2018年11月22日

181122 ラテンの巨星落つ

世界の自動車業界が大揺れしている。生産台数世界第2位になったと誇示するルノー(仏)のカルロス-ゴーン会長が、自家用ジェット機で羽田に着陸した途端、東京地検特捜部に逮捕された。理由は過去5年間の役員報酬を50億円ほど過少申告した金融商品取引法違反だという。我々とは桁違いで実感は少ないが、これは日産全取締役の合計額にも匹敵する金額で、ルノー株主総会でも非難された高額報酬だという。その後の調査で、更に裏金80億円も発見されたという。ゴーン会長はVIP-Roomの無い東京拘置所の冷たいコンクリート独房で、自分を裏切った役員を恨んでいることだろう。                                      
                                          
半世紀以上前、私がまだ工学部学生時代は、田舎会社トヨタを尻目に日産はわが国 No.1の自動車会社で、東大などの機械科秀才が集まる最高の就職先で仰ぎ見る会社であり、20年近く川又克二社長が独裁社長だった。更に労組の力も強く, 塩路一郎会長に率いられた日産労組は大きな力を持っており取締役の半数は労組出身者で、退職すると次々と関係子会社の役員に転出して割高な部品を親会社に供給して会社経営を悪化させ、地道に拡大するトヨタに抜かれ、生き残りを賭けたホンダにも抜かれて、2兆円以上もの膨大な負債を抱える倒産企業に転落した。 
                                        
そこにルノーが白馬の騎士として登場し、6,430億円を拠出して日産の筆頭株主になり経営権を握った。そして日産TOPに就任したゴーン社長は、肥大化した日産組織を徹底的に断ち切り、6,600人が勤める村山工場を閉鎖、20,000人以上の従業員を解雇して身軽になり、技術陣を鼓舞してGT等の魅力的な車を次々と市場に送り出し、8年前には業界初の電気自動車リーフも上市した。当初は嘲笑も浴びたが、ヨーロッパで人気のET車となり、戦略が的中して健全企業に立ち直った。ゴーン会長の英断なしでは日産の腐敗体質は改善ができなかった筈で、その偉大な功績は世界が認めている。           
しかし野望を膨らますゴーン会長は、売行不振で倒産状態の三菱自動車も買収してルノー集団に取込み、昨年度(2017)の生産販売台数は、日産580万台、ルノー380万台、三菱100万台の合計1,060台を達成して、トヨタを抜いて、VWに次ぐ世界No.2の規模にまで成長させた。ルノ―株式15%をもつフランス政府は、ルノーを通じて日産株式を43%取得して技術開発力を入手して、ルノーをGM(米),VW(独)、トヨタ(日)、中国(上海,東風)と肩を並ぶ世界メジャーの自動車会社に仕上げようと思案していた。                                                                                
ゴーン社長は表面的には日産の自主性を宣言していたが、内心では開発力の無いルノーが如何に技術の日産を手中に収めるか機会を狙っていたが、フランス政府の強い催促もあり、数ケ月以内にルノーと日産を統合させる計画を進めていた。逆に格下ルノーに吸収されることを極度に嫌う日産は合併される無念さを隠せなかった。ルノーの奴隷になったと嘆く日産従業員の不満を熟知する日産西川社長は、企業統合がまじかに迫り、来日する回数が減ったゴーン会長を排除する最後の機会と覚悟を決めて、テレビ会議を希望したゴーン会長に直接来日するよう強く求めて行動を開始した。                                        
近年成果が乏しい東京地検特捜部は、6月に本事件を密告で知ったが、日本とフランス間の政治問題に発展する重大案件であることを考慮して、密告情報が事実であることを慎重に確認すると、ゴーン会長がフランスから日本に到着した瞬間に、羽田空港で身柄を確保して事件を世界に公表した。特捜部の手中に落ちたゴーン会長の数々の違法事件はこれから公にされるだろうが、レバノン系両親のもとにブラジルで育ったゴーン青年は努力して階級社会のフランスで頭角を現し、将来は母国ブラジルの大統領になることまで思案していた大望がこれで霧散した。                  
今後の日-仏間の外交交渉の成行きが注目されるが、悪事が次々と白日のもとに暴露され始めたゴーン氏は、母国の手が届かない日本の牢獄から動けず、その強大な力を段々と失ってゆくだろう。日産経営陣は43%の株式を握るルノーの束縛を脱出するべく、複雑な利害関係を整理し決着させることになる。技術激変の自動車業界では、日産と三菱が組めば年700万台となり独力でも生存可能だが、技術力が無く効率も劣るルノーは380万台では生存できず、苦しい交渉となるだろう。                    
有罪/無罪は司法が判断するだろうが、日産,三菱の従業員には悲惨なリストラを強いながら、TOPだけが超高給を食んでいたのは日本人の感覚からは絶対に許せない。ゴーンが日産のTOPとして従業員の前に顔をだすことはありえないだろう。有能なリーダーでも20年もの長期政権になると本性を露呈し堕落することを教えてくれた貴重な事件である。
             











mh3944 at 11:59│Comments(0) 政治 

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