2011年11月08日
111108, 文系有利か理系か
昔から理系有利か文系有利かは盛んに議論される難しいテーマだ。ひとつは人生の有利不利は文系理系よりも、不確実な運命に左右されることの方が大きいからだが、しかし一般的には、文系の事務営業職は理系の技術職より早く出世して高給取りになるというのが世間の常識であった。
先般10/23に京都大学の西村和雄教授より次の様に全く逆の実証データが発表された。40代給与所得者の年収を調べると、理系637万円、文系510万円で、年収120万円ほど理系が有利、月当たり10万円ほど理系の所得が高かったというデータだ。更に面白いのはその先で、理系のなかでも物理を選択した人が681万円 化学が620万円、生物が549万円という専門間にも大きな差があったことだ。
物理というのは私流に言えば電気電子専攻という意味で、デジタル時代の象徴であり、反対に化学や生物はアナログ理系の代表だ。電気電子は現代社会のデジタル隆盛の基盤技術であるのは衆知の事実だ。数学は理系に共通の必須科目なのでDigitalとNon-Digitalの区別には使えず、従って物理で区分したのだろう。理系の私は残念ながらNon-Digitalの化学専攻だ。
理系文系の格差は戦前には明白で、官僚に象徴される文官は圧倒的に優位であった。理由はいろいろだが、まずは官高民低という旧来の常識があり、製造業など民間企業は蔑視された昔からの社会的思想基盤があった。更に往時は技術革新には無縁で、理系の仕事は暗く、性格的に人間関係が下手な人向きであり、年を重ねるに従って、組織内では管理職には無縁の専門分野に追いやられたからであろう。特に近年は超高給の金融業も生まれて格差を更に広げたが、日本のバブル崩壊で厳しい天罰を受けた。最近の米国ウオール街の大規模な反格差デモもその流れで、誰が見ても金融界の超高給は異常な状態だから、将来まで高給が続く保障は無いだろう。
数学が苦手の私が理系に進んだのは、お前は暗いので理系向きだと高校の担当先生に言われたのが発端だが、嫌いであった化学を専攻したのは、故郷の山口県の有名な某ソーダ会社T社に、夏休み体験実習した経験があり、故郷に錦を飾りたいとの思いもあった、しかし私より優秀な同級生に先を越されて、希望は敵わなかった。
近年の若い年代で、数十社に願書を出すという新卒文系の呆れるような就職難は理系では殆どあり得ない事だ。文系は専門は何でも社会で出て将来を決定するほど大きな影響はないが、理系は細分化された製造業など特殊な分野が対象で、その技術が分からない者は企業には無用である。近年の文系の就職難を考えると、受験生は理系も選択肢として考え直すだろうが、数学という大きな壁がある。数学は理系学生に必須科目の鬼門だが、数学を得意とする学生はごく少なく、私も大学入試では最低点であったが、何とか通過して生き延びることができた。
前記西村教授の結論は実証データだから誰も異論はなく、更にこれから専門を決める10代後半の若者は、真面目に努力して理系を修了すれば就職は殆ど困らない事を肝に銘じておくべきだろう。但し理系は必須科目が多く、講義や実験に追いまくられて、彼女を誘惑する余裕も時間もないのは覚悟する必要があるが、最近の若い女性は損得勘定に敏感で身分の安定したパートナーを望むので、努力して得られる理系の人生は果実も大きく、私も理系を推奨する一人である。
私ごとで恐縮だが、弊社は小さな機械会社で精密機器の保守点検を業としており、電気や機械などの専門知識をもたない文系は全く無用である。ハローワーク等で募集すると、理系だけでなく、文系も高い時給につられて応募してくるが、当社は幅広い専門知識を持ち、人柄の柔らかい人物を望むので、事務系とか営業系の応募者は全て門前払いしている。10人探すと1-2名程度は面接に値する人物が見つかり、更に運がよければ、素直な性格で、苦しい技術系人生に送ったとは思えない明るい人物に出会うことがある。
当社の実例で言えば、芝浦工大卒の横浜Aさんは、メカ電気技術に明るくしかも積極的で、我が社の創成期に大変助けて頂いた。取手のUさんは千葉大電気卒の優しい人柄で、大手電機会社から我が社に移り、彼の幅広い弱電知識は大いに役立った。千葉の高専電気卒のNさんは素直な性格で現場にも詳しく、永い間大きな貢献をして頂いた。しかし米国生活が長い横浜のHさんは、英会話に堪能で高度なパソコン技術を持ち縦横無尽は働くが、一寸油断すると何をゴマ化すか分からない陰湿な性格で、彼の行動は注意が必要で、長くは続かなかった。
化学を専攻して合成樹脂の企業に就職した私は、潜在的に経済学に憧れがあり、就業しながら関西の有名大学の経済学部(夜間)に学士入学して4年間通ったが、文系の専門は理系ほど大きな特異性はないことを知った。更に新聞や雑誌を通じて独学で勉強しても、十分間に合う勉強内容であることも分かった。従って文系学部は私流に解釈すると、理系ほど勉強しなくて済む学生生活であり、どこそこの大学卒という看板狙いが大きな比重を占めていると判断した。
長くなるので先を急ぐと、文系卒業者が数十社に願書を出すという呆れるような就職難は、真面目に勉強した理系には殆どあり得ないという事だ。更に誰でも代替できる文系の仕事では高給は難しく、逆に地味で嫌われる技術系の仕事は、高給を出さないと誰も来てくれないので、身分的にも保障されるということだ。
問題は所得の大小は、文系理系の違いよりも、幸運を引き寄せることが出来るか否かが、より大きく影響するという現実だ。即ち組織内において人間関係を大切にする人柄と、何事にも積極性を失わず前向きであれば、おのずと幸運の道は開けてくる。具体的に説明すれば、良い上司に恵まれるかどうかが運命を大きく左右することだ。組織の上司は自分が信頼できる部下を引き上げるのは当然であり、その為には、上司に理解される必要があり、その近道は有力な上司の元で働くことである。私は理系だが良い上司には恵まれなかったので、その幸運に預かれず、自力で運命を切り開かざるを得なかった。生き甲斐はあるが危険な道であり、安泰を望む若者には推奨できる人生ではない。