2020年01月20日

200120 ガリバー企業(7ch)

土曜夕方(7ch)の、知られざるガリバー企業をいつも見ている。小さくてもユニークな商品をもつ有力会社を紹介する番組だ。先週は、カラー業界の実力企業との見出しで、都心の立派な本社ビルが映り、直ぐに私の親会社D社だと分かった。会社を退職して既に40年が経過し、D社の近況は如何に?と期待したが、立派なのは本社ビルばかりで有力商品は無く、 新任社長がボソボソと解説したのには落胆した。唯一の目玉は、ドイツ大手BASFが手放した顔料工場を買収して欧州市場進出だけだった。これが私の青春を賭けて入社した会社の現状かと思うと悲しくなった。往年は国際化の旗手として囃されたが、近年は成長が止まり、年商8,000億円、利益僅少、株価低迷で 社員3,000人の商社的巨体を持て余しながら、やっと生き延びている状況だ。

D社は同族会社で学閥も少なく風通しの良い会社だった。社長は代々経理畑出身だが、茶坊主の経管部長が実務権限をもち、同部長の事前了解ナシには何もできない仕組みだった。技術系TOPのS副社長は誠実だったが、K相談役の顔色ばかり窺い、日常業務最優先で長期開発は重視しなかった。技術企画H常務、実力者M常務も発言権は弱く、有力プロジェクトは経管部長主導の外国企業買収だけだった。 
                                            
若手技術者も次々とやる気を失ってライバル会社に移った。技術企画担当の私も経管部長の束縛で身動きできない状況に絶望して脱出を決意し、米国医薬企業と合弁会社を設立して幕張新都心に脱出した。そこで思う存分の本格的な業務を働くことができた。

D社は郊外に大規模な研究所を設立し開発態勢もあったが、短期成果を急ぐS副社長は中長期的テーマを重視せず、外部アドバイサーも不在で、何年経っても目ぼしい成果は生まれず、研究投資は年々縮小されて年配社員の溜まり場に化していった。確かに新規テーマが開発し尽された今日、研究開発者には受難の時代で、D社だけが責められる訳ではない。半導体市場も即断即決の韓国,台湾企業に押されて日本勢は敗退し、自動車は巨大市場の中国にマーケットが移り、トヨタ,ホンダも苦戦気味だ。

D社は中間素材メーカーで、塗装剤、フィルム、エラストマー、液晶などテーマは限定される。ノーベル賞を受けた吉野彰氏の旭化成も、特許は三洋電機が4年早く出願し、リチュ-ム電池はソニーが先に商品化に成功して、旭化成の業績に大きく貢献した訳ではない。しかし技術開発の重要性が変わっていない。自動車で先頭を走るトヨタやホンダの独立精神、ソニーの開拓精神、更にパナソニックの完璧精神は生きており、ソロバン重視のD社が、この激動の時代に生き残っているのがむしろ不思議でもある。 企業買収も事業展開の有力手段ではあるが、外国企業のコントロールは極めて難しく、ソフトバンク孫社長は米国シェア-オフィス会社へ投資で一兆円もの巨額損失を蒙った。別件だがD社も米国会社を買収撤退して3千億円もの損失を生じたと聞く。風習,言葉が異なる外国人の心を掌握するのは容易なことではないことを教えてくれる。

近年は正社員にも副業が認められる時代になった。副業とは研究開発の隠しテーマだけでなく、一般社員は翻訳業とか英会話教室、予備校講師などもOKらしい。50年前に工学部を卒業した 私は非難されながらも経済学部(夜間)を卒業して懸賞論文を書き 研究部門から企画部門に脱出し、更に合弁会社に移籍して新天地で働くことができた。時代は完全に転換した今日、D社もソロバン勘定から脱出して、社員の創意と工夫を生かす社風に転換しなければ、野垂れ死にする以外に生きる道はないと思った。  



mh3944 at 09:32│Comments(0) ビジネス 

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