
巫女王の島には各地より娘が集められ『海神の娘』となり、託宣により各地の領主の元に嫁ぐ。
嫁ぐ相手が正か邪か。その婚姻は吉か凶か。それは誰にもわからない。
シリーズ1作目『海神の娘』はこの世界のいくつかの婚姻譚でどちらかといえばハッピームードの華やいだ物語が印象に残った。
が、この2作目は沙文と沙来という隣接し長年の小競り合いが習慣のようになっている2つの島に住む人物たちの物語。
(1作目に沙来は表記がないので、こちらの物語は過去のお話なのかな。だからより残酷なのかな)
タイトルに「滅びの曲」とありましたし、オムニバス短編1作目から滅びの笛が吹かれてしまい不穏な雰囲気。
笛を吹いた本人は音色に誘われ気持ちよく音を奏でたに過ぎないけれど、全く意図せず、何も知らぬ間に「滅びの曲」を吹いてしまった。
(これは海神の「曲を聴きたかっただけ」という気まぐれというか、気分が発端)
以降また争いが起き領主が殺され、海神の娘であるその妻を失い、新しく領主となった若い息子も死に小さな島・沙来は滅ぶ。
理不尽なんですよねぇ。すべては海神のご機嫌次第、匙加減で人々の生活は簡単に破綻してしまう。
海神は特に人間の暮らしをどうこう考えているわけではなく、気まぐれに動くだけ。
それを承知し、海神に意見できるのは霊子だけなのでたった一人遠くから人間たちにせめてもの手助けをしようと見守る霊子。
う〜ん、海神と霊子ってどうしてこうなったの??
霊子がもしも以前は普通の人間だったのなら、この立場になるって相当な決意が必要。
私なら絶対選ばないなぁ。(選べるのなら…なのか??)
領主にしても海神の娘にしても、必ずしも人格者が選ばれるわけではない。
海神から得られる「加護」もそこまで公平なものともいえない。
だから霊子の願いを叶えた海神の沙文の新しい若き領主・由への加護は格別のインパクトがある。
逆らう相手にいちいち雷落として消滅させていたら、普通は畏怖というか、恐怖しか残らないと思うけれど、そこは由の対話しようとする姿勢で改善していくのだろう。(と願う)
課題は山積みながらなんとかひとつ山を越えた由たち。
木瓜酒が美味しく飲めたらいいね。