないと激変の時代に乗り遅れてしまう。報酬額については、田中社長が1円でもやる気だったと記者会見で大見栄を切ったのには違和感があった。年俸5,000万円では何故不足なのか。5,000万円でも他人のお金で思う存分に仕事が出来るのならよほど面白い筈だと私は思うのだが、原資は血税でも1億円の支払いを約束して欲しかったのだろうか。
液晶で世界に名前を売ったシャープが経営不振に陥り、台湾ホンハイに買収されて、3年で見事にV字回復したことは良く知られている。シャープは創業者の早川徳治、技術担当佐々木専務が去って、4K8K時代になると途端に決断が鈍り始めた。逆にワンマンのホンハイ戴正呉社長は決断が早く、シャープを買い取ると短年月でV字回復を成し遂げた。同じ時期に、産業革新機構はジャパンデスプレイを手掛けていたが、何年経っても泥沼から抜けきれず経営力と決断力の差を見せつけられた現実を知ると、1憶円先払いには簡単には約束できない。
20年前の日産は、川又克二会長、石原俊社長、塩路組合長の全盛時代で 40名近い役員の半数は労組出身者、OBは部品メーカーに次々移籍して、企業体質が肥大になりコスト過大に陥って競争力を失ったが、ルノーのゴーン社長が徹底的にリストラしてコストダウンを図り見事に復活した。ただゴーン政権が20年もの長期に及び、日産を私物化して蓄財に走り始めたが、茶坊主役員は誰も止められなかった。有能な経営者でも長期のワンマン体制になると、精神的に腐敗して競争心を喪失することは、小さな零細企業の私でも実感している。
来年には、産業革新投資機構も衣替えして再出発するだろうが、年俸1億円で失敗して泣くよりも、5,000万円で思いっきり辣腕を振う方が余程面白い筈で、新メンバーに期待したいと思う。
2018年12月07日
181207 年金じじい
年金暮らしの我儘な高齢者を、青森市議会の議員が年金ジジイと呼んで非難されている。私も同類の高齢者だが、年金ジジイとはよく言い当てたものだと苦笑させられる。何もすることなく、年金を食い潰しながら閑過ぎて苦労している年寄連中は、毎日が苦闘の若者には目障りなのは確かだろう。
私の自宅周辺にも銀行マンOBが多い、彼らは副頭取とか、専務、常務、理事、支店長、監査役など結構な身分ばかりで、高額の退職金を貰って退職はしたが、その後何もすることがなく、長い余生を悶々と過ごしている姿は、年金ジジイと言われても仕方ない。現役時代の彼らは肩で風を切って都心を闊歩したが、銀行不況と同時に続々と引退した。しかし地元になかなか溶け込めず、庭の手入れや、狭い農地を借りて家庭菜園したり、絵画や写真の趣味、更にはペットの散歩、時折はゴルフや海外旅行で過ごするが、長い余生を生き生きと過ごすのはなかなか難しい。閑過ぎるなら、登下校する学童の見回りとか、シルバー人材センターの公園清掃など肉体仕事は色々ある筈だが、そのような恥ずかしい仕事はプライドが邪魔になってできない。
彼らの現役時代に長い老後のことを考えなかったのだろうか。関連会社に再就職できる筈だと思っていたのかも知れないが、高度成長が終了すると、給料と自尊心だけ一流だが、見当違いのアドバイスしかできない役立たずの銀行OBを受け入れる会社は無くなってしまった。
再就職が無理なら、自分が新しい仕事を立ち上げる手もあるが、それはリククが恐ろしく、大恥をかき、虎の子の退職金を失なう危険があり出来ない。得意先を指導する銀行マンのうすっぺらな知識では実務の裏付けが無く、何か新しく起業する気力あるOBは近隣には一人もいない。少しばかり知恵ある人は老後に備えて、企業労務士、中小企業診断士、行政書士、司法書士などの資格も取得しているが、ペーパー資格は何の役にも立たない。彼らは他人の仕事に便乗して料金稼ぎをする連中で、口達者だが実務経験や説得力がない。やはり年配者が本気にならないと若者から年金ジジイと軽蔑されるのは仕方ない。
技術屋の私は世間常識が乏しくゴルフも下手で、長い余生は何か起業をする以外に過ごせないと覚悟して、現役時代に関係した臨床検査業界が困っている臨床機器の保全修理業を考えた。友人知人達は冷笑し乞食になるぞと脅したが、家内が反対しなかったのには今でも本当に感謝している。
誰も共同出資する友人は無かったが、親会社のM副社長が出資を申し出てくれたのには本当に驚愕した。退職金を沢山貰ったのかも知れないが、素人起業に500万円の出資は本当に感謝感激で、絶対に迷惑をかけられないと思った。自己資金500万円と併せて1000万円でスタートした。しかし当初はやはり仕事が無く本当に後悔の日々だった。
必死になってユーザーを探し回った。そしてやっと某中堅臨床検査センターH社が、米国BC社製血球カウンターのオーハーホールができるかと反応があった。新品は@600万円だが 1/10の@60万円でオーバーホールできれば15台を発注するとのこと。実機を見学すると、患者血液が飛散し変色して固着し汚れ切った装置で、内部の極細テフロンチューブ約150本を新品チューブに置き換える仕事だった。B型肝炎やエイズ感染の危険もあり本当に震えた。しかし@60万円x15台=900万円の大仕事を逃すにはあまりにも惜しく引き受けることにした。
危険な仕事で、都会の街中では作業できず、藤枝市の田舎の空家に運び込み、感染は絶対に避けるべくマスク手袋で何重にも防御して機器の清掃作業から始めた。最初の1台は恐る恐るの作業で、2人で2週間を要したが、慣れると1週間に2台の仕上げが可能となり2ケ月間で15台全部を仕上げて納入した。本当に儲かった。しかしかような危険作業はその後は避けて、段々と普通の精密機械に的を絞り儲かる仕事に変換した。
これは苦しかった20年前の実話だが、今はIT時代で、格好のアイデアさえあれば、ベンチャーや起業のリスクは激減し、資金も少額で、少人数で簡単に起業でき、撤退も可能な時代になった。今日は1円株式会社さえ可能で、取締役一人、監査役不要で、殆どのベンチャーがスタートでき、ネットで全国販売も可能になった。有志のOB諸兄は、もしアイデアがあれば、是非起業することをお勧めする。波風多い毎日にはなるだろうが、あっという間に長い余生が過ぎてしまいますぞ。
私の自宅周辺にも銀行マンOBが多い、彼らは副頭取とか、専務、常務、理事、支店長、監査役など結構な身分ばかりで、高額の退職金を貰って退職はしたが、その後何もすることがなく、長い余生を悶々と過ごしている姿は、年金ジジイと言われても仕方ない。現役時代の彼らは肩で風を切って都心を闊歩したが、銀行不況と同時に続々と引退した。しかし地元になかなか溶け込めず、庭の手入れや、狭い農地を借りて家庭菜園したり、絵画や写真の趣味、更にはペットの散歩、時折はゴルフや海外旅行で過ごするが、長い余生を生き生きと過ごすのはなかなか難しい。閑過ぎるなら、登下校する学童の見回りとか、シルバー人材センターの公園清掃など肉体仕事は色々ある筈だが、そのような恥ずかしい仕事はプライドが邪魔になってできない。
彼らの現役時代に長い老後のことを考えなかったのだろうか。関連会社に再就職できる筈だと思っていたのかも知れないが、高度成長が終了すると、給料と自尊心だけ一流だが、見当違いのアドバイスしかできない役立たずの銀行OBを受け入れる会社は無くなってしまった。
再就職が無理なら、自分が新しい仕事を立ち上げる手もあるが、それはリククが恐ろしく、大恥をかき、虎の子の退職金を失なう危険があり出来ない。得意先を指導する銀行マンのうすっぺらな知識では実務の裏付けが無く、何か新しく起業する気力あるOBは近隣には一人もいない。少しばかり知恵ある人は老後に備えて、企業労務士、中小企業診断士、行政書士、司法書士などの資格も取得しているが、ペーパー資格は何の役にも立たない。彼らは他人の仕事に便乗して料金稼ぎをする連中で、口達者だが実務経験や説得力がない。やはり年配者が本気にならないと若者から年金ジジイと軽蔑されるのは仕方ない。
技術屋の私は世間常識が乏しくゴルフも下手で、長い余生は何か起業をする以外に過ごせないと覚悟して、現役時代に関係した臨床検査業界が困っている臨床機器の保全修理業を考えた。友人知人達は冷笑し乞食になるぞと脅したが、家内が反対しなかったのには今でも本当に感謝している。
誰も共同出資する友人は無かったが、親会社のM副社長が出資を申し出てくれたのには本当に驚愕した。退職金を沢山貰ったのかも知れないが、素人起業に500万円の出資は本当に感謝感激で、絶対に迷惑をかけられないと思った。自己資金500万円と併せて1000万円でスタートした。しかし当初はやはり仕事が無く本当に後悔の日々だった。
必死になってユーザーを探し回った。そしてやっと某中堅臨床検査センターH社が、米国BC社製血球カウンターのオーハーホールができるかと反応があった。新品は@600万円だが 1/10の@60万円でオーバーホールできれば15台を発注するとのこと。実機を見学すると、患者血液が飛散し変色して固着し汚れ切った装置で、内部の極細テフロンチューブ約150本を新品チューブに置き換える仕事だった。B型肝炎やエイズ感染の危険もあり本当に震えた。しかし@60万円x15台=900万円の大仕事を逃すにはあまりにも惜しく引き受けることにした。
危険な仕事で、都会の街中では作業できず、藤枝市の田舎の空家に運び込み、感染は絶対に避けるべくマスク手袋で何重にも防御して機器の清掃作業から始めた。最初の1台は恐る恐るの作業で、2人で2週間を要したが、慣れると1週間に2台の仕上げが可能となり2ケ月間で15台全部を仕上げて納入した。本当に儲かった。しかしかような危険作業はその後は避けて、段々と普通の精密機械に的を絞り儲かる仕事に変換した。
これは苦しかった20年前の実話だが、今はIT時代で、格好のアイデアさえあれば、ベンチャーや起業のリスクは激減し、資金も少額で、少人数で簡単に起業でき、撤退も可能な時代になった。今日は1円株式会社さえ可能で、取締役一人、監査役不要で、殆どのベンチャーがスタートでき、ネットで全国販売も可能になった。有志のOB諸兄は、もしアイデアがあれば、是非起業することをお勧めする。波風多い毎日にはなるだろうが、あっという間に長い余生が過ぎてしまいますぞ。