ハートレイ伯爵家の一人娘・メアリは16歳。
毎日華やかなドレスを着せてもらうが、鏡に映る自分の姿に慣れない。
メアリは12歳までロンドンの街頭に立ち花売り娘としてかつかつの暮らしをしていた。
ある日突然迎えが来て、赤ちゃんの頃乳母にさらわれたきり行方知れずになっていた伯爵家の令嬢があなただという。あれから4年。
何がなんだかわからぬうち連れて来られたが、生まれて初めて母という人に会い抱きしめられ優しくされ、あたたかなベッドで眠れる生活は手放せなくなっていた…。

後宮の烏』『海神の娘』『花菱夫妻の退魔帖』など、どのシリーズも楽しませてもらっている白川紺子さんのデビュー作とあとで知りびっくり。
ものすごく『和』のイメージの作品ばかり読んでいたせいか、こんなヴィクトリア朝ロンドンが舞台の作品でデビューされてたなんて。
しかも面白いのだ!
物語は章ごとにナーサリーライムの引用があったり、謎の事件が起きたり、加えてメアリはいわくつきな事この上なしで(笑)
はじめは田舎くさい、貴族の教養がないなどメアリを下に見てここぞとばかりにいじめにかかる令嬢たちというあるあるに「漫画みたいだなぁ」と感じたりもした。
でも、私はそういう漫画好きなのだ。あるある。
体裁をとり繕うよりも人に対して正直であろうとするメアリが、実はとんでもない秘密を抱えてしまいもう自らは動くことができなくなっていた。
そんなとき発揮されてしまった不思議な力。
うん、スタンド能力みたいなやつね。
スタンド使いは惹かれ合うのが法則なので、他にも能力者たちが集まりどうなるのかしらと思ったら、うまいこと乗り切って。これはメアリの人間力だと思うな。
加えてロマンスの花も咲き華やかハッピーエンド。
優しい「嘘つきさん」が集まって、互いを必要としている。
いいではないですか、面白かったー。