2022年10月21日

221021 医薬品の営業

前立腺の定期検診の為、午後早めに病院に行くと、待合室には背広姿の若者が多数いた。医薬セールスの MR(Marketing-Representative)だった。ここの先生は有名で、午前中の外来診察が終る休憩時間を狙って、自社商品をPRしようとMRが頻繁に来訪する。昔はルノアール-セールスとも呼ばれ、近くの喫茶店で待機して、診察を終えた医師に 自社商品を直接PRできる貴重な時間である。
                                                                              
女性看護師が、XXXさん と社名抜きで氏名を呼ぶと、はい!と立ち上がったひとりが部屋に入った。ドアの隙間から見えるMRは直立不動で、名刺と資料を渡し何かお願いしている。後ろ向きの先生の姿は見えないが、何か言葉を交わしたらしく 2~3分過ぎるとMRは再び最敬礼して部屋を出る。そして次のMRが呼び込まれる。半時間で女性を含む10余名全員が面談を終えると、待合室は空になり、午後診察待ちちの患者だけになる。MR諸兄はこの短時間に全てを賭けている。    
                                            
実は私も40年前の苦いMR時代を思い出した。資料を細心に準備して出かけ、病院前の喫茶店で2〜3時間待機し、運が良ければ4〜5分、悪ければ資料を手渡すだけの営業活動に全てを賭けたが 先方からの反応は殆ど無い無駄な活動だった。喫茶店で待機中に知り合った 競合他社に転職する者とか、他の仕事に代わるなど 人生を思い悩む時間でもある。苦しい仕事としては 一字のミスも許されない活版植字工があったが、パソコンの登場でデスク仕事に代わり 植字工は絶滅した。住宅,車など高額商品の営業も、ご主人が帰宅する夜に 個人宅を訪問する苦しい仕事だったが、時代は代わって 今は殆ど営業所で来客を待つ方式になった。
                                            
新規医薬品の研究開発も 更に苦しい仕事だ。まず文献調査から始まり、薬効ありそうな多数の候補化合物を想定して合成する。そして毒性試験、動物試験、一次臨床試験、最終臨床試験など、10年近くかけて 膨大な費用を投じて 化合物を絞り込む。殆どの担当者は会社人生で 報われることが全くない厳しい職場だ。コロナワクチンも 世界中の大手医薬品会社が開発を競ったが、最後に残ったのは 米国ファイザー社だけで 数兆円の売上げを獲得し、日本メーカーは全滅だった。欧米も多数の大手会社が全力で競合したが 成果は無く、可能性があった J & J も ごく稀れに現れる副反応で脱落した。
                                          
コロナ治療薬(飲薬)に絞った塩野義製薬も 成功を確信して、大量生産し、錠剤化して、説明資料添付、箱詰も終えて 出荷指示を待ったが、治療効果が明確ではないと 厚生省医薬品審議会からクレイムがつき、全業務が水の泡と消えた。大昔の丸山ワクチン事件や、キノコから抽出した効果不明なガン治療薬例の如く、薬効不鮮明な治療薬でも 一旦市販が開始されると 百億円単位の保険が浪費されて 財政を圧迫するので 厚生省が慎重になるのも理解できる。エーザイのアルツハイマー治療薬も同様で アミロイド-βの沈着を防ぐことは確認できたが、治療効果が明確でないとの結論で、エーザイは数百億円の売上が幻になった。大ホームランを狙って三振に終わった会社は株価が急落し、大出世を夢見た開発担当者も 苦渋の内に 会社人生を終えて引退することになる。




mh3944 at 09:46│Comments(0) ビジネス 

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